リード(直答)
休職して、傷病手当金で暮らしている。あと何か月で終わるか、カレンダーを数える日が増えた。そのあとどうするか、誰も教えてくれない。
制度は、実は、ここをつなぐように作られています。傷病手当金は、支給開始から通算1年6か月で終わる。障害年金の障害認定日は、原則、初診日から1年6か月。つまり、手当金が尽きるころに、ちょうど障害年金を請求できる時期が来る。
やることは、手当金が終わってから探し始めることではありません。手当金をもらっている今のうちに、初診日と納付要件を確かめて、生活の記録を始めること。それだけで、収入の切れ目をつくらずに移行できる可能性が上がります。そして、退職してから考えよう、は、いちばん避けてほしい順番です。理由は下に書きます。
見られているのは、この3つ
1. 初診日が「在職中」か「退職後」か
同じ症状でも、初診日が会社員のとき(厚生年金加入中)なら障害厚生年金、退職後なら障害基礎年金だけ。厚生年金なら3級があり、報酬比例の上乗せがあり、2級以上なら配偶者の加算もつく。1日の違いで、生涯の額が大きく変わる。
休職中は、会社に在籍していれば厚生年金の被保険者のままです。休んでいた期間に初診日があっても「厚生年金じゃない」とはならない。退職して初めて、国民年金に切り替わる。だから、退職を考えている人ほど、初診日がいつかを先に確かめてください。もし、まだ受診していない不調があるなら、退職前に受診しておく意味は、制度上、非常に大きい。
2. 手当金と年金の「調整」
同じ病気について、健康保険の傷病手当金と障害厚生年金の両方を満額は受け取れません。障害厚生年金が決まると、手当金はその分調整され、年金のほうが少なければ差額の手当金を受け取れる形になります。「もらっている間は申請禁止」ではない。両方が決まった場合に調整されるだけで、受給中の申請は普通にできます。
3. 障害認定日のころの通院
障害年金をさかのぼって請求するには、認定日(初診から1年6か月)の前後3か月の状態を書いた診断書が要ります。休職中は、通院を続けている人が多い。ここは有利です。逆に、退職して保険が変わり、通院が途切れると、認定日の記録が空く。手当金の期間中に、通院を切らさないこと自体が、あとで効きます。
時系列で見る(1本の時間軸)
初診日 — ここで制度が決まる。在職中なら厚生年金。 休職開始・傷病手当金の支給開始 — 通算1年6か月のカウントが始まる。 この期間にやること — 年金事務所で初診日と納付要件を確認(予約制)。生活の記録を始める。通院を切らさない。書類のコピーを取る癖をつける。 初診日から1年6か月 = 障害認定日 — このころに障害年金の請求が可能になる。診断書は認定日以後3か月以内の状態で。 傷病手当金の終了(通算1年6か月) — 障害年金の請求が済んでいれば、審査中。提出から証書まで約3か月、初回振込までさらに1〜2か月。 障害年金の決定・初回振込 — 手当金との調整があれば、健保から通知が来る。
見てのとおり、認定日と手当金終了はほぼ同時期で、年金の審査には4〜5か月かかる。だから、認定日が来たらすぐ出せるように、手当金の期間中に準備を終えておく必要があります。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
退職してから、初めて受診する
いちばん取り返しがつかないつまずきです。在職中に不調があったのに、「休んでからにしよう」「辞めてから病院に行こう」と受診を後回しにして、退職後に初診日ができる。すると、厚生年金の納付歴が何年あっても、障害基礎年金だけになる。3級はなく、上乗せもない。この「闇」を、あとから知る人が本当に多い。不調があるなら、在籍中に受診する。それだけです。
「傷病手当金をもらっているから、年金はまだ」と思う
受給中でも請求できます。両方が決まれば調整されるだけです。むしろ、手当金の終了を見据えて受給中に準備を進めるのが標準的な段取り。会社や健保組合の側から、障害年金の請求を促されることもあります(手当金との調整のため)。それは「切られる」合図ではなく、制度の設計どおりの流れです。
退職して、年金の手続きをしないまま未納にする
退職すると国民年金に切り替わります。手続きをせずに未納が続くと、いまの病気には影響しなくても(納付要件は初診日の前日で判定)、将来の別の病気やけがで納付要件に引っかかる。収入がないなら、免除・猶予の手続きを。免除期間は未納ではありません。
手当金が終わってから、年金事務所に初めて行く
年金事務所の相談は予約制で、初診日の確認、納付記録の確認、必要な診断書の種類の確認と、行く前に準備することが多い。手当金が終わってから初めて行くと、そこから診断書を頼み、申立書を書き、提出して、証書まで3か月、振込までさらに1〜2か月。半年近く、収入がない期間ができる。手当金の残り6か月を切ったら、予約を入れてください。
数字で見ると
傷病手当金は、支給開始から通算1年6か月まで(健康保険法)。障害年金の障害認定日は、原則、初診日から1年6か月。年金の提出から初回振込までは、おおむね4〜5か月。この3つの数字を1本の線に並べると、「手当金の残りが6か月を切ったら年金の準備を始める」が、収入を切らさない最低ラインだと分かります。
障害厚生年金の報酬比例部分は、加入が300月(25年)未満なら300月とみなして計算されます。「入社して間もないから、わずかしか出ない」ではありません。
よくある質問
Q. 休職中に退職を勧められています。退職してから申請すべきですか。
障害年金の請求に「退職していること」という要件はありません。休職中でも在職中でも、初診日・納付要件・障害の状態の3要件を満たせば請求できます。退職という大きな決断をする前に、年金の見通しを立てておくことができます。退職の判断は、年金の見通しが立ってからでも遅くない。
Q. 傷病手当金と障害年金、どちらが得ですか。
同じ病気について両方満額は受け取れず、調整されます。障害厚生年金のほうが少なければ差額の手当金が出るので、「年金を申請したら損」にはなりにくい。切り替えの時期や個別の損得は、加入している健康保険(協会けんぽ・健保組合)と年金事務所の両方で確認できます。
Q. 会社に、年金の申請を知られますか。
請求は本人が年金事務所に出す手続きで、勤務先を経由しません。ただし、手当金との調整の関係で、健保組合には年金の決定が伝わります(会社の人事に伝わるかは健保の運用によります)。→ 働きながら
次の一歩
いま手当金を受けていて、残りが6か月を切っているなら、今日、年金事務所の予約を入れてください。「障害厚生年金の請求の準備で、初診日と納付要件を確認したい」と伝えれば通じます。
まだ余裕があるなら、初診日の日付を確かめて、1年6か月後の日付をカレンダーに書く。それが、あなたの障害認定日です。
退職を考えているなら、その前に一度、このページを読み返してください。
自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方
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出典
- 健康保険法第99条(傷病手当金の支給期間)・第108条(障害厚生年金との調整) ・ 確認日 2026-08-31
- 日本年金機構「障害厚生年金の受給要件」(被保険者期間中の初診日) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生年金保険法(300月みなし) ・ 確認日 2026-08-31