結論
影響します。老齢年金の繰上げ請求をすると、その日以後は、事後重症などによる障害基礎年金・障害厚生年金を請求できなくなります。日本年金機構が明示しています。
繰上げは取り消せません。減額も一生続きます。持病があって悪化の可能性がある人にとって、繰上げは、障害年金という選択肢を失う決断です。
繰上げを考えているなら、先に障害年金の可能性を年金事務所で確認してください。
なぜ「影響しない」と思われているのか
老齢年金と障害年金が、別の制度に見えるからです。「老齢年金を早くもらう」と「障害で年金をもらう」は、別の話に聞こえます。
もうひとつは、繰上げの説明が「減額」に集中していることです。繰上げの案内には減額率が大きく書かれていますが、障害年金への影響は注意書きの一行で、読み飛ばされます。
制度ではこうなっている
繰上げとは
老齢基礎年金・老齢厚生年金は、原則65歳からです。60歳から64歳の間に前倒しで受け取るのが繰上げです。1か月早めるごとに0.4%減額され(昭和37年4月2日以降生まれの人)、60歳から受けると24%の減額です。この減額は、一生続きます。
繰上げると、障害年金の請求ができなくなる
繰上げ請求をした日以後は、事後重症による請求、基準障害による請求、20歳前の障害基礎年金の請求などができなくなります。繰上げによって、その時点から老齢年金の受給者として扱われるためです。
繰上げの前に障害認定日があり、認定日時点で等級に該当していた場合の認定日請求は、繰上げ後でもできることがあります。ただし、事後重症(認定日には該当せず、あとから悪化した)の道は閉じます。
65歳前は一種類しか受け取れない
65歳になるまでは、障害年金と老齢年金を同時には受け取れません。繰り上げた老齢年金を受けながら、障害年金の額改定を求めることも、原則としてできません。
障害年金のほうが有利な場合が多い
障害基礎年金2級は年847,300円で、老齢基礎年金の満額と同じ額です(令和8年度)。繰上げで24%減った老齢基礎年金より、はるかに多くなります。しかも障害年金は非課税で、1級・2級なら国民年金の保険料も法定免除です。
数字で見ると
老齢基礎年金の満額は年847,300円です(令和8年度)。60歳で繰り上げると、1か月あたり0.4%・60か月で24%減り、643,948円になります(昭和37年4月2日以後生まれの場合)。この額が一生続きます。
障害基礎年金2級は、同じ847,300円を減額なしで受け取れます。1級なら1,059,125円です。60歳で持病が悪化した人が、繰上げをしていなければ障害年金2級で847,300円、繰上げをしていれば老齢年金643,948円で、障害年金の道は閉じたまま、という差になります。
自分の場合を確かめる
- 繰上げ請求をすると、その日以後は事後重症などによる障害年金を請求できなくなります。取り消しはできません。
- 持病があって悪化の可能性があるなら、繰上げの前に障害年金の可能性を年金事務所で確認してください。
- 繰上げによる減額は一生続きます。障害年金の道を閉じることと合わせて、二重の不利になりえます。
窓口で聞く一言
年金事務所で「繰上げを考えていますが、先に障害年金の請求ができるか確認したい」と伝えてください。
よくある質問
Q. すでに繰り上げてしまいました。障害年金はもう無理ですか。
A. 事後重症による請求はできません。ただし、繰上げの前に障害認定日があって、その時点で等級に該当していた場合の認定日請求は、できることがあります。年金事務所で「認定日請求の可能性」を確認してください。
Q. 障害年金を受けている人が、老齢年金を繰り上げることはできますか。
A. できますが、65歳前は一種類しか受け取れないので、繰り上げても意味がありません。障害年金を受けている人は、65歳まで障害年金を受け、65歳からは障害基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせなどを選ぶのが一般的です。
Q. 収入が減って、60歳から年金が必要です。
A. 持病があるなら、繰上げの前に、まず障害年金の請求ができるかを確認してください。障害年金が難しいと分かってから繰上げを判断しても、遅くはありません。繰上げは、あとから取り消せません。
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いくらもらえる?65歳を過ぎたら無理?さかのぼる請求といまの請求はどちらか一方?出典
- 日本年金機構「老齢年金の繰上げ受給」(繰上げの注意点: 障害年金の請求ができなくなること)・確認日 2026-09-03
- 国民年金法附則第9条の2の3(繰上げ受給者の障害基礎年金の制限)・確認日 2026-09-03
- 厚生労働省「令和8年度の年金額」・確認日 2026-09-02