よくある誤解

「適応障害・パニック障害は対象外だから、申請できない」

適応障害・パニック障害は障害年金の対象外? — 認定基準は「病態を示していれば気分障害に準じて扱う」と書いています

・ 確認日

結論

「適応障害やパニック障害は対象外」と言われます。認定基準には、たしかに神経症は原則として対象外と書かれています。ただし同じ段落に、こう続きます。精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分障害に準じて取り扱う。

決まるのは病名ではなく、いまの病態です。適応障害で始まった不調が長引き、いまはうつ病の病態と診断されている人は少なくありません。

そして初診日は、診断名が変わっても最初に受診した日のままです。適応障害で受診した日が起点になります。

なぜ「対象外」と思われているのか

検索すると、最初の数件に「神経症は対象外」と出てくるからです。それは認定基準の前半だけを引いた説明で、後半の「ただし」が落ちています。適応障害、パニック障害、不安障害、強迫性障害は、国際的な分類では神経症性障害の群に入るので、前半だけ読むと対象外に見えます。

もう1つは、主治医に聞かないまま閉じてしまうことです。「対象外」を見て、それ以上進まない。実際に対象になるかどうかは、いまの病態を主治医がどう診断しているかで決まるのに、その確認をする前に諦めています。

制度ではこうなっている

認定基準の文言

「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の精神の障害の項には、次の趣旨が書かれています。神経症にあっては、その症状が長期間持続し、一見重症なものであっても、原則として認定の対象とならない。ただし、その臨床症状から判断して精神病の病態を示しているものについては、統合失調症または気分障害に準じて取り扱う。

「原則として」と「ただし」の両方が、同じ段落にあります。

「病態を示している」とは

診断名が神経症の群に入っていても、症状の重さや持続の仕方が、気分障害(うつ病・双極性障害)や統合失調症に相当する状態にあることです。これを判断するのは主治医です。診断書の病名欄と、ICDコードの欄に、いまの病態が反映されているかが分かれ目になります。

適応障害として治療が始まり、そのあと症状が長引いてうつ病の診断に変わる、という経過は珍しくありません。その場合、診断書はうつ病として書かれ、気分障害として審査されます。

初診日は動かない

初診日は「その症状で初めて医師の診療を受けた日」です。診断名が適応障害からうつ病に変わっても、最初に受診した日が初診日のままです。これは請求できる制度(国民年金か厚生年金か)と納付要件の判定日を決めるので、動かないことは大事です。

診断名が途中で変わった人の手順

適応障害で受診を始め、いまはうつ病の診断になっている。この経過の人が申請するときの順番です。

1つ目、初診日は最初の受診日です。適応障害で受診した日を、受診状況等証明書で証明します。この日が動かないので、当時の病院に証明書を頼みます。

2つ目、診断書はいまの主治医に、いまの病名で書いてもらいます。病名の欄に「うつ病」、ICDコードにその分類が入ります。適応障害の時期のことは、診断書の経過の欄と、病歴・就労状況等申立書に書きます。

3つ目、申立書には、適応障害と診断された時期から症状がどう続き、どう重くなったかを、期間ごとに書きます。「診断名が変わった」ことは隠さず、経過として書けばよいものです。

診断名がまだ適応障害のままの人は、1つ目より前に、主治医に病態の確認をしてください。

数字で見ると

令和6年度に新しく決まった障害年金のうち、精神の障害の診断書によるものは70.3%でした。神経症の群の病名で申請した人がどれだけ含まれるかは、統計に出ていません。ただ、精神の障害がこれだけの割合を占めるなかで、「病名だけで門前払い」という運用にはなっていません。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

混合性不安抑うつ障害(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 事後重症請求に対し、傷病は神経症の範疇で、診断書に精神病の病態を示す記載もないため認定対象とならないとされ、不支給が維持されました。「病態を示している」ことが診断書に書かれていなければ、原則対象外のほうで読まれます。

高次脳機能障害・うつ病の初診日(令和7年、原文(厚労省PDF)) — 脳腫瘍治療後の高次脳機能障害とうつ病について、抑うつ気分で受診した日が初診日と認定されました。診断名が確定した日ではなく、その症状で受診した日が起点になる、という扱いです。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • いまの診断名が「適応障害」のままか、気分障害などに変わっているかを主治医に確認してください。
  • 初診日は、診断名が変わっても最初に受診した日のままです。適応障害で受診した日が起点になります。
  • 診断書の「病名」と「ICDコード」の欄に、いまの病態が反映されているかを確認してください。

窓口で聞く一言

主治医に「いまの状態は、気分障害に準じて扱われる病態にあたりますか」と聞いてください。

よくある質問

Q. 診断名が「適応障害」のままです。申請しても無駄ですか。

A. 無駄とは言えませんが、診断書の病名がそのままなら、認定基準の「原則対象外」のほうで読まれます。まず主治医に、いまの病態がどう診断されるかを確認してください。診断名が変わるかどうかは、医学的な判断です。

Q. パニック障害でも同じですか。

A. 同じ扱いです。パニック障害・不安障害・強迫性障害・PTSDは、いずれも神経症性障害の群に入り、認定基準の同じ段落で扱われます。「病態を示していれば準じて扱う」も同じです。

Q. 初診は内科でした。精神科の初診日を初診日にしたほうがいいですか。

A. 初診日は、その症状で最初に医師にかかった日です。内科で不眠や体調不良を診てもらった日が、同じ症状の流れなら初診日になります。あとから精神科の日に変えることはできません。

次に読む

適応障害・不安障害・神経症・PTSD適応障害と障害年金対象になる傷病の境界

出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害(神経症の取扱い)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(精神 70.3%)・確認日 2026-09-02
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