よくある誤解

「入院していないと、障害年金は通らない」

入院していないと障害年金は通らない? — 入院は要件ではなく、見られるのは生活の制限の程度です

・ 確認日

結論

入院していなくても、障害年金は通ります。入院は要件ではありません。通院だけでも、在宅で過ごしていても、日常生活や労働にどれだけ支障があるかで判断されます。

認定基準が見ているのは、治療の場所ではなく、生活の制限の程度です。精神の障害なら日常生活能力の7項目と程度、内部疾患なら一般状態区分が物差しで、入院の有無はどちらにも入っていません。

「入院するほどではないから」と申請を見送る人がいます。実際には、入院せずに家で動けない状態が続いている人のほうが多い。

なぜ「入院していないと」と思われているのか

「重い病気=入院」という感覚があるからです。入院歴があれば重さの証明になる、という発想が、逆に「入院歴がなければ軽いと見られる」に変わります。

もう1つは、身体の障害との混同です。手術や長期入院を伴う病気のイメージが、精神の障害や内部疾患にも当てはめられています。

制度ではこうなっている

認定基準に「入院」の要件はない

「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の各節に、入院を要件とする記載はありません。精神の障害の認定は、日常生活能力と労働能力の制限の程度で行われます。内部疾患(心臓・腎臓・肝臓・呼吸器・糖尿病など)は、検査数値と一般状態区分で行われます。

精神の障害の物差し

診断書の日常生活能力の判定7項目(適切な食事、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、通院と服薬、他人との意思伝達及び対人関係、身辺の安全保持及び危機対応、社会性)と、日常生活能力の程度(1〜5)。この組み合わせで目安が決まります。7項目のどこにも「入院」はありません。

内部疾患の物差し

一般状態区分は、「無症状で社会活動ができる」から「身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられる」までの5段階です。在宅で就床していれば該当する区分があり、入院は条件ではありません。

入院歴があると、どう見られるか

入院歴は、経過の一部として診断書に書かれます。重症だった時期の証拠にはなりますが、いまの等級を決めるのは、いまの状態です。過去に入院していても、いまの生活の制限が軽ければ等級は軽くなります。逆も同じです。

数字で見ると

令和6年度に新しく決まった障害年金のうち、精神の障害の診断書によるものは70.3%でした。精神の障害の多くは外来治療で、入院歴のない人が大半を占めると考えられますが、その内訳は統計に出ていません。ただ、この割合の中に入院歴のない人が多数含まれていることは、制度の運用から明らかです。

精神の障害で不支給になった事案の75.3%は、国の「目安」では等級に届いていたのに、総合評価で非該当になったものでした。落ちる原因は入院歴の有無ではなく、診断書の記述欄と申立書に生活の実態が載っていないことです。

通院だけの人が、何を書くか

入院歴の代わりに書くのは、家での状態です。通院の頻度と、通院に付き添いが要るか。家で動けない日が月に何日あるか。食事・入浴・洗濯・買い物のうち、できていないものは何か。誰の助けを、どれくらい受けているか。

これを申立書に、期間ごとに書きます。診断書には主治医が書きますが、主治医は家を見ていません。診察で伝えるか、紙に書いて渡してください。

「入院するほどではないが、家では何もできない」という状態は、それ自体が実態です。入院歴を言い訳にせず、その実態を書いてください。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

乳癌・化学療法後の倦怠感(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 入院ではなく通院での化学療法を受けながら、強い全身倦怠感、手足のしびれ、家事や外出・労働の制限を総合して、3級に該当するとされました。在宅での生活の制限が、そのまま等級の根拠になっています。

重症筋無力症・診察時は筋力正常(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 診察時の瞬間的な筋力の正常所見だけでなく、易疲労性、時間帯による筋力の変動、日常動作の著しい制限を評価して2級に該当するとされ、3級の処分が取り消されました。診察室で見える状態と、家での状態が違う人の例です。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 通院だけの人は、通院の頻度と、通院に付き添いが要るかを申立書に書いてください。
  • 家で動けない日がどれくらい続いているかを、月ごとに数えて書いてください。入院歴の代わりになる実態です。
  • 精神の障害なら日常生活能力の7項目、内部疾患なら一般状態区分が物差しです。入院の有無はどちらにもありません。

窓口で聞く一言

主治医に「入院はしていませんが、家では〇〇の状態です」と伝え、診断書の日常生活の欄に反映してもらってください。

よくある質問

Q. 通院も月1回だけです。少なすぎて不利ですか。

A. 通院の回数だけで決まりません。月1回の通院でも、家での状態が重ければ、それが実態です。通院が少ない理由(外出できない、付き添いがいない)があれば、それも申立書に書いてください。

Q. 入院歴があります。有利ですか。

A. 経過の一部として書かれますが、等級を決めるのはいまの状態です。退院後に生活が安定していれば、入院歴があっても等級は軽くなります。

Q. 訪問看護を受けています。入院の代わりになりますか。

A. 代わりというより、支援を受けて生活している実態そのものです。利用の記録を残し、診断書と申立書に書いてください。

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日常生活の7項目うつ病・双極性障害症状を重く見せないと通らない?

出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(精神の障害・内部疾患の認定要領、一般状態区分表)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(精神 70.3%、目安では届いていたのに非該当になった事案 75.3%)・確認日 2026-09-02
  • 日本年金機構 診断書(精神の障害用)様式・確認日 2026-09-03
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