リード(直答)
うつ病でも双極性障害でも、障害年金は請求できます。
新しく決まった障害年金のうち、70.3%が精神の障害によるものです(令和6年度)。この制度の中で、いちばん標準的なケースです。
ただし、決まり方にははっきりした型があります。精神の障害だけは、国が「障害等級の目安」という表を公表していて、診断書に書かれる2つの欄の組み合わせで目安が決まります。病名では決まりません。
だから、このページで先に押さえてほしいのは1つだけです。あなたの生活が、診断書の2つの欄に、どう映っているか。ここが結果を分けます。
数字で見る、うつ病・双極性障害の位置
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 新規に決まった障害年金のうち、精神の障害によるもの | 70.3% |
| 精神の障害の非該当(不支給)の割合 | 12.1%(全体は13.0%、内部障害は20.6%) |
| 決まった等級の分布 | 1級 10.9% / 2級 53.9% / 3級 22.1% |
| 精神の不支給のうち、「目安」が下位の区分だったもの | 75.3% |
最後の75.3%が、このページでいちばん大事な数字です。
不支給になった人の4分の3は、目安の表で下の区分にいました。逆に言えば、目安の位置が上がる形で診断書が書かれていれば、結果は変わっていた可能性があるということです。そして目安の位置を決めているのは、あなたの病名ではなく、診断書の2つの欄です。
→ 数字で見る障害年金 / 等級の目安をしらべる(/columns/tokyu-hantei-guideline)
目安は、この2つの欄で決まる
国のガイドラインの目安表は、次の2つの組み合わせで読みます。
1. 日常生活能力の判定(7項目)
診断書にある7つの項目を、それぞれ4段階で評価します。その平均が使われます。
適切な食事 / 身辺の清潔保持 / 金銭管理と買い物 / 通院と服薬 / 他人との意思伝達及び対人関係 / 身辺の安全保持及び危機対応 / 社会性
4段階は、軽いほうから 1「できる」→ 2「おおむねできるが時には助言や指導を必要とする」→ 3「助言や指導があればできる」→ 4「助言や指導をしてもできない若しくは行わない」。
ここでいちばん誤解されるのが、評価の前提です。ガイドラインは、ひとり暮らしかどうかにかかわらず「援助がなかったらどうか」で見るとしています。家族が作った食事を食べている人は「食事ができる」ではありません。援助があってできている、です。
2. 日常生活能力の程度(5段階)
全体としてどのあたりかを、医師が(1)〜(5)から1つ選びます。
この2つの組み合わせで、目安が「2級」「2級又は3級」のように決まります。平均が0.1違うだけで、区分がまたぐことがあります。境目に近いときほど、診断書の各欄の書かれ方が結果を分けます。
審査で本当に見られている5つのこと
1. 診断名ではなく「生活の実態」
判断の中心は病名ではありません。普段の状態と、受けている援助の内容です。
2. 「今日の状態」だけでは決まらない
気分障害は波のある病気として、良いときと悪いときの両方を含む経過で判断されます。診察の日にたまたま調子が良くても、それだけで軽いとはされません。普段の大変なときも伝わっていることが前提です。
ガイドラインの総合評価にも、こう書かれています。
適切な治療を行っても症状が改善せず、重篤な躁やうつが長期間持続したり、頻繁に繰り返している場合は、1級または2級の可能性を検討する。
「長く続いている」「何度もくり返している」は、それ自体が評価の材料になります。経過を伝えてください。
3. 診断書は「ひとり暮らし・援助なし」を想定して評価される
家族に助けてもらって「できている」ことは、「援助があればできる」として評価されます。誰が・何を・どのくらい助けているかを、診察で具体的に伝えてください。
ひとり暮らしの人も同じです。ガイドラインは、現に支援を受けていなくても、その必要がある状態なら、それを含めて判断するとしています。「誰も助けてくれないから、書くことがない」ではありません。助けがないまま、できていない——それが書くべき実態です。
4. 働いていることだけで、等級は決まらない
国のガイドラインに、こう明記されています。
労働に従事していることをもって、直ちに日常生活能力が向上したものと捉えない。
見られるのは仕事の中身です。職場の配慮、勤務日数、休みがちかどうか、帰宅後の消耗。
とくに知られていないのがここです。ガイドラインは、就労継続支援A型・B型、就労移行支援、障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討するとしています。一般企業でも、それと同程度の援助を受けて働いている場合は2級の可能性を検討するとも書かれています。
働いていることは、不利な事実ではありません。どう働いているかが伝わっていないことが、不利にはたらきます。
5. 薬を飲んでいない理由は、必ず伝える
「服薬なし」とだけ書かれると、事情が伝わりません。医師の方針、副作用、体質などの理由があるなら、診察でも書類でも明示してください。ガイドラインも、通院や薬物治療が困難な場合は、その理由や他の治療の有無を考慮するとしています。
双極性障害で、とくに気をつけること
躁のときの様子が伝わっていないと、全体像になりません。
躁の時期を「調子がいい」と感じて話さない人が多くいます。しかし審査で見られているのは経過全体です。眠らずに動けた、買い物が止まらなかった、人間関係が壊れた——うつの期間だけを話すと、病気の半分しか伝わりません。
家族が気づいていることのほうが多いので、家族のメモも材料になります。
また、うつ病と診断されていた人が、後から双極性障害と診断名が変わることがあります。診断名が変わっても、初診日は動きません。同じ症状の流れで最初にかかった日が初診日です。
適応障害・神経症から始まった人へ
「適応障害だから対象外」と言われることがあります。病名だけでは決まりません。
認定基準は神経症を原則対象外としつつ、同じ段落でこう続けます。
精神病の病態を示しているものは気分障害に準じて扱う。
適応障害で始まった不調が長引き、いまはうつ病の病態と診断されている人は少なくありません。診断名が変わっても、初診日は最初にかかった日のままです。
複数の精神疾患があるとき
うつ病と発達障害、双極性障害と不安障害——複数ある場合、どちらか一方で判断されるのではありません。
ガイドラインは、複数の精神疾患が併存しているときは、併合(加重)認定の取扱いは行わず、諸症状を総合的に判断するとしています。「うつで出すか、発達障害で出すか」で迷って止まる必要はありません。
時期の話 — いつ請求できるか
- 障害認定日は、初診日から1年6か月経った日です(それより前に症状が固定した場合を除く)
- 認定日から1年以上経ってから請求する場合は、認定日ころの診断書と現在の診断書の2通が必要になります
- 事後重症による請求は、請求した月の翌月分からです。さかのぼりません。1か月遅れれば、1か月分が消えます
- 診断書は「現症日から3か月以内」のものが必要です。取る時期を間違えると、出す前に期限が切れます
結論を分けた実例
国の再審査の公開実例から。「何が判断を分けたか」に注目してください。全件、裁決の原文つきです。
- 結論が変わった例 — 家族の援助を要する日常生活能力と、就労支援での短時間作業も続かなかった経過を総合し、障害認定日に2級に該当するとして3級の原処分を取り消した(争点: 障害の程度)
- 結論が変わった例 — 診察券と初診時に処方された抗うつ薬の薬袋などから申立てた受診日を初診日と認定し、初診日を確認できないとした原処分を取り消した(争点: 初診日)
- 認められなかった例 — 障害認定日には職場の配慮を受けつつ一般雇用で管理職として週4日勤務し、日常生活能力も比較的保たれていたため3級にも該当しないとして、原処分を維持した(争点: 障害の程度)
3つ目を載せているのは、通った話だけを見せても、自分がどちらに近いか分からないからです。
同じ道を歩いた人が、つまずいた場所
調子のいい日に診察へ行き、「大丈夫です」と答えてしまう
診断書は、診察室で把握できた情報をもとに書かれます。普段の大変なときを、紙に書いて手元で見るだけでも伝えやすくなります。
双極性障害で、躁のときのことを話していない
躁を「調子がいい」と感じて伝えないと、病気の全体像が診断書に反映されません。
できあがった診断書を、確認せずに提出してしまう
チェック項目が実態と合っているか、提出前に確認するのはあなたの権利です。事実と違う場合は主治医へ確認できます。7項目のうち、実態より軽い側に丸がついていないかを見てください。
最初に行ったのが内科だったので、関係ないと思っていた
不眠や頭痛での内科受診が「初診日」になることがあります。初診日は精神科とは限りません。薬が出ていなくても、「様子を見ましょう」で終わった受診でも、初診日になりえます。
よくある質問
Q. 精神障害者保健福祉手帳を持っていませんが、申請できますか
できます。手帳と年金は別の制度で、審査も等級も連動しません。むしろ年金が先に決まると、手帳は年金証書等の写しで、診断書なしで申請できます。
Q. 傷病手当金をもらっています。両方もらえますか
同時に満額は受け取れず、調整があります。ただし傷病手当金の受給中でも障害年金の申請はできます。
Q. 休職中です。退職してから申請すべきですか
退職を待つ必要はありません。休職中でも申請でき、手続きに勤務先は関与しません。会社に自動的に伝わることもありません。
Q. 一人暮らしだと不利ですか
一人暮らしそのものは、等級を下げる理由になりません。ガイドラインは、独居ならその理由や時期も考慮するとしています。
Q. 何級になりそうか、先に知る方法はありますか
国が公表している目安表に当てはめてみることはできます。ただし判定と程度を書くのは医師なので、自己申告の値は参考にとどまります。
Q. 診断書を書いてもらえないと言われました
断られる理由には型があります。診療期間が短い、様式が違う、書く材料がない——理由によって対応が変わります。
Q. うつ病で障害年金はいくらもらえますか
等級と、初診日にどの制度に入っていたかで決まります。障害基礎年金なら2級で年847,300円、1級で年1,059,125円(令和8年度)。厚生年金だった人は、これに報酬比例部分が上乗せされます。
Q. うつ病で2級になるのは、どんな状態ですか
国の目安表では、日常生活能力の判定(7項目)の平均と程度の組み合わせで決まります。たとえば平均2.5以上3.0未満×程度(4)なら目安は2級です。ただし目安であって、総合評価で変わります。
Q. うつ病の障害年金は、何年もらえますか
多くは有期認定で、数年ごとに障害状態確認届(更新の診断書)を出します。令和6年度の再認定304,456件のうち、96.8%はそのまま継続でした。
Q. 発達障害とうつ病、両方あります。どちらで申請しますか
分ける必要はありません。ガイドラインは、複数の精神疾患が併存するときは諸症状を総合的に判断するとしています。
Q. 双極性障害は何級になりますか
病名では決まりません。躁とうつの経過、日常生活能力、就労の実態を合わせて判断されます。躁の時期が伝わっていないと、全体像になりません。
この病気での次の一歩
- その症状で最初に病院へ行った日を確認する(精神科でなくてもかまいません)
- 等級の目安をしらべる(/columns/tokyu-hantei-guideline)(診断書が手元にあるなら、書かれた数字で確かめられます)
- 普段の大変なときを、紙に書く。診察に持っていく
- 必要書類をそろえる(/columns/hitsuyou-shorui-seishin)
- 申立書を書く(/columns/moushitatesho-kakikata)
関連コラム
- 精神疾患の申請に必要な書類(/columns/hitsuyou-shorui-seishin)
- 生活の実態を主治医に伝える(/columns/shindansho-ishi-ni-tsutaeru)
- 診断書の「日常生活能力」7項目(/columns/nichijo-seikatsu-7koumoku)
- 精神の障害の等級判定ガイドライン(/columns/tokyu-hantei-guideline)
- 精神疾患の申立書の書き方(/columns/moushitatesho-kakikata)
- 働きながら申請するときの見られ方(/columns/hatarakinagara)
- 診断書を受け取ったあとの確認(/columns/shindansho-kakunin)
しんどくなったら
出典
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)・確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害・確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「障害年金の業務統計等(令和6年度)」・確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「障害年金の認定状況に係る調査報告書」(令和7年6月11日)・確認日 2026-08-31
- 日本年金機構「障害年金ガイド」「障害認定日による請求/事後重症による請求」・確認日 2026-08-31