障害年金が止まったとき — 支給停止の3つの理由と、戻し方

リード(直答)

「打ち切りになった」と言われるものの多くは、支給停止です。受給権は残っていて、戻せることがあります。

偶数月の15日、いつもの振込がない。あるいは、「支給停止」と書かれた通知が届いた。頭が真っ白になって、何から確認すればいいか分からない。

最初に、落ち着いて分けてほしいことがあります。「止まった」には、まったく違う3種類があります。①更新の書類が未提出や不備で、事務的に一時止まっている。②更新の審査で、障害の状態が等級に該当しないと判断された。③20歳前の年金で、前年の所得が基準を超えた。

①は、出せば再開します。②は、不服申立てと、悪化したときの再開手続きがある。③は、翌年の所得で戻る。どれも「終わり」ではない。ただし、どれに当たるかで、やることが全然違います。通知の文面を、もう一度見てください。

調子が悪くて長く読めない日は、次の「通知の言葉で見分ける」の表と、「止まっている間のお金」だけ読んでください。

通知の言葉で見分ける

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通知に書かれている言葉どの種類かやること戻り方
「提出がありません」「返戻」「記載に不備」① 事務的に止まっている書いてあるものを出す。住所や口座を変えたなら届出確認されれば再開。止まっていた分もさかのぼって払われる
「障害の程度が…に該当しない」「支給停止」② 審査で該当しないと判断された通知の日付から3か月後をカレンダーに。診断書の控えを見る審査請求(3か月以内)。悪化したら支給停止事由消滅届
「所得」「10月から」「支給停止(全額・2分の1)」③ 20歳前の年金の所得制限翌年の所得の見通しを立てる翌年の所得が基準内なら、翌年10月分から再開

数字で見る、支給停止

何の数字か数字
更新(再認定)で支給停止になった件数(令和6年度)3,241件(304,456件のうち 1.1%)
同じ年度に、そのまま続いた294,405件(96.7%)
精神障害・知的障害の診断書での更新継続 238,772件 に対して 支給停止 1,026件
年金機構の点検で、不支給から支給に変わった件数14,841件のうち 444件(3.0%)
20歳前の年金の所得制限(令和8年度、扶養親族がいない場合)9月分まで: 3,761,000円超で半額、4,794,000円超で全額停止 / 10月分から: 3,858,000円超で半額、4,918,000円超で全額停止

更新で止まるのは100人に1人です。止まった人の多くは、症状が本当に良くなったのではなく、診断書に実態が載らなかった人です。だから戻し方があります。

→ 数字で見る障害年金

止まる理由は、この3つのどれか

1. 事務的に止まっている(未提出・不備・住所変更もれ)

更新の用紙(障害状態確認届)は誕生月の末日が提出期限で、遅れたり記載に不備があると、年金の支払いが一時止まることがあります。引っ越して住所変更を届けていない、口座を変えて届けていない、といった理由でも止まることがある。この場合は、提出や届出をすれば、確認のうえ支払いが再開されます。止まっていた期間の分も、さかのぼって支払われます。

通知に「提出がありません」「返戻」といった言葉があれば、これです。

2. 更新の審査で、等級に該当しないと判断された

障害状態確認届を出したあと、「障害の状態が軽くなった」として支給停止になる場合です。この処分には、新規の不支給と同じように審査請求ができます(処分を知った日の翌日から3か月以内)。そして、その後に状態が悪化したときは、「支給停止事由消滅届」に診断書を添えて出すことで、再開を求める手続きができます。

通知に「障害の程度が…に該当しない」「支給停止」とあれば、これです。

止まった理由を知る方法があります。審査側の判断は「認定調書」という書類に残っていて、保有個人情報の開示請求で取り寄せられます。1か月半ほどかかるので、先に審査請求だけ出して、理由書はあとから補強します。→ 審査請求の進め方

3. 20歳前の年金で、所得が基準を超えた

20歳前に初診日がある障害基礎年金には、本人の前年所得による調整があります。基準を超えると、10月から翌年9月まで、半額または全額が止まる。翌年の所得が基準内なら、また支払われます。家族の収入は関係なく、本人の所得だけで判定されます。また、労災の補償を受けているとき、国内に住所がないときなど、所得以外の停止事由もあります。

通知に「所得」「支給停止(10月〜)」とあれば、これです。年収を入れると、線に当たるかどうかが分かります。

→ 働いたら、年金は減る?

止まっている間のお金

止まった期間の生活は、待ってくれません。再開を待つ間の「つなぎ」を、先に並べます。

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窓口何ができるかどこへ
生活困窮者自立支援の窓口家賃(住居確保給付金)や当面の生活の相談市区町村
生活福祉資金貸付(緊急小口資金など)社会福祉協議会
生活保護年金の再開を待つ間の生活費。再開したら、その分は調整される市区町村の福祉事務所
年金事務所止まった理由の確認。①なら何を出せば再開するか、その場で分かる予約して相談

そして、障害年金の受給権は、法律で差押えが禁止されています。借金があっても、年金を受ける権利そのものは守られます。

結論を分けた実例

公開されている審査請求の裁決から、支給停止が争点になったものを4つ。

人工心臓を付けているのに止められた(取り消し) 拡張型心筋症で、植込型の補助人工心臓を装着している方への支給停止処分です。生命維持装置と常時の介護の必要性を総合して2級に該当すると認められ、処分が取り消されました。「装置で安定している=軽い」ではない、ということです。→ この事案

進行性の病気を「症状固定」と扱われた(取り消し) 網膜色素変性の方で、進行性の病気を症状固定として支給停止にされた事例です。根治法のない進行性であることから固定とは認められず、3級に該当するとして処分が取り消されました。→ この事案

筋力の数値だけで判断された(取り消し) 全身型重症筋無力症で3級を受けていた方の支給停止です。審査会は、全身の筋力低下だけで判断せず、疲労に応じて休息が必要な状況などを総合して3級に該当すると認め、処分を取り消しました。検査の瞬間の数値と、一日の中の変動は、別の情報です。→ この事案

移植のあとも、2級の状態が続いていた(取り消し) 肺移植のあとの間質性肺炎の方への支給停止です。移植後の経過を総合すると、診断書の日付の時点でも2級の状態が続いていたとして、処分は失当とされました。手術や治療で「良くなった」ように見える時期の診断書ほど、その後の経過が書かれているかが分かれ目です。→ この事案

→ 支給停止が争点になった実例をすべて見る

同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

通知を開けずに、放置する

止まった理由が①(事務的)なら、放置するほど止まる期間が延びます。通知には、何を出せば再開するかが書いてある。読むのがつらければ、家族や支援者に開けてもらっていい。年金事務所に電話して「支給停止の通知が来たが、理由が分からない」と言えば、記録を見て教えてくれます。

「もらった分を返せと言われる」と思って、連絡を避ける

更新で下がったり止まったりしても、それまで正しく受け取っていた分をさかのぼって返すことはありません(虚偽の申告など不正の場合は別)。連絡を避ける理由はない。むしろ連絡しないことで、①の場合は再開が遅れます。

3か月の期限を、知らないまま過ぎる

②の場合、審査請求の期限は、処分を知った日の翌日から3か月以内です。この期限を6か月と誤解して、期間を過ぎてから申し立て、不適法として却下された裁決があります。通知の日付を確認して、カレンダーに3か月後の日を書いてください。それが、選択肢を残す唯一の方法です。

「止まった=もう二度ともらえない」と決める

②で止まっても、状態が悪化すれば、診断書を添えて再開を求める手続きがあります。③なら翌年の所得で戻る。①なら出せば戻る。「停止」は「失権」ではありません。受給権そのものは残っていて、条件がそろえば支払いが再開する。この違いを知っているだけで、次に動けます。

よくある質問

Q. 事務的な理由で止まっていた分は、戻りますか。

戻ります。提出や届出をして障害状態が確認されれば、止まっていた期間の分もさかのぼって支払われます。

Q. 更新で止まったあと、また悪化しました。新規で申請し直すのですか。

新規ではありません。「支給停止事由消滅届」に診断書を添えて提出して、再開を求めます。受給権は残っているので、初診日や納付要件をやり直す必要はありません。

Q. 20歳前の年金で、今年だけ所得が多かった。ずっと止まりますか。

止まるのは、その所得の年の翌年10月から翌々年9月までの1年間です。翌年の所得が基準内なら、また支払われます。

Q. 止まったままだと、65歳から老齢年金はもらえますか。

もらえます。障害年金の支給停止と、老齢年金の受給は別の話です。65歳になれば、納付記録に応じた老齢年金の権利ができます。障害基礎年金の受給権が残っていれば、65歳のときに組み合わせを選ぶ手続きもあります。→ 65歳の選択

Q. 所得で止まっている間も、更新はありますか。

あります。③の所得による停止は「支払い」が止まるだけで、受給権は続いています。有期認定なら、障害状態確認届は別に届きます。届いたら出してください。出さないと、①の理由が重なります。

Q. 審査請求と、支給停止事由消滅届は、どちらを出せばいいですか。

両方の道があります。「止まった判断が間違っている」と争うなら審査請求(3か月以内)。「止まったあとに悪化した」なら支給停止事由消滅届(期限なし。診断書を添える)。判断が間違っていて、しかも悪化もしているなら、両方を出せます。年金事務所で「両方の形で出せるか」を確認してください。

次の一歩

通知を、もう一度読んでください。「提出」「返戻」の文字があれば①、「該当しない」なら②、「所得」なら③。

①なら、書いてあるものを出す。②なら、通知の日付から3か月後をカレンダーに書いて、不服申立てのページへ。③なら、翌年の所得の見通しを立てる。

②の不服申立て → 不支給・不服申立て 更新の全体像 → 更新が不安・下がった

受給が始まってから → 抜け出すロードマップ

関連コラム

出典

  • 日本年金機構「障害状態確認届」「支給停止事由消滅届」 ・ 確認日 2026-09-08
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定304,456件・継続96.7%・支給停止1.1%、精神障害・知的障害 継続238,772件・支給停止1,026件) ・ 確認日 2026-09-08
  • 日本年金機構「障害年金の認定状況について」(点検: 不支給14,841件のうち444件が支給へ) ・ 確認日 2026-09-08
  • 国民年金法第36条の2・第36条の3、国民年金法施行令(20歳前傷病の支給停止事由・所得制限の基準額) ・ 確認日 2026-09-08
  • 社会保険審査官及び社会保険審査会法(審査請求期間) ・ 確認日 2026-09-08
  • 厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」、全国社会福祉協議会「生活福祉資金貸付制度」 ・ 確認日 2026-09-08
  • 社会保険審査会 裁決例(該当4件は実例ページに原文リンク)