リード(直答)
受給が決まって、ほっとしたのも束の間、頭に浮かぶのは「次の更新で切られたらどうしよう」。封筒が届くたびに心臓が縮む。少し良くなった自分を、喜んでいいのか、隠したほうがいいのか分からなくなる。
先に、制度の事実を並べます。更新は毎年ではなく、数年ごとです。審査されるのは障害の状態だけで、初診日や納付要件をやり直すわけではありません。下がっても、それまで受け取った分を返すことはない。下がった結果には、新規のときと同じように不服申立てができる。そして、止まっても、悪化すれば再開を求める手続きがある。
「更新」という言葉から想像するほど、白紙に戻る手続きではありません。このページは、届いてから出すまでの段取りと、下がったときに何ができるかを書いています。
審査で本当に見られているのは、この3つ
1. 前回の診断書との「つながり」
更新の診断書は、単独で読まれるのではなく、前回の診断書と並べて読まれます。進行する病気なのに、全項目が「改善」になっている。生活の様子は変わっていないのに、日常生活能力の程度が1段軽くなっている。こういう「つながりの不自然さ」は、審査会も見ています。逆に言えば、前回の診断書の控えを手元に置いて、今回の内容と見比べるのは、あなたにもできる確認です。
2. 「良くなった」の中身
回復した部分があるなら、それは事実として書かれるべきです。隠す必要はないし、隠せば診療の記録と矛盾します。見られているのは「良くなったか」ではなく、「良くなった部分と、続いている困難の両方が載っているか」。就職した、外出が増えた、という前進があっても、それが職場の配慮や家族の支えで成り立っているなら、その支えも一緒に書かれている必要があります。
3. 提出の期限と、現症日
更新の用紙(障害状態確認届)は、誕生月の3か月前の月末に届き、提出期限は誕生月の末日です。診断書は提出日前3か月以内の状態を書いたものが必要。期限に遅れたり不備があると、支払いが一時止まることがありますが、提出して確認されれば再開します。届いたらまず、診察の予約を入れる。中身の前に、日程です。
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、更新や支給停止が争点になったものを3つ。
進行する病気なのに、前回から全項目「改善」(容認) 副腎白質ジストロフィーという進行性の病気で、更新時に等級を下げられた方の事例です。審査会は、前回の診断書から全項目が改善になっているのは病気の性質と矛盾すると指摘し、診断書は正確性に欠けるとして減額処分を取り消しました。
「治療で一時的に良くなっている」状態を、症状固定と扱われた(棄却) 眼瞼けいれんの方で、3級受給中に支給停止となった事例です。継続的な治療にもかかわらず、認定基準上の「症状固定」に至ったと判断され、処分は維持されました。治療の効果で状態が保たれている場合、その状態が「固定」と読まれることがある。治療をやめたらどうなるか、が伝わっているかが分かれ目です。
年金機構側の日付の指定ミスで止められた(容認) 統合失調症の方の事例です。機構が次回の診断書提出年月の指定を誤ったあと、さかのぼって再認定の時期を設定し、支給停止にしました。この処分は、運用と信義則に反し受給者を不安定にするとして取り消されました。通知の日付に不自然さを感じたら、それ自体が争える材料になります。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
前回の書類の控えを、取っていない
更新でいちばん効く準備は、前回出した診断書と申立書のコピーです。今回の診断書を受け取ったとき、前回と何が変わったかを自分で見比べられる。控えがないと、下がった理由を推測するしかなくなる。これから初めて申請する人は、出す前に必ずコピーを。すでに受給中で控えがない人は、年金事務所で自分の記録の開示を相談できます。
診察で「調子いいです」と言ってしまう
更新の診察は、いつもより身構えます。先生に心配をかけたくない、良くなったと思われたい。それで「だいぶ落ち着いてます」と言う。その一言が、診断書の「日常生活能力の程度」を1段動かすことがあります。
初回のときと同じです。良い日と悪い日の両方を、頻度で伝える。「外出は月に数回できるようになった。ただ、翌日は寝込む」「仕事に行けているが、帰宅後は何もできない。家事は母がやっている」。前進を隠さず、支えも隠さない。
「下がったら、もらった分を返すことになる」と思っている
なりません。更新で等級が下がったり止まったりしても、変わるのはその後の支払い分です。それまで正しく受け取っていた分をさかのぼって返すことはありません(虚偽の申告など不正があった場合は別)。この誤解で、更新の書類を出せずに止まる人がいます。出さないほうが、支払いが止まります。
下がった結果を、そのまま受け入れる
更新で等級が下がった、支給停止になった。その処分にも、新規の不支給と同じように審査請求ができます。期限は処分を知った日の翌日から3か月以内。実態が変わっていないのに下がったと感じるなら、直近の診断書に普段の状態が反映されていたかをまず確認して、諦める前に不服申立てと専門家への相談を検討してください。上の実例のとおり、覆ることはあります。
数字で見ると
更新は、障害の状態に応じて定められた数年ごとです。毎年ではありません。次の提出時期は年金証書や通知に書いてあります。「毎年審査に怯える制度」ではない。
そして、更新で見られるのは障害の状態だけ。初診日も納付要件も、審査し直されません。受給権そのものが白紙に戻る手続きではない。普段の状態が診断書に正しく載ることに、集中してください。
よくある質問
Q. 更新の診断書代は、また自分で払うのですか。
はい。診断書などの文書料は原則自己負担で、更新のたびにかかります。国へ払う手数料はありません。負担が重いと感じたら、自立支援医療や自治体の助成が使える場合があるので、通院先の相談員や市区町村に聞いてください。
Q. 症状が重くなりました。次の更新まで待つしかないですか。
待たなくていい場合があります。受給中に障害が重くなったときは、診断書を添えて「額改定請求」ができます。原則として、受給権発生または前回の審査から1年経過後に請求できます。1年を待たずに請求できる「明らかな悪化」の一覧も定められていますが、精神の障害はこの一覧に含まれていません。精神疾患の場合は、悪化の実態が次の診断書に載るよう記録を続けながら、時期が来たら請求する段取りになります。
Q. 止まってしまいました。もう終わりですか。
終わりではありません。支給停止のあと、状態が悪化したときは「支給停止事由消滅届」に診断書を添えて提出することで、再開を求める手続きができます。→ 支給停止になったとき
次の一歩
いま受給中で、次の更新がまだ先なら、今日やることは2つです。前回出した書類の控えがどこにあるかを確認する。日々の記録を続ける(調子の良い日も、悪い日も)。
更新の封筒が届いたなら、開けたその日に、診察の予約を入れてください。中身を読むのは、そのあとでいい。
下がった通知を受け取ったなら、通知の日付を確認して、3か月のカレンダーを作る。→ 不支給・不服申立て
しんどくて手が止まっているなら → 申請がしんどいときの「小分け」の進め方
関連コラム
- 障害年金の更新(障害状態確認届)— 何年ごと?落ちたらどうなる?(/columns/koushin-kakuninhodo)
- 額改定請求 — 症状が重くなったときに等級を上げてもらう手続き(/columns/gaku-kaitei-seikyuu)
- 障害年金が止まったら — 支給停止の原因と、復活させる手続き(/columns/shikyuu-teishi-fukkatsu)
- 障害年金が決まったあとの手続きリスト(/columns/jukyuugo-tetsuduki)
- 診断書を受け取ったら確認すべき7つのポイント(/columns/shindansho-kakunin)
- 診断書が実態と違う・軽く書かれた — 訂正はどこまで頼める?(/columns/shindansho-jittai-chigau)
- 働きながら障害年金はもらえる?(/columns/hatarakinagara)
- 障害年金が不支給になったら — 審査請求・再審査請求・再請求の選び方(/columns/fushikyuu-shinsa-seikyu)
- 障害年金の申請結果はいつ届く? — 審査期間と結果待ちの過ごし方(/columns/shinsei-kikan)
出典
- 日本年金機構「障害状態確認届」の提出について(提出時期・期限・現症日) ・ 確認日 2026-08-31
- 国民年金法・厚生年金保険法(額改定請求、支給停止事由消滅届、審査請求期間) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」 ・ 確認日 2026-08-31
- 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)