障害年金は自分で申請できる?社労士に依頼する場合との違いと判断のポイント
この記事の結論
障害年金の申請は、本人(または家族)が自分で行える手続きです。年金事務所の相談は無料で、年金機構への申請に手数料はありません。「専門家に頼まないと通らない」制度ではありません。
自分で進めやすいのは、初診日がはっきりしていてカルテも残っている・転院が少ない・時間をかければ書類を書けそう・手伝ってくれる人がいる、という場合。年間146,225件の新規裁定のうち約87%は何らかの等級に決まっています(令和6年度)。
社労士への相談を検討する価値があるのは、初診日の証明が難しい・傷病が複数ある・遡及請求を考えている・不支給後の審査請求・体調的に手続きそのものが難しい、という場合。費用は事務所ごとに違うので、着手金・成功報酬・不支給時の扱いを契約前に書面で確認してください。
全部自分か全部依頼かの二択ではありません。組み合わせてよく、途中で切り替えてもよい。どちらの道でも、生活の記録と通院歴の整理は本人の手元に必要になります。
障害年金の申請を調べていると、社会保険労務士(社労士)の事務所のサイトが多く見つかります。「専門家に頼まないと通らないのだろうか」と不安になる方もいるかもしれません。
まず前提から。障害年金の申請は、本人(または家族)が自分で行える手続きです。年金事務所の相談も無料です。そのうえで、社労士への依頼が力になるケースも確かにあります。この記事では、その判断基準を整理します。
先に、数字で全体像を
「自分でやって通るのか」を判断する前に、審査の全体像を置いておきます。厚生労働省の公表では、令和6年度に新しく決まった障害年金は146,225件。そのうち非該当(不支給)は13.0%で、精神の障害では12.1%です。決まった等級の内訳は1級10.9%、2級53.9%、3級22.1%。
つまり、請求した人の約87%は何らかの等級に決まっています。この数字には、自分で申請した人も社労士に依頼した人も含まれます。どちらが多いかは公表されていませんが、「専門家を通さないと門前払い」という制度でないことは、この数字が示しています。
一方で、令和6年度の精神の不支給85件のうち64件(75.3%)は、診断書の目安では等級に届いていたのに総合評価で落ちた事案でした(令和5年度は44.7%)。丸の位置だけでは決まりません。落ちる理由の多くは「制度の壁」ではなく、丸のうしろの記述欄と申立書に生活の実態が載っていなかったこと。ここは自分で申請しても社労士に頼んでも、生活の実態を診察で伝えられるかどうかにかかっています。
自分で申請する場合
自分で申請する場合の負担は、費用ではなく手間と気力です。初診日を調べ、年金事務所に相談に行き、診断書を依頼し、申立書を書く——それぞれは特別な資格が要る作業ではありませんが、体調に波がある中で数か月かけて進めることになります。
自分で進めやすいのは、次のような場合です。
- 初診日がはっきりしていて、カルテも残っている
- 通院歴が比較的シンプル(転院が少ない)
- 書類を書く作業が、時間をかければできそう
- 家族など、手伝ってくれる人がいる
自分で進めるときの4つの機能
当サイトには、自分で進める人のために、条件を入れるだけで答えが出る機能があります。いずれも送信なし・ログインなしで、端末の中だけで動きます。
→ 何をそろえればいい?→ どこに出せばいい?→ 申立書を、自分で書きたい→ 私は何級くらい?進め方の全体像は申請の流れと必要書類に、体調が悪い中で進める工夫は申請がしんどいときの進め方にまとめています。
費用の話
自分で申請する場合にかかるのは、診断書と受診状況等証明書の文書料(医療機関ごとに異なり、公的な上限はありません)、住民票などの交付手数料、交通費・郵送代です。年金機構への申請そのものに手数料はなく、年金事務所の相談も無料です。
「手続きにはお金がかかる」「年金機構公認の代行サービスがある」という話を聞いたら、どちらも誤解です。公的な窓口が手数料を求めることはなく、年金機構が特定の代行業者を公認していることもありません。
→ 「障害年金の手続きには、お金がかかる」は誤解です→ 「年金機構公認の代行サービスがある」は誤解です社労士に依頼する場合
障害年金を専門に扱う社労士は、書類の収集・作成・提出の代行や、医師への診断書依頼の際の資料づくりなどを支援してくれます。年金事務所での相談や書類の提出を代理で行うこともできます。
費用は事務所によって異なります。着手金の有無と額、受給が決まった場合の成功報酬の計算方法(年金額の何か月分か、遡及分の何%か)、不支給だった場合の費用、審査請求まで含むか——契約前に、この4点を書面で確認してください。「相場」で判断せず、目の前の契約書で判断するのが確実です。
社労士への相談を検討したほうがよいのは、次のような場合です。
- 初診日の証明が難しい(カルテが破棄されている、廃院している、初診日の候補が複数ある)
- 傷病が複数あり、どの傷病で申請するか整理が必要
- 障害認定日にさかのぼる請求(遡及請求)を検討している
- 一度不支給になり、審査請求(不服申立て)を考えている
- 体調的に、手続きを進めること自体が難しい
とくに初診日まわりの複雑なケースは、専門家の経験が結果を左右しやすい領域です。当サイトが確認した社会保険審査会の裁決91件のうち、争点が初診日だったものは35件。証明の組み立て方で結論が分かれる領域だということです。
依頼先の選び方
社労士なら誰でも障害年金に詳しいわけではありません。社労士の業務は労務管理・社会保険全般に及び、障害年金を専門にしている事務所は一部です。確認したいのは次の点です。
- 障害年金、とくに自分の傷病(精神・内部・外部)の取り扱い経験があるか
- 初診日の証明や遡及請求など、自分の論点に当たる経験があるか
- 費用の4点(着手金・成功報酬の計算・不支給時・審査請求の扱い)が書面で示されるか
- 「必ず通る」「等級を保証する」と言わないか(言う事務所は避けてください。受給の可否を決めるのは審査側で、誰にも保証できません)
「自分でやる」と「頼る」の間 — 組み合わせてよい
自分でやるか、全部任せるかの二択ではありません。たとえば、年金事務所への相談と書類集めは自分で進め、初診日の証明だけ社労士に相談する。あるいは、まず自分で進めてみて、行き詰まった段階で依頼を検討する。どこまで自分でやるかは、体調と相談しながら決めていいのです。
大切なのは、どちらの道でも、日々の生活の記録と通院歴の整理は自分の手元に必要になるということです。社労士に依頼する場合でも、生活の実態を伝える材料を用意するのは本人です。記録があるほど、自分で書くにも、専門家に伝えるにも、力になります。
同じ状況の人が、どうなったか
「誰が書いたか」ではなく「何が書面に載っていたか」で結論が分かれた裁決です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
うつ病・障害認定日請求(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 3級とされた処分について、家族の援助を要する日常生活能力と、就労支援での短時間作業も続かなかった経過を総合し、障害認定日に2級に該当するとして原処分が取り消されました。「家族の援助」「就労支援でも続かなかった」という生活の事実が書面にあったから上に動いた例です。この材料を持っているのは本人と家族だけです。
広汎性発達障害・摂食障害・障害認定日請求(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 同じ障害認定日を基礎とする以前の不支給処分について、再審査請求と取消訴訟がすでに確定していたため、同一内容の裁定請求で確定した判断を争い直すことはできないとして棄却されました。同じ資料で出し直しても結果は変わらない、という確認で、「最初の1回で実態を伝えきる」ことが自分でやる場合も依頼する場合も変わらず大事だと分かります。
判断のための質問リスト
迷っている人は、次の質問に答えてみてください。「はい」が多いほど、自分で進めやすい状況です。
- 初診の病院が分かっていて、そこにカルテが残っていることを確認できたか
- 保険料納付要件を年金事務所で確認し、満たしていると分かったか
- 転院は2回以内か
- 障害認定日から1年以内の請求か(遡及ではないか)
- 診断書の依頼から提出まで、3か月以内に動けそうか
- 電話と外出を、家族や支援者に代わってもらえるか
- 不支給だった場合に、審査請求を自分で組み立てる気力がありそうか
「いいえ」が3つ以上なら、相談だけでも社労士に、という選択肢が現実的になります。相談した結果、自分で進めると決めても構いません。
受け取る額の見当をつけておくと、依頼の費用と比べる材料になります。
→ いくらもらえる?記録が、どちらの道でも土台になる
自分で申請するにも、社労士に依頼するにも、最初に要るのは「生活の実態」の材料です。日々の出来事を短くメモすると、7項目に沿った診察用の資料と申立書の下書きに整理されるアプリを作りました。社労士に渡す資料にもそのまま使えます。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。
よくある質問
Q. 社労士に頼まないと、障害年金は通らないのですか?
A. そんなことはありません。障害年金の申請は本人や家族が自分で行える手続きで、年金事務所の相談も無料です。令和6年度の新規裁定146,225件のうち約87%は何らかの等級に決まっており、自分で申請した人も多く含まれます。
Q. 社労士の費用はいくらですか?
A. 事務所によって異なります。着手金の有無と額、成功報酬の計算方法、不支給だった場合の費用、審査請求まで含むかの4点を、契約前に書面で確認してください。「相場」ではなく契約書で判断するのが確実です。
Q. 自分で始めて、途中から社労士に頼むことはできますか?
A. できます。年金事務所への相談と書類集めは自分で進め、初診日の証明だけ相談する、行き詰まった段階で依頼する、といった組み合わせは普通にあります。集めた書類や時系列メモは、依頼する場合にもそのまま使えます。
Q. 家族が代わりに手続きをしてもいいですか?
A. 構いません。障害年金の相談も手続きも、家族が代わりに動くことは制度上まったく問題ありません。電話の代行、年金事務所への同席、書類の整理は、本人の負担を大きく減らします。
Q. 「年金機構公認」「必ず通る」と書いてある代行業者は信用できますか?
A. 年金機構が特定の業者を公認することはなく、受給の可否や等級を保証できる人もいません。そう書いてある業者は避けてください。年金の請求手続きを業として代理できるのは社会保険労務士(と弁護士)です。
まとめ
- 障害年金の申請は自分でできる手続き。年金事務所の相談は無料で、申請に手数料はない
- 令和6年度の新規裁定の約87%は何らかの等級に決まっている。落ちる理由の多くは「診断書の7項目が軽く付いた」こと
- 初診日の証明が難しいケース、遡及請求、審査請求などは社労士への相談を検討する価値がある
- 費用体系(着手金・成功報酬の計算・不支給時の扱い・審査請求の扱い)は契約前に書面で確認する
- 全部自分か全部依頼かの二択ではなく、組み合わせてよい
- どちらの道でも、生活の記録と通院歴の整理は本人の手元に必要になる
出典
- 日本年金機構「障害年金の請求手続き」「年金相談」(相談無料、家族等による手続き)・確認日 2026-09-03
- 社会保険労務士法(年金の請求手続きの代理)・確認日 2026-09-03
- 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」・厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(新規裁定146,225件、非該当13.0%・精神12.1%、等級内訳、精神の不支給85件のうち、目安では等級に届いていたのに非該当になった事案が64件=75.3%、令和5年度は44.7%、目安どおりの不支給は11件=12.9%)・確認日 2026-09-02
- 当サイト 裁決事例集(91件、争点 初診日35件)・確認日 2026-09-02
※本記事は一般的な情報提供です。社労士の業務範囲・料金は事務所により異なります。依頼の判断はご自身でご確認のうえ行ってください。本記事および当アプリは受給を保証するものではありません。
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。
このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。