よくある誤解

「臓器移植を受けたら、障害年金は打ち切られる」

臓器移植を受けたら障害年金は打ち切られる? — 移植後1年間は従前の等級が維持されます

・ 確認日

結論

臓器移植を受けても、すぐには打ち切られません。腎移植・肝移植・造血幹細胞移植のいずれも、移植後1年間は従前の等級が維持されます。その後、術後の経過・検査成績・予後を踏まえて、認定し直されます。

移植した臓器が生着して安定的に機能するまでの期間を考慮する決まりが、認定基準にあります。

移植を勧められたときに、「年金が止まるから」と治療の選択をためらう人がいます。移植=即打ち切りではありません。

なぜ「打ち切り」と思われているのか

透析中は2級という認定が広く知られていて、「移植で透析が不要になれば2級ではなくなる」と直結して考えるからです。透析をやめれば等級の根拠がなくなる、という論理は分かりやすい。

でも認定基準は、移植直後の不安定な時期を織り込んでいます。生着するかどうか、拒絶反応、免疫抑制剤の副作用。移植後の1年は、術前と同じかそれ以上に生活が制限されることがあります。

制度ではこうなっている

移植後1年間の取扱い

障害認定基準は、腎臓移植、肝臓移植、造血幹細胞移植について、移植を受けた場合は、臓器が生着し安定的に機能するまでの間、原則として1年間は従前の等級とし、その後、症状、検査成績、予後などを総合的に判断して認定する、という趣旨を定めています。

1年後の再認定で見られるもの

移植した臓器の機能(腎移植なら腎機能の検査値、肝移植なら肝機能)、拒絶反応の有無、免疫抑制剤の副作用、日常生活の制限、一般状態区分。透析が不要になっても、これらで一定の制限が残っていれば、等級が続くことがあります。

移植後の等級が下がる場合

経過が良好で、検査値が安定し、日常生活や労働の制限が軽くなっていれば、等級が下がるか支給停止になります。それは移植が「成功した」結果で、治療の目的からすれば望ましい状態です。

治療の選択と年金

年金の等級を維持するために治療を選ばない、という判断は、制度の側から見ても勧められません。移植後1年の維持期間は、治療の選択を年金が妨げないように設けられている、と読めます。

数字で見ると

移植後の等級維持期間は1年です。この期間は、腎移植・肝移植・造血幹細胞移植のいずれも共通です。1年後の再認定で、術後の経過が見られます。

令和6年度の再認定304,456件のうち、96.7%は等級が継続しました。移植後の再認定だけの統計はありませんが、再認定全体で見れば、等級が動く人は少数です。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

肺移植後の間質性肺炎・慢性拒絶(令和6年、原文(厚労省PDF)) — 移植術後の経過を総合的に考慮すると、現症日でも2級の状態が継続しており、支給停止の処分は失当とされました。移植後も、経過によっては等級が続く、という例です。

腎移植後・排便孔と導尿路(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 腎疾患単独では等級非該当でも、肛門括約筋を欠く排便孔と虫垂を利用した導尿路は人工肛門造設・尿路変更術に相当し、2級に該当するとして支給停止が取り消されました。移植で腎機能が回復しても、他の障害を含めて全体で見られます。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 移植後1年間は、従前の等級が維持されます。移植の翌日に止まることはありません。
  • 1年後の再認定では、術後の経過・検査成績・予後が見られます。定期検査の結果を保管してください。
  • 移植を治療として選ぶかどうかは、年金ではなく体の判断で決めてください。年金はあとから見直されます。

窓口で聞く一言

年金事務所に「移植を受けた場合、等級の見直しはいつ行われますか」と、移植の前に聞いておいてください。

よくある質問

Q. 移植したことを、年金事務所に届け出る必要がありますか。

A. 障害の状態が変わったときの届出の対象になることがあります。移植を受けたら、年金事務所に連絡して、必要な届出を確認してください。届出をしないまま1年を過ぎて、あとから問題になるより、先に確認するほうが安全です。

Q. 移植後、免疫抑制剤の副作用で働けません。

A. その状態は、1年後の再認定で評価されます。副作用による日常生活や労働の制限を、診断書に書いてもらってください。移植で検査値が良くなっていても、生活の制限が残っていれば、それが実態です。

Q. 造血幹細胞移植も同じですか。

A. 同じ扱いです。認定基準は、腎移植・肝移植・造血幹細胞移植を並べて、移植後の取扱いを定めています。

次に読む

腎臓病・人工透析肝臓の病気血液・造血器の病気

出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第12節 腎疾患、第13節 肝疾患、第14節 血液・造血器疾患(移植後の取扱い)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定の継続)・確認日 2026-09-02
  • 当サイト 裁決事例集(91件)・確認日 2026-09-02
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