精神の等級判定ガイドラインと目安表 — 自分の診断書で「何級相当か」を読む方法と、目安どおりにならない理由

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この記事の結論

精神の障害年金の等級は、診断書裏面の「日常生活能力の判定7項目の平均」×「日常生活能力の程度(1)〜(5)」の目安表(表1)で、自分で目安を出せます。国が公表しているガイドラインで、平成28年9月から使われています。表1の全体を本文に載せました。

目安は保証ではありません。令和6年度に精神の障害で不支給になった85件のうち64件(75.3%)は、目安表では等級に届いていたのに、総合評価で非該当になった事案でした(令和5年度は44.7%)。総合評価で見られる要素は、ガイドラインの表2に例示されています。

審査の裏側はこうです。職員が「事前確認票」に等級案を書き、認定医が目安・診断書の記述・カルテ・申立書から総合的に判定します。判断が特に難しい事案と、令和7年からは全ての不支給事案を、複数の認定医が見ます。目安と違う等級にするときは「合理的かつ明確な理由」が要ります。

診断書を受け取ったら、提出前に5ステップ(点数化→程度→目安表→実態と照合→ずれの修正)を30分でやってください。提出後に補足はできません。

次に読む障害年金「日常生活能力の判定」7項目

「自分の診断書だと、何級になりそうなのか」。申請を控えた人なら誰でも知りたいことですが、その目安を国自身が公開しています。平成28年9月から審査に使われている「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」です。

診断書裏面の「日常生活能力の判定7項目」と「日常生活能力の程度」を組み合わせた表(この記事では「目安表」と呼びます)を見れば、自分の診断書がどの等級に相当するかを自分で確認できます。

ただし、目安表に当てはまっていても認定されるとは限りません。この記事では、目安表の読み方と、その「限らない」の中身を両方お伝えします。読み終えたときに、自分の診断書を手に「ここまでは自分で確かめられる」と言える状態を目指します。

そもそもガイドラインは何のために作られたか

ガイドライン以前、障害基礎年金の認定は都道府県ごとに行われ、地域によって不支給率に大きな差があることが問題になりました。その反省から、認定の物差しを全国で統一するために作られたのが等級判定ガイドラインで、あわせて認定事務も一元化されました。

統一の物差しができた一方で、目安どおりに決まらない事案があります。それも、少なくありません。令和6年度に精神の障害で不支給になった85件(厚生労働省の抽出調査)のうち、64件(75.3%)は、診断書の7項目と「程度」から出る目安では等級に届いていた、または「2級又は3級」のように届く可能性があったのに、総合評価で非該当になった事案でした。目安どおりの不支給は11件(12.9%)しかありません。令和5年度の同じ割合は44.7%です。総合評価で見られるのは、就労の実態、家族や福祉の援助の状況、診断書の記述欄とカルテ、そして申立書との整合です。「物差しは公開されているのに、目安だけでは決まらない」という二重構造を理解することが、ガイドラインを使いこなす前提になります。

数字をもう少し置いておきます。令和6年度に新しく決まった障害年金は146,225件で、非該当は13.0%、精神の障害にかぎると12.1%です。決まった等級の内訳は1級10.9%、2級53.9%、3級22.1%。新しく決まる障害年金の70.3%は精神の障害です。つまり精神の障害年金は、10人に9人近くは何らかの等級に決まっていて、その半数以上が2級です。目安表の見方を知ることは、この「2級に入るかどうか」を自分の目で確かめることに直結します。

目安表の読み方 — 縦軸と横軸

目安表は、診断書裏面の2つの欄から作られます。

縦軸: 日常生活能力の判定の「平均」

7項目それぞれの4段階評価を点数に置き換えます。

  • できる → 1点
  • おおむねできるが時には助言や指導を必要とする → 2点
  • 助言や指導があればできる → 3点
  • 助言や指導をしてもできない若しくは行わない → 4点

7項目の点数を合計して7で割った平均値を使います。

横軸: 日常生活能力の程度(5段階)

医師が(1)〜(5)のどこに丸を付けたかです。診断書の記載要領での定義は次のとおりです。

  • (1) 精神障害(病的体験・残遺症状・認知障害・性格変化等)を認めるが、社会生活は普通にできる
  • (2) 精神障害を認め、家庭内での日常生活は普通にできるが、社会生活には、援助が必要である
  • (3) 精神障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要である
  • (4) 精神障害を認め、日常生活における身のまわりのことも、多くの援助が必要である
  • (5) 精神障害を認め、身のまわりのこともほとんどできないため、常時の援助が必要である

「家庭内では普通だが社会生活に援助が要る」が(2)、「家庭内の単純な生活はできるが時に援助が要る」が(3)です。この2つの境目に、多くの人がいます。

目安表(表1)の全体

→ 横にスクロールできます

判定の平均 \ 程度(5)(4)(3)(2)(1)
3.5以上1級1級または2級———
3.0以上3.5未満1級または2級2級2級——
2.5以上3.0未満—2級2級または3級——
2.0以上2.5未満—2級2級または3級3級または3級非該当—
1.5以上2.0未満——3級3級または3級非該当—
1.5未満———3級非該当3級非該当

表の見方は、ガイドラインにこう書かれています。「判定平均」は4段階を軽いほうから1〜4に置き換えた平均。表の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換える。空欄(—)は、程度と判定平均の組み合わせとして整合性が低く、参考となる目安がない欄で、その場合は「必要に応じて診断書を作成した医師に内容確認をするなどしたうえで」他の記載から総合評価するとされています。

つまり、初診日に国民年金だった人(障害基礎年金)にとって、表の「3級」「3級または3級非該当」「3級非該当」はすべて「非該当」です。2級に入るのは、判定平均2.0以上で程度(4)以上、または判定平均2.5以上で程度(3)以上、または判定平均3.0以上で程度(3)以上の帯。境目の帯「2級または3級」は、判定平均2.0〜3.0で程度(3)のときです。

そしてガイドラインは、表のすぐ下にこう書いています。「障害等級の目安は総合評価時の参考とするが、個々の等級判定は、診断書等に記載される他の要素も含めて総合的に評価されるものであり、目安と異なる認定結果となることもあり得る」。

自分の診断書の数字を入れて帯を出すだけなら、計算ツールで1分でできます。7項目のチェック位置と程度の丸を入力すると、目安表のどの帯かが出ます。判定はしません。目安表を引く手間を省くだけの機能です。

→ 私は何級くらい?

実際に計算してみる① — 2級相当の例

アキさん(32歳・うつ病で退職、実家で母と2人暮らし。この記事のための架空の例です)の診断書裏面が、次のように書かれていたとします。

  • 食事: 助言や指導があればできる(3点)
  • 清潔保持: 助言や指導があればできる(3点)
  • 金銭管理: 助言や指導をしてもできない(4点)
  • 通院と服薬: 助言や指導があればできる(3点)
  • 対人関係: 助言や指導があればできる(3点)
  • 危機対応: 助言や指導をしてもできない(4点)
  • 社会性: 助言や指導があればできる(3点)

合計23点 ÷ 7項目 = 平均3.28。日常生活能力の程度は(4)に丸。

目安表で「平均3.0以上3.5未満 × 程度(4)」を見ると、2級相当です。アキさんは障害基礎年金の請求なので、2級に認定されれば受給(令和8年度の2級は年847,300円、月およそ70,600円)、3級相当以下と判断されれば不支給——という分かれ目にいることが分かります。

実際に計算してみる② — 「2級または3級」の境界帯の例

同じアキさんで、もし診察で生活の実態が半分しか伝わらず、こう書かれていたら。

  • 食事(2)・清潔保持(3)・金銭管理(3)・通院と服薬(2)・対人関係(3)・危機対応(2)・社会性(2)

合計17点 ÷ 7 = 平均2.43。程度は(3)。目安表では「2級または3級」の帯です。

数字を見比べてください。生活の実態は同じでも、「母の声かけで薬を飲めている」が「服薬できる(2点)」と評価されるか、「声かけがなければ飲めない(3点)」と評価されるかの積み重ねで、2級の帯から、どちらに転ぶか分からない帯まで動いてしまいます。1項目1点の差が、平均では0.14。それが7項目重なると等級の帯をまたぎます。

「単身で支援なしの生活を想定して評価する」というルールが正しく適用されるかどうかが、目安表の上ではこれだけの差になる——これが、当サイトが診察前の情報提供にこだわる理由です。

目安表の外側 — 「総合評価」で見られていること

ガイドラインには目安表と並んで、「総合評価の際に考慮すべき要素の例」(表2)が示されています。目安表の数字を出発点に、次の5分野の要素を加味して最終判断される建て付けです。ここは原文で読んでください。審査する人が見ているのは、この文言だからです。

① 現在の病状または状態像

統合失調症は「療養及び症状の経過(発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況)や予後の見通し」、陰性症状が長期間持続し自己管理能力や社会的役割遂行能力に著しい制限があれば1級または2級の可能性。気分(感情)障害は「現在の症状だけでなく、症状の経過(病相期間、頻度、発病時からの状況、最近1年程度の症状の変動状況など)」、適切な治療でも重い症状が長期間持続または頻繁に繰り返すなら1級または2級の可能性。ひきこもりは、病状の影響で継続して日常生活に制限が生じていれば考慮する。

② 療養状況

「通院の状況(頻度、治療内容など)」、薬物治療の「種類・量・期間」と「服薬状況」。通院や薬物治療が困難または不可能なら「その理由や他の治療の有無」を考慮する。在宅で家族や重度訪問介護等から常時援助を受けて療養していれば、1級または2級の可能性。

飲んでいない薬があるなら理由が要る、というのはここから来ています。

③ 生活環境

「独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合(現に家族等の援助や福祉サービスを受けていなくても、その必要がある状態の場合も含む)は、それらの支援の状況(または必要性)を踏まえて、2級の可能性を検討する」。「入所施設やグループホーム、日常生活上の援助を行える家族との同居など、支援が常態化した環境下では日常生活が安定している場合でも、単身で生活するとしたときに必要となる支援の状況を考慮する」。独居の場合は「その理由や独居になった時期」も。

④ 就労状況

「労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えず」、仕事の種類・内容・就労状況・職場で受けている援助・他の従業員との意思疎通を確認して判断する。「援助や配慮が常態化した環境下では安定した就労ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する」。就労継続支援A型・B型、障害者雇用制度による就労は1級または2級の可能性を検討する。一般企業でも同程度の援助を受けていれば2級の可能性。「精神障害による出勤状況への影響(頻回の欠勤・早退・遅刻など)」、「臨機応変な対応や意思疎通に困難な状況」を考慮する。1年を超えて働いていても、就労の実態が不安定ならそれを考慮する。

⑤ その他

「「日常生活能力の程度」と「日常生活能力の判定」に齟齬があれば、それを考慮する」。そして、「「日常生活能力の判定」の平均が低い場合であっても、各障害の特性に応じて特定の項目に著しく偏りがあり、日常生活に大きな支障が生じていると考えられる場合は、その状況を考慮する」。7項目のうち1つだけ4点、あとは1〜2点、という人が、平均だけで切られない根拠がこれです。

重要なのは、これらの要素はすべて診断書と申立書に書かれている範囲でしか考慮されないということです。障害者雇用で手厚い配慮を受けていても、その事実が書面になければ「一般就労と同じ」に見えます。援助を受けながらの生活も、援助の記載がなければ「自立した生活」に見えます。総合評価とは、書面に載った情報の総合なのです。7項目それぞれで何を書けば伝わるかは、日常生活能力の判定7項目の記事にまとめてあります。

その前に: そもそも「対象になる傷病か」という入口

目安表の計算に入る前に、ひとつ手前の関門があります。診断名そのものが障害年金の対象かという入口です。境界線の論点を整理します。

  • HSP(繊細さん) — 生まれ持った性質とされるため、単独では対象外。ただしうつ病などの精神疾患を発症していれば、その傷病で対象
  • ナルコレプシーなどの睡眠障害 — 単独では対象外。ただし統合失調症・双極性障害・うつ病などを伴っていれば、そちらで請求を検討できる
  • 神経症圏(不安障害・パニック障害・適応障害など) — 原則として認定の対象外とされるが、精神病相当の状態を示していれば対象になり得る運用があり、診断書の記載が鍵になる

つまり「あなたの病名では無理」と言われた場合でも、併存している(または主診断が変わった)精神疾患があれば話が変わることがあります。主治医と診断名について率直に話すこと、診断書の傷病名欄がどうなっているかを確認することは、目安表の計算より先にやるべきことです(→対象になる傷病の境界)。

認定側は書類をどう読むか — 矛盾の見つかり方

総合判断の話をもう一歩具体的にします。審査側の手元に届くのは、主に診断書と病歴・就労状況等申立書です。ガイドラインの建て付けから、読まれ方はおおむねこうなります。

  1. まず診断書。傷病名・初診日・7項目と程度・就労欄・予後
  2. 目安表で仮の等級帯を出す
  3. 申立書・その他の書類と突き合わせ、矛盾や疑義がないかを見る
  4. 就労状況・援助の状況などの考慮要素を加味して最終判断

3で引っかかる典型が、「診断書: 金銭管理はできない」×「申立書: 趣味の買い物の記述」、「診断書: 対人関係に著しい制限」×「申立書: 友人と旅行」のような食い違いです。

嘘をついていなくても、時期の違う話を混ぜて書くとこうなります(調子のよかった数年前の話と現在の話が混在するなど)。申立書は期間ごとに区切って書く様式ですから、各期間の記述がその期間の診断書・カルテと合っているかが、整合性のすべてです。

完成形: アキさんの「提出前チェックリスト」

アキさんが診断書と申立書を提出する前に、母と一緒に確認したリストです。そのまま使えます。

  • □ 診断書の傷病名と初診日 — 認定日・保険料納付要件の前提。申立書の初診日と一致しているか
  • □ 7項目の平均を計算した — 23÷7=3.28。目安表の帯を確認した
  • □ 7項目と「程度」がちぐはぐでないか — 平均3.28で程度(4)。矛盾なし
  • □ 就労欄 — 「無職」。退職時期が申立書と一致
  • □ 同居・独居の記載 — 「母と同居」。援助の内容が日常生活状況欄に書かれているか
  • □ 事実と異なる記載がないか — 通院頻度・服薬内容・家族構成
  • □ 申立書の各期間と診断書の食い違いがないか — 現在の期間の記述が、診断書の7項目と同じ生活を描いているか
  • □ すべてコピーを取った — 診断書・申立書・受診状況等証明書。更新(障害状態確認届)のときの比較用に保管

チェックで実態とのずれが見つかったときの動き方は「診断書を受け取ったら確認すべき7つのポイント」で解説しています。

審査の裏側 — 事前確認票と認定医

あなたの書類が障害年金センターに着いてから、何が起きるのか。令和7年6月の厚生労働省の調査報告書に、手順が書かれています。

まず職員が、納付要件などを確認し、「事前確認票」を作ります。認定に必要な事項を整理した文書で、令和4年4月から使われています。ここには職員の「等級案」を書く欄があります。次に、障害認定審査医員(認定医)が、その事前確認票も参考にしながら、診断書・申立書・カルテの写しなどから、医学的な観点で等級を判断します。精神の障害では、目安表の位置を出発点に、表2の要素を診断書等の記載から読み、総合評価します。

報告書が問題にしたのは、ここからです。令和6年度に「目安では届いていたのに非該当」になった64件のうち、約9割(58件)は職員の事前の等級案どおりの結果でした。そして、表2の「生活環境」「就労状況」に当たる記載が事前確認票や認定調書に書かれていたのは、85件中26件。調書の記載は「⑩ウ(イ)、カルテ、就労状況より3級」のように、単語や記号の列挙にとどまるものが見受けられた、と報告書は書いています。判断の理由が明確に残っていない、ということです。

審査を担当した職員のヒアリングには、こんな例があります。「障害等級の目安では2級とされていたが、カルテに症状は落ち着いていること、買い物等ができるとの記載があったほか、一般企業に一般雇用されているものの業務内容は単純作業であり、しばしば休むということを総合的に判断し、就労に制限がある状態として3級とした」。目安2級の人が、カルテの「買い物ができる」と就労の事実で3級に動いた例です。同時に、一般雇用で単純作業・しばしば休むという事実は、表2では「2級の可能性を検討する」側の材料でもあります。同じ事実が、どちらに読まれるか。それを決めるのが、診断書の記述欄と申立書に、援助や配慮や欠勤の実態がどれだけ具体的に書かれているかです。

この調査を受けて、運用は変わりつつあります。報告書は、職員が等級案を書く必要性は高くないとし、全ての不支給事案を複数の認定医が審査することとし、不支給の理由の記載を丁寧にすることとし、令和6年度以降の精神の不支給事案を点検して、必要なものは処分を取り消して改めて支給決定するとしました。点検の結果(不支給14,841件のうち444件が支給に)は、審査請求の記事にあります。日本年金機構の業務実績報告でも、「医学的な総合判断を特に要する事例について複数の認定医が関与する仕組み」を続けていること、認定医会議で認定事例と基準の考え方を共有していることが書かれています。

あなたにとっての意味は2つです。一つ、目安表で2級の帯にいても、記述欄と申立書が薄ければ、下に動く。二つ、令和6年度以降に不支給だった人は、点検の対象です。通知が来ていなくても、審査請求の期限(決定を知った日の翌日から3か月)は別に動いています。

目安どおりにならないのは、なぜか — ガイドラインの条文と数字

ここからが、この記事でいちばん伝えたいことです。

ガイドライン自身が、目安どおりにならないことを認めています。「診断書の記載内容に基づき個別の事案に即して総合的に評価した結果、目安と異なる等級になることもあり得る」と明記されているのです(その場合は合理的かつ明確な理由をもって判定するとされています)。目安表は出発点であって、結論ではありません。

ガイドラインは、目安と違う等級にする条件も書いています。「目安と異なる等級になることもあり得るが、その場合は、合理的かつ明確な理由をもって判定する」。「目安が2級又は3級など複数になる場合は、総合評価の段階で両方の等級に該当する可能性を踏まえて、慎重に等級判定を行う」。つまり、境目の帯にいる人ほど、記述欄と申立書が読まれます。

数字でも同じことが見えます。令和6年度の精神の不支給のうち、目安では等級に届いていたのに落ちた事案が75.3%。目安表で2級の帯にいても、総合評価で下に動くことは、例外ではなく多数です。厚生労働省はこの割合の上昇を問題視し、令和6年度以降の精神の不支給事案を点検して、必要なものは処分を取り消すとしました(不支給85件の中身・審査請求の記事)。

逆方向もあります。当サイトが確認した社会保険審査会の裁決91件のうち、争点が「障害の程度・等級該当性」だったものは57件で、そのなかには「3級とした処分を取り消して2級」「非該当を取り消して2級」という結論も含まれます。総合評価は、書面に実態が載っていれば上にも動く仕組みです。

ここで一つ、誤解を解いておきます。等級は「あなたの重さ」の評価ではありません。制度が支給額を決めるための区分で、状態が変われば額改定請求で変わります。

→ 「2級と認定された=自分は2級の人間だと決められた」は誤解です

さらに、失敗したときのやり直しは簡単ではありません。不支給のあとに同じ内容の診断書で再請求しても、審査側の手元にある情報は前回と同じですから、結果は変わりません。2度目は「前回と何が違うか」を書面で示す必要があり、最初の申請より難しくなります。つまり今の障害年金は、最初の申請の書類の質が、その後の何年分もの結果を左右します。

では、何が「総合判断」を左右するのか

目安表の数字が同じでも結果が分かれるとしたら、差はどこで付くのか。ガイドラインの考慮要素と裁決の争点から見える共通項は、次の3つです。

(1) 診断書の数字と、記載内容の整合性

判定の平均が3を超えているのに、備考欄に「症状は安定している」「日常生活はおおむね自立」と書かれていたら、審査側はどちらを信じるでしょうか。数字だけでなく、診断書全体が同じ生活を描いていることが必要です。

(2) 申立書と診断書の整合性

病歴・就労状況等申立書に書いた生活の実態と、診断書の評価がずれていると、マイナスに働きます。診断書より重く盛った申立書は、矛盾としてすぐ見抜かれます。逆に、同じ生活を別の角度から描けていれば説得力が増します。

(3) 就労の見え方

働いている事実そのものより、「どんな配慮のもとで、どんな状態で働いているか」が伝わっているかで結果が変わります。

働きながらの受給、厚生年金を払いながらの受給は制度上まったく正当で、不正でも何でもありません。問題は、障害者雇用・短時間勤務・欠勤の頻度・職場の援助が書面に載っていないために「働けている=軽い」と読まれてしまうことです(→働きながら障害年金は受け取れる?)。

つまり総合判断の時代とは、書類同士の矛盾が命取りになる時代です。そしてその矛盾は、悪意からではなく「診察で伝えきれなかった」「昔のことを思い出せずに適当に書いた」から生まれます。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、目安表と総合評価の関係が見える実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

うつ病・障害認定日請求(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 3級とされた処分について、家族の援助を要する日常生活能力と、就労支援での短時間作業も続かなかった経過を総合し、障害認定日に2級に該当するとして原処分が取り消されました。「家族の援助」と「就労支援でも続かなかった」という総合評価の要素が、書面に載っていたから上に動いた例です。

非定型うつ病・障害認定日請求(平成30〜令和元年、原文(厚労省PDF)) — 障害認定日には職場の配慮を受けつつ一般雇用で管理職として週4日勤務し、日常生活能力も比較的保たれていたため、3級にも該当しないとして原処分が維持されました。就労の中身が総合評価で重く見られた例で、「配慮があった」だけでは足りず、生活能力の側の実態がどう書かれていたかが結果を分けています。

混合性不安抑うつ障害・事後重症請求(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 傷病が神経症の範疇にあり、診断書に精神病の病態を示す記載もないため認定対象とはならず、原処分が維持されました。目安表の計算より手前の「入口」で決まった例です。

統合失調感情障害・額改定(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 社会資源に依存し就労は困難ではあるものの、自ら家事を行える日もあるなど、日常生活が全面的に不能な1級の状態ではないとして、2級への減額改定が維持されました。「できる日もある」がどう評価されるかの例で、できる日とできない日の比率を伝える意味が分かります。

→ ほかの実例も読む

申請前セルフ判定の手順 — 5ステップ

ここまでの内容を、実際に手を動かす手順に落とします。診断書を受け取ってから提出するまでの間に、この5ステップをやってください。

ステップ1: 7項目を点数化する

診断書裏面の「日常生活能力の判定」で、チェックの付いた位置を左から1・2・3・4点と数え、7つを合計して7で割ります。小数第2位まで出してください(例: 23÷7=3.28)。

ステップ2: 程度の丸を確認する

「日常生活能力の程度」の(1)〜(5)のどこに丸が付いているか。

ステップ3: 目安表に当てる

平均×程度で帯を確認します。「2級」なら目安上は受給圏、「2級または3級」なら総合判断次第、目安が3級以下で障害基礎年金の請求なら、このままでは不支給の可能性が高い状態です。ステップ1〜3は計算ツールでまとめてできます。

→ 私は何級くらい?

ステップ4: 実態と突き合わせる

ここが本番です。各項目のチェックを、自分の(家族から見た)生活と比べます。「単身で支援なしなら」の想定が抜けて軽く付いていないか。特に「通院と服薬」「食事」は、家族の援助で回っている場合に軽く付きやすい代表項目です。

ステップ5: ずれがあれば、提出前に動く

事実と異なる記載は訂正を依頼できます。評価が実態より軽い場合は、評価を変えろと迫るのではなく、生活の実態をまとめた資料を添えて「この実態を踏まえてご再考いただけないか」とお願いします。動き方の詳細は診断書確認の記事へ。

このセルフ判定をやらずに提出するのは、答案を見直さずに提出するのと同じです。審査は書類だけで行われ、提出後に補足の機会はありません。

目安が届かず不支給になったら — 2度目の前に知っておくこと

セルフ判定の結果が芳しくない、あるいはすでに不支給通知を受け取った——という人のために、その後の選択肢の考え方も書いておきます。

選択肢は大きく2つです。(1)審査請求(決定を知った日の翌日から3か月以内。不支給決定そのものの誤りを争う)、(2)再請求(あらためて診断書を取り直し、もう一度請求する)。

どちらを選ぶにしても、先にやるべきことがあります。不支給の理由を確認することです。年金機構に照会すれば、どの要件で不支給になったのか(障害状態か、初診日か、納付要件か)が分かります。障害状態が理由なら、診断書の7項目・程度がどう評価されたかを見直すことで、争点が具体的になります。

そして、再請求を選ぶ場合の現実も伝えておかなければなりません。前回と同じ内容の診断書で出し直しても、審査側が見る情報は同じですから、結果は変わりません。再請求で結果を変えるには、前回の不支給要因(伝わっていなかった生活の実態、書類間の矛盾)を特定し、それを解消した書類を作り直す必要があります。詳しくは審査請求の記事で解説しています。

目安を「引き上げる」のではなく、実態を「正確に反映させる」

誤解のないように書いておくと、目安表を有利にするために実態より重く伝えることは、やってはいけないことです。虚偽の内容で受給すれば、返還請求や取り消しの対象になり得ますし、そこまでいかなくても診断書と申立書の矛盾として表れ、審査を悪くします。

やるべきことは逆で、実態が正確に伝わる状態を作ることです。診察室の数分では伝わらない生活を、7項目に沿って記録し、紙で医師に渡す——当サイトで一貫してお伝えしている方法です。

その記録を1人で続けられるように、日々の出来事を短くメモすると7項目に沿った提出用資料に整理されるアプリを作りました。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。診察で医師に渡す資料になり、申立書の下書きにもなるので、総合判断で見られる「書類同士の整合性」が自然にとれます。

よくある質問

Q. 自分で計算して2級相当なら、必ず2級になりますか?

A. なりません。目安表はあくまで目安で、ガイドラインにも「総合的に判断する」と明記されています。ガイドライン自身が「目安と異なる等級になることもあり得る」としています。数字だけでなく、診断書の記載内容や申立書との整合性を整えることが大切です。

Q. 計算したら目安より軽い等級でした。諦めるべきですか?

A. まず、診断書の評価が実態と合っているかを確認してください。「単身で支援なしの生活を想定して評価する」というルールが反映されず、実態より軽いチェックが付いているケースは珍しくありません。

実態のほうが重いなら、提出前に医師へ生活の実態を資料で伝え直す余地があります(診断書の確認ポイント)。すでに不支給の結果が出ている場合は審査請求という選択肢がありますが、動く前に不支給理由の確認をおすすめします。

Q. 2級と3級の境目はどこですか?

A. 目安表上は、判定の平均がおおむね2.0〜3.0で程度(3)の帯が「2級または3級」の重なる領域です。この帯域は総合判断の影響を最も受けやすく、書類の整合性や就労状況の伝わり方で結果が分かれます。

なお3級は障害厚生年金だけの等級で、障害基礎年金には3級がありません。初診日に厚生年金加入だったかどうかで、同じ状態でも受け取れるものが変わります(→障害基礎年金と障害厚生年金の違い)。

Q. 発達障害や知的障害も同じ目安表ですか?

A. はい、精神の障害用の診断書を使う傷病(うつ病・双極性障害・統合失調症・発達障害・知的障害など)は共通のガイドラインで判定されます。ただし総合評価の考慮要素には障害特性ごとの視点(発達障害のこだわり・対人関係など)が含まれており、療育手帳の有無や幼少期からの経過も材料になります。

Q. 「不支給が増えている」というのは本当ですか?

A. 厚生労働省が公表した令和6年度の数字では、新規裁定の非該当割合は13.0%、精神の障害では12.1%です。年度ごとの推移は厚生労働省の公表資料で確認してください。個々の申請でできることは変わらず、「実態を正確に、矛盾なく書面に載せる」ことに尽きます。

Q. ガイドラインは身体障害にも使われますか?

A. いいえ。このガイドラインは精神の障害の認定に用いられるものです。身体の障害は傷病ごとの障害認定基準で判断されます。

Q. 目安表で「3級」と出ました。障害基礎年金だとどうなりますか?

A. 非該当です。表1の「3級」は、障害基礎年金を認定する場合には「2級非該当」と置き換える、とガイドラインに書かれています。3級があるのは障害厚生年金だけです。初診日に国民年金だった人は、判定平均と程度の組み合わせで2級の帯に入るかどうかが分かれ目になります。

Q. 目安が「2級または3級」の帯でした。どちらになりますか?

A. 決まっていません。ガイドラインは、目安が複数になる場合は「総合評価の段階で両方の等級に該当する可能性を踏まえて、慎重に等級判定を行う」としています。この帯では、表2の要素、つまり援助の状況・就労の実態・診断書の記述欄・申立書との整合が、そのまま結果を分けます。令和6年度に非該当になった85件のうち32件は、この帯から下に動いた事案でした。

Q. 認定医は何人で見ているのですか?

A. 基本は認定医1人が、職員の作った事前確認票を参考に判断します。医学的な総合判断を特に要する事例は複数の認定医が関与し、令和7年6月の厚生労働省の報告書は、全ての不支給事案を複数の認定医が審査することとしました。意見が分かれた事案は障害認定審査委員会に付議されます。

まとめ

  • 等級の目安は「判定7項目の平均 × 程度(1)〜(5)」の目安表で自分で確認できる。計算ツールなら1分
  • 診断書を受け取ったら、まず平均を計算してみる。1項目1点の差の積み重ねが等級の帯をまたぐ
  • 目安は保証ではない。令和6年度の精神の不支給の約4分の1は、目安表で軽くなかった事案
  • 総合評価は「書面に載った情報」の総合。就労の配慮も家族の援助も、書かれていなければ存在しない扱いになる
  • 2度目の申請は「前回と何が違うか」を示す必要がある。最初の申請で、実態を正確に・矛盾なく伝えきる

出典

  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(目安表、総合評価の際に考慮すべき要素の例、「目安と異なる等級になることもあり得る」の記載)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「診断書(精神の障害用)様式第120号の4」および記載要領・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」・厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査」(新規裁定146,225件、非該当13.0%・精神12.1%、等級内訳、精神70.3%、精神の不支給85件のうち、目安では等級に届いていたのに非該当になった事案が64件=75.3%、令和5年度は44.7%、目安どおりの不支給は11件=12.9%)・確認日 2026-09-02
  • 日本年金機構「令和8年度の年金額」(障害基礎年金2級 847,300円)・確認日 2026-09-02
  • 当サイト 裁決事例集(91件、争点「障害の程度・等級該当性」57件)・確認日 2026-09-02
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月。表1 障害等級の目安、表2 総合評価の際に考慮すべき要素の例、等級判定にあたっての留意事項)・確認日 2026-09-27
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」(令和7年6月11日。事前確認票、64件中58件が職員案どおり、85件中26件に表2の記載、ヒアリング例、複数認定医・点検の方針)・確認日 2026-09-27
  • 日本年金機構「令和6年度業務実績報告書(案)」(複数の認定医が関与する仕組み、認定医会議)・確認日 2026-09-27

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否や等級を保証するものではありません。目安表の正確な内容は厚生労働省の公表資料を、個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご確認ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。