結論
カルテが残っていなくても、申請できます。制度側は、この状況を最初から想定しています。「受診状況等証明書が添付できない申立書」という公式の様式があり、お薬手帳・診察券・第三者証明などの資料で初診日を認める道があります。
初診日の認定は、1枚の証明書ではなく、複数の資料の整合性で判断されます。お薬手帳の調剤記録や、診察券と薬袋で認められた裁決があります。
病院に「残っていません」と言われた瞬間に、家の中を探さずに止まる人が多い。そこが分かれ目です。
なぜ「カルテがないと終わり」と思われているのか
初診日の証明には「受診状況等証明書」を出す、と案内されるからです。これは初診の病院に書いてもらう書類で、カルテがなければ書けません。書けない=証明できない=申請できない、と繋がって見えます。
でも、この証明書は「原則の方法」であって、唯一の方法ではありません。制度は、カルテの保存期限が切れて残っていない状況を、最初から織り込んでいます。
制度ではこうなっている
カルテの保存期限は5年
医師法は、診療録の保存期間を5年と定めています。5年を過ぎたカルテが残っていないのは、病院の落ち度でも、あなたの落ち度でもありません。初診から10年、20年たって申請する人が普通にいる制度で、カルテがないケースは例外ではなく、想定の内です。
公式の様式がある
日本年金機構は「受診状況等証明書が添付できない申立書」という様式を用意しています。初診の病院で証明書が取れない理由と、その病院に通っていた時期を書き、それを裏づける参考資料を添えます。
参考資料になるもの
お薬手帳(調剤の記録)、診察券、薬袋、領収書、診療明細書、健康保険の医療費通知、身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳の申請時の診断書の写し、生命保険の給付金請求時の診断書、当時の日記や家計簿。2番目以降に受診した病院の初診時の記録に、最初の病院名と時期が書かれていることもあります。
これらは1つで足りるとは限りません。複数を重ねて、「この時期に、この症状で、この病院にかかっていた」ことの整合性を示します。
第三者証明
初診日のころの状況を知る第三者(三親等内の親族を除く)による申立書も、資料の1つです。原則2人分。学校の先生、職場の同僚、友人、隣人、民生委員などに書いてもらいます。第三者証明だけで認められることもあれば、他の資料と合わせて認められることもあります。
数字で見ると
当サイトが整理した裁決事例91件のうち、争点が「初診日」だったものは35件です。初診日の証明は、審査で争いになる2番目に多い場所で、それだけ多くの人が「カルテがない」と向き合っています。
医師法の保存期間5年に対して、障害年金の請求は初診から何十年後でも可能です。制度の側が、証明書が取れない期間のほうが長いことを前提にしている、と言えます。
家の中を、どこから探すか
病院に断られた日に、家で探すものを順に挙げます。
1つ目、お薬手帳。いちばん強い資料です。調剤日と薬の名前が並んでいるので、いつ、どんな症状の薬をもらっていたかが分かります。古い手帳も捨てないでください。
2つ目、診察券と薬袋。病院名と、場合によっては初診日の記載があります。引き出しや古い財布を確かめてください。
3つ目、健康保険の医療費通知。健康保険組合や協会けんぽから届く通知に、受診した医療機関名と月が載っています。
4つ目、2番目の病院の記録。転院先の初診時に「以前は◯◯医院に通っていた」と話していれば、それがカルテに書かれています。転院先には、まだカルテが残っていることが多い。
5つ目、当時の手帳、日記、家計簿、スマホの写真やカレンダー。受診日のメモや、薬の写真が残っていることがあります。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
うつ病・診察券と薬袋(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 診察券と、初診時に処方された抗うつ薬の薬袋などから、申し立てた受診日が初診日と認められ、「初診日を確認できない」とした処分が取り消されました。
統合失調症・古い診療録がない(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 古い診療録が残っていなくても、後の病院の診療録、入院中に届いた消印つきの手紙、院内大会の賞状などから、遅くとも特定の日には精神科病院に入院していたと認定されました。カルテ以外の資料の整合性で初診日が認められた例です。
統合失調症・家族の話で作られた診断書(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 認定日請求で、カルテの保存期限切れのため家族の話などをもとに作成された診断書は、「作成経過に照らし認定困難」とされ、却下が維持されました。カルテがなくても道はありますが、当時の状態を示す資料が無いまま診断書だけ作っても認められない、という限界も示しています。
自分の場合を確かめる
- お薬手帳・診察券・薬袋・領収書・診療明細・健康保険の給付記録を、年ごとに分けて探してください。
- 病院に「カルテ廃棄」と言われても、受付台帳や会計データが残っていることがあります。回答は書面でもらってください。
- 2番目以降に受診した病院の紹介状や初診時の記録に、最初の病院名と時期が書かれていることがあります。
窓口で聞く一言
年金事務所で「受診状況等証明書が添付できない申立書を使いたい」と伝え、必要な参考資料を確認してください。
よくある質問
Q. 病院が廃院になっています。
A. 廃院でも、カルテが地域の医師会や引き継いだ医療機関に保管されていることがあります。まず保健所か医師会に問い合わせてください。無ければ、申立書と参考資料の道です。
Q. 参考資料が1つしかありません。
A. 1つでも出してください。認められるかは資料の内容と整合性によります。合わせて、第三者証明を頼める人を探してください。三親等内の親族は頼めませんが、当時の友人や先生は対象です。
Q. 初診日を、証明できる2番目の病院の日にしてはいけませんか。
A. 初診日は事実として決まるもので、選べません。2番目の病院の日を初診日として申告し、あとから最初の病院の記録が出てくると、矛盾になります。分からないときは、年金事務所で資料を見せて相談してください。
次に読む
初診日のカルテがないとき初診日のカルテが残っていないとき第三者証明の頼み方出典
- 医師法第24条第2項(診療録の保存期間5年)・確認日 2026-09-03
- 日本年金機構「受診状況等証明書が添付できない申立書」様式と記入上の注意・確認日 2026-09-03
- 日本年金機構「初診日を明らかにすることができる書類」(参考資料の例、第三者証明)・確認日 2026-09-03
- 当サイト 裁決事例集(91件、争点の内訳)・確認日 2026-09-02