障害年金の初診日がわからないときの調べ方|証明できない場合も解説

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この記事の結論

初診日が思い出せなくても、申請はできます。制度には、証明書が取れない人のための手順(参考資料・添付できない申立書・第三者証明)があり、さらに「日付は特定できないが、この期間のどこかにある」と示せれば初診日を認める規定もあります(平成27年の厚生労働省通知)。

調べる順番は、いまの病院の記録 → 家族 → 診察券・お薬手帳 → 領収書 → 健康保険の記録 → 初診と思われる病院 → 年金事務所。1〜5は家の中と電話で済みます。

証明を取りに行く前に、年金事務所で「どの日を初診日にするか」「納付要件を満たすか」を確認してください。順番を逆にすると、文書料と時間が無駄になります。

分からない部分は「分からない」と扱ってください。推測で日付を決めると、あとの書類と食い違います。公表されている裁決では、初診日が争われた35件のうち26件で請求者側の主張が認められ、認められた証拠はお薬手帳・診察券と薬袋・健診記録・紹介状・予診表・元担任の証言など、家と職場と学校に残っていたものでした。

次に読む障害年金の初診日

障害年金の申請で、最初に立ちはだかり、そして最も多くの人を止めてしまうのが初診日です。

  • 昔のことすぎて、いつ・どこに行ったか覚えていない
  • 病院に電話したら「カルテは破棄しました」と言われた
  • 通っていたクリニックが、もうない
  • 最初に行ったのは心療内科ではなく内科だった気がする

ここで「じゃあ無理だな」と諦める人が、本当に多い。でも、「思い出せないから申請できない」と、すぐに結論を出す必要はありません。初診日を証明できない場合の仕組みは、制度としてちゃんと用意されています。

社会保険審査会の裁決を見ても、古い診療録が残っていなくても、あとの病院の記録や紹介状、診察券や薬袋から初診日が認められた例があります(この記事の後半で、IDつきで紹介します)。「カルテがない=終わり」ではありません。

ただし、もうひとつ大事なことがあります。初診日は受給要件に関わる重要な事項です。「たぶんこのあたりだろう」と推測で決めてしまうと、後の手続きで食い違いが生じます。分からない部分は「分からない」「確認中」と正確に扱いながら、手がかりを順番にたどっていく。これが正しい進め方です。

この記事では、初診日を確認・証明するための手順を、上から順に使える形で整理します。

調べる順番 — 上から順にたどってください

いきなり細かい話に入る前に、どこから手をつければよいかを示します。上から順に試すのがおすすめです。

  1. いまの病院へ、過去の紹介状や記録が残っていないか確認する — いま通っている病院のカルテに、前にかかっていた医療機関の記載が残っていることがあります。いちばん負担が小さく、手がかりが得られやすい方法です
  2. 家族に確認する — 「あのころ、どこの病院に行っていたか覚えている?」。付き添ってくれた家族が、本人より正確に覚えていることがよくあります
  3. 診察券やお薬手帳を確認する — 古い財布、引き出し、本棚の隙間。病院名や調剤日が残っています
  4. 古い領収書や医療費通知を確認する — 医療費控除の記録、確定申告の控えも手がかりになります
  5. 健康保険の記録について確認する — 加入している健康保険の窓口(健康保険組合・協会けんぽ・市区町村の国民健康保険)へ、過去の受診記録を確認できるか問い合わせます。受診した医療機関名と受診年月が分かることがあります
  6. 初診と思われる医療機関へ問い合わせる — 候補が絞れたら、その病院へ電話して、当時の記録が残っているかを確認します
  7. 年金事務所へ相談する — 集まった材料を持って相談します。「この材料で手続きを進められるか、足りないなら何が必要か」を確認できます。持ち物は障害年金を年金事務所で相談するときの持ち物にまとめました

1〜5は、家にいながら、あるいは電話1本でできることです。外出がつらい時期でも進められます。そして、ここで何か1つでも見つかると、6と7がぐっと楽になります。

→ どこに出せばいい?

以下、それぞれの方法を詳しく見ていきます。

その前に:なぜ初診日がそこまで重要なのか

初診日は、障害年金のすべての起点です。3つのことが、初診日で決まります。

(1) どの年金から支給されるか

初診日に国民年金だったなら障害基礎年金(1級・2級のみ)、厚生年金だったなら障害厚生年金(3級もある)。同じ状態でも、初診日ひとつで受け取れるものが変わります。

(2) 保険料納付要件を満たすか

初診日の前日時点での納付状況で判定されます。これは後から変えられません(初診日以降に慌てて納めても、要件判定には使えません)。

(3) 障害認定日がいつか

原則、初診日から1年6か月後。遡及請求ができるかどうかも、ここから逆算されます。

だから審査は初診日に厳格です。当サイトが確認した社会保険審査会の裁決91件のうち、初診日が争点になったものは35件で、障害の程度に次いで2番目に多い争点です。本人の「◯年ごろ行ったと思います」という申立てだけでは、原則として認められません。日付が記載された客観的な資料が求められます。

そもそも「初診日」の定義を間違えていませんか

証明の方法に入る前に、確認しておきたいことがあります。初診日の定義を誤解しているために、探す場所を間違えている人が少なくないのです。

初診日とは、「障害の原因となった傷病について、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」です。ここから導かれる、間違えやすいポイントを挙げます。

  • 精神科でなくてもいい。不眠や倦怠感で最初に内科・心療内科にかかったなら、その日が初診日になり得ます。「精神科の初診日」を探して見つからない人は、内科のカルテを探してください
  • 診断がついた日ではない。症状で受診した日であって、病名が確定した日ではありません
  • 健康診断の日は原則、初診日にならない(例外的に扱われる場合はあります)
  • 治療を受けていなくてもいい。相談しただけ、検査だけでも受診は受診です
  • 転院しても初診日は動かない。最初の病院の受診日のままです
  • 診断名が変わっても、原則そのまま。適応障害から後にうつ病に変わった場合も、同一の傷病の流れと判断されれば初診日は適応障害での初診日です
  • 相当因果関係のある前の傷病があれば、そちらが起点になることも。発達障害の二次障害としてのうつ病など、経過によって判断が変わります

まず、この定義で自分の記憶を洗い直してください。「探しても見つからない」と思っていた人が、内科の受診記録で解決することがあります。

→ 「初診日は、病名がついた日」は誤解です

方法1:記憶と手元の資料から、初診日の「あたり」をつける

最初にやるのは、証明書を取りに行くことではなく、候補日を絞る作業です。手がかりは家の中にあります。

  • 診察券(古い財布や引き出しに残っていることが多い)
  • お薬手帳(初回の調剤日が入っています)
  • 領収書・診療明細、医療費控除の記録、確定申告の控え
  • 健康保険の記録:健康保険組合や協会けんぽから届く「医療費のお知らせ」、レセプトの照会。受診した医療機関名と受診年月が分かるため、記憶がなくても病院を特定できることがあります
  • お薬の記録:薬局のポイントカード、処方薬の袋
  • 家計簿・通帳(通院日の交通費や医療費の出金)
  • 手帳・日記・カレンダー、スマホの写真やメッセージ
  • 家族の記憶:「あの頃、あなたを◯◯病院に連れて行った」

とくに健康保険の受診履歴の照会は強い手です。医療費のお知らせは通常1〜2年分ですが、保険者に問い合わせると、より過去の記録を確認できる場合があります(保険者や年度により対応は異なります)。

この段階で「◯年◯月ごろ、◯◯医院」まで絞れれば、次の方法2に進めます。

方法2:受診状況等証明書を取る(原則ルート)

初診日の証明の基本は、受診状況等証明書です。初診の医療機関に作成してもらう書類で、カルテに基づいて初診日や受診の経過を証明してもらいます。

  • 現在の診断書を書く病院と、初診の病院が同じなら不要(診断書に初診日が記載されます)
  • 違うなら、初診の病院で取得します
  • 様式は日本年金機構のサイトからダウンロードできます
  • 文書料は病院ごとに決まっています。依頼のときに確認してください

依頼のときは、電話で「障害年金の請求に使う受診状況等証明書をお願いしたい。◯年ごろに受診した記録が残っているか確認してほしい」と伝えます。カルテが残っていれば、たいていはここで完了します。取得の手順や書き方の確認点は受診状況等証明書の記事にまとめました。

→ 何をそろえればいい?

問題は、ここで「カルテがありません」と言われたときです。以下、その先の方法です。

方法3:カルテがない・廃院のときの「参考資料」を集める

医師法で定められた診療録の保存期間は5年です。それを過ぎていれば、病院が破棄していても落ち度ではありません。ただし、実務的にはこの段階でやることが3つあります。

(1) 本当にないのか、もう一度確かめる

受付での即答と、実際の保管状況が違うことがあります。「電子カルテに移行前の紙カルテは倉庫にあるかもしれない」「診療録は破棄したが、レセプトの控えや受付簿は残っている」というケースは実際にあります。

文書で照会する、あるいは日を改めて事務長宛に確認するだけで見つかることがあります。聞き方の具体例と代替資料の一覧はカルテがないときの証明方法にまとめました。

(2) 廃院の場合、記録の行き先を追う

院長が別の場所で開業している、法人が別の病院に統合された、カルテを引き継いだ医療機関がある——地域の医師会や保健所に問い合わせると、行方が分かることがあります。追跡の順番と電話の台本は病院が廃院しているときの調べ方で解説しています。

(3) カルテ以外の客観資料を集める

「初診日を証明する資料はカルテだけ」ではありません。日付が入った客観的な資料であれば、参考資料として使えます。

  • 紹介状(診療情報提供書)の写し:これが最強クラスです。転院先に「◯年◯月から当院で加療中の患者を紹介します」という記載が残っていれば、前の病院の受診時期が第三者の医証として立証できます。転院先の病院に紹介状が残っていないか、必ず確認してください
  • 入院記録・退院サマリー、看護記録
  • 診察券(日付印があるもの)、お薬手帳
  • 健康保険の給付記録・レセプト、医療費のお知らせ
  • 身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳の申請時の診断書(自治体に控えが残っていることがあります)
  • 生命保険・医療保険の給付金請求書類(保険会社に照会。医師の証明が付いています)
  • 職場の健康診断記録、産業医面談の記録、休職の辞令
  • 学校の記録(保健室の記録、出席簿、養護教諭の記録)
  • 交通事故の場合:事故証明、労災の記録

これらを集めたうえで、次の方法4に進みます。

方法4:「受診状況等証明書が添付できない申立書」を出す

初診の医療機関で証明が取れない場合に使う書類が、受診状況等証明書が添付できない申立書です。

  • 様式は日本年金機構のサイトからダウンロードできます
  • 証明が取れなかった医療機関ごとに1枚作成します(初診の病院がカルテ破棄、2番目の病院もカルテ破棄、というときは2枚)
  • 内容は、「いつごろ・どこを受診し、なぜ証明が取れないのか」を本人が申し立てるものです
  • これ単独では、初診日は認められません。方法3で集めた参考資料を添えて、はじめて審査の材料になります

つまり、この申立書は「証明の代わり」ではなく「参考資料を提出するための土台」です。ここを誤解して、申立書だけ出して不支給になる人がいます。資料をセットにするのが前提だと覚えてください。

方法5:第三者証明を使う(条件を正確に押さえる)

参考資料も乏しい場合の切り札が、第三者証明(初診日に関する第三者からの申立書)です。平成27年(2015年)10月から、初診日の証明が取れない人のために整理された仕組みです(要件と頼み方は第三者証明の記事で詳しく扱っています)。

ただし、認められるには条件があります。ここを外すと使えないので、正確に押さえてください。

基本ルール

  • 20歳以降に初診日がある場合は、原則2名分の第三者証明に加えて、参考資料が必要です
  • 原則は複数(2名)ですが、通知は「単数の第三者証明であっても、医療機関の受診にいたる経過や医療機関におけるやりとりなどが具体的に示されていて、相当程度信憑性が高いと認められるものであれば、第三者証明として認めることができる」としています。2人目が見つからないときは、1人の証言を具体的に(いつ、どこで、誰が、何を見聞きしたか)書いてもらうことに力を入れてください
  • 20歳前に初診日がある場合は、第三者証明2名分だけで認められる道があります(参考資料は不要)
  • 請求者の3親等内の親族は第三者になれません。親、子、兄弟姉妹、祖父母、おじ・おば、甥・姪は不可。使えるのは友人・知人、元同僚、元上司、近隣の人、恩師などです
  • 書いてもらう内容は、次のいずれかに当たる必要があります
  • 初診日ごろの受診状況を直接見て知っていた
  • 本人や家族から、初診日ごろに聞いていた
  • 本人や家族から、請求時からおおむね5年以上前に聞いていた
  • 「最近聞いた話」ではだめです。申請にあたって本人から聞いた内容を書いても認められません

例外:医療従事者の第三者証明は強い

ここは知っておく価値があります。初診日ごろに受診した医療機関の医師・看護師などの医療従事者が、本人の受診を直接見て認識していた場合、その第三者証明は医師の証明と同等に扱われ、他に参考資料がなくても初診日が認められます。

廃院した病院の元院長や元看護師と連絡が取れるなら、これは非常に強い手です。ただし、本人の申立てに基づいて書かれたもの(当時の受診を直接知らない医療従事者が「本人がそう言うので」と書いたもの)は認められません。

→ 「第三者証明は、親やきょうだいに書いてもらえばいい」は誤解です

日付が分からなくても「この期間のどこか」で認められる規則

方法1〜5を尽くしても「◯年◯月◯日」が出てこない人へ。もう一つ、知られていない規定があります。

平成27年9月28日の厚生労働省通知(年管管発0928第6号)は、初診日を明らかにする書類が添えられない場合の取扱いを定めていて、その中にこう書かれています。初診日が一定の期間内にあることが参考資料で確認でき、その期間中のどの時点でも保険料納付要件を満たしているなら、その期間の中で請求者が申し立てた初診日を認めることができる。

つまり、審査側が本当に確かめたいのは「何月何日か」ではなく、「その日に、どの年金制度に入っていて、納付要件を満たしていたか」です。期間のどこを取っても答えが同じなら、日付を1つに絞る必要がありません。

使える条件は、機構の案内ではこうなっています。

  • 期間の全部が同じ年金制度で、どの時点でも納付要件を満たしている(たとえば、ずっと会社員で厚生年金、その間に未納がない)
  • 期間の全部が20歳前(厚生年金の期間を除く)
  • 期間の全部が60〜65歳で、納付要件を満たしている
  • 期間中に制度が変わっていても、どの時点でも納付要件を満たし、かつ申し立てた初診日について参考資料がある

このとき用意するのは、「期間の始まり」を示す資料と、「期間の終わり」を示す資料の2つです。

  • 始まり(まだ発病していなかった証拠): 就職時の健康診断書、人間ドックの結果、発病していないことが分かる診断書、事故など原因が起きた時期の資料
  • 終わり(遅くともこの日には受診していた証拠): 2番目以降の病院の受診状況等証明書や診療録、障害者手帳の申請時の診断書、福祉サービスの受給開始の記録

裁決にも、この考え方で認められた例があります。古い診療録が無くても、あとの病院の診療録、入院中に届いた消印付きの手紙、院内の大会の賞状から「遅くともこの日には精神科病院に入院していた」と認定された事案です(r02_03-12_03)。日付そのものではなく、「遅くとも」で通っています。

年金事務所で相談するときは、「初診日を1日に特定できないのですが、◯年◯月から◯年◯月の間であることは資料で示せます。この期間はずっと国民年金(または厚生年金)で、納付要件は満たしています」と伝えてください。この言い方で、担当者は通知のどの規定に当たるかを見ます。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から。当サイトが読んだ94件のうち、初診日が争点になったものは35件で、結論は容認22件・一部容認4件・棄却9件でした。裁決は一度不支給や却下になった人の記録なので全体の割合ではありませんが、何が初診日の証拠として認められ、何が退けられたかは、ここにしか書いてありません。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

うつ病・新規裁定(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 診察券と、初診のときに処方された抗うつ薬の薬袋などから、申し立てた受診日を初診日と認定し、「初診日を確認できない」とした原処分が取り消されました。方法1の「家の中の資料」が、そのまま証明になった例です。

統合失調症・事後重症請求(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 古い診療録が残っていなくても、あとの病院の診療録、入院中に届いた消印付きの手紙、院内の大会の賞状などから「遅くともこの日には精神科病院に入院していた」と認定されました。日付そのものではなく「遅くともこの日には」という形で認められています。

糖尿病性腎症・事後重症請求(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 初診日を確認できないとされた処分について、医師の診療情報提供書(紹介状)から厚生年金の期間中の初診日を認め、原処分が取り消されました。方法3の「紹介状が最強クラス」は、この種の裁決に根拠があります。

認められた証拠 — 家と職場と学校に残っていたもの

証拠裁決
診察券と、初診時に処方された抗うつ薬の薬袋r02_03-12_08
お薬手帳の調剤記録r04_05-06_01
事業所の健診記録r06-07_01
医師の診療情報提供書(紹介状)r04_05-06_06
病院の予診表の記載経緯r04_05-06_09
患者登録記録と第三者証明r02_03-05_07
あとの病院の診療録、入院中に届いた消印付きの手紙、院内大会の賞状(「遅くともこの日には」)r02_03-12_03
元担任らの、具体的で相互に整合する第三者証明(20歳前の小学生時の入院)h30_r01-16_04
複数の医療機関の資料を総合r04_05-06_04
前の病院で別の診断名だった症状を、症状の継続性と医学的関連から同一傷病と認めて前医受診時を初診日にr04_05-06_05

どれも、方法1〜3で集める資料です。特別な資料ではありません。

退けられた主張 — 型は3つ

資料で確認できない。

申し立てた初診日を裏付ける資料がなく、窓口で別の初診日による請求の可能性も説明済みだった事案は、原処分が維持されました(r02_03-12_07)。「この日のはず」だけでは通りません。

社会的治癒。

通院していない期間を挟んで再受診した日を新しい初診日にしたい、という主張は、この35件の中に4件あり、4件とも退けられました(r06-03_02・r04_05-06_14・r02_03-05_03・r02_03-05_05)。復職して働いていた期間も症状と治療が続いていた、治療法がなく緩やかに進む病気で医師が受診不要と判断した資料もない、といった理由です。社会的治癒は例外的な認定で、通院をやめれば初診日が動くという話ではありません(社会的治癒の記事)。

あとから初診日を変える。

不支給の決定が出たあとに、別の初診日を裏付ける資料を出しても、もとの請求で初診日を変更したとは扱えず、新たな初診日で裁定請求をやり直すべきだとされました(r02_03-12_06)。だから、申し立てる初診日は、出す前に決め切ってください。候補が2つあるときの考え方は、次の節です。

→ ほかの実例も読む

完成形:アキさんの「初診日調査シート」

方法1〜5を、実際の作業手順に落とします。アキさん(32歳・うつ病)が母と一緒に埋めていったシートです(アキさんは、この記事のための架空の例です)。

【STEP1】候補の洗い出し

  • 記憶:2019年の夏ごろ、駅前の「Aクリニック」。不眠で行った気がする
  • 診察券:引き出しから発見。「Aクリニック」の診察券あり(日付印なし)
  • お薬手帳:2019年7月18日の調剤記録あり ← 有力
  • 健康保険の記録:協会けんぽに医療費のお知らせを照会 → 2019年7月にA医院の受診記録
  • その前に内科等にかかっていないか:2019年5月に内科(倦怠感)→ 要確認。これが初診日になる可能性

【STEP2】年金事務所で確認

  • 2019年5月(内科)と7月(Aクリニック)、どちらを初診日とすべきか相談
  • それぞれの初診日で納付要件を満たすか確認 → 両方クリア
  • それぞれの障害認定日を計算 → 2020年11月 / 2021年1月

【STEP3】証明を取りに行く

  • Aクリニックに電話 → カルテ保管あり。受診状況等証明書を依頼(文書料は病院ごと。受け取りまでの日数も電話で確認)
  • 内科にも電話 → 「倦怠感で受診」の記録あり。傷病名が精神疾患ではないため、相当因果関係の判断が必要 → 年金事務所に相談のうえ、両方の証明を取得して提出

【STEP4】取れなかった場合の備え(今回は不要だったが準備した)

  • 受診状況等証明書が添付できない申立書の様式をダウンロード
  • 参考資料候補:お薬手帳、健康保険の記録、当時の会社の欠勤記録
  • 第三者証明の候補:当時の同僚2名(3親等内でないことを確認済み)

このシートの肝はSTEP2です。証明を取りに行く前に年金事務所へ行くことで、「そもそもどの日を初診日として組み立てるか」が決まります。順番を逆にして先に証明を取ると、無駄な費用と時間がかかることがあります。

「初診日が2つ候補にある」ときの考え方

アキさんのように、候補が複数ある人は珍しくありません。判断の軸は相当因果関係です。

  • 前の傷病と後の傷病に因果関係があると判断されれば、前の傷病の初診日が起点になります
  • 因果関係がなければ、それぞれ別の傷病として扱われます

精神疾患でよくあるのは、「不眠・倦怠感で内科 → 数か月後に精神科」という流れです。この場合、内科の受診が同じ傷病の始まりと判断されれば、内科の日が初診日です。

そして、どちらの日を初診日とするかで、納付要件・年金の種類・認定日が変わります。有利不利が生じるため、自己判断せず年金事務所で相談してください。なお、前述のとおり社会的治癒が絡む場合は、さらに組み立てが変わります。

日付を1日に絞れなくても、「この期間の中にある」と資料で示せれば認められる取り扱いもあります。

→ 「初診日の日付が思い出せないから、申請できない」は誤解です

もう一つ、裁決から。不支給の決定が出たあとに「実は別の日が初診日でした」と資料を出しても、審査会は「もとの請求で初診日を変更したとは扱えない」として、新たな初診日で請求をやり直すべきだと判断しています(r02_03-12_06)。候補が2つあるなら、出す前に年金事務所で両方を検討し、どちらで申し立てるかを決め切ってから出してください。出したあとの差し替えは、請求のやり直しになります。

「調べているうちに時間が過ぎる」問題

初診日の調査には、落とし穴があります。完璧な証明を求めて調べ続けているうちに、月日だけが過ぎることです。

これが実害になる理由は2つあります。

(1) 遡及請求の時効は毎月進む

年金を受け取る権利は5年で時効にかかります。障害認定日が5年以上前の人は、遡及請求が1か月遅れるごとに、受け取れる過去分が1か月分ずつ消えていきます。調査に半年かければ、半年分が消える計算です。

(2) 事後重症請求は「請求した月の翌月分から」

認定日請求ができないケースでは、請求日そのものが受給開始月を決めます。準備に慎重になるほど、受け取り始める月が後ろにずれます。障害基礎年金2級なら月約70,600円(令和8年度)。1か月の遅れが、この額です。

だからといって、雑な資料で見切り発車するのも危険です。不支給になったあと、同じ資料で出し直しても結果は変わりません(不支給になったらどうするか)。バランスの取り方は、次のとおりです。

  • まず年金事務所へ。手元にある材料(候補日と資料)を持って相談し、「この材料で請求できるか、足りないなら何が要るか」を判断してもらいます。1人で完璧を目指すより、早く正確です
  • 並行して進める。初診日の調査と、現在の診断書の準備(医師への実態の伝達)は、同時に進められます。診断書は依頼から取得まで時間がかかるので、初診日が確定してから動き始めると、そのぶん丸ごと後ろにずれます
  • 期限を切る。「あと1か月調べて出てこなければ、参考資料+申立書の組み立てで進める」と決めておくと、無限ループを防げます

初診日の証明が難しいケースは、専門家に依頼する価値が高い類型でもあります。古い医療機関の追跡、紹介状の掘り起こし、第三者証明の組み立ては経験の差が出る作業です。報酬の形は事務所ごとに違うので、自分で申請するか依頼するかを検討する材料にしてください。

年金事務所での相談を、無駄にしない準備

方法1〜5のどこで詰まっても、次の一手は「年金事務所で相談」です。ただ、手ぶらで行くと「まず初診日を確認してきてください」で終わることがあります。持って行くものと、聞くことを決めておきましょう。

持って行くもの

  • 年金手帳または基礎年金番号通知書、本人確認書類
  • 初診日の候補と、その根拠になりそうな資料(診察券、お薬手帳、健康保険の記録のコピー)
  • 発病から現在までの受診歴のメモ(病院名・時期・通院期間。期間の設計図がそのまま使えます)
  • 職歴・年金加入歴のメモ

聞くこと

  • □ この候補日を初診日とした場合、保険料納付要件を満たすか(いちばん重要。ここが×なら他の準備が無駄になります)
  • □ どちらの年金(基礎/厚生)になるか
  • □ 障害認定日はいつになるか。認定日請求と事後重症請求のどちらで組み立てるか
  • □ 候補が複数ある場合、どの日を初診日とすべきか
  • □ 証明が取れない場合、どの資料をどう組み合わせればよいか
  • □ 必要な書類一式(何を、どこから、何枚)

家族が代わりに相談に行くこともできます(正式な請求手続きには委任状が必要ですが、相談段階では不要です)。体調が悪い日に無理をして行くより、家族に代行してもらうほうが確実です。相談は予約制です。管轄の年金事務所と予約の電話番号は、どこに出せばいい?で、お住まいの市区町村から出せます。

初診日が確定したら、次は「変えられる未来」へ

初診日の証明は、変えられない過去を掘り起こす作業です。手間がかかり、思い出すのもつらく、そして結果は資料の有無に左右されます。第三者証明まで使っても認められないことも、正直に言えばあります。

だからこそ、初診日が確定したら、そこからは変えられる未来に力を注いでください。診断書と申立書です。

令和6年度の精神の不支給85件のうち64件(75.3%)は、診断書の目安では等級に届いていたのに総合評価で落ちた事案でした(令和5年度は44.7%)。丸の位置だけでは決まりません。つまり、診断書に生活の実態がどれだけ書かれているかが、結果を左右しています。そして診断書の中身を決めるのは、診察であなたの生活の実態がどれだけ医師に伝わっているか。ここは、過去と違って今日から動かせる部分です。

その日あったことを短くメモすると、日常生活能力の判定7項目に沿った提出用の資料に整理されるアプリを作りました。診察で医師に渡す資料になり、申立書の下書きにもなります。初診日の調査で消耗した体力を、ここで取り返してください。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。

よくある質問

Q. カルテが破棄されていたら、もう申請できませんか?

A. できないわけではありません。紹介状、診察券、お薬手帳、健康保険の受診記録、保険会社への給付金請求書類などの参考資料と、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を組み合わせて申し立てる方法があります。第三者証明という制度もあります。手順の詳細はカルテがないときの証明方法をご覧ください。

Q. 病院が廃院していて連絡先も分かりません。

A. 院長が別の場所で開業している、法人が統合されている、カルテを引き継いだ医療機関があるといったケースがあります。地域の医師会や保健所に問い合わせると行方が分かることがあります。転院先の病院に、当時の紹介状が残っていないかも確認してください。追跡の順番は病院が廃院しているときの調べ方にまとめています。

Q. 第三者証明は家族に書いてもらえますか?

A. 書けません。請求者の3親等内の親族(親・子・兄弟姉妹・祖父母・おじおば・甥姪)は第三者になれません。友人・知人、元同僚、元上司、近隣の方などに依頼します。20歳以降に初診日がある場合は原則2名分が必要です。

Q. 第三者証明があれば、それだけで初診日は認められますか?

A. 20歳以降の初診日では、原則として参考資料と組み合わせて判断されます。ただし例外があり、初診日ごろに受診した医療機関の医師・看護師などの医療従事者が、本人の受診を直接見て認識していた場合の証明は、医師の証明と同等に扱われます。20歳前の初診日なら、第三者証明2名分だけで認められる道があります。

Q. 初診日を「◯年◯月ごろ」までしか絞れません。それでも申請できますか?

A. できる場合があります。厚生労働省の通知は、初診日が一定の期間内にあることが参考資料で確認でき、その期間のどの時点でも保険料納付要件を満たしているなら、その期間内で申し立てた初診日を認めることができるとしています。期間の始まり(発病前の健診結果など)と終わり(2番目の病院の記録など)を示す資料をそろえて、年金事務所で「期間で示せる」と伝えてください。

Q. 第三者証明を書いてくれる人が1人しか見つかりません。

A. 原則は2名ですが、通知は「単数の第三者証明であっても、医療機関の受診にいたる経過や医療機関におけるやりとりなどが具体的に示されていて、相当程度信憑性が高いと認められるものであれば」認めるとしています。1人しかいないなら、その人に、いつ・どこで・何を見聞きしたかを具体的に書いてもらってください。初診日ごろの医療従事者なら1名で足ります。

Q. 通院をやめていた期間があります。再受診した日を初診日にできますか?

A. 原則できません。それは「社会的治癒」という例外的な認定で、公表裁決で争われた4件はすべて退けられています。復職して働いていた期間にも症状と治療が続いていた、治療法がなく緩やかに進む病気だった、といった理由です。初診日は、その病気で最初に医師にかかった日です。通院をやめたからといって動きません。

Q. 内科で最初に相談したのですが、それも初診日になりますか?

A. なり得ます。初診日は「障害の原因となった傷病について初めて医師の診療を受けた日」であり、診療科は問いません。不眠や倦怠感で内科にかかった日が初診日になるケースは多くあります。相当因果関係の判断が必要なので、年金事務所で確認してください。

Q. 診断名が変わったら初診日も変わりますか?

A. 同一の傷病の流れ(相当因果関係)と判断されれば、初診日は最初の受診日のままです。ただし、社会的治癒が認められる場合など、初診日が後ろに移動するケースもあります。

Q. 初診日を調べる前に、先に診断書を取ってもいいですか?

A. 先に年金事務所で初診日と納付要件を確認することをおすすめします。初診日によっては請求の組み立て(認定日請求か事後重症請求か)が変わり、必要な診断書の枚数も変わるためです。診断書は文書料がかかるので、順番を守るほうが無駄になりません。

まとめ

  • 「思い出せないから申請できない」と、すぐ結論を出す必要はない。一方で、推測で初診日を決めてしまわないこと
  • 調べる順番は、現在の病院の記録 → 家族 → 診察券・お薬手帳 → 領収書・医療費通知 → 健康保険の記録 → 初診と思われる病院 → 年金事務所
  • 初診日は、年金の種類・納付要件・認定日のすべてを決める起点。裁決91件のうち35件で争点になっている
  • まず定義を確認する。精神科でなくてもよく、診断がついた日でもなく、転院や診断名変更では動かない
  • 方法1:記憶と手元の資料(診察券・お薬手帳・健康保険の受診記録)で候補を絞る
  • 方法2:受診状況等証明書を取る(原則ルート)
  • 方法3:カルテがなければ参考資料を集める。紹介状は特に強い
  • 方法4:「受診状況等証明書が添付できない申立書」+参考資料をセットで出す
  • 方法5:第三者証明(原則2名・3親等内不可・初診日ごろか5年以上前から知っていた内容)。医療従事者の証明は単独で認められる
  • 証明を取りに行く前に、年金事務所でどの日を初診日とするかを相談する
  • 初診日は変えられない過去。確定したら、変えられる未来(診断書と申立書)に力を注ぐ

出典

  • 厚生労働省年金局「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類が添付できない場合の取扱いについて」(平成27年9月28日 年管管発0928第6号)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「受診状況等証明書」「受診状況等証明書が添付できない申立書」「初診日に関する第三者からの申立書」の様式ページ・確認日 2026-09-03
  • 医師法第24条(診療録の保存5年)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(精神の障害の不支給者の目安表分布) ・確認日 2026-09-02
  • 厚生労働省「令和8年度の年金額」 ・確認日 2026-09-02
  • 厚生労働省 年管管発0928第6号「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類を添えることができない場合の取扱いについて」(平成27年9月28日。一定期間内の初診日の取扱い、単数の第三者証明、医療従事者の第三者証明)・確認日 2026-09-28
  • 日本年金機構「障害年金の初診日証明書類のご案内(初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合)」(参考資料の例、一定期間の始期・終期の資料)・確認日 2026-09-28
  • 当サイト 裁決事例集(94件のうち初診日が争点の35件: 容認22・一部容認4・棄却9)・確認日 2026-09-28

※本記事は一般的な情報提供であり、初診日の認定を保証するものではありません。取り扱いは個別性が高いため、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。様式は日本年金機構のホームページで確認できます。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。