障害年金は非課税 — でも「収入ゼロ扱い」ではありません
障害年金に税金はかかりません。ここははっきりしています。所得税も住民税もかからず、年金だけで暮らしている人には源泉徴収票も届きません。
ただ、非課税であることと、収入として数えられないことは、別の話です。 税金の世界では数えないのに、健康保険の扶養の世界ではしっかり数える——この二重構造を知らないまま、家族の扶養から突然外れて驚く人がいます。
この記事は、その線引きを整理するものです。「非課税だから何にも影響しない」と思い込んで動くと、あとから保険証の切替えや自立支援医療の手続きが一気に押し寄せることがあります。
税金はかからない — ここは確定している
障害年金には所得税も住民税もかかりません。 老齢年金が雑所得として課税されるのとは扱いが違います。
- 障害年金・遺族年金は非課税。老齢年金は課税
- 非課税なので、公的年金等の源泉徴収票は送られてこない
- 障害年金以外に所得がなければ、確定申告は不要
- 障害年金の額は、住民税の課税・非課税の判定にも入らない
「源泉徴収票が届かないけれど、申告しなくていいのか」という問い合わせは毎年あります。届かないのは、課税対象ではないからです。
それでも「収入」として数える制度がある
問題はここからです。税制の外側には、独自の基準で収入を数える制度がいくつもあります。障害年金が非課税であることは、それらの制度に対しては何の意味も持ちません。
| 場面 | 障害年金を数えるか |
|---|---|
| 所得税・住民税の課税 | 数えない(非課税所得) |
| 健康保険の被扶養者の認定 | 数える |
| 税法上の扶養(配偶者控除・扶養控除) | 数えない |
| 生活保護の収入認定 | 数える |
| 年金生活者支援給付金の所得判定 | 数えない(非課税所得のため) |
| 20歳前傷病の障害基礎年金の所得制限 | 数えない(本人の所得で判定) |
とくに事故が起きやすいのが、上から2番目と3番目です。「扶養」という同じ言葉なのに、健康保険と税金では基準がまったく違います。
健康保険の扶養 — ここがいちばん効く
家族の健康保険に被扶養者として入っている場合、認定の基準はこうなっています。
年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円未満)
そして日本年金機構は、この収入について次のように明記しています。
被扶養者の収入には、雇用保険の失業等給付、公的年金、健康保険の傷病手当金や出産手当金も含まれます
障害年金は「公的年金」です。数えます。 障害年金・遺族年金など非課税の収入がある場合、認定の手続きで「受取金額のわかる通知書等のコピー」を求められるのはこのためです。
180万円という緩い枠が使えるのは、60歳以上の人か、障害がある人です。ここでいう障害の程度は、一般に障害厚生年金を受けられる程度とされています。ただし細かい運用は保険者(協会けんぽ・健康保険組合)ごとに違うので、加入している健康保険に確認するのが確実です。
判定は年単位ではなく、今後の見込みで行われます。実務では月額に直して見られることが多く、180万円なら月15万円が一つの線になります。
自分の年金額を、この線に当ててみる
令和8年度の額で当てはめると、こうなります。
→ 横にスクロールできます
| ケース | 年額の目安 | 180万円の枠 |
|---|---|---|
| 障害基礎年金2級のみ | 847,300円 | 収まる |
| 障害基礎年金1級のみ | 1,059,125円 | 収まる |
| 障害基礎年金2級+子1人 | 1,091,100円 | 収まる |
| 障害厚生年金2級(報酬比例が年100万円の場合) | 約185万円 | 超える |
| 障害基礎年金1級+子2人 | 1,546,725円 | 収まる |
障害基礎年金だけなら、たいてい枠の中に収まります。超えやすいのは、報酬比例部分が乗る障害厚生年金の人と、年金以外にパート収入などがある人です。健康保険の扶養では給与も年金も合算して見るので、「年金は少ないから大丈夫」と考えていると足元をすくわれます。
外れると、手続きが連鎖する
基準を超えて扶養から外れると、次の手続きが順番に発生します。ひとつ動くと次が動く、という形になっているのが厄介なところです。
- 被扶養者の削除届を、扶養者の勤務先経由で提出する
- 国民健康保険に加入する(市区町村の窓口。原則14日以内)
- 国民健康保険料の負担が新たに発生する。ただし障害年金は非課税所得なので、保険料算定の所得には入らない
- 自立支援医療(精神通院医療)の保険情報を変更する。保険が変わると「世帯」の範囲も変わるため、自己負担上限額が変わることがある
- 限度額適用認定証、高額療養費の多数回該当の回数など、保険が変わるとリセットされるものを確認する
- 20歳以上60歳未満なら、国民年金は第1号被保険者になる。2級以上の障害基礎年金を受けていれば法定免除の対象
4番目は見落とされがちです。自立支援医療は保険証が変わったら届け出が必要で、放置すると窓口で1割負担が適用されない場合があります。通院と服薬が続く人にとっては、金額の面でも小さくない話です。
金額が変わるタイミングを、先に把握しておく
扶養から外れるのは、たいてい「金額が動いたとき」です。動くタイミングは、あらかじめ分かっています。
- 更新で等級が上がったとき。 2級から1級になれば年額が20万円以上増える
- 額改定請求が認められたとき。 3級から2級になると障害基礎年金が乗る
- 子の加算が付いたとき。 子が生まれた、あるいは加算対象になった
- 年度の改定。 毎年4月分から金額が改定される
- 障害厚生年金が決定したとき。 報酬比例部分が乗ると、一気に180万円に近づくことがある
年金証書や年金額改定通知書が届いたら、その額を扶養の基準に当ててみる——この習慣があるだけで、あとから遡って扶養を取り消される事態を避けられます。
なお、遡及請求でまとまった額が一度に振り込まれた場合の扱いは、保険者によって判断が分かれます。年額に引き直して見るのか、その年の収入として見るのか。まとまった入金の見込みが立った時点で、加入している健康保険に確認してください。
制度ごとに違う、と覚えておく
扶養以外にも、障害年金を数えるかどうかが制度ごとに分かれます。
数えるほうとして代表的なのが生活保護です。障害年金は収入として認定され、保護費はその分が調整されます(障害者加算が付く場合があります)。
数えないほうには、年金生活者支援給付金の所得判定や、20歳前傷病による障害基礎年金の所得制限があります。どちらも「前年の所得額」で判定するため、非課税所得である障害年金は入りません。
そのほか、公営住宅の収入基準、児童扶養手当との調整、各自治体の医療費助成や減免制度は、制度ごとに扱いが違います。 ここは一般論で答えが出ないので、それぞれの窓口で「障害年金は収入に含まれますか」と直接聞くのがいちばん早い方法です。
「非課税だから関係ない」と自己判断しないこと。 これが、この記事でいちばん伝えたいことです。
確定申告が不要でも、したほうがいい場合がある
障害年金だけなら申告は不要です。ただし、次のような場合は申告する意味があります。
- 給与や他の所得がある。 その部分は通常どおり課税対象なので、申告が必要になることがある
- 医療費が多くかかった。 医療費控除で、課税されている所得から還付を受けられることがある
- 障害者控除を使える。 障害者手帳などの要件を満たせば、本人または扶養している家族の所得から控除できる(手帳と年金の違い)
障害者控除は年金の等級ではなく、手帳や障害の状態で判定される制度です。年金と手帳は別制度なので、混同しないようにしてください。
記録しておくと、確認が早くなる
扶養や各種制度の確認では、「いつからいくら受け取っているか」「いつ額が変わったか」を出せるかどうかで、窓口でのやりとりの長さが変わります。年金証書、額改定通知書、振込通知書は、届いたらまとめて保管しておいてください。
日々の体調や通院の記録と一緒に、こうした手続きの経過も残しておけるアプリを作りました。次の更新のときにも、そのまま材料になります。ログイン不要・記録は端末の中に保存され、基本機能は無料です。
よくある質問
Q. 障害年金に税金はかかりますか? A. かかりません。所得税も住民税も非課税です。障害年金以外に所得がなければ確定申告も不要で、公的年金等の源泉徴収票も送られてきません。
Q. 非課税なら、家族の扶養に入ったままでいられますか? A. 税法上の扶養(配偶者控除・扶養控除)では障害年金を所得に数えないため、影響しません。一方、健康保険の被扶養者の認定では障害年金も収入に数えます。基準は年間収入130万円未満(60歳以上または障害者の場合は180万円未満)です。
Q. 健康保険の扶養で使える180万円の枠は、障害年金を受けていれば誰でも使えますか? A. 一般に「障害厚生年金を受けられる程度の障害がある方」が対象とされていますが、細かい運用は保険者ごとに異なります。加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合)に直接確認してください。
Q. 扶養から外れたら、何をすればいいですか? A. 被扶養者の削除届を扶養者の勤務先経由で出し、市区町村で国民健康保険に加入します。あわせて自立支援医療の保険情報の変更が必要です。20歳以上60歳未満なら国民年金は第1号被保険者になり、2級以上なら法定免除の対象になります。
Q. 遡って何年分かまとめて振り込まれました。扶養はどうなりますか? A. まとまった入金をどう見るかは保険者によって判断が分かれます。年額に引き直すのか、その年の収入として扱うのかが変わるため、入金の見込みが立った時点で加入している健康保険に確認してください。
Q. 障害年金は生活保護の収入に入りますか? A. 入ります。障害年金は収入として認定され、保護費はその分が調整されます。ただし障害の状態によっては障害者加算が付く場合があります。詳しくは福祉事務所にご確認ください。
Q. 年金生活者支援給付金の所得判定には、障害年金が入りますか? A. 入りません。判定に使うのは前年の所得額で、非課税所得である障害年金は含まれません。ただし給付金は請求書を出さないと受け取れないので、手続きを忘れないでください。
まとめ
- 障害年金に所得税・住民税はかからない。源泉徴収票も届かず、年金だけなら確定申告も不要
- 非課税であることと、収入として数えないことは別。制度ごとに扱いが違う
- 健康保険の被扶養者の認定では、障害年金も収入に数える。基準は130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)
- 障害基礎年金だけならたいてい枠に収まる。超えやすいのは障害厚生年金の人と、年金以外に収入がある人
- 外れると、国保への切替えと自立支援医療の保険情報変更が連鎖する
- 更新・額改定・子の加算・年度改定で額が動いたら、そのつど基準に当ててみる
- 生活保護は数える。年金生活者支援給付金や20歳前の所得制限は数えない
- 迷ったら「障害年金は収入に含まれますか」と、その制度の窓口に直接聞く
※本記事は一般的な情報提供です。健康保険の被扶養者の認定基準や各制度の取扱いは、保険者・自治体によって異なります。ご自身のケースは加入している健康保険や各窓口にご確認ください。
参考リンク
- 日本年金機構「障害年金や遺族年金を受けている人にも公的年金等の源泉徴収票は送付されるのでしょうか。」
- 日本年金機構「従業員が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
- 日本年金機構「障害年金生活者支援給付金の概要」
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。
このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。