障害認定日請求と事後重症請求の違い|最大5年さかのぼるための条件

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同じ人が同じ日に請求して、受取額が400万円違うことがある

障害年金には、請求のしかたが3通りあります。障害認定日請求(本来請求)、遡及請求、事後重症請求。

同じ人が、同じ日に、同じ診断書の様式で請求しても、どれを選ぶかで受け取れる額が数百万円変わります。しかも選べるかどうかは、申請の上手さではなく、当時のカルテが残っているかで決まってしまいます。

そしてもう一つ。事後重症請求は1日も遡りません。 請求した月の翌月分から出ます。ということは、書類が揃った日に月末をまたぐかどうかで、7万円が消えます。

この記事では、3つの請求方法の違い、いつまでに何をすれば取り逃がさないか、まとまった遡及金が入ったときに何が起きるか、そして「当時の診断書が取れない」という最大の壁の越え方までを整理します。

まず、障害認定日がいつなのかを確定させる

すべての起点はここになります。

原則は、初診日から起算して1年6か月を経過した日。 ただしその期間内に傷病が治った(症状が固定した)場合は、その日になります。

20歳前に初診日がある場合は、1年6か月経過日が20歳より前なら20歳に達した日、20歳より後なら1年6か月経過日が認定日になります。

1年6か月を待たない特例

ここが実務上、いちばん取りこぼされているところです。法定の特例があり、1年6か月を待たずに認定日が来る傷病があります。

特例は「早める」ためだけの制度です。 これらの日が初診日から1年6か月を超える場合は、原則どおり1年6か月経過日が認定日になります。たとえば初診から1年5か月目に透析を始めた場合、3か月経過日は1年8か月目になるので、認定日は1年6か月目のほうになります。

特例が効くと、金額に直結します。人工関節なら手術日そのものが認定日です。初診が4月で手術が9月なら、9月が認定日で10月分から年金が出ます。1年6か月待った人との差は最大で1年半分になります。

3つの請求方法 —— 診断書の枚数と現症日が違う

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診断書現症日の条件いつから出るか
本来請求(認定日から1年以内)1枚障害認定日以後3か月以内認定日の翌月分から
遡及請求(認定日から1年超)2枚①認定日以後3か月以内 ②請求日以前3か月以内認定日の翌月分から(受取は最大5年分)
事後重症請求1枚請求日以前3か月以内請求した月の翌月分から

遡及請求の診断書2枚は、それぞれ別々に審査されます。 「認定日は2級、現在は3級」「認定日は非該当、現在は2級」というように、時点ごとに結論が分かれます。認定日で等級がつけば遡及分が出て、現在の等級が今後の年金額を決めます。

診断書には賞味期限がある

事後重症請求では、現症日から3か月以内に請求書を提出しなければなりません。

現場で起きるのはこうです。診察日に依頼して、1か月後に受け取ります。受診状況等証明書を取り寄せ、申立書を書き、戸籍を取り、口座の確認をして……気づくと現症日から3か月が過ぎています。文書料を払い直して、また1か月待ちます。

診断書は最後に取る、と決めておくのが実務的な順序になります。ただし遡及請求だけは順序が逆で、認定日分から先に依頼します。直近分だけ先に取ってしまうと、医師の中に「今の状態しか書けない」という流れができてしまうからです。

費用の感覚

精神の診断書は1枚あたり数千円から1万円台。受診状況等証明書も別にかかります。遡及請求は診断書が2枚なので、書類コストが単純に倍になります。 数万円の出費を先に見込んでおきます。

遡及で受け取れるのは、最大5年分

時効があります。5年以上前の年金は、時効により受け取れません。

認定日が8年前でも、受け取れるのは請求日から遡って5年分までで、3年分は消えます。

令和8年度の額で概算を出しておきます。

障害厚生年金が上乗せされれば、さらに数百万円が加わります。実際、うつ病の障害厚生年金3級で遡及557万円、上位等級で1,000万円という事例も公表されています。逆に遡及期間が短ければ100万円台にとどまります。遡及額は「等級 × 遡及年数」でほぼ決まります。

なお過去の年度は改定率が違うので、実額は概算と多少前後します。

いつ振り込まれるか

審査に3か月前後、年金証書・年金決定通知書が届き、その1〜2か月後に初回の振込があります。遡及分はこの初回振込で一括して入ります。以降は偶数月15日の通常サイクルに乗ります。初回だけ奇数月になることもあります。

事後重症の「1か月」は、7万円

事後重症請求は、請求した月の翌月分からしか出ません。だから月をまたぐと、丸1か月分が消えます。

令和8年度で計算するとこうなります。

月末に書類が揃ったら、その月のうちに出します。 これだけで7万円変わります。「戸籍が1通足りないから来月にしよう」という判断が、そのまま7万円になります。窓口で「今日出せますか」と聞いてみる価値があります。

65歳の壁

事後重症請求は、65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出しなければなりません。 この1日を過ぎると、請求権そのものが消えます。

なぜ「前々日」なのか。年齢は誕生日の前日に加算されるという法律上のルールがあるためで、「65歳に達する日」は誕生日の前日にあたります。事後重症は「65歳に達する日の前日まで」なので、誕生日の前々日が最終日になります。

数え間違えやすいところなので、該当する年齢に近い人は、カレンダーに日付で書いておいてください。

最大の壁 —— 当時の診断書が取れない

遡及請求で最も多い失敗が、これです。

カルテの法定保存期間は、診療が完結した日から5年。 つまり通院をやめて5年経つと、合法的に廃棄されえます。

そして遡及の時効も5年。この2つの5年が噛み合わないのが、遡及請求の構造的な難しさになります。カルテが残っている5年と、遡って受け取れる5年は、同じ5年ではありません。

取れない理由は、だいたい4つに分かれます。

  1. カルテが保存されていない
  2. 障害認定日の指定期間(初診から1年6か月〜1年9か月)に、そもそも受診歴がない
  3. 当時の病名が神経症など対象外だった
  4. 当時フルタイムでクローズ就労していた

1と2は物理的にどうにもなりません。3と4は書けても等級に届かない可能性が高いです。

病院が閉院していたら

まずカルテの引受先を当たります。医療法人の本部、後継の医師、地域の医師会。精神科の単科クリニックは閉院が起きやすく、閉院とともに初診日の証明も認定日の診断書も同時に失われます。

医師が「当時のことは書けない」と言ったら

カルテがない状態で記憶だけで書くことは、医師の側にとって慎重な判断を要します。だから断られること自体はおかしくありません。

やるべきは、カルテの代わりになる一次資料を医師に持ち込むことです。

これらを揃えて「この資料から、当時の状態を書いていただけないでしょうか」と持っていきます。一度断られたら終わり、にしません。 2〜3回訪問してようやく書いてもらえた、という実務報告は珍しくありません。

通りやすい傷病、通りにくい傷病

人工関節、脳梗塞、ペースメーカーなどは、認定日が認められやすいです。 手術日という動かない一点があるからです。

精神は難しいです。 認定日の時点で生活がどうだったかを立証する必要があり、それは書類に残りにくいです。ここが分かれ目になります。

認定日は非該当、現在は該当 —— のときにやること

これは必ず知っておいてほしい実務です。

「障害給付 請求事由確認書」を、最初から一緒に出しておきます。

これがあれば、認定日請求が非該当となっても自動的に事後重症として審査が続行され、請求月の翌月分から受給できます。

出し忘れると、認定日非該当=不支給で終わってしまい、あらためて事後重症で出し直すことになります。その間の数か月が、まるごと消えます。 紙1枚で防げる事故なので、必ず窓口で確認してください。

すでに事後重症で受給中でも、あとから認定日請求に切り替えられる

「認定日には該当しないと思い込んで事後重症で出してしまったが、実は該当する可能性があった」——これは実際によくあります。

この場合、あとから認定日請求に切り替えられます。 必要になるのは次のものです。

手続きとしては重いが、通れば数百万円が動きます。受給が始まったあとでも、遡及の可能性を一度は検討する価値があります。

遡及金がまとまって入ったら、何が起きるか

生活保護を受けている場合が、いちばん注意がいります。遡及分は生活保護法にもとづく費用返還の対象になり、受給していた期間と重なる分は原則としてほぼ全額を返還することになります。手元にはほとんど残らないことが多いです。

ただし障害年金の等級が認定されることで障害者加算がつくため、月々の手取りは増えます。「一時金が来る」と思って先に使ってしまうと詰むので、入金前に必ずケースワーカーと返還額を確認しておきます。

税金は心配いりません。 障害年金は非課税で、源泉徴収もされず、確定申告も不要になります。住民税の課税所得にも入らないので、住民税額を基準に決まる保育料にも影響しません。遡及分の一時金も同じで、まとめて入っても課税されません。

健康保険の被扶養者の判定は、逆になります。 非課税でも「収入」として算入されます。ただし基準が緩く、60歳以上または障害厚生年金を受けられる程度の障害者は年収180万円未満(通常は130万円未満)が基準になります。年金額が180万円を超えると扶養から外れ、国保に加入することになります。

児童扶養手当は、児童扶養手当の額が障害基礎年金の子の加算部分を上回る場合に、その差額を受け取る方式になっています。同時に、障害年金などの非課税の公的年金給付が児童扶養手当の所得制限の「所得」に算入される点にも注意がいります。

20歳前傷病の障害基礎年金には所得制限があり、遡及分もこの制限を受けます。

そして、傷病手当金を受けていた期間と重なる場合。 同一の傷病で障害厚生年金が遡って決定すると、その重なった分の傷病手当金の返還を求められます。もらいすぎた分を戻すだけなので総額は減らないが、遡及分が入った数か月後に返納通知が来るという時間差があります。使わずに置いておきます。

実例: 「事後重症だと思っていた」が、5年分に変わるまで

具体例で通しておきます。20代後半、双極性障害。初診は大学4年の冬で、卒業後に就職したもののすぐに休職し、以後は実家で過ごしていました。

本人は「いまの状態で申請するもの」だと思っていました。事後重症請求のつもりで年金事務所に行き、直近の診断書を用意しようとしていました。

窓口で、初診日から1年6か月後がいつになるかを計算してもらいます。その時期、まだ同じ病院に通っていました。 ということは、認定日の時点の診断書が取れる可能性があります。

主治医に相談すると、当時のカルテは残っていました。認定日から3か月以内の現症で1枚、請求日以前3か月以内の現症でもう1枚。 診断書2枚での遡及請求になりました。

結果は、認定日の時点で2級。遡及分は5年分がほぼ満額認められ、初回の振込は約400万円になりました。

このケースで効いたのは、特別な技術ではありません。「認定日の時点でどこに通っていたか」を先に確認したこと、それだけです。事後重症のつもりで来た人が、5年分を受け取ることになりました。

逆に言えば、確認しないまま事後重症で出していたら、400万円はそのまま消えていました。 窓口では「事後重症で出したいのですが、認定日の時点の診断書が取れるかどうかも確認したいです」と、必ず両方を口に出してください。

額改定請求・支給停止事由消滅届との違い

似た手続きが並んでいて混同されやすいので、整理しておきます。

状況使う手続き
受給中で、等級が上がるべき(悪化した)額改定請求
更新で不該当となり支給停止中、また悪化した支給停止事由消滅届
そもそも受給していない認定日請求/事後重症請求

額改定請求は、原則として受給権の発生日または直近の障害状態確認(更新)の診査日から1年経過しないと請求できません。ただし例外があり、人工透析(3か月超継続)、人工呼吸器装着(1か月超)、人工心臓、両上肢の全指欠損、両下肢の足関節以上の欠損、両眼の視力0.03以下などは、1年を待たずに請求できます。

支給停止事由消滅届は、書類が軽いです。届出書に診断書と年金証書のコピーなどを添えるだけで、認定されれば提出した月の翌月分から再開します。診断書の現症日がカギになり、停止直後に取れば空白なくつながる可能性があります。

支給停止なら消滅届、等級が下がっただけ(支給は継続)なら額改定請求。 ここを取り違えると受理されず、時間だけを失います。

社会的治癒 —— 認定日を作り直す技術

最後に、上級編を一つ。

社会的治癒が認められると、再受診した日が新しい初診日になり、障害認定日も後ろにずれます(考え方と、認められるために見られる点は社会的治癒の記事にまとめました)。

これが遡及とどう関係するのか。カルテが残っている期間に、認定日を作り直せるということです。20年前の初診では当時の診断書が取れなくても、5年前の再受診を初診日にできれば、その1年6か月後の診断書は取れる可能性があります。

要件は3つとされています。

  1. 症状が安定し、特段の治療の必要がないこと
  2. 自覚症状・他覚症状がほとんどなく、就労や日常生活を通常どおり送れていること
  3. その状態が一定期間続いていること

「一定期間」はおおむね5年が目安と言われるが、傷病によっては10年とも言われ、5年未満なら絶対に無理、5年以上なら必ず認められる、という単純な話ではありません。

立証の主戦場は病歴・就労状況等申立書になります。時系列で全履歴を書き、治癒していた期間を明示し、その間に通常の生活・就労ができていた事実を具体的に書きます。補強資料として、当時の給与明細や雇用契約書、健康保険の資格記録、健康診断の結果、資格取得の記録など「生活に支障がなかった」と読める客観資料を添えます。

リスクも書いておきます。 社会的治癒が認められなければ、初診日は古いままです。その結果、納付要件を満たさない、あるいは当時の診断書が取れないという振り出しに戻ります。綱渡りになることがある、というのは知っておいたほうがいいです。

手続きの総量について、正直なところ

実際に自分で進めた人の記録には、こういう一節があります。

やることが……やることが多い……!

4月後半に動き出して、受給が決まったのが11月。約半年。書類作成に3か月、審査に2か月半。 そして待っている間、「本当に受給できるのか」「書類は大丈夫だったのか」と考え続けることになります。病歴・就労状況等申立書を書く作業は、過去のつらい記憶を全部掘り返す作業でもあります。

決まったときの感想も残っています。「かけてきた時間もお金も、全部実りとして戻ってきた」。そして同時に、「いま働けない人が、この手続きをできるのだろうか」という疑問も。

どちらも本当のことだと思います。だからこそ、遡及の可能性だけは早めに潰しておいてください。 カルテは5年で消えます。動くのが1年遅れると、選べる請求方法そのものが減ります。

よくある質問

Q. 障害認定日請求と事後重症請求は、どう違いますか? A. 障害認定日請求は認定日(原則、初診日から1年6か月後)の時点の診断書で請求する方法で、認定日の翌月分から支給されます(受け取れるのは請求日から遡って5年分まで)。事後重症請求は現在の状態で請求する方法で、請求した月の翌月分からしか支給されません。過去には一切遡りません。

Q. さかのぼれるのは何年分ですか? A. 最大5年分です。障害認定日から10年空いていても、受け取れるのは請求日から遡って直近5年分になります。時効により、それより前の分は消滅します。

Q. 当時の診断書が取れません。遡及は諦めるしかありませんか? A. 病院が残っていればカルテの有無を確認し、閉院していれば医療法人の本部・後継医師・地域の医師会に引受先を問い合わせます。

カルテがなくても、他院の記録、紹介状、お薬手帳、診察券、領収書、入院記録などを揃えて医師に相談する余地はあります。一度断られても、資料を揃えて再度相談する価値があります。

Q. 認定日は非該当でも、現在の状態で受け取れますか? A. 「障害給付 請求事由確認書」を最初から添付しておけば、認定日請求が非該当だった場合に自動的に事後重症として審査が続行され、請求月の翌月分から受給できます。出し忘れると出し直しになるので、必ず窓口で確認してください。

Q. すでに事後重症で受給中ですが、遡及に切り替えられますか? A. 切り替えられます。認定日の診断書、年金証書、取下げ書、理由書などが必要になります。手続きは重いですが、通れば数百万円が動くことがあるため、一度検討する価値があります。

Q. 事後重症請求に期限はありますか? A. 65歳の誕生日の前々日までに請求書を提出する必要があります。年齢は誕生日の前日に加算されるという法律上のルールがあるため、「前々日」になります。この日を過ぎると請求権そのものが消えます。

Q. 遡及分がまとめて入ると、税金や保育料に影響しますか? A. 障害年金は非課税なので、所得税・住民税はかからず、確定申告も不要です。住民税額を基準に決まる保育料にも影響しません。ただし健康保険の被扶養者の判定では収入として扱われ、生活保護を受けている場合は返還の対象になります。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給や等級の認定を保証するものではありません。年金額は令和8年度の額をもとにした概算で、過去の年度分は各年度の額で計算されます。認定日の特例や請求方法の詳細は個別の状況により異なりますので、正式な内容は日本年金機構および年金事務所でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。

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