障害年金の初診日がわからないときの調べ方|証明できない場合も解説

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障害年金の申請で、最初に立ちはだかり、そして最も多くの人を止めてしまうのが初診日です。

ここで「じゃあ無理だな」と諦める人が、本当に多い。でも、「思い出せないから申請できない」と、すぐに結論を出す必要はありません。初診日を証明できない場合の仕組みは、制度としてちゃんと用意されています。

そして、初診が古くて特定が困難だったケースでも、医療機関同士の紹介書類から初診日を確定できた例は多くあります。「カルテがない=終わり」ではありません。

ただし、もうひとつ大事なことがあります。初診日は受給要件に関わる重要な事項です。「たぶんこのあたりだろう」と推測で決めてしまうと、後の手続きで食い違いが生じます。分からない部分は「分からない」「確認中」と正確に扱いながら、手がかりを順番にたどっていく——これが正しい進め方です。

この記事では、初診日を確認・証明するための手順を、上から順に使える形で整理します。

調べる順番 — 上から順にたどってください

いきなり細かい話に入る前に、どこから手をつければよいかを示します。上から順に試すのがおすすめです。

  1. 現在の病院へ、過去の紹介状や記録が残っていないか確認する — いま通っている病院のカルテに、前にかかっていた医療機関の記載が残っていることがあります。いちばん負担が小さく、手がかりが得られやすい方法です
  2. 家族に確認する — 「あのころ、どこの病院に行っていたか覚えている?」。付き添ってくれた家族が、本人より正確に覚えていることがよくあります
  3. 診察券やお薬手帳を確認する — 古い財布、引き出し、本棚の隙間。病院名や調剤日が残っています
  4. 古い領収書や医療費通知を確認する — 医療費控除の記録、確定申告の控えも手がかりになります
  5. 健康保険の記録について確認する — 加入している健康保険の窓口(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険)へ、過去の受診記録を確認できるか問い合わせます。受診した医療機関名と受診年月が分かることがあります
  6. 初診と思われる医療機関へ問い合わせる — 候補が絞れたら、その病院へ電話して、当時の記録が残っているかを確認します
  7. 年金事務所へ相談する — 集まった材料を持って相談します。「この材料で手続きを進められるか、足りないなら何が必要か」を確認できます。持ち物は障害年金を年金事務所で相談するときの持ち物にまとめました

1〜5は、家にいながら、あるいは電話1本でできることです。外出がつらい時期でも進められます。そして、ここで何か1つでも見つかると、6と7がぐっと楽になります。

以下、それぞれの方法を詳しく見ていきます。

その前に:なぜ初診日がそこまで重要なのか

初診日は、障害年金のすべての起点です。3つのことが、初診日で決まります。

(1) どの年金から支給されるか。 初診日に国民年金だったなら障害基礎年金(1級・2級のみ)、厚生年金だったなら障害厚生年金(3級もある)。同じ状態でも、初診日ひとつで受け取れるものが変わります。

(2) 保険料納付要件を満たすか。 初診日の前日時点での納付状況で判定されます。これは後から変えられません(初診日以降に慌てて納めても、要件判定には使えません)。

(3) 障害認定日がいつか。 原則、初診日から1年6か月後。遡及請求ができるかどうかも、ここから逆算されます。

だから審査は初診日に厳格です。そして本人の「◯年ごろ行ったと思います」という申立てだけでは、原則として認められません。日付が記載された客観的な資料が求められます。

そもそも「初診日」の定義を間違えていませんか

証明の方法に入る前に、確認しておきたいことがあります。初診日の定義を誤解しているために、探す場所を間違えている人が少なくないのです。

初診日とは、「障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」です。ここから導かれる、間違えやすいポイントを挙げます。

まず、この定義で自分の記憶を洗い直してください。「探しても見つからない」と思っていた人が、内科の受診記録で解決することがあります。

方法1:記憶と手元の資料から、初診日の「あたり」をつける

最初にやるのは、証明書を取りに行くことではなく、候補日を絞る作業です。手がかりは家の中にあります。

とくに健康保険の受診履歴の照会は強い手です。医療費のお知らせは通常1〜2年分ですが、保険者に問い合わせると、より過去の記録を確認できる場合があります(保険者や年度により対応は異なります)。

この段階で「◯年◯月ごろ、◯◯医院」まで絞れれば、次の方法2に進めます。

方法2:受診状況等証明書を取る(原則ルート)

初診日の証明の基本は、受診状況等証明書です。初診の医療機関に作成してもらう書類で、カルテに基づいて初診日や受診の経過を証明してもらいます。

依頼のときは、電話で「障害年金の請求に使う受診状況等証明書をお願いしたい。◯年ごろに受診した記録が残っているか確認してほしい」と伝えます。カルテが残っていれば、たいていはここで完了します。取得の手順や書き方の確認点は受診状況等証明書の記事にまとめました。

問題は、ここで「カルテがありません」と言われたときです。以下、その先の方法です。

方法3:カルテがない・廃院のときの「参考資料」を集める

カルテの法定保存期間は5年。それを過ぎていれば、病院に破棄する権利があります。ただし、実務的にはこの段階でやることが3つあります。

(1) 本当にないのか、もう一度確かめる。 受付での即答と、実際の保管状況が違うことがあります。「電子カルテに移行前の紙カルテは倉庫にあるかもしれない」「診療録は破棄したが、レセプトの控えや受付簿は残っている」というケースは実際にあります。

文書で照会する、あるいは日を改めて事務長宛に確認するだけで見つかることがあります。聞き方の具体例と代替資料の一覧はカルテがないときの証明方法にまとめました。

(2) 廃院の場合、記録の行き先を追う。 院長が別の場所で開業している、法人が別の病院に統合された、カルテを引き継いだ医療機関がある——地域の医師会や保健所に問い合わせると、行方が分かることがあります。追跡の順番と電話の台本は病院が廃院しているときの調べ方で解説しています。

(3) カルテ以外の客観資料を集める。 「初診日を証明する資料はカルテだけ」ではありません。日付が入った客観的な資料であれば、参考資料として使えます。

これらを集めたうえで、次の方法4に進みます。

方法4:「受診状況等証明書が添付できない申立書」を出す

初診の医療機関で証明が取れない場合に使う書類が、受診状況等証明書が添付できない申立書です。

つまり、この申立書は「証明の代わり」ではなく「参考資料を提出するための土台」です。ここを誤解して、申立書だけ出して不支給になる人がいます。資料をセットにするのが前提だと覚えてください。

方法5:第三者証明を使う(条件を正確に押さえる)

参考資料も乏しい場合の切り札が、第三者証明(初診日に関する第三者からの申立書)です。2015年に、初診日の証明が取れない人を救済するために導入された仕組みです(要件と頼み方は第三者証明の記事で詳しく扱っています)。

ただし、認められるには条件があります。ここを外すと使えないので、正確に押さえてください。

基本ルール

例外:医療従事者の第三者証明は強い ここは知っておく価値があります。初診日ごろに受診した医療機関の医師・看護師・ソーシャルワーカーなどの医療従事者が、本人の受診を直接見て認識していた場合、その第三者証明は医師の証明と同等に扱われ、他に参考資料がなくても初診日が認められます

廃院した病院の元院長や元看護師と連絡が取れるなら、これは非常に強い手です。ただし、本人の申立てに基づいて書かれたもの(当時の受診を直接知らない医療従事者が「本人がそう言うので」と書いたもの)は認められません。

完成形:アキさんの「初診日調査シート」

方法1〜5を、実際の作業手順に落とします。アキさん(32歳・うつ病)が母と一緒に埋めていったシートです。

【STEP1】候補の洗い出し

【STEP2】年金事務所で確認

【STEP3】証明を取りに行く

【STEP4】取れなかった場合の備え(今回は不要だったが準備した)

このシートの肝はSTEP2です。証明を取りに行く前に年金事務所へ行くことで、「そもそもどの日を初診日として組み立てるか」が決まります。順番を逆にして先に証明を取ると、無駄な費用と時間がかかることがあります。

「初診日が2つ候補にある」ときの考え方

アキさんのように、候補が複数ある人は珍しくありません。判断の軸は相当因果関係です。

精神疾患でよくあるのは、「不眠・倦怠感で内科 → 数か月後に精神科」という流れです。この場合、内科の受診が同じ傷病の始まりと判断されれば、内科の日が初診日です。

そして、どちらの日を初診日とするかで、納付要件・年金の種類・認定日が変わります。有利不利が生じるため、自己判断せず年金事務所で相談してください。なお、前述のとおり社会的治癒が絡む場合は、さらに組み立てが変わります。

「調べているうちに時間が過ぎる」問題

初診日の調査には、落とし穴があります。完璧な証明を求めて調べ続けているうちに、月日だけが過ぎることです。

これが実害になる理由は2つあります。

(1) 遡及請求の時効は毎月進む。 障害認定日が5年以上前の人は、請求が1か月遅れるごとに、受け取れる過去分が1か月分ずつ消えていきます。調査に半年かければ、半年分が消える計算です。

(2) 事後重症請求は「請求した月の翌月分から」。 認定日請求ができないケースでは、請求日そのものが受給開始月を決めます。準備に慎重になるほど、受け取り始める月が後ろにずれます。

だからといって、雑な資料で見切り発車するのも危険です(一度不支給になると2度目は前回と厳格に比較されます)。バランスの取り方は、次のとおりです。

初診日の証明が難しいケースは、専門家に依頼する価値が最も高い類型でもあります。古い医療機関の追跡、紹介状の掘り起こし、第三者証明の組み立ては経験の差が出る作業です。報酬は成功報酬型が主流なので、自分で申請するか依頼するかを検討する材料にしてください。

年金事務所での相談を、無駄にしない準備

方法1〜5のどこで詰まっても、次の一手は「年金事務所で相談」です。ただ、手ぶらで行くと「まず初診日を確認してきてください」で終わることがあります。持って行くものと、聞くことを決めておきましょう。

持って行くもの

聞くこと

家族が代わりに相談に行くこともできます(正式な請求手続きには委任状が必要ですが、相談段階では不要です)。体調が悪い日に無理をして行くより、家族に代行してもらうほうが確実です。

初診日が確定したら、次は「変えられる未来」へ

初診日の証明は、変えられない過去を掘り起こす作業です。手間がかかり、思い出すのもつらく、そして結果は資料の有無に左右されます。第三者証明まで使っても認められないことも、正直に言えばあります。

だからこそ、初診日が確定したら、そこからは変えられる未来に力を注いでください。診断書と申立書です。

障害年金の審査は「診断書で9割決まる」と実務者が言うほど、診断書の内容が結果を左右します。そして診断書の中身を決めるのは、診察であなたの生活の実態がどれだけ医師に伝わっているか。ここは、過去と違って今日から動かせる部分です。

その日あったことを短くメモすると、日常生活能力の判定7項目に沿った提出用の資料に整理されるアプリを作りました。診察で医師に渡す資料になり、申立書の下書きにもなります。初診日の調査で消耗した体力を、ここで取り返してください。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。

よくある質問

Q. カルテが破棄されていたら、もう申請できませんか? A. できないわけではありません。紹介状、診察券、お薬手帳、健康保険の受診記録、保険会社への給付金請求書類などの参考資料と、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を組み合わせて申し立てる方法があります。第三者証明という制度もあります。手順の詳細はカルテがないときの証明方法をご覧ください。

Q. 病院が廃院していて連絡先も分かりません。 A. 院長が別の場所で開業している、法人が統合されている、カルテを引き継いだ医療機関があるといったケースがあります。地域の医師会や保健所に問い合わせると行方が分かることがあります。

転院先の病院に、当時の紹介状が残っていないかも確認してください。追跡の順番は病院が廃院しているときの調べ方にまとめています。

Q. 第三者証明は家族に書いてもらえますか? A. 書けません。請求者の3親等内の親族(親・子・兄弟姉妹・祖父母・おじおば・甥姪)は第三者になれません。友人・知人、元同僚、元上司、近隣の方などに依頼します。20歳以降に初診日がある場合は原則2名分が必要です。

Q. 第三者証明があれば、それだけで初診日は認められますか? A. 原則として、参考資料と組み合わせて判断されます。ただし例外があり、初診日ごろに受診した医療機関の医師・看護師・ソーシャルワーカーなどの医療従事者が、本人の受診を直接見て認識していた場合の証明は、医師の証明と同等に扱われます。

Q. 内科で最初に相談したのですが、それも初診日になりますか? A. なり得ます。初診日は「障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日」であり、診療科は問いません。不眠や倦怠感で内科にかかった日が初診日になるケースは多くあります。相当因果関係の判断が必要なので、年金事務所で確認してください。

Q. 診断名が変わったら初診日も変わりますか? A. 同一の傷病の流れ(相当因果関係)と判断されれば、初診日は最初の受診日のままです。ただし、社会的治癒が認められる場合など、初診日が後ろに移動するケースもあります。

Q. 初診日を調べる前に、先に診断書を取ってもいいですか? A. 先に年金事務所で初診日と納付要件を確認することをおすすめします。初診日によっては請求の組み立て(認定日請求か事後重症請求か)が変わり、必要な診断書の枚数も変わるためです。診断書は費用がかかるので、順番を守るほうが無駄になりません。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、初診日の認定を保証するものではありません。取り扱いは個別性が高いため、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。様式は日本年金機構のホームページで確認できます。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。