リード(直答)
このページは、主に家族の方に向けて書いています。知的障害のあるお子さんが、もうすぐ20歳になる。あるいは、もう20歳を過ぎているけれど、年金のことを誰にも教えてもらえなかった。
知的障害の障害年金は、他の病気と比べて、手続きの入口がはっきりしています。初診日を探す必要がありません。生まれた日が初診日として扱われ、初診の証明書も不要、保険料の納付要件も問われない。20歳の誕生日の前日が障害認定日で、その前後3か月の状態を書いた診断書で請求できます。つまり、19歳9か月から準備を始められる。
見られるのは、IQの数字ではありません。認定基準は「知能指数のみに着眼せず」、日常生活のさまざまな場面での援助の必要度で総合的に判断する、としています。療育手帳の区分が軽くても、生活の中でどれだけ援助が必要かが評価の中心です。
審査で本当に見られているのは、この4つ
1. 援助の必要度(IQではなく)
食事、清潔、お金の管理、通院と服薬、人とのやりとり、危ないときの対処、社会性。この7つの場面で、誰が、何を、どのくらい助けているか。「一人でできる」に見えることも、声かけがあって初めてできているなら、それは援助です。療育手帳がB判定でも、生活の援助が常時必要なら、その実態が評価されます。
2. 働いているなら、職場の援助
作業所、就労継続支援B型、特例子会社、障害者雇用。働いていること自体は、等級を下げる理由になりません。ガイドラインは、これらの就労を1級・2級の可能性を検討する対象としています。職場で受けている援助や配慮の実態(指示の出し方、担当業務の限定、支援員の同行)が確認されます。
3. 20歳前後の状態と、それ以前の記録
20歳のときの診断書がなくても、後年の診断書、就学・就労歴、知能検査、療育手帳などから、20歳時も同程度であったと認められた裁決があります。記録は多いほど強い。母子手帳、通知表、療育の記録、特別支援学校の在籍記録は、捨てずに一か所にまとめておいてください。
4. 本人の所得(20歳前傷病の所得制限)
知的障害の障害基礎年金は20歳前傷病の扱いなので、本人の前年所得による調整があります。親の収入は関係ありません。本人の所得だけで判定され、基準の金額は、作業所の工賃や障害者雇用の給与で超えることはまずありません。
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、知的障害の事例を3つ。
20歳時の診断書がなくても、後年の記録から2級(容認) 中等度の知的障害の方で、20歳時の診断書がなく障害状態を認定できないとされた事例です。後年の診断書、就学・就労歴、知能検査、療育手帳などから、20歳時も同程度であった可能性が高いとして2級に該当すると認められ、処分が取り消されました。
「知的障害だから20歳前」と決めつけられていた(容認) 自閉スペクトラム症と軽度知的障害の方で、20歳前初診の障害基礎年金として不支給とされた事例です。発達期から認定対象となる知的障害があったとは認めず、厚生年金加入中の初診日と発達障害による3級該当を認めて処分が取り消されました。軽度の場合、どの障害でどの制度かの整理が結果を分けます。
7項目すべてが最も重い判定で、2級から1級へ(容認) 自閉症の方で、2級受給中に1級への額改定を請求した事例です。日常生活能力の7項目がすべて最も重い判定で、家族の常時の援助や作業所の配慮が必要な状態を1級に該当すると認め、処分が取り消されました。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
20歳の誕生日を、何も知らずに迎える
いちばん多いつまずきです。学校も、療育機関も、年金のことは教えてくれないことがある。20歳になって、市役所から国民年金の加入案内が届いて、初めて考える。認定日は誕生日の前日で、その前後3か月の診断書が要る。19歳9か月に、年金事務所か市区町村の窓口に「20歳前傷病の障害基礎年金の請求について」と相談してください。それだけで、請求が半年早まります。
「うちの子は軽いから」と申請しない
療育手帳がB2(軽度)だから、普通高校を出たから、作業所で働けているから。この理由で申請しない家族が多い。でも、見られるのはIQや手帳の区分ではなく、援助の必要度です。一人で電車に乗れない、お金の計算ができない、初めての場所に行けない、体調の変化を自分で説明できない。「軽い」と言われている子の生活に、どれだけの声かけと付き添いがあるかを、一度書き出してみてください。
診断書に「できる」が並ぶ
知的障害の診断書は、親が付き添って書いてもらうことが多い。そのとき、親が「できます」と答えてしまう。長年支えてきた親にとって、子どもの「できる」は誇りだからです。でも、診断書で問われているのは「一人で、誰の助けもなく、できるか」。「声をかければできる」「一緒なら行ける」は、「援助があればできる」です。そのまま伝えてください。
申立書を、3〜5年ごとに刻もうとする
生まれつきの知的障害の場合、申立書は出生時から現在までを、大きな変化があった時期を中心に1つにまとめて書くことができます。全期間を3〜5年ごとに区切る必要はありません。就学、卒業、就労開始、家族構成の変化。節目を中心に、そのときの援助の様子を書く。母子手帳と通知表が、思い出す手がかりになります。
数字で見ると
知的障害の障害基礎年金は、2級で年847,300円、1級で1,059,125円(令和8年度)。3級はありません。所得が一定以下なら、年金生活者支援給付金が上乗せされます。
年金が決まると、国民年金保険料は2級以上で法律上免除されます。20歳になったら、まず年金の加入手続きと免除・猶予の手続きを。請求と並行して進めてください。
よくある質問
Q. 療育手帳を持っていません。申請できますか。
できます。療育手帳がなくても、生育歴や特別支援学校の在籍記録などが判断材料になることがあります。知能検査を受けていなくても、申請の妨げにはなりません。
Q. 本人が字を書けません。申立書は誰が書きますか。
家族が代筆できます。様式に代筆者の氏名と続柄を書く欄があります。本人の言葉を聞き取りながら、そばで見てきた様子を補って書けるのは、代筆ならではの強みです。
Q. 親が亡くなったあとのことが心配です。
障害年金は、親の存在や収入とは関係なく、本人の権利として続きます。年齢の上限もありません。あわせて、成年後見や、市区町村の相談支援事業所、特別障害者手当など、年金以外の支えも先に並べておくと安心です。
次の一歩
お子さんが19歳なら、誕生日の3か月前をカレンダーに書いて、その前に年金事務所へ。
20歳を過ぎているなら、今日、7つの場面について「誰が・何を・どのくらい」助けているかを書き出してください。それが、診断書のときに主治医に渡すメモになり、申立書の骨になります。
自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方
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出典
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害(知的障害) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」 ・ 確認日 2026-08-31
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金」(知的障害の初診日の取扱い) ・ 確認日 2026-08-31
- 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)