障害年金の更新(障害状態確認届)— 何年ごと?落ちたらどうなる?受給してからが本番という話

公開日: / 最終確認日:

この記事の結論

精神疾患の障害年金はほとんどが有期認定で、1〜5年ごとに「障害状態確認届」(診断書)を出して再審査を受けます。誕生月の3か月前の月末に用紙が届き、誕生月の末日が提出期限。動ける期間は実質3か月です。

数字で見ると、令和6年度の再認定304,456件のうち96.7%はそのまま継続(増額1.4%、減額0.8%、支給停止1.1%)。更新は「落とすための審査」ではありません。ただし止まる人には共通点があり、症状の悪化ではなく準備の空白です。

更新は申立書のない「診断書1枚勝負」で、審査側は前回の診断書との差分で読みます。ガイドラインは、等級を下げたり非該当にしたりするときは「前回認定時の障害状態確認届や照会書類等から認定内容を確認するとともに、受給者や家族、診断書作成医への照会を行うなど」慎重に診査すると定めています。前回のコピーと突き合わせ、実態が変わっていないのに軽くなった項目がないかを提出前に確認してください。

止まっても受給権は消えません。審査請求(3か月以内)と支給停止事由消滅届の2つの復活ルートがあります。もらった分を返す必要もありません。

次に読む障害年金の診断書を受け取ったら確認すべき7つのポイント

障害年金の受給が決まると、大きな安心が手に入ります。ただ、精神疾患での受給には続きがあります。ほとんどの場合が「有期認定」で、数年ごとに「障害状態確認届」という診断書を提出し、障害の状態を再審査されるのです。これがいわゆる「更新」です。

受給が決まったあとで、いちばん不安が語られるのがこの更新です。「更新で級落ちした」「支給停止になった」という話は毎年出てきます。ただし数字で見ると、令和6年度の再認定304,456件のうち96.7%はそのまま継続でした(増額1.4%、減額0.8%、支給停止1.1%)。一方で、更新の仕組みを知らずに準備なしで臨む人ほど、結果に驚くことになります。この記事では、更新の実像と備え方をまとめます。

更新の基本の仕組み

  • 更新時期は人によって違い、年金証書の右下「次回診断書提出年月」(2回目以降は前回更新後に届くハガキ「次回の診断書の提出について」)で確認できます
  • 更新の年になると、誕生月の3か月前の月末に日本年金機構から障害状態確認届(診断書)が郵送されてきます
  • 医師に記入してもらい、誕生月の末日までに提出します。診断書の現症日(いつの状態を書くか)は提出期限前3か月以内です
  • 審査の結果、等級継続・等級変更(増額/減額)・支給停止のいずれかが決まります

提出が遅れると年金の支払いが一時止まることがあるため(後から提出して障害状態が確認されれば、止まった分もさかのぼって支払われます)、届いたらまず受診予定を確認してください。

ここで大事なのは——提出期限から逆算して、医療機関の予約を早めに取ることです。混んでいる病院だと、予約が取れた頃には期限が目前、ということが普通に起こります。

「何年ごと?」に正解はない — 同じ2級でも1年・2年・4年

更新までの期間は1〜5年の範囲で個別に決められます。傷病名や等級だけで一律に決まるものではなく、次回の提出時期は年金証書などに記載された「次回診断書提出年月」で確認します。

ここで押さえておきたいのが、次回の提出時期は一律ではないということです。同じ等級・同じ傷病でも、1年後の人もいれば、4年後の人もいます。次回の時期は障害の状態に応じて個別に設定され、年金証書や通知に書かれています。「更新は毎年ある」と思い込んで身構える必要はありません。

→ 「障害年金の更新は、毎年ある」は誤解です

更新期間の長さから「自分は軽く見られた/重く見られた」を読み取ろうとしても、あまり意味がありません。「次は1年後か、5年後か」を自分でコントロールすることはできない。できるのは、いつ来ても大丈夫な状態を作っておくことだけです。稀に永久認定(更新なし)が出ますが、それも個別の判断です。

更新がこわい本当の理由 — 診断書1枚の勝負になる

新規の申請では、診断書に加えて病歴・就労状況等申立書があり、自分の言葉で生活の実態を補足できました。ところが更新で提出するのは、原則として障害状態確認届(診断書)1枚だけです。

つまり更新は、新規申請よりも診断書への依存度が高い審査です。診察室で医師に生活の実態が伝わっていなければ、それを補う書類はもうありません。

更新で落ちる典型は、次のパターンです。

  • 体調の波の「よい時期」と診察が重なった — 診察の数分で元気に見え、「回復」と書かれた
  • 働き始めていた — 配慮や欠勤の実態が診断書に載らず、「就労できている=軽快」と読まれた
  • 主治医が変わっていた — 前の医師ほど経過を知らない新しい医師が、目の前の状態だけで書いた
  • 前回の診断書より軽い内容になっていた — 実態は変わっていないのに、書きぶりの差で「改善」に見えた

どれも、症状が本当に良くなったわけではないのに止まるパターンです。逆に言えば、防げるパターンでもあります。

障害状態確認届は「簡略版の診断書」— だから1項目の重みが増す

届いてみると分かりますが、障害状態確認届の様式は新規申請の診断書とほぼ同じ構成で、日常生活能力の判定7項目と程度、就労状況の欄もそのままあります。つまり更新の審査でも、新規と同じ目安表の考え方で等級が見直されます。

違うのは、周辺情報の量です。新規のときには申立書で「発病からの経過」という文脈を添えられましたが、更新では文脈なしの1枚。審査側の手元には前回までの診断書があり、「前回と比べてどうか」という差分で読まれます。

7項目のチェックがひとつ軽くなれば、平均が0.14動き、目安表の帯をまたぐこともある——新規申請のとき以上に、1項目1チェックの重みが増すのが更新です。前回と今回の診断書を、それぞれ計算ツールに入れて帯を比べてみてください。

→ 私は何級くらい?

だからこそ、前回の診断書のコピーとの突き合わせが更新準備の背骨になります。控えを取っていなかった人は、年金事務所で過去に提出した診断書の写しの交付を請求できます(時間がかかるので早めに)。次回からは必ずコピーを残してください。

突き合わせてみて、実態は変わっていないのに評価だけ軽くなっていた——というときの動き方は更新の診断書が軽かったときにまとめています。更新は提出期限があるため、期限内提出を最優先にしつつ直せる範囲を直すという順番になります。

審査側は更新をどう扱うと決めているか — ガイドラインの「再認定時の留意事項」

更新が怖いのは、何を見られているか分からないからです。分かっている範囲を、原文で置きます。

精神の障害に係る等級判定ガイドラインには、「(4) 再認定時の留意事項」という項があります。

ガイドライン施行後の再認定にあたっては、提出された障害状態確認届(診断書)の記載内容から、下位等級への変更や2級(又は3級)非該当への変更を検討する場合は、前回認定時の障害状態確認届(診断書)や照会書類等から認定内容を確認するとともに、受給者や家族、診断書作成医への照会を行うなど、認定に必要な情報収集を適宜行い、慎重に診査を行うよう留意する。

つまり、下げる・止めるときは、今回の診断書だけで決めない。前回の診断書を見て、必要なら本人や家族や医師に聞く。それが決まりです。「1枚の診断書で突然止まる」という恐れは、制度の建て付けとしては当たっていません。

もう一つ、平成28年9月のガイドライン施行より前に受給が決まった人には、別の規定があります。

既認定者の障害の状態が従前と変わらない場合については、当分の間、等級非該当への変更は行わないことを基本とする。

施行前の認定も当時の基準と医学的知見で行われたものだから、状態が変わっていなければ非該当にはしない、という趣旨です。「ガイドラインができて更新が厳しくなった」と聞いて不安な人は、この一文を知っておいてください。

この運用が守られているかは、国が確かめています。令和7年6月の厚生労働省の調査報告書は、令和6年度の再認定10,000件を抽出し、内訳を継続96.8%・増額改定1.4%・減額改定0.8%・支給停止1.0%とし、支給停止105件について「ガイドラインの上記記載を踏まえた対応が行われているかを確認したが、認定調書等には、判断の理由が明確に記載されているなど、特段の問題点等は確認できなかった」と書いています。同じ調査で新規請求の側には課題が指摘されたのと対照的で、更新の運用は、確かめた範囲では決まりどおりでした。

報告書には、更新の審査の手順も書かれています。新規請求では職員が「事前確認票」を作って等級案を書きますが、再認定ではそれを作らず、認定医が前回の認定も参考にしながら医学的に判断します。前回の診断書と今回の診断書を、認定医が並べて読む。だから、変わっていないことは変わっていないと書いてもらう、が更新の要点になります。

お金の段取り — 「止まっても数か月は生きられる」設計にしておく

更新には、書類の準備と同じくらい大事な準備がもうひとつあります。家計です。障害年金まわりの手続きは「知らないと損をする」ことだらけで、更新はその最たるものです。

  • 結果が出るまで数か月かかることがある。減額・停止となる場合、所定の月から反映されます。年金を生活費の柱にしている人ほど、判定が出るまでの期間と、万一止まった場合の数か月分の生活費を意識しておく必要があります
  • 止まっても、支払いは止まらない。国民健康保険料は所得ゼロでも請求が来ます(自治体の軽減措置はまず役所に相談)。家賃・通信費・サブスクも同じです
  • 障害年金は非課税ですが、非課税ゆえに所得証明上は「所得ゼロ」となり、各種の減免制度(国保・NHK・自治体独自の助成など)の対象になっている人が多いはずです。支給停止で家計が変わるときは、役所の窓口で使える制度を洗い直す価値があります
  • 逆に、等級が上がって年金額が増えたときは、家族の健康保険の扶養から外れることがあります。非課税でも健康保険の扶養の判定では収入に数えるためです(非課税と「収入扱い」の違い)

「更新が不安で症状が悪化する」という話は、くり返し聞きます。不安の正体は「落ちたらどうなるか分からない」です。落ちても受給権は消えない・復活ルートが2つある・当面の家計はこう回す——ここまで具体化しておくと、不安はかなり小さくなります。

そしてもう一つ。更新で等級が下がっても、それまでに受け取った年金を返す必要はありません。返還の対象になるのは不正受給の場合だけです。

→ 「更新で等級が下がったら、もらった分を返さないといけない」は誤解です

20歳前傷病の人は、もうひとつ「所得の審査」がある

20歳前傷病による障害基礎年金を受給している人は、更新(障害状態の確認)とは別に、本人の所得による支給制限があります。保険料を納めずに受給できる制度である代わりに、前年の所得が一定額を超えると、その年の一定期間、年金の全部または半分が停止される仕組みです。

働き始めた年の翌年に「障害の状態は変わっていないのに止まった」という話の一部は、実はこの所得制限によるものです。障害状態の審査と所得の審査は別物なので、通知が来たらどちらの理由で止まったのかを必ず確認してください。

所得制限による停止は、所得が基準内に戻れば解除されます。このあたりの「知らないと慌てる」仕組みは、定番の落とし穴です。

就労を始めた人の更新 — 「働ける=改善」と読ませない

更新で最も神経を使うのが、受給開始後に働き始めたケースです。

先に大前提を。「正社員として働いている」「厚生年金を払っている」だけでは不正受給ではありません。障害の状態が続いている限り、就労と受給が両立するケースは制度上普通にあります。国のガイドラインも、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない、としています。「働いたら返さないといけないのでは」と怯えて申告をためらう必要はありません。

→ 「働いていたら、障害年金は無理」は誤解です

その上で、更新で押さえておきたいのが次の2点です。

  • 直近数か月の状態が読み取れる資料を、診断書に同封できると安心
  • 就労している場合は、配慮事項や欠勤・早退の実態も記すと、「働ける=改善」という誤解を避けられる

診断書の様式には就労状況を書く欄がありますが、医師は本人の職場を見ていません。

障害者雇用か一般雇用か、週何時間か、どんな配慮を受けているか、欠勤・早退が月に何回か、帰宅後・休日はどんな状態か——これらを診察で伝えていなければ、診断書には「就労中」の一言だけが載り、審査側には最も軽く見える形で伝わります(→働きながら障害年金は受け取れる?)。

働いている事実は隠せませんし、隠す必要もありません。問題は実態が「載らない」ことだけです。

完成形: アキさんの更新1年前タイムライン

アキさん(32歳・うつ病、障害基礎年金2級。この記事のための架空の例です)は年金証書で「次回診断書提出年月」が来年7月と分かっています。彼女の準備カレンダーです。

1年前〜(日常)

  • 日々の出来事メモを続ける(調子の悪かった日、母に助けてもらったこと、ヒヤリとした出来事)
  • 診察のたびに7項目に沿ったメモを主治医に渡す→カルテに生活の実態が蓄積していく

4月末(誕生月の3か月前)

  • 障害状態確認届が郵送で届く→その日のうちに中身を確認し、病院に電話して「更新の診断書をお願いしたい」と伝えて診察予約
  • 新規申請時の診断書のコピーと、直近1年のメモを見返して「この1年の生活の実態」をA4一枚にまとめ始める

5月(診察)

  • 障害状態確認届の用紙+「この1年の生活の実態」メモを主治医に渡す。就労はしていないが、週1回の家事手伝いも「母の指示があれば30分程度」と実態のまま伝える
  • 「お忙しいところ恐れ入ります。7月末が提出期限ですので、6月中にいただけると助かります」と期限を明確に

6月(受け取り・確認)

  • 出来上がった診断書を受け取ったら、提出前にコピー
  • 裏面の7項目を前回(新規申請時)の診断書と突き合わせる。実態が変わっていないのに軽くなっている項目がないか、目安表の帯が変わっていないかを確認
  • 事実と違う記載(「独居」「就労中」などの誤り)があれば、提出前に修正をお願いする

7月(提出)

  • 誕生月の末日までに提出。コピーは次回更新まで保管

このタイムラインの核は、実は4月以降ではありません。1年前からの「日常のメモ」です。更新の診察で渡す「この1年の実態」は、記憶からは作れません。控えを残す習慣と日々の記録だけが、更新を「一夜漬けの試験」から「答え合わせ」に変えてくれます。

完成形: アキさんの「この1年の実態」メモ(更新版)

更新の診察で障害状態確認届の用紙と一緒に渡す、更新用メモの完成形です。新規申請時(7項目の記事の本人メモ)との違いは、前回からの変化(良くなったこと・変わらないこと)を正直に併記する点です。

先生へ — 障害状態確認届のご記入にあたって、この1年の生活の様子です(アキ)

変わらず難しいこと

  • 食事: 自分で用意できるのは月数回のまま。母が作るか菓子パン。1日1食の日が週2〜3日
  • 服薬: 母の朝晩の声かけで継続。声かけのない日は今も飲み忘れます
  • 金銭: 通帳・カードは引き続き母が管理(昨年秋に一度返してもらいましたが、2週間で使いすぎて戻しました)
  • 手続き: 役所・保険の書類は開封できず、母がすべて対応

この1年で起きたこと

  • 3月、母のすすめで週1回・30分程度の家事手伝い(洗濯物たたみ)を開始。母の指示があればできますが、自発的にはできません
  • 6月、祖母の法事を欠席(人が集まる場に出られず)
  • 火の消し忘れが2回。以降、コンロは母がいるときだけ使う約束にしています

少し良くなったこと

  • 調子のよい日は、母と近所を10分ほど散歩できるようになりました(月3〜4回)

※週1回の家事手伝いができるようになった以外は、1人で生活が回らない状態は前回の申請時と変わっていません。

「少し良くなったこと」を書くのを怖がる必要はありません。散歩や家事手伝いレベルの改善を隠して後から矛盾が出るほうがよほど危険ですし、「これだけの改善にとどまっている」ことを自分の言葉で位置づけられるのは、むしろ強みです。医師も「良い変化はあるが、生活の自立には遠い」という一貫した診断書を書きやすくなります。

同じ状況の人が、どうなったか

更新で止まった・下がったあと、社会保険審査会で結論が覆った実例です。当サイトが読んだ裁決のうち、更新・支給停止が争われたものは11件で、結論は容認9件・棄却2件(棄却2件はいずれも「症状が固定している」と判断されたもの)。裁決は不服を申し立てた人の記録なので全体の割合ではありませんが、何で覆ったかは読めます。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

副腎白質ジストロフィー・更新で減額(令和6年、原文(厚労省PDF)) — 進行性の疾患であるのに、前回の診断書から全項目が「改善」となっている矛盾を審査会が指摘し、診断書は正確性に欠けるとして減額処分が取り消されました。前回との差分で読まれる、という更新の性格がそのまま出た例です。

両網膜色素変性・更新で支給停止(令和7年、原文(厚労省PDF)) — 進行性の疾患を「症状固定」として支給停止した処分について、根治法のない進行性であることから固定とは認められないとし、3級に該当するとして取り消されました。

統合失調症・支給停止(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 保険者が次回診断書提出年月の指定を誤った後、過去にさかのぼって再認定の時期を設定して支給停止した処分は、運用と信義則に反し受給権者を不安定にするとして取り消されました。年金証書の「次回診断書提出年月」がいかに重い意味を持つかが分かります。

血管免疫芽球性T細胞リンパ腫・更新で等級低下(令和7年、原文(厚労省PDF)) — 等級を下げた処分について、審査会は提出された修正診断書を採用し、難治性の下痢・反復する入院・車椅子での生活などを総合評価して2級の継続を認め、原処分を取り消しました。提出した診断書に実態と違う点があったとき、修正診断書を出して覆った例です。受け取った診断書の確認は、更新でも最後の砦です。

→ ほかの実例も読む

更新で結論が覆った実例から、逆算する

上の裁決や、更新で止まった人によくある経過から逆算できる教訓は具体的です。

「調子が上向いた時期に診察が当たって、そのまま書かれた」

診断書の現症日は提出期限前3か月以内。その3か月の「平均的な実態」が伝わる資料を渡していれば、1回の診察の印象で書かれることは防げます。波のある病気であること自体、伝えるべき実態です。

「引っ越しで病院が変わり、新しい先生に経過が伝わっていなかった」

転院時は紹介状だけでなく、前回の診断書のコピーとこれまでの生活記録を新しい医師に渡しておく。更新が来てから慌てて説明するのでは間に合いません。

「ハガキだと思って放置していたら診断書だった」

障害状態確認届は封書で届きます。誕生月の3か月前を過ぎたら郵便物に注意し、届いたら即開封・即予約。開封できない状態の人は、家族に「この時期に年金機構から封書が来たら教えて」と頼んでおくだけでも違います。

「前回より全部よくなっている診断書になっていた」

r06-03_05 の例のとおり、実態と合わない「改善」は審査側にも矛盾として見えます。前回のコピーと突き合わせ、変わっていないものは変わっていないと伝えてください。

共通項は、症状の悪化ではなく準備の空白です。だからこそ、備えは誰にでもできます。

もし止まってしまったら — 復活のルートは2つある

先に大事なことを書きます。支給停止になっても、受給権そのものが消えるわけではありません。

  • ルート1: 審査請求 — 「その決定はおかしい」と不服を申し立てる方法。決定を知った日の翌日から3か月以内という期限があります(→不支給・想定より低い等級だったとき)。審査請求の対象は「支給停止(または減額)の決定」です。同じ時期に届く年金額改定の通知のほうを対象にして申し立て、不適法として却下された裁決があります。そのときには支給停止処分の不服申立期間(3か月)も過ぎていて、もう争えませんでした。通知の名称と日付を確かめ、期限内に出してください
  • ルート2: 支給停止事由消滅届 — 「障害の状態が(再び)基準に該当している」ことを新しい診断書で示し、支給の再開を求める方法。こちらは停止後いつでも出せます(→支給停止からの復活)

どちらを選ぶべきかは状況によります。止まった直後の診断書と同じ内容で消滅届を出しても通りにくいため、生活の実態が診断書に反映される状態を作ってから動きます。等級が下がった(例: 2級→3級)場合には「額改定請求」という手続きもあります。

なお、見落とされがちなのが止まった後のお金の現実です。年金収入を前提にした生活で突然支給が止まっても、支払いは止まってくれません。

たとえば国民健康保険料は、所得がゼロでも請求が来ます(自治体によって軽減措置があるので、まず役所に相談してください)。障害年金は非課税ですが、それを前提に組んでいた家計は直撃を受けます。更新は「落ちてから考える」では遅い手続きです。

額改定請求という選択肢と、その注意点

症状が悪化しているのに更新を待てない場合、額改定請求(等級を上げてほしいという請求)ができます(原則、受給権発生または前回の診査から1年経過後)。ただし注意点があります。

  • 額改定請求は等級アップの可能性がある一方、改めて障害状態の審査を受けることなので、結果次第では現状維持どころか下がるリスクも理屈上あります
  • 永久認定を持っている人にとっては、認定の「リセット」になり得る——せっかくの更新不要の地位を、自ら審査の土俵に戻すことになります

「上がるかもしれないから出してみる」で気軽に出すものではなく、診断書に悪化が明確に反映される状態を整えてから使う手続きです。

更新は毎回来る。だから「記録の習慣」が効く

更新の準備で一番大変なのは、「この1〜2年の生活の実態」を思い出す作業です。新規申請のときに一度やった、あのしんどい振り返りを、更新のたびに繰り返すことになります。

これを避ける方法は一つしかなくて、日々の出来事をその場で記録しておくことです。その日あったことを短くメモすると、7項目に沿った提出用の資料に整理されるアプリを作りました。

受給が決まった後もメモを続けておけば、更新の診察前に「直近数か月の実態」がすでに資料の形になっています——「診断書に同封できる直近数か月の資料」そのものです。ログイン不要・記録は端末の中に保存され、基本機能は無料です。

よくある質問

Q. 更新は何年ごとですか?

A. 1〜5年の範囲で個別に決められます。同じ等級・同じ傷病でも期間が分かれることがあるため、自分の更新時期は年金証書の「次回診断書提出年月」欄、2回目以降は前回更新後に届く案内で確認してください。

Q. 更新の結果はいつ、どうやって分かりますか?

A. 等級が変わらない場合は「次回の診断書の提出について」のハガキが届き、支給が継続します。等級変更や支給停止の場合は、その旨の通知が届きます。提出から結果まで数か月かかることがあり、その間は従来どおり支払われます(減額・停止となる場合は所定の月から反映されます)。

Q. 働き始めたら更新で必ず止まりますか?

A. 必ず止まるわけではありません。就労の有無だけでなく、仕事の内容・配慮の状況・欠勤の実態・生活への支障を含めて判断されます。ガイドラインも、労働に従事していることをもって直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない、としています。

「働いている+厚生年金を払っている」だけでは不正受給でもありません。勤務形態や配慮の実態が診断書に反映されるよう、医師に伝えることが重要です。

Q. 提出期限に間に合いませんでした。もう終わりですか?

A. 終わりではありません。提出が遅れると年金の支払いが一時保留されることがありますが、その後に提出して障害状態が確認されれば、止まっていた分もさかのぼって支払われます。気づいた時点でできるだけ早く提出してください。

Q. 支給停止になったら受給権もなくなりますか?

A. なくなりません。支給停止は「支払いが止まっている」状態で、受給権は残っています。審査請求(3か月以内)か、支給停止事由消滅届の提出で再開を目指せます。止まった直後と同じ内容の診断書では再開が難しいため、生活の実態が診断書に反映される状態を整えてから動いてください。

Q. 止める前に、年金機構から本人や医師に問い合わせはありますか?

A. ガイドラインは、等級を下げたり非該当にしたりするときは「前回認定時の障害状態確認届や照会書類等から認定内容を確認するとともに、受給者や家族、診断書作成医への照会を行うなど、認定に必要な情報収集を適宜行い、慎重に診査を行う」と定めています。必ず電話が来るという意味ではありませんが、今回の診断書1枚だけで決めない建て付けです。令和6年度の支給停止105件を国が確認した結果、判断の理由は明確に記載されていました。

Q. 平成28年より前に受給が決まりました。ガイドラインで更新が厳しくなりましたか?

A. ガイドラインは、施行(平成28年9月)前に認定された人について、「障害の状態が従前と変わらない場合については、当分の間、等級非該当への変更は行わないことを基本とする」としています。状態が変わっていなければ、ガイドラインを理由に非該当にはしない、という規定です。変わっていないことを、診断書に変わっていないと書いてもらってください。

Q. 提出した診断書に、実態と違う記載があったと後で気づきました。

A. 修正診断書を出す道があります。社会保険審査会は、更新で等級を下げた処分について、提出された修正診断書を採用して2級の継続を認め、処分を取り消した例があります(r07-03_04)。まず主治医に事実と違う点を伝え、修正した診断書を年金事務所に提出してください。審査請求の期限(決定を知った日の翌日から3か月)は別に進むので、期限内に審査請求も出しておくのが安全です。

Q. 永久認定になることはありますか?

A. 精神疾患では稀ですが、更新不要の永久認定が出ることはあります。個別の判断によるもので、狙って取れるものではありません。なお永久認定でも、不正受給が発覚すれば取り消し・返還請求の対象になりますし、額改定請求をすれば改めて審査を受けることになります。

まとめ

  • 精神疾患の障害年金はほぼ有期認定。誕生月の3か月前に障害状態確認届が届き、誕生月末日までに提出する
  • 令和6年度の再認定は96.7%が継続。更新期間は1〜5年で幅があり、期間の長短に一喜一憂しない。期限から逆算して予約を早く取る
  • 更新は申立書のない「診断書1枚勝負」。前回のコピーと突き合わせ、直近数か月の実態が読み取れる資料を診察で渡す
  • 就労中は配慮・欠勤・早退の実態まで伝えて「働ける=改善」と読ませない。就労と受給の両立は不正ではない
  • 止まっても受給権は消えず、もらった分を返す必要もない。審査請求と支給停止事由消滅届の2ルート。額改定請求は準備を整えてから
  • 更新は毎回来る。日々の記録の習慣が、更新を一夜漬けから答え合わせに変える

出典

  • 日本年金機構「障害状態確認届(診断書)の提出」の案内(誕生月の3か月前の月末に送付、誕生月の末日まで、提出遅れ時の取り扱い)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定304,456件、継続96.7%・増額1.4%・減額0.8%・支給停止1.1%)・確認日 2026-09-02
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(就労に関する記載、目安表)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「額改定請求」「支給停止事由消滅届」の案内・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(第3の3(4) 再認定時の留意事項、第4 既に障害給付等を受給している者への対応)・確認日 2026-09-28
  • 厚生労働省「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」(再認定10,000件の内訳、支給停止105件の個別確認、再認定では事前確認票を作成しない運用)・確認日 2026-09-28
  • 日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届いたとき」(誕生月の3か月前の月末に送付、誕生月末日が提出期限、提出期限前3か月以内の現症)・確認日 2026-09-28
  • 当サイト 裁決事例集(更新・支給停止が争点の11件: 容認9・棄却2。r06-03_05・r07-03_05・h28_29-16_01・r07-03_04)・確認日 2026-09-28

※本記事は一般的な情報提供であり、更新の結果を保証するものではありません。手続きの詳細は年金事務所、個別の判断は社会保険労務士にご相談ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。

このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。