発達障害(ADHD・ASD)で障害年金を申請する方法|初診日・診断書・申立書

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この記事の結論

発達障害の障害年金は「20歳前に受診歴があるか」で制度が変わります。20歳前初診なら納付要件は問われませんが3級がなく所得制限がつき、20歳以降の初診(厚生年金加入中)なら3級と障害手当金があります。同じ障害でも、最初に医師にかかった日で結論が変わります。

知的障害を伴わない発達障害の初診日は「その症状で初めて受診した日」で、生まれた日ではありません。うつ病や適応障害で先に受診していれば、そこが初診日になり得ます。有利にも不利にもなるので、必ず最初の受診まで洗い直してください。

認定基準が見るのは「対人関係や意思疎通を円滑に行えないこと」。IQでは決まらず、7項目は「単身で生活するとしたら」で評価されます。実家暮らしほど過小評価されやすいので、一人だったらできないことをそのまま伝えてください。

令和6年度の精神の非該当は12.1%(前年度6.4%)で、不支給の75.3%は、目安では届いていたのに下位の等級に認定された事案でした。ガイドラインの発達障害固有の3要素(単純反復業務・常時の管理指導・意思疎通の困難)を書面に載せきることが、いまの対策です。

次に読む20歳前傷病の障害基礎年金

「怠けている」と言われ続けた20年のあとに

30代で発達障害の診断がついた人が、よく言うことがあります。

病名がついて、少し楽になりました。それと同時に、20年分の説明がついてしまって、しんどくなりました。

忘れ物が多いです。段取りが組めません。同時に2つのことができません。人の話が長いと途中で音になります。それを「気合が足りない」「もっと集中しろ」と言われ続けてきた時間には、もう戻れません。

障害年金は、その時間を埋める制度ではありません。しかしいまの生活の制限に対して、現金で支えを入れる制度ではあります。そして発達障害の場合、その入口には他の傷病にはない独特の分岐がいくつもあります。

この記事では、初診日の考え方、二次障害の扱い、認定基準の読み方、就労している場合の書き方、そして令和6年度以降に何が起きているかまでを整理します。

いちばん大きな分岐 —— 20歳前に受診歴があるか

発達障害の障害年金は、この一点で制度そのものが変わります。

20歳前に初診日がある場合

20歳前傷病による障害基礎年金になります。保険料納付要件は問われません。ただし1級と2級しかなく、3級がありません。そして所得制限がつきます。

20歳以降に初めて受診した場合

通常の障害年金になります。初診日が厚生年金加入中なら障害厚生年金で、3級と障害手当金があります。納付要件は問われます。所得制限はありません。

ここに、この制度の皮肉があります。発達障害は3級相当と判断されやすいです。ところが20歳前初診だと3級の受け皿がないので「3級相当=不支給」になります。就職してから初めて受診した人のほうが、3級で受給できます。

同じ障害、同じ生きづらさなのに、いつ最初の医師にかかったかで結論が変わります。納得できる話ではないが、制度の構造としてそうなっています。だからこそ、初診日を正確に押さえる意味があります。

なお20歳前傷病の障害認定日は、「20歳に達した日」と「初診日から1年6か月経過日」のいずれか遅いほうになります。学生時代に受診歴がある人は、ここを起点に遡及請求を検討できます。

20歳前傷病の所得制限

納付要件が免除される代わりに、制約がつきます。前年の所得が一定額を超えると、2分の1または全額が支給停止になります。判定は扶養親族の数によって加算され、停止の期間は10月から翌年9月までの1年単位で動きます。

働き始めて2年目くらいに、突然「支給停止」の通知が届いて驚く、というのがよくある流れになります。基準額は、前年所得が3,761,000円超で2分の1停止、4,794,000円超で全額停止(令和8年10月分から3,858,000円/4,918,000円。扶養親族1人につき加算あり)。給与などの課税所得で見るので、障害年金そのものは入りません(20歳前傷病の記事)。このほか、海外に住んでいる間の全額支給停止、刑事施設等に収容され有罪が確定した場合の全額支給停止といった制約もあります。

「先天的だから、初診日は生まれた日では?」への答え

これは非常によくある誤解で、しかも半分だけ正しいです。

障害認定基準は発達障害を「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」と定義しています。確かに「低年齢で発現」と書いてあります。

しかし、初診日についてはこう書かれています。

知的障害を伴わない者が発達障害の症状により、初めて受診した日が20歳以降であった場合は、当該受診日を初診日とする

つまり、知的障害を伴わない発達障害の初診日は、初めて受診した日です。生まれた日ではありません。

一方、知的障害は違います。知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているもので、実務上は出生日が初診日として扱われます。だから必ず20歳前傷病になり、受診状況等証明書も不要で、20歳になればすぐ請求できます。

知的障害を伴うか伴わないかで、制度上の入口が完全に別になります。同じADHDでも、ここで扱いが変わります。

二次障害で先に受診していた場合

発達障害の当事者は、発達障害の診断がつくより先に、別の病名で受診していることが圧倒的に多いです。うつ病、不安障害、適応障害、不眠症。職場で潰れて心療内科に行った、というのが典型的な入口になります。

この場合、その受診日が初診日として扱われえます。

そしてこれは、不利にも有利にもなります。

有利になる例

18歳のときに不登校からうつ状態で受診していました。この記録が見つかると、20歳前傷病として納付要件が問われなくなります。

不利になる例

22歳のとき、当時国民年金で未納だった時期に適応障害で受診していました。初診日がそこに固定され、納付要件で門前払いになります。

先に受診した記録は、探すと結論が180度変わりえます。だから「発達障害と診断された日」から数え始めるのではなく、その症状で最初に医師にかかった日はいつかを、記憶と記録の両方から洗い直します(初診日が分からないとき)。

なお、発達障害は先天的なので「うつ病が原因で発達障害になった」という因果関係は成立しません。実務上は、発達障害の症状としての抑うつで受診した、と構成できるかが勝負になります。

もう一点。適応障害は神経症の範囲に分類され、原則として障害年金の対象外です。ただし精神病の病態を示している場合は、診断書の備考欄への記載で対象になりえます。後にうつ病や発達障害へ診断名が変わった場合も道が開けます。

そして併存している場合の扱いも決まっています。認定基準は、発達障害と他の認定対象となる精神疾患が併存しているときは「併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断して認定する」としています。ADHDとうつ病でそれぞれ等級を足すのではなく、まとめて一つの精神の障害として見ます。病名が複数あることで分散して不利になる、ということはありません。

→ 「病名が複数あると、分散して不利になる」は誤解です

認定基準は何を見ているのか

発達障害についての着眼点は、条文に一行で書かれています。

社会行動やコミュニケーション能力の障害により対人関係や意思疎通を円滑に行うことができない

これが的になります。診断書も申立書も、ここを射抜くように書きます。

等級の状態像は、語彙が三段階で対応しています。

→ 横にスクロールできます

等級能力行動必要な援助
1級社会性やコミュニケーション能力が欠如著しく不適応な行動がみられる日常生活への適応が困難で常時援助が必要
2級社会性やコミュニケーション能力が乏しい不適応な行動がみられる日常生活への適応にあたって援助が必要
3級社会性やコミュニケーション能力が不十分社会行動に問題がみられる労働が著しい制限を受ける

欠如/乏しい/不十分、著しく不適応/不適応/問題がみられる、常時援助/援助が必要/労働の制限。この語彙の階段が、そのまま等級になっています。

IQでは決まらない

条文の等級の説明に、IQの数値は一切登場しません。判断されるのは日常生活能力です。

だからIQが80台でも生活が破綻していれば2級はありうるし、IQが60台でも生活が回っていれば非該当もありえます。知的障害を伴う場合、療育手帳やIQは初診日(出生日)の裏付けとして効くが、等級そのものは生活能力で決まります。

なお診断書では、知的障害・発達障害の場合にIQと精神年齢の記入が必須とされています。臨床検査の欄が空白なら、それは記載漏れになります。あわせて、発育・養育歴の欄に特別支援教育の記録が漏れていないかも確認します。検査をまだ受けていない人は、主治医に相談すれば診断書作成の過程で受けられます。検査結果が手元にないことは、申請を始めない理由にはなりません。

→ 「検査を受けてからでないと、申請できない」は誤解です

目安表と、発達障害に固有の考慮要素

精神の等級判定ガイドラインには、診断書の「日常生活能力の判定」7項目の平均値と「日常生活能力の程度」5段階から等級の目安を読む表があります。たとえば程度(4)で判定平均3.0〜3.5なら2級、程度(3)で判定平均3.0〜3.5なら2級、といった具合です。

そしてこのガイドラインには、発達障害に固有の考慮要素が3つ挙げられています。ここは申立書にそのまま対応させて書くのが定石になります。

  1. 仕事が専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する
  2. 執着が強く、臨機応変な対応が困難である等により常時の管理・指導が必要な場合は、2級の可能性を検討する
  3. 他の従業員との意思疎通が困難な場合は、2級の可能性を検討する

この3つは、そのままチェックリストとして使えます。当てはまるなら、当てはまる事実を具体的に書きます。自分の診断書の7項目と程度が目安表のどの帯かは、計算ツールで確かめられます。

→ 私は何級くらい?

医師に何を伝えるか

診断書の裏面にある「日常生活能力の判定」7項目が、実質的な採点シートになります。そして決定的な前提があります。この7項目は「単身で生活するとしたら可能かどうか」で評価されます。

実家で親が食事を作り、洗濯をし、通院に付き添っていても、評価するのは「一人だったらどうなるか」です。実家暮らしの発達障害の当事者が過小評価される最大の原因が、ここにあります。家族と同居していて表面上は生活が回っていても、「一人だったらできない」ことは、そのとおり伝えていいです。

伝え方は、抽象語を具体に変換します。項目別に、具体的な言い方を並べておきます。

適切な食事

「いつも同じものばかり食べている」「スーパーで何を買っていいか分からない」「何も食べないか、逆に極端に食べてしまう」「ガスコンロや包丁が怖くて使えない」

身辺の清潔保持

「何日も髭を剃らない」「毎日同じものを着ている」「衣服を前後逆に着ていることがある」「部屋の掃除をほとんどしない」

金銭管理と買い物

「気になったものをその場で買ってしまう」「未納・滞納が多い」「レジの前で頭が真っ白になる」

通院と服薬

「診察室で症状をうまく言えない」「薬の飲み忘れが多い」「まとまった話ができない」

他人との意思伝達・対人関係

「質問と違う話を答えてしまう」「集団の中では話せなくなる」「会話の内容を理解できないまま返事をしている」

身辺の安全保持・危機対応

「電車が遅れるとパニックになる」「電車やバスが使えない」

社会性

「市役所での手続きができない」「メールやSNSへの返信ができない」「一度の説明では理解できない」

言い方のコツも一つ。「〇〇ができません」と断定するより、「〇〇ができたらいいのですが」「できるようになりたいのですが」という言い方のほうが受け入れられやすいです。そして年に1〜2回は、家族に診察へ同席してもらって、家での様子を家族の口から話してもらいます。

依頼の切り出し方は、飾らないほうがいいです。

「生活が苦しく、障害年金の申請を考えています。診断書をお願いできますか」

これで十分です。あわせて、日常生活の状況をまとめたA4一枚を渡します。

なお、医師に「等級が上がるように書いてほしい」と頼むのは別の話になります。頼んでいいのは事実の追加提供までで、評価は医師の医学的判断に委ねます。ここは線を引いておきます。

働いている場合の書き方

発達障害の当事者は、「働けている」外形を作りやすいです。遅刻せず出勤します。単純作業はこなします。だから診断書の判定が軽く出やすいです。

しかし制度の側は、そう単純に見ないと明言しています。認定要領にはこう書かれています。

労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず、現に労働に従事している者については、その療養状況を考慮するとともに、仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との意思疎通の状況等を十分確認したうえで日常生活能力を判断すること

さらにガイドラインでは、就労移行支援・就労継続支援A型/B型・障害者雇用制度での就労は「1級または2級の可能性を検討する」とされています。一般企業でも、同程度の援助を受けていれば2級の可能性を検討する、と。

A型やB型に通っている=働けている=不支給、ではありません。

だから書くべきは「何ができたか」ではなく、どれだけの配慮が投入されて、はじめて成立しているかです。具体的には次のようなものになります。

  • 障害者雇用枠であること
  • ジョブコーチや支援員が関わっていること
  • 勤務時間の短縮、業務内容の限定
  • 指示を口頭ではなく文書で受けていること
  • 複数の作業を同時に任されないよう調整されていること
  • 臨機応変な対応ができず、常時の管理・指導が必要なこと
  • 欠勤・早退・遅刻の頻度
  • 帰宅後や休日は寝込んでいて、何もできないこと
  • 賃金の額(B型の工賃は月1万円台ということも珍しくない)

そして最後に、その配慮がなかったらどうなるかを書きます。ガイドラインも、援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮するとしています。

制度と現場のずれ

制度上はそう書かれています。ただし、障害者雇用の現場が「配慮するから無理せず」ではなく「配慮しているのだから健常者並みに」という空気であることも珍しくありません。

制度上の選択肢が増えることと、現場が楽になることは、必ずしも同じではありません。両方を知ったうえで、書類には制度の言葉で書きます。それが現実的な向き合い方になります(→障害者雇用と障害年金)。

令和6年度以降、精神・知的の審査で何が起きたか

数字が出ています。

厚生労働省が令和7年6月11日に公表した「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」によれば、令和6年度に新規裁定で非該当(不支給)とされた割合は13.0%(前年度8.4%)。そのうち精神障害は6.4%から12.1%へと、ほぼ2倍になりました。外部障害(10.2%→10.8%)・内部障害(19.4%→20.6%)はほぼ横ばいなので、精神・知的だけが急に変わったことになります。

さらに、精神の不支給事案のうち75.3%が、等級判定ガイドラインの目安より下位の判定によるものでした(前年度44.7%)。調査した85件の内訳は、目安より下位32件、目安が2等級にまたがり下位32件、目安どおり11件、その他(てんかんなど)10件。目安どおりの不支給は12.9%しかありません。

報告書は背景として、令和4年4月から導入された「事前確認票」に職員が等級案を記載していたこと、職員が担当する認定医が1名から3名程度に固定されていたことを挙げ、対応策として等級案の記載の廃止、担当認定医の無作為での決定、複数の認定医による審査の拡大などを示しました。

日本年金機構は不支給事案の再点検を行っていますが、支給に変更されたのは点検した14,841件のうち444件(約3.0%、令和8年3月31日時点)にとどまります。待っていれば自動的に見直される、という期待は持たないほうがいいです。

この記事で伝えたいのは、書類の作り込みで結果が動く余地がある、ということです。不支給の4分の3が「目安より下」で決まっている以上、目安表のどこにいるかを自分で確かめ、総合評価の考慮要素(就労の配慮、援助の実態、発達障害固有の3要素)を書面に載せきることが、いまの審査に対する現実的な対策になります。

同じ状況の人が、どうなったか

発達障害・知的障害の請求が、社会保険審査会でどう判断されたか。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

自閉スペクトラム症・軽度精神遅滞・新規裁定(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 20歳前初診の障害基礎年金として不支給とされた処分について、発達期から認定対象となる知的障害があったとは認めず、厚生年金期間中の初診日と発達障害による3級該当を認めて原処分が取り消されました。「知的障害を伴うか」と「初診日がどこか」で入口が変わる、というこの記事の分岐そのものです。

中等度知的障害・20歳到達日請求(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 20歳時の診断書がなく障害状態を認定できないとした処分について、後年の診断書、就学・就労歴、知能検査、療育手帳などから20歳時も同程度であった蓋然性が高いとし、2級該当を認めて原処分が取り消されました。幼少期からの資料が「20歳時点の状態」の立証に使われた例です。

自閉症・額改定請求(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 2級を受けている人が1級への額改定を請求した事案で、日常生活能力の7項目がすべて最も重い判定で、家族の常時の援助や作業所の配慮が必要な状態を1級に該当するとして、原処分が取り消されました。

双極性気分障害・成人期ADHD・事後重症請求(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 厚生年金加入中の初診日は認められませんでしたが、国民年金期間の初診日が認定され、裁定請求日の状態は2級に該当するとして障害基礎年金の却下部分のみが取り消されました。二次障害での受診が初診日になる、という論点が実際に争われた例です。

→ ほかの実例も読む

幼少期の資料は、どこで使うのか

ここは混同されやすいので、はっきり分けておきます。

初診日そのものの証明に使えるものとして、日本年金機構が挙げているのは次のようなものです。診察券、入院記録、医療機関や薬局の領収書、生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書、障害者手帳の申請時の診断書、交通事故証明書、医療情報サマリー、事業所の健康診断の記録、健康保険の給付記録(レセプトを含む)、交付日の記載された障害者手帳。

母子手帳や通知表、指導要録は、この公式のリストには載っていません。

ではどこで使うのか。病歴・就労状況等申立書の裏付け、つまり発達歴の立証に使います。申立書は生まれたときからの状況を書くものなので、ここに年代順に並べていきます。

  • 母子手帳……首すわり、発語、歩行の遅れの記録
  • 通知表の生活記録欄・所見欄……「落ち着きがない」「友達とのトラブルが多い」「忘れ物が多い」といった担任の記述
  • 指導要録……学校に照会して開示を求める
  • 療育手帳……交付日と判定内容
  • 特別支援学級・通級指導の在籍記録
  • 学校の健康診断票

初診日の証明と発達歴の立証。この2つを混同しないだけで、書類の集め方が整理されます。必要書類の全体は、条件を選ぶだけで一覧にできます。

→ 何をそろえればいい?

大人になってから診断された場合

いちばん難しいのがこのパターンになります。20代で不調が始まり、30代で発達障害の診断がつく——という経路だと、最初にかかった心療内科のカルテが、すでに廃棄されていることが多いです。

カルテの法定保存期間は診療が完結した日から5年しかありません。記録が残っているうちに、まず受診状況等証明書だけ取っておきます。ほかの準備より先にこれをやります。

そして、初診日が認められずに却下されると、同じ資料での再請求では覆りません。追加資料の発見など別の事情が要ります。ただし、r04_05-11_08 のように、当時の診断書がなくても後年の資料から状態を推認して認められた裁決もあります。諦める前に、代替資料を全部当たり直す価値はあります(カルテがないときの初診日証明)。

なお平成27年10月以降は、初診日を証明する書類が添付できない場合でも、一定の要件のもとで本人の申立てと参考資料から合理的に推定する扱いが認められるようになりました。第三者証明については、20歳前の初診なら20歳以降より要件が緩いです。第三者は三親等内の親族を除きます。

手帳との関係

発達障害の手帳は、知的障害を伴うかどうかで種類が分かれます。

  • 知的障害を伴う……療育手帳(自治体により名称も判定基準も異なる)
  • 伴わない……精神障害者保健福祉手帳
  • 両方持っているケースもある

そして、手帳の等級と年金の等級は連動しません。制度も判定機関も基準も別です。

窓口で「手帳の等級が低いから年金は難しい」と言われることがあるが、年金の受給の可否を決めるのは、役所の職員でも医師でもなく、年金機構の審査担当です。その一言で申請そのものをやめてしまうのが、いちばんもったいない引き返し方になります(手帳と年金の違い)。

同じように、「若いから無理」も根拠がありません。20歳前傷病の障害基礎年金は、まさに20歳になった時点から請求できる制度です。

→ 「若いから、障害年金は無理」は誤解です

更新のとき、等級が下がりやすい理由

受給が始まっても終わりではありません。障害状態確認届(更新用の診断書)は、有期認定なら1〜5年ごとに届きます。用紙が送られてくるのは誕生月の3か月前の月末、提出期限は誕生月の末日になります。

発達障害で等級が下がりやすいパターンは、だいたい4つあります。

  1. 更新時に就労を始めていて、それが「改善」と読まれる
  2. 主治医が交代して、過去の状態を知らない医師が書く
  3. 長期通院で「症状が安定している」と書かれる
  4. 初回に書き込んだ困りごとが、更新の診断書では省略される

対策はひとつで、前回の診断書のコピーを出して、7項目を1項目ずつ並べて比べます。前回より軽くなっている項目があれば、そこが等級を下げにいきます。実際に良くなっているならそれでいいです。そうでないなら、提出前に事実を補足します。

だから初回の診断書は必ずコピーを取っておきます。更新のたびに、前回の自分が味方になります。令和6年度の再認定304,456件のうち96.7%は継続で、更新は落とすための審査ではありませんが、前回との差分で読まれることは変わりません(更新の記事)。

最後に

障害年金を請求することは、権利です。保険料を納めてきた人が、日常生活を送れなくなったときに受け取るものとして制度が作られています。家族に迷惑がかかるのではないか、と心配する必要もありません。

診断がついたときに感じる安堵と喪失感、家族が「うちの子は普通だ」と言って診察の同席を断ること、職場で何度も同じ説明をさせられること——そのどれも、書類には書けない部分だと思います。

しかし書類に書けることは、思っているよりずっと多いです。何ができなくて、どれくらいの頻度で、誰の手を借りているか。それを記録しておくだけで、診断書も申立書も、そして更新のときの比較も、全部そこから作れます。

審査は、あなたに会いに来ません。紙だけを見ます。だから、紙のほうを整えていきます。

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よくある質問

Q. 発達障害は先天的なので、初診日は生まれた日になりますか?

A. 知的障害を伴わない発達障害の場合、初診日は「その症状で初めて受診した日」です。認定基準にも、初めて受診した日が20歳以降であればその受診日を初診日とする、と明記されています。一方、知的障害の場合は実務上、出生日が初診日として扱われます。

Q. うつ病で先に受診していました。初診日はどちらになりますか?

A. その受診が発達障害の症状によるものと構成できる場合、うつ病等で受診した日が初診日として扱われることがあります。

この記録により、20歳前傷病になって納付要件が問われなくなることもあれば、逆に未納の時期に初診日が固定されることもあります。結論が大きく変わるので、必ず最初の受診まで洗い直してください。

Q. IQが高いと障害年金は受けられませんか?

A. 認定基準の等級の説明にIQの数値は登場しません。判断されるのは日常生活能力です。ただし診断書ではIQと精神年齢の記入が必須とされているため、検査を受けていない場合は主治医に相談してください。

Q. 障害者雇用で働いていると不支給になりますか?

A. なるとは限りません。等級判定ガイドラインでは、就労移行支援・就労継続支援A型/B型・障害者雇用制度での就労について「1級または2級の可能性を検討する」とされています。大切なのは、どれだけの配慮を受けてはじめて働けているかを具体的に書くことです。

Q. 母子手帳や通知表は初診日の証明に使えますか?

A. 初診日そのものの証明書類としては公式のリストに含まれていません。これらは病歴・就労状況等申立書での発達歴の裏付けとして使います。初診日の証明には、診察券、領収書、入院記録、健康保険の給付記録、障害者手帳の申請時の診断書などを当たってください。

Q. 更新で等級が下がるのが不安です。

A. 就労開始、主治医の交代、「症状が安定」という記載、困りごとの記載漏れが主な原因です。前回の診断書のコピーと7項目を並べて比べ、実態と違う箇所があれば提出前に医師へ事実を伝えてください。

まとめ

  • 20歳前に受診歴があるかで、制度そのものが変わる。20歳前傷病は納付要件が問われない代わりに3級がなく、所得制限がつく
  • 知的障害を伴わない発達障害の初診日は「初めて受診した日」。知的障害は実務上、出生日
  • 二次障害で先に受診していると、そこが初診日になりうる。有利にも不利にもなるので必ず洗い直す
  • 認定基準が見ているのは「対人関係や意思疎通を円滑に行えないこと」。IQでは決まらない
  • 7項目は「単身で生活するとしたら」で評価される。実家暮らしほど過小評価されやすい
  • 就労していても受給できる。書くべきは「何ができたか」ではなく「どれだけの配慮で成立しているか」
  • 母子手帳・通知表は初診日の証明ではなく、発達歴の裏付けとして使う
  • 更新は前回の診断書のコピーと比べる。初回のコピーが、毎回の味方になる

出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(発達障害・知的障害の定義、初診日の取り扱い、併存時の総合判断、就労の取り扱い)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(目安表、発達障害に固有の考慮要素)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「診断書(精神の障害用)記載要領」(IQ・精神年齢の記入、単身生活の想定)、「初診日を確認するための参考資料」・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」(令和7年6月11日)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金の認定状況について」(再点検14,841件中444件)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定304,456件・継続96.7%)・確認日 2026-09-02
  • 日本年金機構「20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限」・確認日 2026-09-02
  • 当サイト 裁決事例集(91件)・確認日 2026-09-02

※本記事は一般的な情報提供であり、受給や等級の認定を保証するものではありません。所得制限の基準額など年度ごとに改定される数値もあります。認定基準やガイドラインは改定されることがありますので、正式な内容は日本年金機構および年金事務所でご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。