不支給と言われたとき

リード(直答)

封筒を開けて「不支給」の3文字を見たあと、今日やることはひとつだけです。日付を見てください。

結果に納得できないときに使える「審査請求」には、決定を知った日の翌日から3か月という期限があります。この3か月は、落ち込んでいる間に過ぎます。何を書くか、誰に相談するか——それは、あとで考えて間に合います。期限だけは、あとから取り戻せません。

そして、もうひとつ。不支給は、道の終わりではありません。通知には理由が書かれています。その理由が「納付要件」なのか「初診日」なのか「障害の状態」なのかで、次にやることは、まったく別のものになります。

通知が届いたら、確認する3つ

1. 受け取った日

封筒か通知に日付があります。その日から、時計が動いています。

  • 審査請求 — 決定を知った日の翌日から3か月以内。社会保険審査官へ
  • 再審査請求 — 審査請求の決定書の謄本が送られた日の翌日から2か月以内。社会保険審査会へ

いま、カレンダーを開いて、3か月後の日付に印をつけてください。30秒で終わります。これだけで、いちばん取り返しのつかない失敗は防げます。

2. 書かれている「理由」

通知には、支給されなかった理由が書かれています。大きく3つのどれかです。

理由何を言われているか
保険料の納付要件初診日の前日の時点で、保険料の納付が足りていなかった
初診日初診日が確認できなかった、または、認められた初診日が請求と違った
障害の状態審査した結果、等級に該当しなかった

この3つは、次にやることがまったく違います。同じ「不支給」という言葉でも、中身は別物です。ここを読み飛ばして診断書を書き直しに行くと、時間もお金も無駄になります。

3. 「却下」か「不支給」か

言葉が違うと、意味も違います。

  • 却下 — 要件を満たしていないため、障害の状態の審査まで進んでいない
  • 不支給 — 審査はされたが、等級に該当しないと判断された

却下なら、争うところは要件のほうです。診断書を書き直しても変わりません。

理由によって、次の一手が変わる

納付要件が理由だったとき

まず、年金事務所で納付記録を実際に見せてもらってください。

納付要件は、その傷病の初診日の前日時点で判定されます。ここで確認したいのは2つ。

  • 免除や猶予の手続きをした期間が、未納として扱われていないか。学生納付特例も、産前産後の免除も、未納ではありません
  • 初診日が動けば、判定の基準日も動く。認められた初診日が請求と違っていた場合、納付要件の結論も変わることがあります

窓口で記録を出してもらったら、反映されていない期間が見つかった——という話は、めずらしくありません。画面を一緒に見せてもらってください。口頭で「足りません」と言われて帰ってこないこと。それだけです。

初診日が理由だったとき

いちばん争われる論点のひとつです。うちの実例91件でも、35件が初診日を争点にしています(2番目に多い争点です)。

打つ手は、はっきりしています。資料を足すことです。「もう証明できない」と思っていたものが、家の引き出しから出てくることがあります。

  • お薬手帳の調剤記録、診察券、領収書、紹介状、入院の記録、健康診断の記録
  • 健康保険の給付記録、生命保険を申請したときの診断書、障害者手帳を申請したときの診断書
  • 当時を知る人に書いてもらう第三者証明(三親等以内の親族には頼めません。原則2人分)

何月何日まで思い出せなくても大丈夫です。「この期間のどこかに初診日がある」と資料で確認でき、条件を満たせば認められる取り扱いがあります。

思い出す手がかりは、カルテの中ではなく、生活のほうにあります。あの仕事を辞めた年。引っ越した年。子どもが小学校に上がった年。そこから挟んでいくと、期間はぐっと狭くなります。

初診日が証明できない・カルテがないとき

障害の状態が理由だったとき

ここがいちばん多い理由です。そして、やるべきことがいちばんはっきりしています。

見直すのは、あなたではありません。診断書です。

審査をした人は、あなたに会っていません。あなたの部屋も、朝起きられない日のことも、見ていません。見たのは紙です。審査が見ているのは、あなたの生活ではなく、書類に書かれた生活のほうです。この2つがずれていたなら、ずれを直せます。

  • 診断書の控えを見返してください。普段のいちばん悪いときの状態が、そこに書かれていましたか
  • 精神の障害なら、日常生活能力の判定(7項目)と程度を確認してください。この2つの組み合わせで、国が公表している「目安」が決まります
  • 「一人でできる」に丸がついている項目を見てください。それは、助けがなかったらどうなるかを含んだ丸でしたか。診察室で「まあ、なんとか」と答えたことが、そのまま丸になっていることがあります

診断書と申立書で、時期や内容が食い違っていた場合も、実態が伝わりません。

等級の目安をしらべる / 診断書で困ったとき(/nayami/shindansho-komatta)

審査請求と、出し直し。どちらを選ぶか

道は2つあります。どちらか一方ではなく、両方を検討してください。

審査請求

同じ請求について、判断そのものを争う方法です。

  • 期限は3か月。過ぎるとこの道は閉じます
  • 新しい資料を出せます。診断書を書き直してもらう、資料を足す
  • さかのぼって受け取れる可能性が残るのが、いちばんの利点です

出し直し(事後重症による再請求)

あらためて、いまの状態で請求し直す方法です。

  • 期限はありません。いつでもできます
  • ただし事後重症は、請求した月の翌月分からです。さかのぼりません
  • 診断書を整え直す時間が取れます

ここで大事なのは、期限があるのは審査請求のほうだけだということです。出し直しは、来年でもできます。審査請求は、3か月で閉じます。

だから順番はこうなります。まず3か月を確保する。中身を決めるのは、そのあと。

判断に迷うときは、年金事務所か専門家に、通知書を持って相談してください。

数字で見ると

全体でどれくらいの人が非該当になっているか

令和6年度、新しく決まった障害年金は 146,225件。そのうち非該当は 18,982件(13.0%) でした。1年で19,000人近くが、同じ通知を受け取っています。

障害の種類で、非該当の割合は大きく違う

厚生労働省の抽出調査による、非該当の割合です。

障害の種類非該当の割合
精神の障害12.1%
外部障害(肢体・眼・聴覚など)10.8%
内部障害(心臓・腎臓・肝臓・呼吸器・血液など)20.6%
全体13.0%

内部障害の非該当率が、精神の2倍近くあります。検査の数値が基準に届いているかで判断される部分が大きく、診断書に検査値が正しく反映されているかが結果を分けます。数値が基準の境目にあるときは、測定した日の状態と、検査の条件まで確認する価値があります。

決まった人の等級の分布

1級 10.9% / 2級 53.9% / 3級 22.1%半分以上が2級です。3級は障害厚生年金にしかありません。

精神の障害では、目安の位置が結果と強く結びついている

精神の障害で不支給になった事案のうち、75.3% は、国が公表している「障害等級の目安」で下位の区分にあたるものでした。

目安は、診断書に書かれる日常生活能力の判定(7項目)の平均日常生活能力の程度(5段階)の組み合わせで決まります。この2つを書くのは医師です。だから、診察でどこまで実態が伝わっているかが、そのまま結果に効きます。

等級の目安をしらべる

判断は覆ることがある。ただし例外的

日本年金機構が過去の認定状況を点検したとき、不支給とされた14,841件のうち444件(3.0%)が、支給へと判断が変わりました。同じ点検で、支給された12,918件のうち等級が上がったものは0件でした。

判断は絶対ではありません。ただし、勝手にひっくり返るものでもない。変わったのは、材料が変わったときです。だから次に出す書類の中身が効きます。

数字で見る障害年金

審査請求の実務 — 何を、どこへ、いくらで

気持ちの整理がついたときに読めば十分です。手続きそのものは、思っているより単純です。

項目内容
誰に対して社会保険審査官(各地方厚生局に置かれています)
期限決定を知った日の翌日から3か月以内
用紙審査請求書。年金事務所でもらえます
費用国へ払う手数料はありません(かかるのは、新たに診断書を取る場合の文書料や、郵送費)
添える資料不支給決定通知書の写し、主張を裏づける資料(新しい診断書、当時の記録、第三者証明など)
代理人立てられます。社会保険労務士に依頼することもできます
そのあと決定に不服なら、社会保険審査会へ再審査請求(決定書の謄本が送られた日の翌日から2か月以内)

書くことは、3つだけです。

  1. どの決定に対する不服か(通知書の日付と番号)
  2. どこが事実と違うと考えるか(「納得できない」ではなく、どの欄のどの記載か)
  3. その根拠になる資料

再請求(出し直し)のときに効く実務

  • 診断書は「現症日から3か月以内」のものが必要です。取る時期を間違えると、出す前に期限が切れます
  • 事後重症による請求は、請求した月の翌月分からです。1か月遅れれば、1か月分が消えます
  • 前回の書類の控えがあるなら、前回と何を変えたかを自分で説明できる状態にしてから出してください

同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

落ち込んでいる間に、3か月が過ぎる

いちばん多くて、いちばん取り返しがつかない失敗です。

不支給の通知は、想像よりずっとこたえます。封を切って、その日は何もできなかった。次の週も、封筒を見るのがいやで置いたままにした。気づいたら2か月経っていた——この流れは、本当によくあります。

だから、届いた日にやることは日付の確認だけでいい。それ以外は後回しにしてください。3か月あれば、動ける日が何日か来ます。

通知の理由を読まずに、診断書を書き直してもらう

気持ちは分かります。何かしなければ、と思ったとき、いちばん最初に浮かぶのが診断書だからです。

でも、理由が「納付要件」や「初診日」だったなら、診断書を何度書き直しても結論は変わりません。主治医に頭を下げて、文書料を払って、また3か月待って、同じ紙が届きます。先に理由を読んでください。

診断書の控えを取っていない

見直そうとして、はじめて気づきます。何が書かれていたか、手元に何も残っていない。

出した書類は全部あちら側にあって、こちらには記憶しかない。これでは、次に何を足せばいいかを決められません。提出する前に、すべてコピーを取ってください。受給が決まったあと、更新のときにも効きます。

「もう無理だ」と、制度そのものから離れてしまう

不支給の通知は、「あなたはそこまでではない」と言われたように読めます。読めますが、そうではありません。

書類の上で伝わらなかった、という意味です。あなたの毎日が変わったわけではない。この2つは、まったく別のことです。

結論が変わった実例

同じような状況なのに、結論が分かれた裁決例を91件集めています。通ったものだけを並べていません。通らなかったものも、同じ密度で載せています。通った話だけを見せられても、自分がどちらに近いかは分からないからです。

収録91件のうち、容認・一部容認は59件です。これは公開されている裁決から選んで集めたものなので、申請全体の支給割合ではありません。「審査請求すれば6割通る」という意味ではないことに注意してください。

争点で見ると、こう分布しています(1件に複数の争点があります)。

争点件数
障害の程度・等級該当性57
初診日35
診断書の信頼性・整合性15
納付要件10

いちばん多いのは「障害の程度」、次が「初診日」です。あなたの通知に書かれた理由と同じ争点の実例から読むと、何が判断を分けたのかが具体的に見えます。全件、裁決の原文(PDF)へのリンクつきです。

結論が変わった実例

よくある質問

Q. 審査請求をすると、いま受けている年金が止まりますか

止まりません。不支給の決定に対する審査請求は、他の給付に影響しません。

Q. 審査請求は自分でできますか

できます。年金事務所で用紙をもらえます。ただし理由を組み立てる作業があるので、専門家に相談する人も多くいます。

Q. 3か月を過ぎてしまいました

審査請求はできませんが、出し直し(事後重症による再請求)はいつでもできます。道が閉じたわけではありません。

Q. 同じ診断書で審査請求しても意味がありますか

新しい資料を出さないまま争っても、判断の材料は変わりません。何を足すかを先に決めてください。

Q. 却下と不支給は、どちらが厳しいですか

厳しさの違いではなく、止まった場所の違いです。却下は要件の段階、不支給は障害の状態の段階です。

Q. 障害年金の不支給率はどれくらいですか

令和6年度、新規に決まった146,225件のうち非該当は18,982件、13.0%でした。障害の種類で差があり、精神12.1%・外部障害10.8%・内部障害20.6%です。

Q. 不支給になったら、もう一度申請できますか

できます。事後重症による再請求に期限はありません。ただし請求した月の翌月分からになるので、さかのぼりたいなら3か月以内の審査請求のほうです。

Q. 審査請求にはいくらかかりますか

国へ払う手数料はありません。かかるのは、新しく診断書を取る場合の文書料と郵送費です。

Q. 審査請求の結果が出るまで、どれくらいかかりますか

地方厚生局の案内では、審査請求書を受け付けてから概ね3〜4か月かかっているとされています。ただし、内容によってはそれ以上かかる場合があります。

Q. 不支給の理由が書かれていないのですが

通知に理由の記載が見当たらないときは、年金事務所で確認できます。理由が分からないまま次の書類を用意しても、当たりません。

次の一歩

  1. 通知の日付を確認して、期限をカレンダーに書く(今日やること)
  2. 通知に書かれた理由を読む。3つのどれか
  3. 理由に応じて → 納付記録の確認 / 資料を集める / 診断書を見直す
  4. 等級の目安をしらべる(/columns/tokyu-hantei-guideline)(診断書が手元にあるなら、書かれた数字で確かめられます)
  5. 年金事務所か専門家に、通知書を持って相談する

関連コラム

  • 不支給になったときの審査請求のしかた(/columns/fushikyuu-shinsa-seikyu)
  • 審査のしくみと認定医(/columns/shinsa-shikumi-nintei-i)
  • 初診日が証明できない・カルテがないとき(/columns/shoshinbi-karute-nashi)
  • 診断書の内容を確認するポイント(/columns/shindansho-kakunin)
  • 保険料の納付要件とは(/columns/nofu-yoken)
  • 遡及請求と事後重症請求のちがい(/columns/ninteibi-jigojusho)
  • 障害年金の申請結果はいつ届く? — 審査期間と結果待ちの過ごし方(/columns/shinsei-kikan)

しんどくなったら

ここまで読むだけでも、けっこう消耗したと思います。

今日は、日付の確認だけで十分です。それ以上は、動ける日に戻ってきてください。ページは逃げません。 → 申請がしんどいときの「小分け」の進め方

出典

  • 国民年金法・厚生年金保険法(不服申立て、保険料納付要件)・確認日 2026-08-31
  • 社会保険審査官及び社会保険審査会法(審査請求3か月・再審査請求2か月の起算日)・確認日 2026-08-31
  • 厚生労働省「障害年金の業務統計等(令和6年度)」・確認日 2026-08-31
  • 厚生労働省「障害年金の認定状況に係る調査報告書」(令和7年6月11日)・確認日 2026-08-31
  • 日本年金機構「障害年金の認定状況の点検」・確認日 2026-08-31
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」・確認日 2026-08-31
  • 行政不服審査法(審査請求に係る手数料の定めが無いこと)・確認日 2026-08-31
  • 日本年金機構「障害年金の請求手続き(診断書の現症日)」・確認日 2026-08-31
  • 九州厚生局「社会保険審査官に対する審査請求に関するよくあるご質問Q&A」・確認日 2026-09-02