結論
初診日は、その症状で初めて医師の診療を受けた日です。診断名が確定した日ではありません。眠れなくて内科に行った日、頭痛で近所の医院にかかった日が、初診日になることがあります。
精神科かどうか、薬が出たかどうかは条件ではありません。制度は「診療」を起点にしています。
「正式にうつ病と言われたのは去年」と申告して、あとから昔の内科の記録が出てくると、矛盾になります。初診日がずれると、加入していた制度(国民年金か厚生年金か)と、納付要件を見る日も動きます。
なぜ「病名がついた日」と思われているのか
「初診」という言葉から、「その病気の診察を初めて受けた日」を想像するからです。病名が付いた日が「その病気の最初」に感じられます。
でも制度が見ているのは病名ではなく、症状です。不眠、食欲不振、動悸、頭痛、倦怠感。こうした症状で最初に受診したのが内科でも、それがのちに精神疾患と診断される流れの中にあれば、そこが初診日です。
制度ではこうなっている
初診日の定義
障害認定基準は、初診日を「障害の原因となった傷病につき、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日」と定めています。ポイントは3つ。「傷病につき」なので同じ症状の流れであること、「医師または歯科医師」なので医師でない相談は入らないこと、「診療」なので薬の有無は問わないこと。
同じ症状の流れ
内科で不眠を診てもらい、その後に精神科でうつ病と診断された。この場合、内科の受診が「同じ傷病の流れ」にあれば、内科の日が初診日です。逆に、まったく別の病気(たとえば骨折)で受診した日は、精神疾患の初診日にはなりません。
同じ流れかどうかは、経過を見て判断されます。だから、昔の内科の記録を「関係ない」と自己判断で外すのは危険です。
初診日で何が決まるか
初診日は、3つのことを決めます。1つ目、その日にどの制度に入っていたか(国民年金なら障害基礎年金、厚生年金なら障害厚生年金)。2つ目、納付要件を判定する日(初診日の前日時点)。3つ目、障害認定日(初診日から1年6か月後)。
初診日が1年ずれると、この3つが全部動きます。会社員だった時期の内科受診が初診日なら障害厚生年金、退職後の精神科受診が初診日なら障害基礎年金、という違いが出ることもあります。
数字で見ると
当サイトが整理した裁決事例91件のうち、争点が「初診日」だったものは35件で、「障害の程度」に次いで2番目に多い争点です。初診日をどこに置くかで、請求できる年金の種類と納付要件が変わるので、ここで争いになります。
受診歴を、どう洗い出すか
自分の受診歴を、症状ごとではなく時系列で書き出します。精神科だけでなく、内科・婦人科・耳鼻科・整形外科も含めて。
手がかりは、お薬手帳、診察券、健康保険の医療費通知、家計簿の医療費、スマホのカレンダー。「あのころ眠れなくて内科に行った」という記憶があれば、その病院名と時期をメモします。
洗い出したら、年金事務所の相談で見せてください。どの受診が初診日に当たるかは、資料を見ながら一緒に確認できます。自分で決めて申告する前に、確かめるのが安全です。
同じ状況の人が、どうなったか
社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。
頸髄症・前医では腰椎ヘルニアと診断(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 腰椎ヘルニアと診断された症状と、後の頸髄症を、症状の継続性と医学的関連性から同一傷病と認め、初診日は前の医師の受診時とされました。病名が違っても、同じ症状の流れなら最初の受診が初診日です。
統合失調症・不登校時の受診(令和2〜3年、原文(厚労省PDF)) — 不登校のときの受診を初診日とする主張に対し、当時は統合失調症の症状や診断が認められず、その後に通常の社会生活を送っていたことから、初診日とは認められませんでした。古い受診なら何でも初診日になるわけではなく、「同じ傷病の流れ」であることが要ります。
自分の場合を確かめる
- 眠れない・食べられない・体調不良で内科や婦人科にかかった日がないか、お薬手帳と診察券で確かめてください。
- その受診が「同じ症状の流れ」にあるかが問題です。まったく別の病気の受診は初診日になりません。
- 初診日がずれると、加入していた制度(厚生年金か国民年金か)と、納付要件を見る日も動きます。
窓口で聞く一言
年金事務所で「〇年〇月に内科を受診していますが、これが初診日になりますか」と、資料を持って相談してください。
よくある質問
Q. 内科では「疲れでしょう」と言われただけです。それでも初診日ですか。
A. なりえます。診断名が付かなくても、その症状について医師の診療を受けていれば診療です。あとで精神疾患の流れと判断されれば、その日が初診日になります。
Q. 内科の日を初診日にすると、不利になりますか。
A. 有利・不利は、その日に入っていた制度と納付状況で決まります。会社員だった時期なら障害厚生年金になり、有利になることもあります。逆もあります。だから、自己判断で外さず、年金事務所で確かめてください。
Q. 初診の病院がもう無いときは。
A. 廃院でも、記録が別の医療機関に引き継がれていることがあります。無ければ、受診状況等証明書が添付できない申立書と、参考資料(お薬手帳・診察券など)で初診日を申し立てます。カルテがないときの記事にまとめてあります。
次に読む
初診日のカルテがないとき初診日がわからないときカルテが残っていないなら申請できない?出典
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第1章 第1節(初診日の定義)・確認日 2026-09-03
- 日本年金機構「障害年金の初診日について」・確認日 2026-09-03
- 当サイト 裁決事例集(91件、争点の内訳)・確認日 2026-09-02