精神の等級判定ガイドラインと目安表 — 自分の診断書で「何級相当か」を読む方法と、目安どおりにならない理由

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「自分の診断書だと、何級になりそうなのか」。申請を控えた人なら誰でも知りたいことですが、実はその目安を国自身が公開しています。平成28年9月から審査に使われている「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」です。

診断書裏面の「日常生活能力の判定7項目」と「日常生活能力の程度」を組み合わせた表——実務者の間で「目安表」「マトリクス」と呼ばれるもの——を見れば、自分の診断書がどの等級に相当するかを自分で確認できます。

ただし。障害年金を10年以上専門にしてきた社労士たちが、ここ数年そろって発信していることがあります。「目安表に当てはまっていても、認定されるとは限らない時代になった」。この記事では、目安表の読み方と、その「限らない」の中身を両方お伝えします。

そもそもガイドラインは何のために作られたか

ガイドライン以前、精神の障害年金は都道府県ごとに認定が行われ、地域によって不支給率に大きな差があることが問題になりました。その反省から、認定の物差しを全国で統一するために作られたのが等級判定ガイドラインで、あわせて認定事務も一元化されました。

ここで実務者の本音がひとつ。精神専門の社労士が最近の発信でこぼしているのですが、一元化された今の認定は初診日の扱いなどでも「ひどいものがある」、県単位の時代のほうがまだ融通が利いた面もあった——と。統一の物差しができた一方で、運用は年々厳しくなっているというのが、現場の体感です。この「物差しは公開されているのに、運用が厳しい」という二重構造を理解することが、ガイドラインを使いこなす前提になります。

目安表の読み方 — 縦軸と横軸

目安表は、診断書裏面の2つの欄から作られます。

縦軸:日常生活能力の判定の「平均」 7項目それぞれの4段階評価を点数に置き換えます。

7項目の点数を合計して7で割った平均値を使います。

横軸:日常生活能力の程度(5段階) 医師が(1)〜(5)のどこに丸を付けたかです。それぞれの意味を、かみ砕いて書くと——

組み合わせの目安(抜粋)

判定の平均程度(3)程度(4)程度(5)
3.5以上2級1級または2級1級
3.0以上3.5未満2級2級1級または2級
2.5以上3.0未満2級または3級2級
2.0以上2.5未満2級または3級2級
1.5以上2.0未満3級

※正確な表の全体は厚生労働省の公表資料で確認できます。3級は障害厚生年金のみにある等級で、障害基礎年金に3級はありません。

実際に計算してみる① — 2級相当の例

アキさん(32歳・うつ病で退職、実家で母と2人暮らし)の診断書裏面が、次のように書かれていたとします。

合計23点 ÷ 7項目 = 平均3.28。日常生活能力の程度は(4)に丸。

目安表で「平均3.0以上3.5未満 × 程度(4)」を見ると、2級相当です。アキさんは障害基礎年金の請求なので、2級に認定されれば受給、3級相当以下と判断されれば不支給——という分かれ目にいることが分かります。

実際に計算してみる② — 「2級または3級」の境界帯の例

同じアキさんで、もし診察で生活の実態が半分しか伝わらず、こう書かれていたら。

合計17点 ÷ 7 = 平均2.43。程度は(3)。目安表では「2級または3級」の帯です。

数字を見比べてください。生活の実態は同じでも、「母の声かけで薬を飲めている」が「服薬できる(2点)」と評価されるか、「声かけがなければ飲めない(3点)」と評価されるかの積み重ねで、2級確実の帯から、どちらに転ぶか分からない帯まで動いてしまうのです。1項目1点の差が、平均では0.14。それが7項目重なると等級の帯をまたぎます。

単身で支援なしの生活を想定して評価する」というルールが正しく適用されるかどうかが、目安表の上ではこれだけの差になる——これが、当サイトが診察前の情報提供にこだわる理由です。

目安表の外側 — 「総合評価」で見られていること

ガイドラインには目安表と並んで、「総合評価の際に考慮すべき要素の例」が示されています。目安表の数字を出発点に、次のような要素を加味して最終判断される建て付けです。

重要なのは、これらの要素はすべて診断書と申立書に書かれている範囲でしか考慮されないということです。障害者雇用で手厚い配慮を受けていても、その事実が書面になければ「一般就労と同じ」に見えます。援助を受けながらの生活も、援助の記載がなければ「自立した生活」に見えます。総合評価とは、書面に載った情報の総合なのです。

その前に:そもそも「対象になる傷病か」という入口

目安表の計算に入る前に、ひとつ手前の関門があります。診断名そのものが障害年金の対象かという入口です。受給経験のある実務者が、境界線の事例として発信し続けている論点を整理します。

つまり「あなたの病名では無理」と言われた場合でも、併存している(または主診断が変わった)精神疾患があれば話が変わることがあります。主治医と診断名について率直に話すこと、診断書の傷病名欄がどうなっているかを確認することは、目安表の計算より先にやるべきことです。

認定側は書類をどう読むか — 矛盾の見つかり方

総合判断の話をもう一歩具体的にします。審査側の手元に届くのは、主に診断書と病歴・就労状況等申立書です。実務者の解説を総合すると、読まれ方はおおむねこうです。

  1. まず診断書。傷病名・初診日・7項目と程度・就労欄・予後
  2. 目安表で仮の等級帯を出す
  3. 申立書・その他の書類と突き合わせ、矛盾や疑義がないかを見る
  4. 就労状況・援助の状況などの考慮要素を加味して最終判断

3で引っかかる典型が、「診断書:金銭管理はできない」×「申立書:趣味の買い物の記述」、「診断書:対人関係に著しい制限」×「申立書:友人と旅行」のような食い違いです。嘘をついていなくても、時期の違う話を混ぜて書くとこうなります(調子のよかった数年前の話と現在の話が混在するなど)。申立書は期間ごとに区切って書く様式ですから、各期間の記述がその期間の診断書・カルテと合っているかが、整合性のすべてです。

完成形:アキさんの「提出前チェックリスト」

アキさんが診断書と申立書を提出する前に、母と一緒に確認したリストです。そのまま使えます。

□ 診断書の傷病名と初診日 — 認定日・保険料納付要件の前提。申立書の初診日と一致しているか □ 7項目の平均を計算した — 23÷7=3.28。目安表の帯を確認した □ 7項目と「程度」がちぐはぐでないか — 平均3.28で程度(4)。矛盾なし □ 就労欄 — 「無職」。退職時期が申立書と一致 □ 同居・独居の記載 — 「母と同居」。援助の内容が日常生活状況欄に書かれているか □ 事実と異なる記載がないか — 通院頻度・服薬内容・家族構成 □ 申立書の各期間と診断書の食い違いがないか — 現在の期間の記述が、診断書の7項目と同じ生活を描いているか □ すべてコピーを取った — 診断書・申立書・受診状況等証明書。更新(障害状態確認届)のときの比較用に保管

チェックで実態とのずれが見つかったときの動き方は「診断書を受け取ったら確認すべき7つのポイント」で解説しています。

実務者が口をそろえる変化 — 「目安どおり」が崩れてきた

ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。

障害年金専門の社労士が数年前からブログやXで発信している体感があります。ガイドライン運用が始まった当初は、目安表の等級に当てはまってさえいれば、おおむねそのとおり認定される時期があった。ところが今は違う、と。

これは一部の社労士の思い込みではありません。複数の専門家が同時期に同じ変化を語っており、2024年以降は「以前なら支給されていた人が不支給になっている」として報道や国会でも取り上げられ、一部については後に救済の動きも出ました。ガイドライン自体に「総合的に判断する」と明記されている以上、目安は目安であって保証ではない——それが今の運用です。

さらに、失敗したときのリカバリーも厳しくなっています。精神専門の実務者が実物の画像つきで公表したところによると、一度不支給になって2度目の申請をすると、審査側には前回の不支給内容が申し送りされた認定調書が作られ、前回との比較が厳格に行われるため、難易度が格段に上がります。不支給要因を解消して専門家が関与した2度目でも通らなかった例があるほどです。つまり今の障害年金は、実質的に一発勝負に近い。最初の申請の書類の質が、これまで以上に重くなっています。

では、何が「総合判断」を左右するのか

目安表の数字が同じでも結果が分かれるとしたら、差はどこで付くのか。実務者の発信から共通項を拾うと、次の3つです。

(1) 診断書の数字と、記載内容の整合性 判定の平均が3を超えているのに、備考欄に「症状は安定している」「日常生活はおおむね自立」と書かれていたら、審査側はどちらを信じるでしょうか。数字だけでなく、診断書全体が同じ生活を描いていることが必要です。

(2) 申立書と診断書の整合性 病歴・就労状況等申立書に書いた生活の実態と、診断書の評価がずれていると、マイナスに働きます。診断書より重く盛った申立書は、矛盾としてすぐ見抜かれます。逆に、同じ生活を別の角度から描けていれば説得力が増します。

(3) 就労の見え方 働いている事実そのものより、「どんな配慮のもとで、どんな状態で働いているか」が伝わっているかで結果が変わります。受給経験のある実務者も強調していますが、働きながらの受給、厚生年金を払いながらの受給は制度上まったく正当で、不正でも何でもありません。問題は、障害者雇用・短時間勤務・欠勤の頻度・職場の援助が書面に載っていないために「働けている=軽い」と読まれてしまうことです(→働きながら障害年金は受け取れる?)。

つまり総合判断の時代とは、書類同士の矛盾が命取りになる時代です。そしてその矛盾は、悪意からではなく「診察で伝えきれなかった」「昔のことを思い出せずに適当に書いた」から生まれます。

申請前セルフ判定の手順 — 5ステップ

ここまでの内容を、実際に手を動かす手順に落とします。診断書を受け取ってから提出するまでの間に、この5ステップをやってください。所要30分です。

ステップ1:7項目を点数化する。 診断書裏面の「日常生活能力の判定」で、チェックの付いた位置を左から1・2・3・4点と数え、7つを合計して7で割ります。小数第2位まで出してください(例:23÷7=3.28)。

ステップ2:程度の丸を確認する。 「日常生活能力の程度」の(1)〜(5)のどこに丸が付いているか。

ステップ3:目安表に当てる。 平均×程度で帯を確認します。「2級」なら目安上は受給圏、「2級または3級」なら総合判断次第、目安が3級以下で障害基礎年金の請求なら、このままでは不支給の可能性が高い状態です。

ステップ4:実態と突き合わせる。 ここが本番です。各項目のチェックを、自分の(家族から見た)生活と比べます。「単身で支援なしなら」の想定が抜けて軽く付いていないか。特に「通院と服薬」「食事」は、家族の援助で回っている場合に軽く付きやすい代表項目です。

ステップ5:ずれがあれば、提出前に動く。 事実と異なる記載は訂正を依頼できます。評価が実態より軽い場合は、評価を変えろと迫るのではなく、生活の実態をまとめた資料を添えて「この実態を踏まえてご再考いただけないか」とお願いします。動き方の詳細は診断書確認の記事へ。

このセルフ判定をやらずに提出するのは、答案を見直さずに提出するのと同じです。審査は書類だけで行われ、提出後に補足の機会はありません。

目安が届かず不支給になったら — 2度目の前に知っておくこと

セルフ判定の結果が芳しくない、あるいはすでに不支給通知を受け取った——という人のために、その後の選択肢の考え方も書いておきます。

選択肢は大きく2つです。(1)審査請求(決定を知った日の翌日から3か月以内。不支給決定そのものの誤りを争う)、(2)再請求(あらためて診断書を取り直し、もう一度請求する)。

どちらを選ぶにしても、先にやるべきことがあります。不支給の理由を確認することです。年金機構に照会すれば、どの要件で不支給になったのか(障害状態か、初診日か、納付要件か)が分かります。障害状態が理由なら、診断書の7項目・程度がどう評価されたかを見直すことで、争点が具体的になります。

そして、再請求を選ぶ場合の現実も伝えておかなければなりません。前述のとおり、2度目の審査では前回の不支給内容が申し送りされ、前回との比較が厳格に行われます。前回と同じ内容の診断書で出し直しても、結果は変わりません。再請求で結果を変えた事例に共通するのは、前回の不支給要因(伝わっていなかった生活の実態、書類間の矛盾)を特定し、それを解消した書類を作り直していることです。詳しくは審査請求の記事で解説しています。

目安を「引き上げる」のではなく、実態を「正確に反映させる」

誤解のないように書いておくと、目安表を有利にするために実態より重く伝えることは、やってはいけないことです。虚偽の内容で受給すれば、返還請求や取り消しの対象になり得ますし、そこまでいかなくても診断書と申立書の矛盾として表れ、審査を悪くします。実務者の発信でも「盛った申立書はすぐ分かる」と繰り返し語られています。

やるべきことは逆で、実態が正確に伝わる状態を作ることです。専門の社労士がやっているのは、時間をかけたヒアリングで生活の実態を掘り起こし、A4数枚の資料にして医師に渡すこと。診察室の数分では伝わらない生活を、7項目に沿って記録し、紙で渡す——当サイトで一貫してお伝えしている方法と同じです。

その記録を1人で続けられるように、日々の出来事を短くメモすると7項目に沿った提出用資料に整理されるアプリを作りました。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。診察で医師に渡す資料になり、申立書の下書きにもなるので、総合判断で見られる「書類同士の整合性」が自然にとれます。

よくある質問

Q. 自分で計算して2級相当なら、必ず2級になりますか? A. なりません。目安表はあくまで目安で、ガイドラインにも「総合的に判断する」と明記されています。実務者の体感としても、目安どおりに認定されないケースは近年増えています。数字だけでなく、診断書の記載内容や申立書との整合性を整えることが大切です。

Q. 計算したら目安より軽い等級でした。諦めるべきですか? A. まず、診断書の評価が実態と合っているかを確認してください。「単身で支援なしの生活を想定して評価する」というルールが反映されず、実態より軽いチェックが付いているケースは珍しくありません。実態のほうが重いなら、提出前に医師へ生活の実態を資料で伝え直す余地があります(診断書の確認ポイント)。すでに不支給の結果が出ている場合は審査請求という選択肢がありますが、2度目の請求は前回との比較で厳格になるため、動く前に不支給理由の確認をおすすめします。

Q. 2級と3級の境目はどこですか? A. 目安表上は、判定の平均がおおむね2.0〜3.0で程度(3)の帯が「2級または3級」の重なる領域です。この帯域は総合判断の影響を最も受けやすく、書類の整合性や就労状況の伝わり方で結果が分かれます。なお3級は障害厚生年金だけの等級で、障害基礎年金には3級がありません。初診日に厚生年金加入だったかどうかで、同じ状態でも受け取れるものが変わります。

Q. 発達障害や知的障害も同じ目安表ですか? A. はい、精神の障害用の診断書を使う傷病(うつ病・双極性障害・統合失調症・発達障害・知的障害など)は共通のガイドラインで判定されます。ただし総合評価の考慮要素には障害特性ごとの視点(発達障害のこだわり・対人関係など)が含まれており、療育手帳の有無や幼少期からの経過も材料になります。

Q. 「不支給が増えている」という報道は本当ですか? A. 2024年以降、不支給や支給停止の判定が増えているとの指摘が報道され、国会でも取り上げられました。一部には後から救済された例もあります。個々の申請でできることは変わらず、「実態を正確に、矛盾なく書面に載せる」ことに尽きます。

Q. ガイドラインは身体障害にも使われますか? A. いいえ。このガイドラインは精神の障害の認定に用いられるものです。身体の障害は傷病ごとの障害認定基準で判断されます。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否や等級を保証するものではありません。目安表の正確な内容は厚生労働省の公表資料を、個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。