リード(直答)
働いていたら、障害年金はもらえない。そう聞いて、申請を諦めた人。あるいは、生活できないから働いているのに、働いたせいで通らないなら、どうすればいいんだ、と腹が立った人。
先に答えを言います。働いていること自体は、障害年金の対象外になる理由ではありません。国の等級判定ガイドラインには「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない」と、はっきり書いてあります。障害者雇用や就労継続支援A型・B型で働いている場合は、1級・2級の可能性を検討する、とも。
ただし、精神の障害では、働き方の中身は見られます。何時間、どんな仕事を、どんな支えの中で。ここが伝わっていないと、「働けている=軽い」と読まれることがある。
このページは、その「中身」を、どう整理して、どこに書くかの話です。仕事を辞める話ではありません。
審査で本当に見られているのは、この3つ
1. 「働いているか」ではなく「どんな支えの中で、どう働けているか」
ガイドラインが確認するとしているのは、仕事の種類、内容、職場で受けている援助、他の従業員との意思疎通の状況です。障害者雇用か一般雇用か。フルタイムか短時間か。休みがちか。業務を限定してもらっているか。上司や同僚が声をかけてくれているか。帰宅後に動けなくなっていないか。
そして、援助や配慮が当たり前になった環境で働けている場合は、「その援助がなかったらどうなるか」も含めて評価される、とされています。つまり、あなたを支えている仕組みを説明するほど、実態に近い評価になる。
2. 診断書の就労欄と、申立書の就労欄
働いている事実が載る場所は2か所です。主治医が書く診断書の就労状況欄と、あなたが書く病歴・就労状況等申立書。前者には、仕事の種類、勤務日数、職場の援助や配慮が書かれます。後者には、あなた自身の言葉で、働き方の実態を書けます。
この2つが食い違うと、審査で不利に働くことがあります。「週5日フルタイム」と診断書にあって、申立書に「月に5日は休む」とあれば、どちらが本当かが問われる。先に自分の働き方を整理して、それを主治医にも伝え、申立書にも同じ事実を書く。順番はこれです。
3. 身体・内部疾患は、働き方の影響が小さい
ここまでの話は、主に精神の障害についてです。肢体の障害、視覚・聴覚、人工透析や心臓のペースメーカーなど、検査数値や医学的な状態で等級が決まる分野では、働いているかどうかの影響は小さい。人工透析中なら原則2級、という実務があるのはそのためです。自分の障害がどちらの分野かで、このページの読み方が変わります。
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、就労が関わったものを3つ。
就労支援での短時間作業も続かなかった経過で、2級(容認) うつ病の方で、3級とされていた事例です。家族の援助を要する日常生活の状態と、就労支援での短時間の作業も続かなかった経過を合わせて評価され、障害認定日に2級に該当するとして処分が取り消されました。「働こうとしたけれど続かなかった」ことは、働けなかった事実として評価の材料になります。
息切れで外出も制限、「労働に著しい制限」で3級(容認) 肺移植後の間質性肺炎の方で、支給停止とされた事例です。動くと息が切れる、外出が制限される、といった実態から「労働に著しい制限がある」として3級相当と認められ、停止が取り消されました。内部疾患では「軽い労働ならできるか」が物差しになります。
管理職として週4日勤務、3級にも該当せず(棄却) 非定型うつ病の方の認定日請求です。障害認定日の時点で、職場の配慮を受けながら、一般雇用の管理職として週4日勤務していました。日常生活能力も比較的保たれていたとして、3級にも該当しないという処分が維持されました。配慮があっても、一般雇用で責任のある仕事を週4日こなせていた事実は、その時点の状態として評価された、ということです。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
「働いている」の一言で、申立書を終わらせてしまう
申立書の就労状況欄に「〇〇株式会社に勤務」とだけ書いて出す。これがいちばん多い。審査する人は、その一行から「フルタイムで問題なく働いている人」を想像します。
実際のあなたは、たぶん違う。週3日、1日5時間の障害者雇用。電話対応は外してもらっている。月に4〜5日は朝起きられずに休む。昼休みは横になっている。帰ったら風呂に入れず、翌朝そのまま出る。上司が毎朝「今日は大丈夫?」と確認してくれている。
これを、事実のまま書く。「週◯日・1日◯時間」「業務を限定してもらっている(何を)」「欠勤・早退が月◯回」「上司や同僚のフォロー(何を)」「帰宅後どうなるか」。盛る必要はありません。減らさないだけです。
主治医に、仕事の話をしていない
診察で「仕事は?」と聞かれて、「行けてます」で終わる。すると診断書の就労欄には「就労中」と書かれる。休みがちなことも、配慮のことも、先生は知らないまま。
働き方の実態は、申立書に書く前に、主治医に伝えてください。前のページで書いた「3行のメモ」に、仕事の1行を足すだけです。「障害者雇用で週3日・5時間。電話は免除。先月は5日休みました」。診断書と申立書が同じ事実を指していることが、いちばん強い。
「会社に知られるのが怖い」で止まる
障害年金の請求は、あなた(または家族)が年金事務所や市区町村に書類を出す手続きで、勤務先を経由しません。会社に頼む書類も原則ありません。受給が始まっても、年金機構から会社に通知されることはない。手帳や年金のことを会社に申告する義務もありません。
知られる経路があるとすれば、あなた自身が話す場合だけです。話すかどうかは、あなたが決められます。
「もらいながら働くのは、ずるい気がする」
これは制度の話ではなく、気持ちの話です。だから、制度の側から言えることだけ言います。障害年金は、あなたがこれまで納めてきた保険料に対する給付です。働ける日があることと、働けない日があることは、両立します。受給しながら厚生年金に加入して働くことも普通にでき、払った保険料は将来の老齢年金に積み上がる。「もらいながら払うのは二重」ではありません。
働けているぶんを削って申請する必要はない。働けていない部分を、隠さずに出せばいい。それだけです。
収入があると止まる、と思っている
通常の障害年金(20歳以降に初診日)には、本人の所得制限はありません。貯金や資産も審査されません。所得による調整があるのは、20歳前に初診日がある障害基礎年金だけです。それも「働いたらすぐ打ち切り」ではありません。前年の本人所得が一定額を超えた年に、半額か全額が止まる仕組みです。家族の収入は関係ありません。
「収入があるからもらえない」は、たいてい、この20歳前のルールが一人歩きしたものです。
数字で見ると
厚生労働省の令和6年度の抽出調査では、新規に決まった障害年金の70.3%が精神の障害の診断書によるものでした。精神の障害で申請する人の多くは、何らかの形で働いた経験がある人です。「働いているから無理」なら、この数字にはなりません。
障害厚生年金の報酬比例部分は、加入期間が300月(25年)未満なら300月とみなして計算されます。就職して数か月で発症した場合でも、25年勤めた計算で年金額が出る仕組みです。「働き始めたばかりだから、もらってもわずか」ではありません。
よくある質問
Q. フルタイムの一般雇用です。もう無理ですか。
無理とは言えませんが、精神の障害では、一般雇用でフルタイムを問題なくこなせている状態は、等級に該当しにくいのは事実です。ただ「問題なく」の中身が違うことがある。欠勤や早退、業務の限定、周囲の助け、帰宅後の状態。それが実態なら、そのまま書いてください。そのうえで判断が難しければ、年金事務所や社労士に「この働き方でどう見えるか」を相談するのが早い。
Q. 更新のとき、働いていると打ち切られますか。
働いていること自体が打ち切りの理由になるわけではありません。更新でも見られるのは新規のときと同じ、働き方の中身です。就職や復職の報告をためらう必要はありませんが、診断書の就労欄に、配慮や休みの実態が入っているかは、更新のたびに確認してください。
Q. 健康保険の扶養に入っています。年金を受けると外れますか。
税金の上では非課税ですが、健康保険の扶養認定では、障害年金も収入に数えます。国の通知では、障害年金を受けられる程度の障害がある方は年収180万円未満(一般は130万円未満)が基準です。給与と年金の合計で判断されるので、加入先の健康保険に確認してください。
Q. 傷病手当金をもらいながら休職中です。
傷病手当金は通算1年6か月で終わり、障害年金の障害認定日は原則初診日から1年6か月。手当金が尽きるころに、ちょうど請求できる時期が来る設計です。休職中の今のうちに、初診日と納付要件だけ確認しておくと、収入の切れ目を作らずに移行しやすい。詳しくは → 傷病手当金から障害年金へ
次の一歩
今日やることは、自分の働き方を5行で書き出すことです。週何日・1日何時間。免除してもらっている仕事。先月休んだ日数。誰が何を助けてくれているか。帰宅後の状態。
その5行を、次の診察で主治医に渡す。申立書には、同じ5行を、そのまま書く。
自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方
しんどくて手が止まっているなら → 申請がしんどいときの「小分け」の進め方
関連コラム
- 働きながら障害年金はもらえる?「働ける=改善」と誤解されない伝え方(/columns/hatarakinagara)
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出典
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(就労状況の評価、援助・配慮が常態化した環境の考慮) ・ 確認日 2026-08-31
- 日本年金機構「病歴・就労状況等申立書」記入例 ・ 確認日 2026-08-31
- 国民年金法(20歳前傷病の所得制限)・厚生年金保険法(300月みなし) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省 被扶養者認定の収入基準に関する通知 ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「障害年金の業務統計等(令和6年度)」 ・ 確認日 2026-08-31
- 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)