結論
どちらか一方ではありません。
障害認定日(初診日から1年6か月後)にさかのぼる請求をするとき、「認定日の時点では等級に該当しない」と判断された場合に備えて、いまの状態での請求(事後重症)を併せて行う出し方が、実務上あります。
二つの請求は、判断する時点が違うだけです。認定日で認められればさかのぼって支払われ、認められなくても、現在の状態で認められれば請求の翌月分から支払われます。
なぜ「どちらか」と思われているのか
請求書の様式に「障害認定日による請求」「事後重症による請求」という選択があるからです。どちらかに丸をつける形に見えます。
もうひとつは、「さかのぼりを狙って失敗したら、全部だめになる」という怖さです。遡及を狙うか、確実にいまで出すか、で何か月も迷う人がいます。
制度ではこうなっている
認定日請求と事後重症請求
認定日請求は、障害認定日の時点で等級に該当していたことを、当時の診断書で示す請求です。認められれば、認定日の翌月分からさかのぼって支払われます(ただし時効で5年分まで)。
事後重症請求は、認定日には該当しなかったが、その後悪化して現在は該当している、という請求です。認められれば、請求した月の翌月分からの支払いです。
併せて出す形
認定日請求を出すとき、認定日時点の診断書と現在の診断書の2通をそろえて、「認定日で非該当なら、現在の状態で事後重症として審査してほしい」という趣旨で出す方法があります。年金事務所で「認定日請求と事後重症請求を併せた形で出せますか」と確認してください。
この形で出せば、認定日で非該当になっても、改めて事後重症請求を出し直す手間と、その間の空白がなくなります。事後重症は請求の翌月分からなので、出し直しが遅れるほど、受け取れない月が増えます。
診断書は2通
認定日時点の診断書は、認定日から3か月以内の受診にもとづくものが必要です。現在の診断書は、請求日前3か月以内のものです。文書料は2通分かかります。認定日から1年以上経っている場合は、両方が必要です。
さかのぼれるのは5年分
認定日請求が認められても、受け取れるのは請求日から直近5年分までです。年金の支払いを受ける権利は5年で時効にかかります。10年前の認定日で認められた場合、最初の5年分は受け取れません。
審査請求とは別
併せて出した結果、認定日は非該当で事後重症だけ認められた場合、認定日の部分について審査請求(3か月以内)をすることもできます。下に書く裁決には、そのようにして認定日の判断を争った例があります。
数字で見ると
障害基礎年金2級は年847,300円です(令和8年度)。認定日請求が認められて5年分さかのぼれば、単純計算で400万円を超えます。事後重症だけの場合は、請求の翌月分からです。この差が、さかのぼりを狙う理由です。
一方で、当サイトが確認した裁決91件のうち、障害の程度・等級該当性が争点になったものは57件です。認定日の状態の証明で争いになる例は多く、認定日と現在の両方で出しておく意味はここにあります。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
気分変調症・認定日請求と事後重症請求(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 障害認定日には等級非該当とされた一方で、裁定請求日にはヘルパーを要する生活状況などから2級に該当するとし、事後重症の部分を3級とした原処分が取り消されました。認定日で認められなくても、請求日の状態で認められた例です。
複数の障害・認定日請求と事後重症請求(令和7年、原文(厚労省PDF)) — 20歳到達日による主位的な請求と、事後重症の予備的な請求が争われました。主位的請求は棄却されましたが、裁定請求日の複数の障害を併合して1級に該当するとし、予備的請求の原処分が取り消されました。二つの請求を重ねて出しておいたことで、片方が認められた形です。
自分の場合を確かめる
- 障害認定日(初診日から1年6か月後)時点の診断書と、現在の診断書の2通を用意します。文書料も2通分です。
- 認定日時点で非該当と判断されても、現在の状態で事後重症として認められる出し方が実務上あります。
- 認定日にさかのぼれた場合、受け取れるのは請求日から直近5年分までです。
窓口で聞く一言
年金事務所で「認定日請求と事後重症請求を併せた形で出せますか」と、提出前に確認してください。
よくある質問
Q. 認定日の頃に通っていた病院にカルテがありません。
A. 認定日時点の診断書が書けなければ、認定日請求はできません。その場合は事後重症請求になります。ただし、認定日の頃に別の病院にかかっていれば、そこの記録で書けることがあります。
Q. 先に事後重症で出して、あとから認定日請求に切り替えられますか。
A. 事後重症で決定が出たあとでも、認定日時点の診断書がそろえば、認定日請求をやり直せる場合があります。ただし、受け取れるのはその請求日から5年分までなので、遅くなるほど減ります。最初から併せて出すほうが確実です。
Q. 認定日で非該当になったら、事後重症の審査に不利になりますか。
A. 判断の時点が違うので、認定日で非該当だったこと自体が、現在の状態の判断に影響することはありません。現在の診断書に、今の生活の実態が書かれているかが問われます。
次に読む
さかのぼって請求したい診断がついた日が初診日?時効で無理?出典
- 日本年金機構「障害認定日による請求」「事後重症による請求」・確認日 2026-09-03
- 国民年金法第102条、厚生年金保険法第92条(時効5年)・確認日 2026-09-03
- 厚生労働省「令和8年度の年金額」・確認日 2026-09-02
- 当サイト 裁決事例集(91件、障害の程度が争点57件)・確認日 2026-09-02