結論
健康診断で数値の異常を指摘されただけの日は、原則として初診日になりません。初診日は、そのあと治療のために医師の診療を受けた日です。
健診は診療ではないからです。ただし、健診の記録は初診日を特定する資料としては有効で、健診記録から初診日が認められた裁決もあります。
健診の年と受診の年が違うとき、どちらを起点にするかで、加入していた制度(厚生年金か国民年金か)が変わることがあります。
なぜ「健診の日」と思われているのか
「異常が見つかった日」が、病気の始まりに見えるからです。糖尿病や腎臓病、高血圧など、健診で最初に指摘される病気では、この感覚が特に強い。
もう1つは、初診日を早く置いたほうが有利だと思うことです。会社員の時期に健診を受けていれば、その日を初診日にすれば厚生年金になる、と考えます。制度は、健診を診療と区別しています。
制度ではこうなっている
健診は診療ではない
初診日は「初めて医師の診療を受けた日」です。健康診断は、病気の有無を調べるもので、診療(診察・治療)ではありません。だから、健診で異常を指摘された日は、原則として初診日になりません。
例外的な取扱い
日本年金機構の取扱いでは、健診日を初診日として請求する場合、初診日から間もない時期の医証がなく、かつ健診結果が医学的見地から直ちに治療が必要と認められる内容である場合に限り、健診日を初診日として認めることがあります。これは例外で、原則は治療のための受診日です。
健診の記録は資料になる
健診の日が初診日にならなくても、健診の結果は「この時期にこの異常があった」ことを示す資料です。そのあとの受診が初診日で、その受診の記録が残っていないとき、健診の記録と、その後の経過を合わせて初診日を特定できることがあります。
制度が変わる分かれ目
健診で指摘されたのが会社員の時期、治療のために受診したのが退職後、という場合、原則どおりなら初診日は退職後で国民年金です。逆に、健診の指摘のあとすぐに会社の産業医や病院を受診していれば、その日が初診日で厚生年金です。健診と受診の間隔が、制度を分けます。
数字で見ると
当サイトが整理した裁決事例91件のうち、争点が「初診日」だったものは35件です。健診と受診の間に時間があるケースは、初診日の争点になりやすい。糖尿病性腎症や慢性腎不全の裁決に、健診記録が初診日の資料として使われた例があります。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
2型糖尿病・高血圧症から慢性腎不全へ(令和6年、原文(厚労省PDF)) — 予備的請求における国民年金の第1号被保険者期間中の初診日の認定が争点でした。健診記録などから初診日を認定し、不支給が取り消されました。健診の記録が、初診日を特定する資料として実際に使われた例です。健診日そのものが初診日になったのか、健診後の受診日を裏づけたのかは、原文で確認してください。
自分の場合を確かめる
- 健診で指摘された日と、そのあと病院で治療のために診療を受けた日を、分けて書き出してください。
- 原則の初診日は、治療のために医師の診療を受けた日です。健診の記録は、初診日を裏づける資料になります。
- 健診の年と受診の年で加入していた制度が違うなら、どちらが初診日かで年金の種類が変わります。先に確認してください。
窓口で聞く一言
年金事務所で「健診で指摘された翌年に受診しましたが、初診日はどちらになりますか」と、資料を持って相談してください。
よくある質問
Q. 健診で「要精密検査」と言われて、すぐ病院に行きました。
A. 精密検査のために医師の診療を受けた日が、初診日になりえます。健診の日ではなく、その受診日です。健診から受診までが短ければ、制度の分かれ目にはなりにくい。
Q. 健診で指摘されたまま、何年も放置していました。
A. 治療のために初めて受診した日が初診日です。放置していた期間は、初診日の前です。ただし、その間に加入制度が変わっていれば(会社員→無職など)、初診日の制度が変わります。
Q. 会社の健診で異常が出ました。会社員の時期を初診日にしたい。
A. 健診の日は原則として初診日になりません。会社員の時期に治療のための受診があれば、その日が初診日です。無ければ、退職後の受診日が初診日で、国民年金の扱いになります。年金事務所で、健診の記録とその後の受診歴を見せて確認してください。
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糖尿病初診日のカルテがないとき薬をもらっていない受診は初診日にならない?出典
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(初診日の定義)、日本年金機構「障害年金の初診日について」(健診日の取扱い)・確認日 2026-09-03
- 当サイト 裁決事例集(91件、争点の内訳)・確認日 2026-09-02