リード(直答)
受給が決まって、ほっとしたのも束の間、頭に浮かぶのは「次の更新で切られたらどうしよう」。封筒が届くたびに心臓が縮む。少し良くなった自分を、喜んでいいのか、隠したほうがいいのか分からなくなる。
先に、制度の事実を並べます。更新は毎年ではなく、数年ごとです。審査されるのは障害の状態だけで、初診日や納付要件をやり直すわけではありません。下がっても、それまで受け取った分を返すことはない。下がった結果には、新規のときと同じように不服申立てができる。そして、止まっても、悪化すれば再開を求める手続きがある。
数字も先に。令和6年度に更新(再認定)の審査を受けた304,456件のうち、そのまま続いたのは96.7%。支給停止は1.1%でした。「更新」という言葉から想像するほど、白紙に戻る手続きではありません。
このページは、届いてから出すまでの段取りと、下がったときに何ができるかを書いています。調子が悪くて長く読めない日は、「更新の1年前からの順番」の表と、「次の一歩」だけ読んでください。
数字で見る、更新
| 何の数字か | 数字(令和6年度) |
|---|---|
| 更新(再認定)の審査を受けた件数 | 304,456件 |
| そのまま続いた | 294,405件(96.7%) |
| 等級が上がった | 4,359件(1.4%) |
| 等級が下がった | 2,451件(0.8%) |
| 支給停止 | 3,241件(1.1%) |
| 精神障害・知的障害の診断書での更新 | 継続 238,772件 に対して 支給停止 1,026件 |
100人のうち約97人は、前と同じ額を受け取り続けています。止まる1.1%と続く96.7%を分けているのは、病名ではありません。働いているかどうかでもありません。更新のときに出す診断書1枚に、普段の生活がどれだけ正確に書かれているかです。
更新の日程を、数字にする
更新の年になると、封筒が届きます。日付は全部、年金証書の「次回診断書提出年月」から決まります。
| いつ | 何が起きるか |
|---|---|
| 提出年月の12か月前 | 準備を始める時期。記録を続ける。前回の診断書の控えを出しておく |
| 提出年月の3か月前の月末 | 日本年金機構から障害状態確認届(更新用の診断書)が届く |
| 届いた日 | 診察の予約を入れる。中身を読むのはそのあとでいい |
| 提出年月の3か月前〜提出期限 | この期間の状態を診断書に書いてもらう(現症日) |
| 提出年月の末日 | 提出期限 |
| 提出のあと | 審査中の支払いについては、年金事務所に確認してください |
| 結果が届いた日 | 下がっていたら、この日の翌日から3か月が不服申立ての期限 |
年金証書の提出年月を入れると、この日付が全部出ます。
更新で落ちる理由 — 審査で本当に見られているのは、この3つ
1. 前回の診断書との「つながり」
更新の診断書は、単独で読まれるのではなく、前回の診断書と並べて読まれます。進行する病気なのに、全項目が「改善」になっている。生活の様子は変わっていないのに、日常生活能力の程度が1段軽くなっている。こういう「つながりの不自然さ」は、審査会も見ています。逆に言えば、前回の診断書の控えを手元に置いて、今回の内容と見比べるのは、本人にもできる確認です。
見比べるのは、この表の形です。
→ 横にスクロールできます
| 診断書の欄 | 前回 | 今回 | 実際の生活は |
|---|---|---|---|
| 適切な食事 | |||
| 身辺の清潔保持 | |||
| 金銭管理と買い物 | |||
| 通院と服薬 | |||
| 他人との意思伝達及び対人関係 | |||
| 身辺の安全保持及び危機対応 | |||
| 社会性 | |||
| 日常生活能力の程度 | ( ) | ( ) | |
| 就労の欄 |
「今回」が「前回」より軽くなっている項目があって、「実際の生活」がそのとおりでないなら、記録を添えて医師に伝えます。7項目の平均と程度を目安表に当てると、前回と今回で行が変わっていないかも分かります。
→ 私は何級くらい?
2. 「良くなった」の中身
回復した部分があるなら、それは事実として書かれるべきです。隠す必要はないし、隠せば診療の記録と矛盾します。見られているのは「良くなったか」ではなく、「良くなった部分と、続いている困難の両方が載っているか」。就職した、外出が増えた、という前進があっても、それが職場の配慮や家族の支えで成り立っているなら、その支えも一緒に書かれている必要があります。
診断書に「前回から変化なし」とだけ書かれていて不安になる人がいます。変化が無いのは、下がる理由が無いということです。変わっていないなら、そのままで構いません。
3. 提出の期限と、現症日
更新の用紙(障害状態確認届)は、誕生月の3か月前の月末に届き、提出期限は誕生月の末日です。診断書は提出日前3か月以内の状態を書いたものが必要。期限に遅れたり不備があると、支払いが一時止まることがありますが、提出して確認されれば再開します。届いたらまず、診察の予約を入れる。中身の前に、日程です。
主治医に渡す、更新用のメモの型
更新の診察は、いつもの診察と同じ数分です。その数分で、前回からの変化を正確に伝えるための型です。紙1枚で、渡すだけでいい。
→ 横にスクロールできます
| 項目 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 前回の診断書から変わったこと | 良くなった・変わらない・悪くなった、を項目ごとに | 外出は月2回から週1回に増えた。ただし翌日は寝込む |
| 続いている困難 | 頻度と期間 | 週に3日は起き上がれない。3年続いている |
| 受けている援助 | 誰が・何を・どのくらい | 母が食事と洗濯。ヘルパーが週2回 |
| 働いている場合 | 配慮の中身と、休んだ日 | B型に週3日。休んだ月4日。作業は指示があれば |
| 薬 | 飲めていない日と理由 | 副作用で朝の薬を週2回飛ばす |
書き方は、初回の診断書のときと同じです。→ 主治医に、生活の実態を伝える
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、更新や支給停止が争点になったものを4つ。
進行する病気なのに、前回から全項目「改善」(取り消し) 副腎白質ジストロフィーという進行性の病気で、更新時に等級を下げられた方の事例です。審査会は、前回の診断書から全項目が改善になっているのは病気の性質と矛盾すると指摘し、診断書は正確性に欠けるとして減額処分を取り消しました。→ この事案
修正した診断書で、2級の継続が認められた(取り消し) リンパ腫の治療中に、更新で等級を下げられた方の事例です。難治性の下痢、くり返す入院、車椅子での生活を書いた修正診断書が採用され、2級の継続が認められて処分が取り消されました。診断書は、出したあとでも、事実を直したものを出せることがある。→ この事案
「治療で一時的に良くなっている」状態を、症状固定と扱われた(維持) 眼瞼けいれんの方で、3級受給中に支給停止となった事例です。継続的な治療にもかかわらず、認定基準上の「症状固定」に至ったと判断され、処分は維持されました。治療の効果で状態が保たれている場合、その状態が「固定」と読まれることがある。治療をやめたらどうなるか、が伝わっているかが分かれ目です。→ この事案
年金機構側の日付の指定ミスで止められた(取り消し) 統合失調症の方の事例です。機構が次回の診断書提出年月の指定を誤ったあと、さかのぼって再認定の時期を設定し、支給停止にしました。この処分は、運用と信義則に反し受給者を不安定にするとして取り消されました。通知の日付に不自然さを感じたら、それ自体が争える材料になります。→ この事案
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
前回の書類の控えを、取っていない
更新でいちばん効く準備は、前回出した診断書と申立書のコピーです。今回の診断書を受け取ったとき、前回と何が変わったかを自分で見比べられる。控えがないと、下がった理由を推測するしかなくなる。これから初めて申請する人は、出す前に必ずコピーを。すでに受給中で控えがない人は、年金事務所で自分の記録の開示を相談できます。
診察で「調子いいです」と言ってしまう
更新の診察は、いつもより身構えます。先生に心配をかけたくない、良くなったと思われたい。それで「だいぶ落ち着いてます」と言う。その一言が、診断書の「日常生活能力の程度」を1段動かすことがあります。
初回のときと同じです。良い日と悪い日の両方を、頻度で伝える。「外出は月に数回できるようになった。ただ、翌日は寝込む」「仕事に行けているが、帰宅後は何もできない。家事は母がやっている」。前進を隠さず、支えも隠さない。
逆に、重く見せる必要もありません。演じた症状は診療の記録と食い違います。事実のままが、いちばん通ります。
主治医が変わっている
転院した。担当医が変わった。新しい医師は、前の医師ほど経過を知りません。目の前の状態だけで診断書を書くと、前回より軽くなることがあります。転院先には、前回の診断書の控えと、これまでの経過をまとめたメモを渡してください。それが、新しい医師が「つながり」を書ける唯一の材料です。
「下がったら、もらった分を返すことになる」と思っている
なりません。更新で等級が下がったり止まったりしても、変わるのはその後の支払い分です。それまで正しく受け取っていた分をさかのぼって返すことはありません(虚偽の申告など不正があった場合は別)。この誤解で、更新の書類を出せずに止まる人がいます。出さないほうが、支払いが止まります。
下がった結果を、そのまま受け入れる
更新で等級が下がった、支給停止になった。その処分にも、新規の不支給と同じように審査請求ができます。期限は処分を知った日の翌日から3か月以内。実態が変わっていないのに下がったと感じるなら、直近の診断書に普段の状態が反映されていたかをまず確認して、諦める前に不服申立てと専門家への相談を検討してください。上の実例のとおり、覆ることはあります。
更新の1年前からの順番
| 時期 | やること |
|---|---|
| 12か月前 | 日々の記録を続ける(調子の良い日も、悪い日も)。前回の診断書と申立書の控えを、すぐ出せる場所に |
| 3か月前 | 用紙が届く。開けたその日に、診察の予約 |
| 診察の前 | 上の「メモの型」を1枚書く。転院しているなら、前回の控えも一緒に |
| 診断書を受け取ったら | 7項目・程度・就労欄を前回と並べる。空欄と日付も見る。事実と違えば、出す前に相談 |
| 提出 | コピーを取ってから出す。期限は提出年月の末日 |
| 結果が届いたら | 続いたなら、次の提出年月を証書で確認。下がったなら、3か月後の日をカレンダーに |
よくある質問
Q. 更新の診断書代は、また自分で払うのですか。
はい。診断書などの文書料は原則自己負担で、更新のたびにかかります。国へ払う手数料はありません。負担が重いと感じたら、自立支援医療や自治体の助成が使える場合があるので、通院先の相談員や市区町村に聞いてください。
Q. 症状が重くなりました。次の更新まで待つしかないですか。
待たなくていい場合があります。受給中に障害が重くなったときは、診断書を添えて「額改定請求」ができます。原則として、受給権発生または前回の審査から1年経過後に請求できます。1年を待たずに請求できる「明らかな悪化」の一覧も定められていますが、精神の障害はこの一覧に含まれていません。精神疾患の場合は、悪化の実態が次の診断書に載るよう記録を続けながら、時期が来たら請求する段取りになります。→ 額改定請求
Q. 働き始めました。更新で不利になりますか。
働いていることだけで下がることはありません。国のガイドラインは、就労継続支援A型・B型や障害者雇用で働いている場合は「1級または2級の可能性を検討する」と書いています。見られるのは、どんな配慮の中で、何が起きながら働いているかです。休んだ日、配慮の中身、帰宅後の状態が診断書に載っているかを確かめてください。→ 働くと年金はどうなるか
Q. 提出したのに、結果の通知が来ません。支払いは止まりますか。
審査中の支払いについては、年金事務所に確認してください。結果が出るまで数か月かかることがあります。通知が来ないこと自体は、下がった知らせではありません。不安なら、年金事務所に「障害状態確認届を提出したが、審査中か」と電話で確認できます。
Q. 止まってしまいました。もう終わりですか。
終わりではありません。支給停止のあと、状態が悪化したときは「支給停止事由消滅届」に診断書を添えて提出することで、再開を求める手続きができます。→ 支給停止になったとき
Q. 更新は何年ごとですか。永久認定はありますか。
1〜5年の範囲で、障害の状態に応じて個別に決まります。同じ2級でも、1年後の人も5年後の人もいます。次の時期は年金証書や通知に書いてあります。永久認定(更新なし)が出ることもありますが、それも個別の判断で、こちらから選べるものではありません。
次の一歩
いま受給中で、次の更新がまだ先なら、今日やることは2つです。前回出した書類の控えがどこにあるかを確認する。日々の記録を続ける(調子の良い日も、悪い日も)。
更新の封筒が届いたなら、開けたその日に、診察の予約を入れてください。中身を読むのは、そのあとでいい。
下がった通知を受け取ったなら、通知の日付を確認して、3か月のカレンダーを作る。→ 不支給・不服申立て
しんどくて手が止まっているなら → 申請がしんどいときの「小分け」の進め方
受給が始まってから → 働くと年金はどうなるか
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出典
- 日本年金機構「障害状態確認届」の提出について(提出時期・期限・現症日) ・ 確認日 2026-09-08
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