糖尿病と障害年金

リード(直答)

糖尿病そのものは、対象になりにくい病気です。ここは、はっきり言っておきます。血糖値が高い、薬を飲んでいる、インスリンを打っている。それだけでは、原則、等級に該当しません。

対象になるのは、2つの道です。一つは、合併症。網膜症で視力が落ちた、腎症から透析になった、神経障害で足に激痛がある、壊疽で切断した。これらは、それぞれの部位の認定基準で評価されます。もう一つは、必要なインスリン治療をしてもなお血糖コントロールが困難な状態。月1回以上の重症低血糖、年1回以上のケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院など、認定基準に具体的な条件が書かれています。

そして、糖尿病でいちばん重要なのは、初診日です。合併症で申請する場合、初診日は合併症の初診ではなく、原則「糖尿病で最初に受診した日」まで戻る。10年、20年前の内科。それが会社員のときか退職後かで、すべてが変わります。

審査で本当に見られているのは、この4つ

1. 合併症があるか

網膜症(眼の基準)、腎症(腎疾患の基準)、神経障害(神経系統・疼痛の基準)、壊疽・切断(肢体の基準)。合併症は、それぞれの部位の基準で評価され、複数あれば併せて上位の等級になることがあります。「糖尿病」の一言ではなく、「どの合併症が、どの程度か」で申請を組み立てます。

2. 血糖コントロールの困難さ(合併症がない場合)

認定基準は、内因性インスリン分泌の枯渇(検査値で判断)、月1回以上の意識障害を伴う重症低血糖、年1回以上のケトアシドーシスや高血糖高浸透圧症候群による入院、などの条件を挙げています。これらは検査と入院の記録で示すもので、「つらい」では伝わりません。主治医に「認定基準の条件に該当するか」を直接確認してください。

3. 初診日と相当因果関係

「糖尿病がなかったら、腎症は起こらなかった」という関係(相当因果関係)がある場合、腎症の初診日は糖尿病の初診まで戻ります。健診で血糖値を指摘されて内科に行った日。それが初診日の候補です。健診で指摘されただけの日は、原則、初診日になりません。そのあと受診した日です。

4. 一般状態区分

腎症や心疾患など内部疾患の合併症では、日常生活の制限度を5段階で示す「一般状態区分」が等級を分けます。だるさ、日中横になっている時間、できなくなった家事を、数字で伝えてください。

結論を分けた実例

公開されている審査請求の裁決から、糖尿病の事例を3つ。

糖尿病の初診日を認定し、透析中で2級(容認) 糖尿病性腎症から慢性腎不全に至った方の事例です。糖尿病で初めて受診した日が初診日と認定され、被保険者要件と納付要件を満たし、人工透析中で2級に該当するとして処分が取り消されました。初診日が「糖尿病」まで戻ることを示す典型例です。

健診記録から初診日を認定(容認) 2型糖尿病と高血圧から慢性腎不全に至った方で、国民年金の期間中の初診日が争点になった事例です。健診記録などから初診日が認定され、処分が取り消されました。健診の記録は、初診日そのものではなくても、初診日を特定する資料になります。

三大合併症があっても、3級を超えず(棄却) 三大合併症を伴う糖尿病と高血圧の方の事後重症請求です。糖尿病は3級を超える状態ではなく、高血圧は申し立てた初診日の前日に納付要件を満たしていないとして、処分が維持されました。合併症の「有無」ではなく「程度」が問われることと、納付要件は初診日の前日で判定されることの、両方を示す例です。

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同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

「糖尿病」で申請しようとする

対象になるのは合併症か、コントロール困難の状態です。「糖尿病で申請したい」と年金事務所に行くと、「対象になりにくい」と言われて帰ってくる。行く前に、自分の合併症を書き出してください。眼、腎臓、神経、足。それぞれの部位の主治医が違うなら、診断書もその部位の様式になります。

初診日を、合併症の病院だと思う

腎臓内科や眼科の初診ではなく、糖尿病で最初に受診した内科が初診日の候補です。それが20年前なら、カルテはもうない可能性が高い。健診の結果、お薬手帳、当時の領収書、紹介状。家の中から探す作業が、糖尿病の申請ではいちばん重い。→ 初診日が証明できないとき

納付要件を、合併症の時点で見る

納付要件は「初診日の前日」で判定されます。初診日が20年前の糖尿病の受診なら、その前日時点の納付状況です。20年前に未納が多くても、直近1年に未納がなければよい特例(初診日が令和18年3月末まで)がある。逆に、上の棄却例のように、初診日の前日に要件を満たしていなければ、いまの状態がどれだけ重くても通りません。年金事務所で、初診日候補ごとに納付要件を確認してください。

低血糖の記録を、残していない

コントロール困難で申請するなら、重症低血糖の回数、意識障害の有無、救急搬送や入院の記録が根拠です。「よく低血糖になる」では書けない。血糖の記録と、低血糖で何が起きたか(意識を失った、救急車を呼んだ、家族が対応した)を、日付つきで残してください。

数字で見ると

糖尿病性腎症で透析に至った場合、認定日は透析開始から3か月で、原則2級。初診日が会社員のときなら、障害基礎年金2級(年847,300円、令和8年度)に厚生年金の上乗せがつきます。

1型糖尿病で子どものころに発症した人は、初診日が20歳前なので納付要件は問われません。ただし対象になるかは、同じく合併症かコントロール困難の状態で判断されます。

よくある質問

Q. 1型糖尿病で、インスリンポンプを使っています。それだけで対象ですか。

インスリン治療をしていること自体では、原則、等級に該当しません。必要なインスリン治療をしてもなお血糖コントロールが困難な状態(重症低血糖の頻度、入院歴、検査値)が認定基準の条件です。主治医に、条件に該当するかを確認してください。

Q. 網膜症で視力が落ちています。どの診断書ですか。

眼の障害用の診断書で、視力と視野の基準で評価されます。初診日は糖尿病の初診まで戻る可能性があるので、糖尿病の初診日と、眼科の初診日の両方を整理してください。

Q. 足を切断しました。

肢体の障害用の診断書で、切断の部位に応じた基準で評価されます。切断の日が障害認定日になる特例があり、1年6か月を待ちません。初診日は糖尿病の初診まで戻ります。

次の一歩

今日やることは、自分の合併症を書き出すことです。眼、腎臓、神経、足、心臓。それぞれの主治医と、いまの状態。

次に、糖尿病で最初に受診した日を、健診の結果とお薬手帳から探す。それが会社員のときか、退職後か。

自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方(糖尿病は初診日が古く、頼む価値が大きい病気の一つです) → 目の障害(糖尿病網膜症など)(/byoki/shikaku)

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出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第15節 代謝疾患による障害(糖尿病)、第12節 腎疾患、第1節 眼の障害、第7節 肢体の障害 ・ 確認日 2026-08-31
  • 日本年金機構「障害認定日の特例」 ・ 確認日 2026-08-31
  • 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)

よくある誤解