障害年金の診断書のために、主治医に渡す「生活状況メモ」の書き方 — 診察で話せなくても、紙なら伝わる
この記事の結論
診断書の7項目(食事・清潔保持・金銭管理・服薬・対人関係・危機対応・社会性)は、診察室では観察できず、本人や家族からの聴き取りで書く欄です。伝えなければ埋まりません。だからA4一枚の「診察前メモ」を紙で渡します。空欄の型は、この下にあります。
書くのは事実と頻度と、誰の助けがあるか。「入浴できています」ではなく「入浴は週1〜2回、母に促されて」。お願いや等級の要望は書かない。そして、家族がやってくれていることも「できている」に入れない。診断書は「一人で生活するとしたら」で判断する決まりだからです。
令和6年度の抽出調査では、新しく請求した1,000件のうち非該当が13.0%(前年度8.4%)。精神で不支給になった85件のうち64件(75.3%)は、診断書の7項目から出る目安では等級に届いていたのに、総合評価で落ちた事案でした。丸の位置だけでは決まりません。丸のうしろの記述欄と申立書に、同じ生活が書かれているかが見られています。
渡せなくても、メモは診察で話す台本になり、申立書の材料になります。1日1〜2行でよく、書けない日があっても構いません。
先に、渡す紙。空欄の型と、書き込んだ例
理屈はあとで書きます。先に、主治医に渡す紙の現物です。A4一枚。上から順に、診断書の「日常生活能力の判定」7項目と同じ並びになっています。
空欄の型(そのまま写して使ってください)
○○先生へ
診察の時間内では伝えきれない、最近1か月の生活の様子をまとめました。ご参考になれば幸いです。
食事: 1日_回。用意するのは(自分/家族)。自分で作れたのは月_回
入浴・身だしなみ: 入浴は週_回。(自分から/促されて)。着替えない日が週_日
買い物・お金: 買い物は(一人で/付き添いで/頼んで)。通帳・支払いの管理は(自分/家族)。最近あったこと: __
薬・通院: 薬は(自分で/家族が並べて)。飲み忘れは週_回。通院は(一人で/付き添いで)
人づきあい: 家族以外と話したのは月_回。電話・インターホンに(出られる/出られない)
危ないこと: この1か月であったこと: __(火・事故・消えたい気持ち など)
手続き: 役所や郵便物は(自分で/家族が)。放置したもの: __
波: 起き上がれない日が月_日。いちばん悪い週はどう過ごしたか: __
仕事(している人だけ): 週_日・_時間。受けている配慮: __。欠勤・早退は月_回。帰宅後は__
薬について(飲んでいない薬がある人だけ): __を飲んでいない理由: __
書き込んだ例 — アキさん(この記事のための架空の例)
○○先生へ
診察の時間内では伝えきれない、最近1か月の生活の様子をまとめました。ご参考になれば幸いです。
食事: 母が用意したものを1日1〜2回。自分で準備できたのは月2回程度
入浴・身だしなみ: 入浴は週1〜2回。母に促されてようやく入る。着替えず一日過ごす日が週2〜3日
買い物・お金: 一人で店に入れない。先月、レジに並べず何も買わずに帰ったことが2回。通帳・支払いは母が管理
薬・通院: 母が毎朝薬を並べて確認。並べてもらえなかった日は飲み忘れた。通院は毎回母の付き添い
人づきあい: 友人からのLINEに返信できず1年。家族以外との会話なし
危ないこと: 先月、鍋を火にかけたまま眠ってしまい、母が気づいて止めた
手続き: 市役所からの封筒を3通開けていない。母が代わりに電話した
波: 週の半分は昼まで起き上がれない。眠れた日と眠れない日の差が激しい
仕事: 求人サイトを開くと動悸がして続けられない
大げさな言葉はひとつもありません。でも、診察室の「ぼちぼちです」の何十倍も伝わります。各行は診断書の7項目にほぼ一対一で対応していて、医師はこれを見ながら、判断材料を持って診断書を書けます。
型を埋めるときの決まりは、まず3つ。頻度で書く(できる/できないではなく)。誰の助けがあるかを書く。お願いは書かない。理由と、うまく書けない場面の言い換えは、このあとに続けます。
「診断書、思ったより軽く書かれてた」
診察室のドアを開けた瞬間、背筋が伸びます。「調子はどうですか」「……まあ、ぼちぼちです」。家では3日風呂に入れていないのに、です。
月2回の診察は毎回5分。先生の前では、不思議と「ちゃんと」してしまいます。寝込んでいる姿を、先生は一度も見たことがありません。そして障害年金の診断書は、その先生が書きます。
「生活状況メモ」とは何か — なぜ紙で渡すのか
主治医に渡す生活状況メモとは、診察室では見えない日常生活の様子を、A4一枚にまとめて医師に渡す紙のことです。決まった様式はありません。障害年金の診断書を書いてもらうときの参考資料として渡します。
なぜ必要なのか。精神の障害年金の診断書には「日常生活能力の判定」という7項目の欄があり、食事・清潔保持・金銭管理・通院と服薬・対人関係・危機対応・社会性を医師が評価します。ところがこれらは、どれも診察室では観察できない項目です。厚労省の記載要領でも、本人や家族からの聴き取りをもとに記載する項目とされています。
つまり7項目は、あなたが伝えなければ埋まらない欄です。メモを渡すのはわがままでも交渉でもなく、制度が想定している手順です。
しかも診察は5分前後。口頭で7項目分を毎回伝えるのは現実的ではありません。だから紙にします。専門家も、時間をかけた聞き取りをもとに資料を作って主治医に渡すことを業務の柱にしています。プロがやっている工程の、本人版がこのメモです。
診察で何を話す? — 5分で伝える優先順位
「今日の診察で何を話せばいいか分からない」まま診察室に入ると、たいてい「大丈夫です」で終わります。話す内容には、あらかじめ優先順位をつけておきましょう。
必ず話す(3つ)
- 前回からの生活の変化(できなくなったこと・新しく困ったこと)
- 薬を飲んでも残っている症状(「眠れるようにはなったけど、日中の意欲が戻りません」)
- 危ないこと(火の消し忘れ、事故になりかけたこと、消えたい気持ち)
紙で渡す(口頭では無理なもの)
- 7項目の生活実態(食事・入浴・お金・服薬・人付き合い・危機対応・手続き)
- 家族が何をしてくれているか
- 働いている場合、配慮の内容と欠勤・早退の頻度
3つ目の「危ないこと」を口で言えないなら、紙に書いて「口では言いにくいので書きました」と渡すだけで構いません。医師がいちばん必要としているのは、この種の情報です。
話さなくていいことは、等級の要望です。「2級になるように書いてください」は医師の医学的判断への介入になり、警戒を招くだけで一つもいいことがありません。伝えるのは事実まで(伝えることの全体像)。
診察室で起きていること — 波の谷は持ち込まれない
ここに、診断書の問題の核心があります。
症状は日単位・週単位で浮き沈みします。なのに医師が見られるのは、月に1〜2回、調子を整えて外出できた日の、診察室での数分だけです。波の谷は、診察室に持ち込まれません。
精神の障害用の診断書には「日常生活能力の判定」という7項目の欄があります。食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、対人関係、危機対応、社会性。この7項目の平均と「日常生活能力の程度」の組み合わせで、国が公表している障害等級の目安が決まります。最終的な等級は、診断書等の記載内容をもとに総合的に判定されます。
そして厚生労働省の記載要領では、この7項目は本人や家族からの聴き取りをもとに記載するとされています。つまり、診察室の外の生活が伝わっていなければ、医師は判断材料のないまま7項目を埋めます。
令和6年度の抽出調査(新規裁定1,000件)では、非該当が13.0%でした。前年度は8.4%、その前の3年は7.7〜8.0%で、令和6年度に跳ね上がっています。
ここで、数字の読み方を一つ。精神の障害で不支給になった85件のうち、64件(75.3%)は、診断書の7項目と「程度」から出る目安表の位置では、等級に届いていた事案です。目安どおりに非該当だったのは11件(12.9%)しかありません。つまり不支給の大半は「丸が軽かった」からではなく、丸は届いていたのに、総合評価で落ちています。総合評価で見られるのは、就労の実態、家族や支援者の援助の状況、診断書の記述欄(日常生活の状況・現症・就労状況)にどれだけ具体的に書かれているか、そして申立書と食い違っていないか、です(不支給85件の中身)。
だから、このメモの役目は丸を動かすことではありません。医師が記述欄に「母が薬を並べている」「週の半分は昼まで起きられない」と書けるだけの材料を渡すこと。そして同じ生活を、あなたの申立書にも書くこと。診断書と申立書が同じ実態を指していれば、総合評価はそのまま通ります。診察室の数分で何が伝わるかが、そのまま結果に効きます。大げさな話ではなく、これが構造です。
医師が悪いのでも、あなたの伝え方が下手なのでもありません。数分の診察でこの7項目の実態が伝わるほうがおかしいのです。だから紙にします。診断書は「直近の状態」で書かれるので、直近数か月の生活が読み取れる資料を、書く人(医師)に渡します。新規申請でも更新でも、やることは同じです。
自分の7項目が目安表のどのあたりに当たるかは、私は何級くらい?で確かめられます。
→ 「入院していないと、障害年金は通らない」は誤解です「家族がやってくれるから大丈夫」とは書かない — 一人で生活するとしたら
ここが、家族と暮らしている人がいちばん落ちる穴です。
厚生労働省の記載要領は、医師にこう指示しています。7項目の判断は「単身で生活するとしたら可能かどうか」で行うこと。家族との同居や施設で支援が常態化し、生活が安定している場合でも、「単身でかつ支援がない状況で生活した場合を想定」して書くこと。
つまり、母が薬を並べてくれるから飲めている人は、診断書の上では「飲めている」ではありません。「助言や指導があればできる」です。母が通帳を管理しているから滞納がない人は、「金銭管理ができる」ではありません。家族の手がなければどうなるか、が問われています。
なのに本人は、診察でこう言ってしまいます。「食事は母が作ってくれるので、ちゃんと食べています」。医師の耳には「食べられている」だけが残ります。メモに「母が用意して、声をかけてくれるので食べる。声かけがない日は食べない」と書けば、医師は正しい欄に丸をつけられます。
同居を伝えると不利になるのでは、と心配する人がいます。逆です。同居していること自体は判断材料ではなく、「同居していなかったら何が起きるか」が判断材料です。隠す必要はなく、家族が何をしているかを、そのまま書いてください。
一人暮らしの人も同じ理屈で守られます。「一人で暮らせている=日常生活能力が高い」ではありません。訪問看護が週1回来ている、実家から食材が届く、督促状を放置して電気が止まったことがある。一人暮らしの中の「回っていない部分」を、そのまま書きます(一人暮らしは不利?)。
紙で渡すのは、制度が想定している手順です
生活の実態を書いたメモを主治医に渡します。ポイントは4つです。
1. 事実だけを書きます。お願いは書かない
「2級相当でお願いします」のような書き方は逆効果です。虚偽の申告や事実と異なる診断書での受給は、利息つきの返還請求や、悪質なら刑事罰まであり得ます。医師もそれを知っています。
だからお願い文書や誇張は、医師の警戒を招くだけで、一つもいいことがありません。書くのは事実と頻度だけでいいです。
→ 「症状を重く見せないと、通らない」は誤解です2. 7項目に沿った場面を入れる
食事・風呂・買い物・服薬・人づきあいです。医師が診断書を書くとき、そのまま判断材料になる並びだから。
3. 就労しているなら、勤務の「実態」を必ず入れる
勤務の事実だけが伝わると「働ける=改善」と誤解されやすいです。欠勤・早退・職場の配慮の実態まで伝えます。国のガイドラインも、出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)や、職場での援助の状況を考慮するとしています。
診断書の就労欄も、実態が伝わって初めて正しく書かれます。
4. A4で1枚。診察の合間に読める量
なお、メモに入れるべき情報は7項目と就労だけではありません。家族の援助、服薬しても残る症状、症状の波、危険な出来事まで含めた全体像は医師に伝えること全リストにまとめてあります。何を書くか迷ったら、そちらを材料の一覧として使ってください。
逆効果になるメモ、効くメモ
同じ「メモを渡す」でも、書き方を間違えると逆効果になります。悪い例から見てください。
NG例
先生、いつもお世話になっております。障害年金の申請をしたいので、できれば2級に該当するように書いていただけないでしょうか。生活が本当に苦しく、年金がもらえないと暮らしていけません。毎日死ぬほどつらいです。どうかお願いします。
気持ちは痛いほどわかります。切実さは本物です。しかしこのメモは3つの点で逆効果になります。
①等級の指定は医師の医学的判断への介入で、医師の警戒を招く(事実と異なる診断書は医師自身も重大なリスクを負う)。②「苦しい」「つらい」は7項目の判断材料になりません。③経済事情は診断書の記載事項ではありません。
OK例は、冒頭の「書き込んだ例」の通り。場面・頻度・受けている援助だけで構成し、お願いの言葉はゼロにします。切実さは、事実の密度で伝えます。
「できる」と書かれないための言い換え
同じ生活でも、書き方で伝わり方が変わります。原則は5つです。
原則1:できる/できないではなく、頻度で書く
×「入浴できています」 → ○「入浴は週1〜2回です」
原則2:誰の助けがあるかを書く
×「薬は飲めています」 → ○「母が朝晩声をかけてくれるので飲めています。声かけがない日は忘れます」
原則3:一度あった具体的な出来事を1つ入れる
×「不注意なところがあります」 → ○「先月、鍋を火にかけたまま眠ってしまい、母が気づいて止めました」
原則4:波は「平均」と「いちばん悪い週」で書く
×「日によります」 → ○「起き上がれない日が月に12日くらい。いちばん悪かった先々週は、5日間ほぼ布団の中で、食事は母が枕元に置いた」
波があると、診察日は調子を整えて行ける日になりがちです。医師が見るのは山の日だけ。谷の日を、日数と場面で書いておきます。「放っておくとどうなるか」も1行あると、医師は「時に援助が必要」か「多くの援助が必要」かを判断しやすくなります。
原則5:飲んでいない薬があるなら、理由を書く
×(何も書かない) → ○「○○は、過量服薬が心配で先生が処方を止めています。いまは頓服だけです」
服薬していないと「軽い」と読まれることがあります。医師の判断で減らしている、副作用で中止した、飲めない事情がある。理由が書いてあれば、「服薬なし」という事実だけが独り歩きしません。
この5つが入っていれば、医師は診断書の該当欄を実態に沿って埋められます。逆に「つらいです」「しんどいです」だけのメモは、気持ちは伝わっても診断書のどの欄にも書けません。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、「家族の援助」が診断書に載っていたことで結論が変わった実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
うつ病・障害認定日請求(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 家族の援助を要する日常生活能力と、就労支援での短時間作業も続かなかった経過を総合して、障害認定日に2級に該当するとし、3級とした原処分が取り消されました。上のメモの「母が毎朝薬を並べて確認」「通院は毎回母の付き添い」のような記述が、審査で見られる「援助の実態」です。
医師の側から見ると — 年金の診断書は、いつもの診察と違う情報が要る
メモを渡すことに気が引ける人へ。医師の側の事情を知っておくと、少し楽になります。
障害年金の診断書は、医師にとって、普段の診察で集めている情報とは別の情報が要る書類です。診察で見ているのは症状と薬の効き。診断書で問われるのは、入浴は週に何回か、通帳は誰が持っているか、インターホンに出られるか。カルテには、たいてい書いてありません。だから医師は、書こうとした瞬間に材料が足りないことに気づきます。
患者向けの案内に「診断書を頼むときは、日常生活の困りごとをメモにして持ってきてください」と書いている医療機関もあります。医師の側が、メモを求めている場面があるということです。あなたが渡すメモは、迷惑ではなく、医師が診断書を書くための材料です。
いちばんの損は、嫌がられそうだからと頼まないことです。診断書を断る医師はいますが、その多くには「初診から日が浅い」「通院が空いていて直近の状態が分からない」という医学的な理由があります。材料がそろっていれば、書ける医師のほうが多い。
分厚い資料は要りません。A4一枚か二枚。医師が診察の合間に読める量が、いちばん読まれます。
費用も先に知っておいてください。障害年金の診断書料は医療機関ごとに違い、5,000〜10,000円くらいが多いです。保険はききません。更新のたびにかかります。記述欄が空欄だらけの診断書に1万円払って、実態より軽く読まれる。それを防ぐのが、この一枚です。
渡し方に、特別な言葉は要らない
頼むときの一言
診断書をお願いするときの言い方は、これで足ります。
- 「日常生活と仕事のことで困りごとが続いていて、障害年金の申請を考えています。診断書をお願いできますか」
- 「治療に専念するために、生活の土台を整えたいと思っています」
言わないほうがいいのは「年金をもらいたいので書いてください」「2級で書いてください」。前者は目的が年金だけに聞こえ、後者は医学的判断への介入です。どちらも医師の警戒を招きます。
言いにくい人の言い方
「できません」と口にするのがつらい人は、言い方を変えて構いません。「一人でお風呂に入れるようになりたいのですが、いまは母に言われてやっとです」。できないことを言う代わりに、できるようになりたいことを言う。医師には同じ情報が伝わり、診察の空気は壊れません。
渡すタイミング
- 渡すのは診察の冒頭です。最後に出すと、医師は読む時間のないまま診察を終えます。「最近の様子をメモにしてきました。先に読んでいただけますか」と、座ってすぐに出します
- 診断書を頼む日だけでなく、普段の診察から渡していくと、カルテに実態が積み上がります。頼む日に初めて渡すより、2〜3回前の診察から始めるのが確実です
- 診断書を頼む日は、混んでいる時間帯を避け、冒頭でメモを渡し、未記入の診断書用紙もいっしょに出します
- 病院によっては、診断書用の独自の聞き取りシートがあります。受付で「診断書を頼むときに書く用紙はありますか」と先に聞いてみてください。あれば、メモはそのシートの材料になります
- 診察の冒頭に「最近の様子をメモにしてきました。読んでいただけますか」
- 直接が難しければ、受付で「先生にお渡しください」と預ける
もし医師が受け取りに消極的なら、無理に渡し続けなくていいです。主治医との関係は治療にとって一番大事です。それでもメモを作る意味はあります。渡せなくても、見ながら話す台本になります。「今日はこれだけは伝える」を1つ決めて診察に行くだけで、伝わる量は変わります。
なお、家族が書いたメモにも価値があります。家族や支援者による日常生活状況の具体的なメモ(第三者記述)は、書類全体の整合性の裏付けになります。ガイドラインも、家族等の援助の状況を考慮するとしています。本人が書けない時期は、家族の目線の記録が本人の記録を補えます。
家族が診察に付き添える場合は、さらに直接的な方法もあります。診察に同席して「家で見ている様子」を口頭で補足するのです。
本人は診察室で「ちゃんと」してしまっても、家族の口から「週の半分は昼まで起きられません」「薬は私が並べています」と伝われば、医師の判断材料になります。厚労省の記載要領でも、日常生活の様子は本人や家族から聴き取る項目とされています。
家族の同席は、制度が想定している正規の情報ルートだと考えていいです。付き添いが難しければ、家族が書いたA4一枚を本人が持参するだけでも意味があります。
受け取ったら、その場で封を開ける
診断書は、渡す前より、受け取ったあとのほうが取り返しがつきません。提出してしまうと、原則として直せないからです。
受け取ったら、封をしたまま持ち帰らず、その場か帰り道で開けて、4か所を見ます。7項目の丸が、メモに書いた実態と合っているか。「日常生活能力の程度」が、家族の手がない前提で書かれているか。就労欄に、配慮や欠勤が書かれているか。空欄がないか。
合っていないところがあれば、医師の判断を否定しない言い方で聞きます。「この欄について、先生の見立てをもう少し伺ってもいいですか。家ではこういう状態で……」。事実の伝え漏れなら、多くの医師は直してくれます。見るべき場所の詳しい一覧は、診断書を受け取ったら確かめる7つのポイントにあります。
受給後も続く話 — 更新のとき、このメモが効く
見落とされがちだが、障害年金は多くの場合、数年ごとに更新がある(障害状態確認届=更新用の診断書の提出)。更新時の注意を整理するとこうなります。
- 更新の診断書も「直近の状態」で書かれる。日頃から生活の記録を残し、直近数か月の実態がわかる形で医師に伝える
- 就労している場合は欠勤・早退・職場の配慮の実態まで伝える(「働ける=改善」の誤解を避ける)
- 提出期限から逆算して診察の予約を早めに取る。期限を過ぎると不利益が生じやすい
- 症状が安定している人は、服薬歴・通院間隔・悪化時のエピソードなど「変動が少ない証拠」を積み上げることが、認定の安定につながる
つまり、診察前メモは申請のときだけの手段ではありません。記録を続ける習慣そのものが、申請から更新まで一貫して効きます。
さらに言えば、記録は年金以外でも効きます。障害のある生活には国民健康保険料の負担(所得ゼロでも発生する)、失業保険の手続き、障害者雇用での就労と、制度との付き合いが続きます。生活実態の記録は、そのどの場面でも自分の状況を説明する土台になります。
1日1〜2行でいい
「今日は夕方まで起きられなかった」「母に言われて3日ぶりに入浴」。その日のうちに1〜2行。書けない日があっても構いません。書けた日の分だけで意味があります。
溜まったメモは、診察で渡せる資料になり、そのまま病歴・就労状況等申立書の材料にもなります。同じ一枚の記録が2つの書類の土台になります。申立書を自分で書くなら、申立書を、自分で書きたいで、期間ごとに書き進められます。
このアプリは、1〜2行のメモを溜めると、生活の場面ごとに整理した「先生に見せる書類」として印刷できるように作りました。渡せなくても、読まれなくても、記録はあなたの申立書の材料として残ります。ログイン不要、記録は端末の中だけ、基本機能は無料。
よくある質問(FAQ)
Q. メモを渡したら、医師に嫌がられませんか?
A. 事実だけをA4一枚にまとめたメモなら、多くの医師にとってむしろ診断書作成の助けになります。嫌がられやすいのは「等級のお願い」や長文の訴えです。消極的な反応だった場合は無理に渡さず、メモを見ながら口頭で伝える台本として使ってください。
Q. 「2級をとりたい」と正直に伝えてもいいですか?
A. 障害年金を申請する意思を伝えること自体は必要です(診断書を依頼するので)。ただし「○級で書いてほしい」という依頼は逆効果です。等級は医学的判断と審査で決まるもので、事実と異なる診断書は医師と本人の双方が重大なリスクを負います。
Q. 調子が悪くてメモが書けません。
A. 書けない日は書かなくて大丈夫です。書けた日の1〜2行に意味があります。また、家族が代わりに書いた「見た様子」の記録にも価値があります。家族・支援者による第三者記述は、書類の整合性の裏付けになります。
Q. 診察で元気にふるまってしまうのは、治すべき癖ですか?
A. 癖というより、外出できる状態を整えて診察に行く以上、避けにくい構造です。状態は日々大きく波打つのに、診察はその一瞬しか切り取れません。だからこそ、波の全体を紙で渡す方法に意味があります。
Q. 更新(障害状態確認届)のときは何をすればいいですか?
A. やることは申請時と同じで、直近数か月の生活実態を医師に伝えることです。加えて、提出期限から逆算して早めに診察予約を取ること、就労している場合は欠勤・配慮の実態まで伝えることが要点です。
Q. 家族と同居していると、不利になりますか?
A. なりません。診断書の7項目は「単身で生活するとしたら可能か」で判断する決まりです。同居していることではなく、家族の手がなければ何が起きるかが見られます。家族が何をしてくれているかを、そのまま書いてください。「母がやってくれるので大丈夫です」とだけ伝えるのが、いちばん損です。
Q. 薬を飲んでいないと、軽いと見られますか?
A. 理由が伝わっていないと、そう読まれることがあります。医師の判断で減らしている、副作用で中止した、過量服薬を防ぐために処方を止めている。理由をメモに1行書いておけば、「服薬なし」は「軽症」と読まれません。
Q. 診断書代はいくらですか?
A. 医療機関ごとに違い、5,000〜10,000円くらいが多いです。保険はききません。更新(障害状態確認届)のたびにかかります。遡及請求で認定日のころの診断書も頼むなら、もう1枚分かかります。
Q. 主治医が障害年金の診断書を書きたがりません。どうすれば?
A. まず理由を確認してください。「初診から日が浅く評価できない」「通院間隔が空いていて直近の状態が把握できない」など、医学的に妥当な理由のことも多く、その場合は通院を重ねながら生活実態の記録を伝え続けるのが近道です。診察のたびにA4メモで実態が積み上がっていれば、医師が「書ける」状態に近づきます。方針の相違が根本にある場合は、年金事務所や社労士への相談も選択肢です(書いてくれないときの記事)。
Q. メモは毎回渡すべきですか? 何回前の診察から始めればいいですか?
A. 診断書の依頼直前に1回渡すより、普段の診察から渡し続けるほうが確実です。カルテに実態が蓄積し、依頼した時点で医師の手元に材料が揃います。目安は、頼む日の2〜3回前の診察から。いまから始めるなら、次の診察に1枚持っていってください。
Q. メモに決まった様式はありますか? どんな形式でもいいですか?
A. 決まった様式はありません。A4で1〜2枚、生活の場面ごと(食事、清潔保持、買い物と金銭、服薬と通院、対人関係、危機対応、手続き、就労)に、事実と頻度と誰の助けがあるかを書けば十分です。手書きでもスマホ印刷でも構いません。この記事の冒頭の「空欄の型」をそのまま使ってください。7項目の順番に沿って書くと、医師が診断書の該当欄と突き合わせやすくなります。10枚の手記は読まれません。
Q. 診察で何を話せばいいか分かりません。
A. 前回からの生活の変化、薬を飲んでも残っている症状、危ないことの3つを優先してください。7項目の生活実態は口頭では伝えきれないので、紙にまとめて渡す方法が確実です。
Q. メモを渡すのが恥ずかしい・言い出せません。
A. 診察の冒頭に「うまく話せないので紙にまとめました。お時間のあるときに読んでください」と置くだけで十分です。渡せなかった日があっても、書いたメモは次回も使えますし、そのまま病歴・就労状況等申立書の材料になります。
まとめ
- 渡す紙の現物は、この記事の冒頭。空欄の型を写して、次の診察に持っていく
- 「診断書が実際より軽い」は最も多い後悔。原因は構造(医師は診察室のあなたしか見られない)
- 令和6年度の非該当は13.0%。精神の不支給の75.3%は、丸は等級に届いていたのに総合評価で落ちた事案。記述欄と申立書を同じ実態で埋める
- 7項目は「一人で生活するとしたら」で判断される。家族がしてくれていることを「できている」に入れない
- 事実+頻度+誰の助けか。波は平均といちばん悪い週。飲んでいない薬は理由を書く。お願いは書かない
- 医師の側も、年金の診断書には普段と違う材料が要る。メモは迷惑ではなく材料
- 受け取ったら、その場で封を開けて4か所を見る。提出後は直せない
- 記録の習慣は更新(障害状態確認届)のときまで一貫して効く
出典
- 厚生労働省「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」(日常生活能力の判定は「単身で生活するとしたら可能かどうか」で判断、本人・家族からの聴取、就労の援助や配慮の記入)・確認日 2026-09-27
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(目安表、就労状況・家族の援助の考慮)・確認日 2026-09-27
- 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(抽出1,000件の非該当13.0%、精神の不支給85件のうち目安より下位64件=75.3%、非該当率の推移)・確認日 2026-09-27
- 当サイト 裁決事例集・確認日 2026-09-27
※本記事は一般的な制度情報に基づくものです。診断書の記載内容は医師の医学的判断によるものであり、特定の記載や受給・等級を保証するものではありません。
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。