心臓病と障害年金 — ペースメーカー・人工弁・心不全

リード(直答)

ペースメーカー、ICD(植込み型除細動器)、人工弁を入れた方は、原則3級です。認定基準にそう書いてあります。しかも認定日は「装着した日」で、初診日から1年6か月を待ちません。心臓再同期医療機器(CRT・CRT-D)なら2級、心臓移植や人工心臓なら1級が原則。

ここで、大事な分岐があります。3級は障害厚生年金にしかない等級です。初診日に会社員(厚生年金)だった人はペースメーカーで3級を受けられますが、初診日が退職後や自営業(国民年金)だった人には、3級がない。同じ手術を受けても、初診日で結果が変わる。

もう一つ。装置を入れていない心不全や狭心症でも、検査成績と日常生活の制限度の組み合わせで対象になります。「何も入れていないから対象外」ではありません。このページは、装置のある人とない人、両方の道を書いています。

審査で本当に見られているのは、この4つ

1. 装着した装置の種類

ペースメーカー・ICD・人工弁は原則3級。CRT・CRT-Dは2級。心臓移植・人工心臓は1級。これが出発点で、症状や日常生活の状態によっては、原則より上位の等級で認定されることもあります。「ペースメーカーだから3級で終わり」ではなく、装着後も続く息切れや活動制限があるなら、それは上位等級の検討材料です。

2. 一般状態区分と検査成績(装置がない場合)

心不全、狭心症、不整脈などで装置を入れていない場合は、検査成績(心電図、心エコー、BNPなどの数値)と、日常生活の制限度(一般状態区分)の組み合わせで認定されます。動悸、息切れ、疲れやすさで、日中の活動がどれだけ制限されているか。重い心不全で日中の半分以上を横になって過ごすような状態は、2級の目安に該当しえます。

3. 初診日と、どの制度か

3級があるかないかを分けるのが、初診日の制度です。健診で心電図の異常を指摘されて受診した日、動悸で内科にかかった日。それが会社員のときなら厚生年金。ここは、装置を入れた病院の初診ではなく、その症状で最初に医師にかかった日までさかのぼります。

4. 生命維持装置と介護の必要性

補助人工心臓など、生命維持に関わる装置を付けている場合は、装置の性質と、常時の介護の必要性が総合して判断されます。「装置で安定しているから軽い」ではない、という裁決があります。

結論を分けた実例

公開されている審査請求の裁決から、心臓病の事例を3つ。

補助人工心臓を付けているのに、支給停止にされた(容認) 拡張型心筋症で、植込型の補助人工心臓を装着している方への支給停止処分です。生命維持装置と常時の介護の必要性を総合して2級に該当すると認められ、処分が取り消されました。

心臓が原因の脳塞栓で、麻痺が1級(容認) 心原性脳塞栓症の方の事例です。資料から初診日と障害認定日の状態が認定され、左の手足の用を全く廃した状態は1級に該当するとして、診断書不足を理由とした却下処分が取り消されました。心臓の病気から脳の障害に至った場合、麻痺は肢体の基準で評価されます。

同じく心原性脳塞栓で、2級(容認) 別の心原性脳塞栓症の方で、左の手足の不全麻痺と日常生活動作の制限が、一上肢・一下肢に相当程度の障害を残す2級に該当するとして、処分が取り消されました。

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同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

ペースメーカーを入れて、1年6か月待っている

待たなくていい。認定日は装着した日です(初診日から1年6か月を超える場合を除く)。手術が終わったら、請求できます。

「3級だから、たいした額ではない」と申請しない

障害厚生年金の3級には最低保障があり、令和8年度で年635,500円。加入が短くても300月(25年)分で計算されます。「入れただけで普通に生活できているのに」と遠慮する人が多いですが、認定基準がそう定めている以上、請求は正当な権利です。

初診日を「手術した病院」だと思う

ペースメーカーを入れた循環器内科の初診ではなく、その症状で最初に受診した日が初診日です。健診の再検査で近所の内科に行った日、動悸で救急外来にかかった日。それが会社員のときなら、3級の道がある。退職後なら、国民年金には3級がないので、2級以上の状態でなければ年金は出ない。ここを先に整理してください。→ 初診日が証明できないとき

装着後の息切れを、伝えていない

「ペースメーカーを入れたので、もう大丈夫です」と診察で言ってしまう。でも、階段で息が切れる、重いものが持てない、仕事を変えた。装着後も残る制限は、上位等級の検討材料であり、更新のときにも関わります。装置の話と、生活の話は別です。

数字で見ると

障害厚生年金3級の最低保障は年635,500円(令和8年度)。2級になれば障害基礎年金847,300円との二階建てになり、配偶者の加算もつく。3級から2級への額改定請求も、状態が重くなれば可能です。

よくある質問

Q. 人工弁を入れて、普通に働いています。それでも3級ですか。

はい。認定基準は人工弁を装着した場合を原則3級としており、働いていることは関係ありません。身体・内部疾患の分野では、就労の影響は小さい。

Q. カテーテル治療(ステント)だけです。対象ですか。

ステントは、ペースメーカーや人工弁のような「原則○級」の定めがありません。その場合は、検査成績と一般状態区分の組み合わせで判断されます。治療後も狭心症の症状や心不全で日常生活が制限されているなら、その実態で申請を検討できます。

Q. 不整脈で失神することがあります。

装置を入れていない不整脈も、検査成績(心電図所見など)と一般状態区分で認定されます。失神の頻度と、それによる生活と就労の制限(運転できない、一人での外出が怖い)を記録して伝えてください。

次の一歩

装置を入れた方は、今日、初診日を整理してください。その症状で最初に受診した日と、そのとき会社員だったかどうか。

装置のない方は、次の診察で「一般状態区分はどこですか」と聞き、息切れで制限されている活動を3つ、数字で伝える。

自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方

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出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第11節 心疾患による障害(ペースメーカー・ICD・人工弁・CRT・人工心臓の取扱い、一般状態区分) ・ 確認日 2026-08-31
  • 日本年金機構「障害認定日の特例」(装着日) ・ 確認日 2026-08-31
  • 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)