よくある誤解

「症状を重く見せないと、通らない」

症状を重く見せないと通らない? — 落ちる原因の多くは「盛らなかった」ではなく「家の状態が伝わっていない」です

・ 確認日

結論

症状を重く見せる必要はありません。そうすべきでもありません。演じた症状は、診療の記録と食い違います。

必要なのは、ふだんの状態が、漏れなく、事実のまま、診断書と申立書に載ることです。落ちる原因の多くは「盛らなかった」ではなく、「家での状態が伝わっていない」ことです。

診察の日だけ身支度を整えて「変わりありません」で終える。これが、いちばん多い伝わらない形です。

なぜ「重く見せないと」と思われているのか

不支給の話を聞くと、「軽く見られたから落ちた」と解釈するからです。そこから「重く見せれば通る」という逆算が生まれます。SNSには「◯級を取る書き方」という情報もあり、それを見て不安になる人がいます。

でも審査は、書類の整合性で行われます。診断書、申立書、診療の記録、就労の状況。これらが食い違えば、信用されません。演じた症状は、どこかで食い違います。

制度ではこうなっている

審査は書類の整合性

障害年金の審査は、提出された書類で行われます。面接はありません。診断書に書かれた日常生活能力、申立書に書かれた生活の経過、そして必要に応じて照会される診療の記録。これらの整合性が見られます。

「ふつうの日」が基準

診断書の日常生活能力の欄は、「単身で生活するとしたら可能かどうか」を前提に、ふだんの状態を評価するものです。調子のいい日でも、最悪の日でもなく、ふつうの日です。診察の日だけ整えて行くと、医師にはその日の状態しか見えません。

目安表の仕組み

精神の障害では、診断書の日常生活能力の7項目の平均と、程度の組み合わせで、等級の目安が決まります。「盛る」のではなく、7項目それぞれについて、実態が正しく書かれているかが問われます。1つの項目を大げさに書いても、他の項目や経過と合わなければ、全体の整合性が崩れます。

数字で見ると

精神の障害で不支給になった事案のうち、75.3%は、国の「目安」では等級に届いていたのに、総合評価で非該当になったものでした。「盛らなかったから落ちた」のではありません。丸は届いていて、その根拠になる記述と申立書が生活と合っていなかった、ということです。

令和6年度の再認定304,456件のうち、96.7%は等級が継続しました。継続した人は、演じているわけではありません。実態が診断書に載り続けているだけです。

「盛る」と「伝える」の違い

盛るとは、ないことを言うことです。「一人で外出できない」と言いながら、一人で通院している。「金銭管理ができない」と言いながら、家計を仕切っている。診療の記録や申立書の他の部分と、必ず食い違います。

伝えるとは、あることを漏らさず言うことです。「通院は一人で来ているが、帰りに買い物ができず、家に着くと動けなくなる」「家計は自分でやっているが、月に2回は支払いを忘れて督促が来る」。事実であり、実態であり、診断書に載るべき情報です。

家での状態を、日付つきで記録してください。起きられた時刻、食事の回数、外出できたか、1行ずつで足ります。次の診察で、その記録を渡します。医師は診察室しか見ていないので、家の状態は伝えなければ書かれません。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

網膜剥離・検査結果と病態の不整合(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 視力・視野の検査結果と、傷病の病態との不整合から、診断書の数値をそのまま障害状態とすることはできないとされ、不支給が維持されました。診断書に重い数値が書かれていても、病態と合わなければ信用されません。

統合失調症・21年後と全く同じ内容の診断書(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 障害認定日から21年後の状態と全く同じ内容で作成された診断書は不自然で、当時の診療録から日常生活能力を具体的に認定できないとして、不支給が維持されました。審査は整合性を見ています。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 「調子のいい日」ではなく「ふつうの日」の状態を主治医に伝えてください。診察日だけ身支度を整えると、実態より軽く記録されます。
  • 家での状態を日付つきで記録してください。起きられた時刻、食事の回数、外出できたか、を1行ずつで十分です。
  • 診断書を受け取ったら、日常生活能力の7項目と「程度」の欄が、記録した実態と合っているかを確認してください。

窓口で聞く一言

主治医に「家では〇〇ができていません。診断書に反映できますか」と、記録を見せて伝えてください。

よくある質問

Q. 診断書に実態より軽く書かれていました。どうすればいいですか。

A. 提出前なら、主治医に記録を見せて、事実と違う箇所を伝えてください。医師が事実と認めれば修正されます。書き直しを強要することはできませんが、伝えなければ変わりません。

Q. 「盛る」と「伝える」の境目が分かりません。

A. 事実かどうかです。実際に起きていることなら、どれだけ重くても伝えてかまいません。起きていないことを言うのが「盛る」です。迷ったら、日付つきの記録に書いてあることだけを伝えてください。

Q. 主治医が短い診察で、話す時間がありません。

A. 紙に書いて渡してください。読み上げる必要はありません。「診断書の参考にしてください」と一言添えて、記録を渡すだけで足ります。

次に読む

診断書で困ったとき日常生活の7項目診断書と実態が違うとき

出典

  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」・厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(目安では届いていたのに非該当になった事案 75.3%、再認定の継続 96.7%)・確認日 2026-09-02
  • 厚生労働省・日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(目安表の仕組み)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構 診断書(精神の障害用)様式の記入上の注意・確認日 2026-09-03
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