よくある誤解

「検査を受けてからでないと、申請できない」

検査を受けてからでないと申請できない? — 精神の障害の評価の中心は、検査の数値ではなく日常生活能力です

・ 確認日

結論

検査を受けていなくても、申請できます。心理検査や知能検査を受けていないことは、申請の妨げになりません。

精神の障害の評価の中心は、検査の数値ではなく、日常生活能力の状態です。知的障害や発達障害では知能検査などが参考にされますが、それも「知能指数のみに着目せず」と認定基準に書かれています。

「WAISを受けてから」と考えて、予約が数か月先になり、そのまま1年が過ぎる人がいます。事後重症請求なら、遅れた月の分だけ受け取り開始も遅れます。

なぜ「検査が先」と思われているのか

発達障害や知的障害の診断に、知能検査が使われるからです。診断の場面で検査が重視されると、申請でも検査が必須だと思われます。

もう1つは、「客観的な証拠」への不安です。症状は目に見えないので、数値があったほうが認められやすい、と考えます。実際には、審査の物差しは日常生活能力の7項目と程度で、これは医師が診察と生活の実態から評価するもので、検査の数値ではありません。

制度ではこうなっている

精神の障害の物差し

診断書(精神の障害用)の中心は、日常生活能力の判定(7項目、各4段階)と、日常生活能力の程度(5段階)です。ガイドラインの目安表は、この2つの組み合わせで等級の目安を決めます。検査の数値は、この表のどこにも入っていません。

知的障害では知能検査が参考になる

認定基準は、知的障害について「知能指数のみに着目することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を勘案して総合的に判断する」と書いています。知能検査の結果は参考にされますが、それだけで決まりません。

発達障害も同じ

発達障害についても、認定基準は、社会行動や意思疎通能力の障害により、日常生活への適応が困難な状態を評価するとしています。知能指数が高くても、対人関係や社会生活に著しい支障があれば、それが評価されます。検査を受けていなくても、生活の実態が診断書に書かれていれば審査されます。

検査を待つ間に失うもの

事後重症請求では、年金は請求した月の翌月分から支払われます。検査の予約が半年先で、それを待ってから請求すれば、半年分は戻りません。検査は申請の条件ではないので、待つ理由になりません。

数字で見ると

令和6年度に新しく決まった障害年金のうち、精神の障害の診断書によるものは70.3%でした。その大半はうつ病・統合失調症などの精神疾患で、知能検査を受けていない人が普通です。検査を受けていないことが申請の妨げなら、この割合にはなりません。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、この誤解に関わる実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

中等度知的障害・20歳時の診断書がない(令和4〜5年、原文(厚労省PDF)) — 20歳のときの診断書がなく障害状態を認定できないとされた処分について、後年の診断書、就学・就労歴、知能検査、療育手帳などから、20歳時も同程度であった蓋然性が高いとして、2級該当が認められました。検査は、複数の資料の1つとして使われています。検査だけで決まったのではなく、就学・就労歴や生活の実態と合わせて判断されています。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 精神の障害の評価の中心は、日常生活能力の7項目と「程度」です。検査の数値は参考資料です。
  • 検査の予約が数か月先なら、検査を待たずに診断書の依頼を先に進めてください。
  • 事後重症請求は、請求した月の翌月分からの支払いです。検査待ちの半年は、半年分の差になります。

窓口で聞く一言

主治医に「検査はまだですが、いまの状態で診断書を書いていただけますか」と聞いてください。

よくある質問

Q. 主治医に「検査をしてから診断書を」と言われました。

A. 医師が診断のために検査を必要と考えているなら、それは医学的な判断です。ただ、申請の制度としては検査は条件ではないので、「検査を待つ間に事後重症の支払い開始が遅れる」ことを伝え、先に書ける範囲で書いてもらえないかを相談してください。

Q. 発達障害で、IQが高いと言われました。それでも対象ですか。

A. 対象です。認定基準は、知能指数が高くても、社会行動や意思疎通の障害により日常生活への適応が困難なら評価するとしています。対人関係や社会生活の支障を、診断書と申立書に書いてください。

Q. 検査を受けたら、結果が良くて不利になりませんか。

A. 検査の数値は参考資料の1つで、それだけで決まりません。数値が良くても、日常生活能力の7項目で支障が書かれていれば、それが中心です。逆に、数値が悪くても生活の支障が書かれていなければ通りにくい。中心は生活の実態です。

次に読む

発達障害発達障害と障害年金日常生活の7項目

出典

  • 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第8節 精神の障害(知的障害・発達障害の認定要領)・確認日 2026-09-03
  • 厚生労働省・日本年金機構「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(目安表)・確認日 2026-09-03
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」・当サイト裁決事例集(91件)・確認日 2026-09-02
よくある誤解の一覧へ戻る