森田療法とは — 不安を消さずに、生活を取り戻す考え方
この記事の結論
森田療法は、不安や症状を「消す」のではなく、不安を抱えたまま、なすべきことから行動して生活を立て直す日本発の精神療法です。1919年ごろ、精神科医・森田正馬(1874-1938)が自分の神経症の経験から作りました。
向いているのは、心配性で完全主義、自分の心身の変化に敏感な人に起きる不安(社交不安・強迫・パニック・身体症状・病気不安)。重いうつ病、統合失調症、死にたい気持ちが強いときは対象外で、先に医療機関に相談してください。
考え方の学習と、日記・行動の実践は自分で始められます。診断と薬の判断は医師と。迷ったら、全国約130か所で月1回開かれている自助グループ(生活の発見会)という選択肢もあります。
このページは、不安障害の当事者として東京慈恵会医科大学森田療法センターの外来と生活の発見会に通った運営者が、創始者の著作・医療機関・公益財団・学会の一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
森田療法は、不安をなくす治療ではありません。不安があるまま、今日やるべき小さなことをやる。その積み重ねで、不安に振り回されていた生活が、少しずつ自分の手に戻ってくる。それが森田療法です。
この区画は、不安障害の当事者としてこの療法に助けられた運営者が、「自分で学び、自分で試せる」ところまで書くために作りました。先に、向かない人のことを書きます。
先に、このページが向かない人
森田療法は、かつて「神経症」と呼ばれた不安の病態のために作られた療法です。次に当てはまる方は、このページを読む前に医療機関へ相談してください。
- 気分の落ち込みが重く、食事や睡眠が取れない、動けない日が続いている
- 幻聴や妄想など、統合失調症の症状がある、またはその治療中である
- 死にたい気持ちが強い、自分を傷つけてしまいそうだと感じている
死にたい気持ちがあるときは、ひとりで抱えずに相談窓口へ。「よりそいホットライン」(0120-279-338、24時間)、「こころの健康相談統一ダイヤル」(0570-064-556)があります。
「あるがまま」という言葉は、重い状態の人に「そのままでいい」と言う言葉ではありません。順番が逆になると苦しくなります。先に治療、森田療法はそのあとです。
森田療法とは、何をする療法か
森田療法とは、不安や症状を排除しようとする努力をやめ、不安を持ったまま目的に沿って行動することで、「とらわれ」から抜け出す精神療法です。東京慈恵会医科大学の初代精神科教授だった森田正馬が、自分自身の心臓神経症やパニック発作の経験をもとに、1919年ごろに確立しました。
出発点は、「不安を消そうとするほど不安が強くなる」という観察です。たとえば電車の中で動悸が気になる。動悸に注意を向けるほど、動悸は強く感じられる。強く感じるから、さらに注意が向く。この悪循環を森田は「精神交互作用」と呼びました。問題は動悸そのものではなく、動悸と注意の悪循環だ、という見方です。
もうひとつが「思想の矛盾」。「人前で緊張してはいけない」「不安があってはならない」と自分に課すほど、現実とのギャップに苦しむ。感情は天気のようなもので、意志で直接は変えられません。変えられないものを変えようとする努力が、苦しさを作っています。
森田療法が示す出口は、不安を「なくす」のではなく「持ったまま動く」ことです。これが「あるがまま」で、諦めでも我慢でもありません。不安はそのままに、やるべきことに手をつける。やっているうちに注意は外に向き、悪循環が崩れていきます。
そして森田療法の特徴的な視点が「生の欲望」です。不安の裏には必ず「よく生きたい」「ちゃんとやりたい」という欲望がある。人前で緊張するのは、人によく思われたいから。不安が強い人ほど、欲望も強い。この欲望の側を行動に向けるのが、治療の方向です。
どんな症状に向いているか
東京慈恵会医科大学森田療法センターは、本来の対象を「強迫症、社交不安症、パニック症、広場恐怖症、全般不安症、病気不安症、身体症状症など、かつて神経症と呼ばれていた病態」としています。近年は、慢性化したうつ病、アトピー性皮膚炎や慢性疼痛などの心身症、がん患者のメンタルヘルスにも応用されています。
症状ごとの考え方と実践は、別の記事にまとめていきます。
- 人前で緊張する、赤面する、視線が気になる → 社交不安症(対人恐怖)と森田療法
- 鍵をかけたか何度も確認する、不潔が気になる、嫌な考えが頭から離れない → 強迫症と森田療法
- 突然の動悸・息苦しさ、電車や人混みが怖い → パニック症・広場恐怖と森田療法
- 頭痛や倦怠感が続く、病気ではないかと不安 → 身体症状症・病気不安症と森田療法
自分がどれに近いか分からないときは、生活の発見会の症状セルフチェック(社交不安・パニック/全般不安・強迫・身体症状/病気不安・抑うつ神経症の5分類)が参考になります。あくまで参考で、診断は医師が行います。
社交不安症(対人恐怖)と森田療法
緊張したまま、人前でやるべきことをやる
強迫症と森田療法
不安を打ち消さず、不安なまま次の行動へ
パニック症・広場恐怖と森田療法
発作を止めようとせず、不安を持ったままその場に居る
身体症状症・病気不安症と森田療法
原因探しをやめ、不調のまま生活へ
今の森田療法は、入院しなくてもできる
森田療法と聞くと、「何日も寝ているだけの入院」を思い浮かべる方がいます。それは原法の入院森田療法で、絶対臥褥期(約1週間、何もせず寝る)、軽作業期、重作業期、社会復帰期の4段階、合計で3か月前後のプログラムでした。
今は入院が主流ではありません。発祥の地である慈恵医大の森田療法センターも、2020年に入院療法を終え、外来、ショートケア(森田療法リカバリープログラム、2024年開始)、グループ療法(ツワブキの会、2020年開始)に転換しています。現在の中心は外来森田療法で、面接と日記で対話を重ねる形です。
外来の日記は、症状ではなく「その日の出来事と、やったこと」を書き、治療者がコメントを返します。症状の訴えには深入りせず、不安があったのに行動した事実を認める。このやり取りが、治療の核です。
自分でできることと、できないこと
考え方を学ぶこと、生活を整えること、日記と行動の記録をつけることは、自分で始められます。この区画の記事は、そのために書いています。
- まず読む → 森田療法のやり方:自分でできる範囲と、できない範囲
- 考え方を順に → 「あるがまま」とは、諦めでも我慢でもない
- 記録を始める → 日記の書き方:出来事・やったこと・気分を分けて書く
自分でできないのは、診断と薬の判断です。森田療法は薬を否定する療法ではなく、外来では薬と併用するのが普通です。今飲んでいる薬を自己判断でやめないでください。
ひとりで続けるのが難しいときは、人のいる場所があります。生活の発見会は1970年から続く自助グループで、全国約130か所で月1回の集談会を開き、森田理論の学習と日記指導を取り入れた学習会や、オンライン学習会もあります。医療機関で受けたい場合は、公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の医療機関リストと、生活の発見会の協力医リストで探せます。
→ 森田療法はどこで受けられる?「怪しい」「効くの?」と思った方へ
検索すると「森田療法は怪しいですか?」という質問が出てきます。100年続く臨床と大学病院での実施は事実ですが、効果の研究はまだ弱く、「あるがまま」を冠した高額なセッションを売る業者もいます。この区画では、そこを隠さずに書きます。
→ 森田療法は怪しい?→ 森田療法は効く?エビデンスの現状なぜ障害年金のサイトが森田療法を書くのか
このサイトの読者の多くは、精神疾患を抱えて障害年金の申請や受給をしている方です。年金は生活の土台ですが、土台の上で日々をどう過ごすかは、制度は教えてくれません。
運営者は不安障害の当事者で、慈恵医大の森田療法センターの外来と、生活の発見会の集談会に通った経験があります。両団体とこのサイトは無関係で、推薦や監修を受けているわけではありません。ただ、そこで学んだ「不安があっても、今日やることをやる」という考え方は、受給が始まってからの暮らしにも、申請を進める途中の日々にも、効いていると感じています。それが、この区画を作った理由です。
今日の小さな実践
読み終えたら、ひとつだけ。今日、不安があったのに「やれたこと」を1行、紙かスマホに書いてください。「不安だったけど、ゴミを出した」で十分です。気分は書かなくて構いません。これが森田療法の日記の最小単位です。
よくある質問
Q. 森田療法は、自分で本を読んでやってもいいのですか?
A. 考え方の学習と、生活・行動の実践は自分で始められます。診断と薬の判断は医師と相談してください。ひとりで続けるのが難しいときは、生活の発見会の集談会や学習会、森田療法を行う医療機関という選択肢があります。
Q. 森田療法は薬をやめる療法ですか?
A. 違います。森田療法は薬を否定しておらず、外来では薬と併用するのが普通です。今飲んでいる薬を自己判断でやめないでください。
Q. 入院しないと受けられませんか?
A. 今は外来が中心です。発祥の地の慈恵医大森田療法センターも2020年に入院療法を終え、外来・ショートケア・グループ療法に転換しています。
Q. うつ病にも使えますか?
A. 慢性化したうつ病には応用されています。ただし重いうつ病の急性期は対象外で、先に医療機関での治療が必要です。
Q. このページは医師が監修していますか?
A. いいえ。不安障害の当事者である運営者が、創始者の著作、医療機関・公益財団・学会の公開資料、公的統計などの一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
まとめ
- 森田療法は、不安を消すのではなく、不安を持ったまま行動して生活を取り戻す療法
- 向いているのは社交不安・強迫・パニック・身体症状・病気不安など。重いうつ・統合失調症・希死念慮は対象外で、先に医療機関へ
- 今は入院ではなく外来と日記が中心。薬と併用するのが普通
- 考え方の学習と日記・行動の実践は自分で始められる。迷ったら生活の発見会や医療機関という選択肢がある
- この区画は当事者の運営者が一次資料をもとに書いている。医療監修はない
※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。症状がつらいときは医療機関へ相談してください。