よくある誤解

「障害者手帳がないと、障害年金はもらえない」

障害者手帳がないと障害年金はもらえない? — 手帳と年金は別の制度で、順番も決まっていません

・ 確認日

結論

手帳がなくても、障害年金は請求できます。手帳の有無は、年金の請求書のどこにも出てきません。

手帳と年金は、決める役所も、基準も、等級の数え方も別です。手帳3級の人が年金2級になることも、その逆もあります。

順番は決まっていません。むしろ精神の障害では、年金が先に決まると、年金証書の写しで手帳を診断書なしで申請できます。「まず手帳から」と考えて年金を後回しにすると、その分だけ受け取り開始が遅れます。

なぜ「手帳が先」と思われているのか

役所の窓口や病院で、障害のある人が最初に案内されるのは手帳です。福祉サービスの多くが手帳を入口にしているので、「障害の制度は手帳から始まる」という感覚が自然に身につきます。

もう1つは、言葉の近さです。手帳にも年金にも「1級」「2級」があるので、同じ物差しで測っていると思いやすい。実際には、手帳の等級と年金の等級は別の基準で決まっていて、数字が一致する必要はありません。

制度ではこうなっている

決める役所が違う

障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)は、都道府県や政令指定都市が交付します。窓口は市区町村の障害福祉の担当課です。

障害年金は、国の制度です。国民年金法と厚生年金保険法にもとづいて、日本年金機構が事務を行い、審査は機構の障害年金センターで行われます。手帳の交付とは、法律も組織も別です。

基準が違う

年金の審査で見られるのは、「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」に沿った、日常生活や労働への支障の程度です。精神の障害なら、診断書に医師が書く日常生活能力の7項目と程度が中心になります。

手帳の等級は、それぞれの手帳の判定基準で決まります。精神障害者保健福祉手帳は精神保健福祉法にもとづく基準、身体障害者手帳は身体障害者福祉法の別表です。身体の手帳は1級から7級まであり、年金の1級から3級とは数の範囲からして違います。

だから、手帳3級で年金2級、手帳2級で年金3級、手帳なしで年金2級、どれも起こります。

請求書に手帳の欄はない

年金請求書には、手帳の有無や等級を書く欄がありません。添付書類の一覧にも手帳は入っていません。必要なのは、初診日の証明、診断書、病歴・就労状況等申立書、基礎年金番号、口座、本人確認書類です。

つまり、手帳を持っていないことは、年金の審査に影響しません。持っていないことを理由に不支給になることもありません。

逆の順番のほうが楽になる場合がある

精神の障害で障害年金を受けている人は、精神障害者保健福祉手帳を診断書なしで申請できます。年金証書の写しと、直近の年金振込通知書などの写し、同意書を出します。手帳の等級は、年金の等級に対応して認定されます。年金2級なら手帳2級、という対応です。

手帳用の診断書は、病院ごとに文書料がかかり、書いてもらうまでに日数もかかります。年金が先に決まっていれば、その費用と手間が要りません。

「年金は手帳より難しそうだから、まず手帳を」という順番は、この仕組みを知らないと選びがちです。年金を先に進めて、その証書で手帳を取るほうが、結果として手間が少なくなることがあります。

手帳と年金、それぞれで受けられるもの

別の制度なので、受けられるものも別です。両方を取れる人は、両方を取ってかまいません。

手帳で受けられるのは、主にサービスと減免です。所得税・住民税の障害者控除、鉄道やバスの運賃割引、携帯電話料金の割引、自治体によっては医療費の助成、障害者雇用枠での就職。どれも手帳が基準で、年金の等級は関係ありません。

年金で受けられるのは、現金です。障害基礎年金2級で年847,300円、1級で1,059,125円(令和8年度)。1級・2級の人は国民年金の保険料が法定免除になります。所得が一定以下なら、年金生活者支援給付金(2級で月5,620円)が上乗せされます。

「手帳があるから年金は要らない」「年金があるから手帳は要らない」という考え方は、どちらも片方を捨てています。手帳の障害者控除は年金を受けていても使えますし、年金の現金は手帳を持っていても減りません。

数字で見ると

令和6年度に新しく決まった障害年金は 146,225件でした。そのうち精神の障害の診断書によるものが 70.3%です。手帳を持っているかどうかは、この統計のどこにも出てきません。持っていない人も、この中に含まれています。

事後重症請求(いまの状態で請求する形)では、年金は請求した月の翌月分から支払われます。手帳を先に取ろうとして半年遅れれば、その半年分は戻りません。「手帳から」の順番の代償は、ここに出ます。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

中等度知的障害・20歳時の診断書がない(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 20歳のときの診断書がなく、障害状態を認定できないとされました。審査会は、後年の診断書、就学・就労歴、知能検査に加えて療育手帳も資料として、20歳時も同程度だった蓋然性が高いと認め、2級該当としました。手帳は年金の要件ではありませんが、状態を裏づける資料の1つにはなります。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 手帳を持っていなくても、初診日・納付要件・障害の状態の3つで判断されます。手帳の有無を書く欄は請求書にありません。
  • 精神の年金が先に決まると、年金証書の写しで手帳を診断書なしで申請できます。「年金が先」でも損はしません。
  • 手帳の等級と年金の等級は連動しません。手帳3級でも、年金は日常生活能力の実態で決まります。

窓口で聞く一言

年金事務所に「手帳はまだ持っていませんが、障害年金の請求はできますか」と聞いてください。答えは「できます」です。

よくある質問

Q. 手帳を持っていると、年金の審査で有利になりますか。

A. なりません。年金の審査は、診断書と申立書に書かれた生活の実態で行われます。手帳の等級は参考資料にもなりません。

Q. 手帳が3級なので、年金も3級だと思っていました。

A. 別の基準です。初診日が国民年金の期間なら、年金に3級はなく、2級に当たるかどうかで決まります。手帳の等級から年金の等級を推測することはできません。

Q. 年金証書で手帳を取れるのは、どの手帳ですか。

A. 精神障害者保健福祉手帳です。精神の障害を理由に障害年金を受けている人が対象で、身体障害者手帳や療育手帳には、この仕組みはありません。

次に読む

障害者手帳と障害年金の違いはじめての方へ精神の手帳を取るのに、また診断書が要る?

出典

  • 日本年金機構「障害年金の請求手続き」(添付書類の一覧に手帳が含まれないこと)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「精神障害者保健福祉手帳の障害等級の判定基準について」および手帳制度実施要領(年金証書による申請)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」・厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(新規裁定 146,225件、精神 70.3%)・確認日 2026-09-02
よくある誤解の一覧へ戻る