リード(直答)
人工透析を受けている方は、原則2級です。日本年金機構がそう明示しています。しかも、障害認定日は「透析を始めてから3か月を経過した日」で、初診日から1年6か月を待つ必要がない。透析の人の障害年金は、制度の中でいちばん見通しが立ちやすい部類です。
では何が問題になるのか。初診日です。透析に至った原因が糖尿病や高血圧なら、初診日は「腎臓の病気で初めて受診した日」ではなく、原則「糖尿病で初めて受診した日」までさかのぼります。20年前の健診で引っかかって、内科に行った日。それが会社員のときか、退職後かで、障害厚生年金か障害基礎年金かが変わり、額が大きく変わる。
そして、透析前の腎臓病でも対象になりうることは、あまり知られていません。このページは、透析中の人と、透析前の人の両方に向けて書いています。
審査で本当に見られているのは、この4つ
1. 透析をしているか、していないか
透析中なら原則2級。症状、検査成績、日常生活の状態によっては、さらに上位の等級の可能性もあります。透析前なら、検査成績(内因性クレアチニンクリアランス、血清クレアチニンなど)と全身の状態(一般状態区分)の組み合わせで判断され、状態によっては3級や2級に該当する場合があります。
2. 初診日と「相当因果関係」
「前の病気がなかったら、後の病気は起こらなかった」と言える関係(相当因果関係)がある場合、後の病気は前の病気に起因するものとして扱われます。糖尿病から糖尿病性腎症、そして透析に至った場合、初診日は糖尿病の初診まで戻るのが原則。悪性リンパ腫の治療の経過で腎障害が起きた場合も、因果関係が認められた裁決があります。病気のつながりを整理して伝えることが、入口を決めます。
3. 一般状態区分
腎臓を含む内部疾患の診断書には、日常生活の制限度を5段階で示す「一般状態区分」の欄があります。無症状で普通に働ける段階から、終日横になって介助が必要な段階まで。透析前の人は、ここが等級を分けます。「だるくて日中の半分は横になっている」「軽い家事でも息が切れる」といった実態が、この欄に反映されているか。
4. 透析中の生活の制限
透析中なら2級が原則ですが、それで終わりではありません。週3回の通院で仕事が制限されている、透析後は動けない、合併症(心臓、目、神経)がある。これらは上位等級の検討材料になり、更新のときにも関わります。「透析しているから2級」で書類を薄くしないでください。
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、腎臓病の事例を3つ。
お薬手帳の調剤記録で初診日が認められ、透析中で2級(一部容認) 2型糖尿病から慢性腎不全に至った方の事例です。カルテではなく、お薬手帳の調剤記録から初診日が認定され、人工透析中であることから2級に該当すると判断されて、処分が取り消されました。
診療情報提供書から、会社員のときの初診日を認定(容認) 糖尿病性腎症の方で、初診日を確認できないとして不支給とされた事例です。医師の診療情報提供書から厚生年金加入中の初診日と納付要件が認められ、透析中の状態を2級として処分が取り消されました。紹介状(診療情報提供書)は、初診日の資料になります。
腎臓と糖尿病を合わせても、2級には至らず(棄却) 慢性腎不全と糖尿病性腎症の方の事後重症請求で、透析前の事例です。腎障害と糖尿病による障害を総合しても、日常生活が著しく制限される程度には至らないとして、処分が維持されました。透析前は、一般状態区分と検査成績の両方が問われることを示す例です。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
初診日を「腎臓内科に行った日」だと思っている
糖尿病や高血圧が原因なら、初診日はそこまで戻ります。腎臓内科の初診を申告して、あとから20年前の内科の記録が出てくると、矛盾になる。最初に「原因の病気で最初に受診したのはいつか」を整理してください。昔の記録は、健診結果、お薬手帳、紹介状が手がかりです。→ 初診日が証明できないとき
透析を始めて、1年6か月待っている
待たなくていい。認定日は透析開始から3か月経過した日です(初診日から1年6か月を超える場合はその日)。透析を始めて3か月経ったら、請求できます。待った分だけ、事後重症なら受け取り開始が遅れます。
「手帳が1級だから年金も1級」と思っている
障害者手帳(腎臓機能障害1級)と年金の等級は別の制度です。年金は透析中なら原則2級。職場や周囲から「透析なら1級」と言われても、年金の等級は別に決まります。逆に「2級では低い」と感じるなら、合併症や生活の制限を示して上位等級を検討する道はあります。
移植を受けたら、年金が止まると思っている
腎移植後も、術後1年間は従前の等級が維持されます。臓器が生着して安定するまでの期間を考慮する決まりです。その後は、術後の経過、検査成績、予後を総合して認定し直されます。移植=即打ち切りではありません。
数字で見ると
透析の認定日は、開始から3か月。障害厚生年金なら3級もあり、報酬比例部分は加入が短くても300月(25年)分で計算されます。障害基礎年金2級は年847,300円(令和8年度)。
初診日が会社員のときなら、基礎に加えて厚生年金の上乗せ、2級以上なら配偶者の加算もつく。透析の人にとって、初診日の1日は、生涯で数百万円の差になりえます。
よくある質問
Q. 透析をしながら働いています。それでも2級ですか。
透析中は原則2級で、働いていることは変わりません。身体・内部疾患の分野では、精神の障害と違い、就労の影響は小さい。週3回の通院で仕事が制限されている実態は、むしろ労働の制限として伝えてください。→ 働きながら
Q. 透析はまだですが、腎臓の数値が悪いです。申請できますか。
透析前でも、検査成績と全身の状態の組み合わせで、3級や2級に該当する場合があります。主治医に「認定基準の腎疾患の区分で、いまの数値と状態はどこに当たるか」を確認し、一般状態区分の欄が実態に合っているかを見てください。
Q. 透析患者にも更新はありますか。
有期認定なら、数年ごとに障害状態確認届の提出があります。透析が続いている限り、原則2級の判断は変わりません。届いたら、透析の継続と合併症の状況が診断書に載るように。
次の一歩
透析中なら、今日やることは初診日の整理です。原因の病気(糖尿病・高血圧・腎炎)で最初に受診したのはいつか。健診の結果と、お薬手帳を出す。
透析前なら、次の診察で「一般状態区分はどこですか」と聞いてください。だるさと、横になっている時間を、数字で伝える。
自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方
関連コラム
- 初診日がわからないときの調べ方(/columns/shoshinbi-wakaranai)
- 障害基礎年金と障害厚生年金の違い — 初診日の1日で変わる(/columns/kiso-kousei-chigai)
- 障害認定日請求と事後重症請求の違い(/columns/ninteibi-jigojusho)
- 障害者手帳と障害年金の違い(/columns/techou-to-nenkin)
- 障害年金はいくらもらえる?(/columns/ikura-moraeru)
- 障害年金の更新(/columns/koushin-kakuninhodo)
出典
- 日本年金機構「障害年金ガイド」(人工透析は原則2級) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第12節 腎疾患による障害(検査成績・一般状態区分・移植後の取扱い) ・ 確認日 2026-08-31
- 日本年金機構「障害認定日の特例」(人工透析開始から3か月) ・ 確認日 2026-08-31
- 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)