結論
初診日を「〇年〇月〇日」と言えなくても、申請できます。
資料によって「この期間の中に初診日がある」と確認でき、その期間の始めから終わりまで同じ年金制度(国民年金か厚生年金か)に加入していて、期間内のどの日でも納付要件を満たしていれば、初診日を認める取り扱いがあります。平成27年10月から、国の通知で定められています。
制度が見ているのは「日付の記憶」ではなく「資料の整合性」です。
なぜ「日付が分からないと無理」と思われているのか
請求書に「初診日」を書く欄があり、そこに年月日を書く形になっているからです。空欄では出せないように見えます。
もうひとつは、病院に断られた経験です。「初診日の証明を」と頼んで「カルテがないので書けません」と言われると、日付が証明できない=終わり、という受け止めになります。
制度ではこうなっている
一定期間内に初診日があると認められる場合
平成27年9月の通知(年管管発0928第6号)で、初診日を明らかにする書類がなくても、次の場合には初診日を認めることになりました。
ひとつは、参考資料によって「初診日がこの期間の中にある」と確認できる場合。その期間の始めと終わりが同じ年金制度で、期間内のどの日でも納付要件を満たしていれば、その期間のどこかを初診日として認めます。
もうひとつは、期間の中で制度が変わっていても(たとえば途中で退職して国民年金に移っていても)、他の資料と合わせて、期間内のどの日でも納付要件を満たしていれば認める場合です。
期間を絞る資料
日付の記憶ではなく、生活の節目で絞ります。退職の時期は雇用保険や年金記録で、引っ越しは住民票の異動で、入学や結婚は証明書で分かります。「退職の前に通い始めた」「引っ越す前の町の病院だった」という記憶が、資料で裏づけられれば、期間になります。
診察券、お薬手帳、領収書、健康保険の給付記録、生命保険の給付記録、母子手帳、学校の健康診断の記録も、参考資料になります。
同じ制度に入っていたことの確認
絞った期間の全体で同じ制度に加入していたかは、年金事務所の記録で確認できます。会社員の期間なら厚生年金、それ以外なら国民年金です。期間全体が厚生年金なら、障害厚生年金の請求になります。
納付要件の確認
期間内のどの日を初診日としても納付要件を満たしていることが条件です。これも年金事務所で一緒に確認できます。
数字で見ると
当サイトが確認した裁決91件のうち、初診日が争点になったものは35件です。争点として2番目に多く、初診日の証明で困る人が多いことを示しています。そのうち容認された事例には、下に書くように、古いカルテがなくても他の資料で初診日を認めたものがあります。
医師法で診療録の保存期間は5年です。5年を過ぎた記録が残っていないのは、あなたの落ち度ではありません。制度側もそれを前提に、この取り扱いを作っています。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
統合失調症・事後重症請求(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 古い診療録が残っていなくても、あとの病院の診療録、入院中に届いた消印付きの手紙、院内の大会の賞状などから「遅くともこの日には精神科病院に入院していた」と認定し、初診日不明とした原処分が取り消されました。日付そのものではなく、「遅くともこの日には」という形で認められた例です。
統合失調症・新規裁定(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 初診日を確認できないとして却下された請求について、複数の医療機関の資料を総合して初診日を認定し、2級に該当するとして原処分が取り消されました。ひとつの病院の証明がなくても、資料を合わせれば認められることがあります。
自分の場合を確かめる
- 退職・引っ越し・入学・結婚など、生活の節目で「その前か後か」を絞ってください。日付ではなく期間で十分です。
- 絞った期間の全体を通じて、同じ年金制度(国民年金か厚生年金か)に加入していたかを、年金事務所の記録で確認してください。
- 期間内のどの日でも納付要件を満たしていることが条件になります。年金事務所で一緒に確認できます。
窓口で聞く一言
年金事務所で「初診日が〇年〇月から〇年〇月の間にあるのは確実です。この形で請求できますか」と相談してください。
よくある質問
Q. 請求書の初診日の欄には、何を書けばいいですか。
A. 年金事務所と相談して、資料で確認できる期間のうち、根拠のある日を書きます。「〇年〇月頃」という形で申立書に事情を書き添えることもあります。窓口で書き方を確認してください。
Q. 絞った期間の途中で、会社を辞めています。
A. 制度が変わっている場合でも、期間内のどの日でも納付要件を満たしていれば認められる取り扱いがあります。ただし、障害基礎年金になるか障害厚生年金になるかが変わるので、年金事務所で確認してください。
Q. 第三者証明も一緒に出したほうがいいですか。
A. 出せるなら出してください。第三者証明は、他の資料と合わせて初診日を判断する材料になります。三親等内の親族には頼めません。詳しくは「第三者証明は親に頼めばいい?」の記事を読んでください。
次に読む
初診日が証明できない・カルテがないとき第三者証明は親やきょうだいに頼めばいい?証明書が取れない=嘘だと疑われる?出典
- 厚生労働省年金局「障害年金の初診日を明らかにすることができる書類が添付できない場合の取扱いについて」(平成27年9月28日 年管管発0928第6号)・確認日 2026-09-03
- 日本年金機構「初診日を明らかにすることができる書類」「受診状況等証明書が添付できない申立書」・確認日 2026-09-03
- 医師法第24条(診療録の保存5年)・確認日 2026-09-03
- 当サイト 裁決事例集(91件、初診日が争点35件)・確認日 2026-09-02