森田療法の日記の書き方 — 症状ではなく、出来事と「やったこと」を書く
この記事の結論
森田療法の日記は、気持ちを吐き出す日記ではありません。外来森田療法では、日記を使って「話題の土台を日々の生活に置く」のが基本で、書くのは症状ではなく、その日の出来事と、やったことです。
書き方は3行で足ります。出来事(何があったか)、やったこと(不安があったのにやれたこと)、気分(1語)。気分は脇役なので最後に短く。症状の詳しい描写は書きません。書くほど注意が症状に向くからです。
日記の役割は、「症状を取りたい」から「症状の裏にある、本当は何をよくしたいのか」へ話題を移すことです。治療者がいなくても、週に一度、自分の日記にその問いを当てることはできます。
この記事の3行の型は、医療機関や公益財団の説明にある考え方を、ひとりで続けられる形に運営者がまとめたものです。治療としての日記指導は、医療機関か生活の発見会の学習会で受けてください。不安障害の当事者である運営者が一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
森田療法の日記は、つらさを書く日記ではありません。書くのは、その日の出来事と、やったこと。症状は書きません。これだけ守れば、ノートでもスマホでも始められます。
なぜそう書くのか、そして治療者がいない人がどう続けるのかを、順に説明します。
日記は「話題の土台を生活に置く」ための道具
公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団は、外来(通院)森田療法の基本を、「日記などを利用して話題の土台を日々の生活におき」ながら進めるものだと説明しています。面接で症状の話を延々とするのではなく、日記に書かれた生活の事実を土台にして、話を進める。日記はそのための道具です。
同じ説明の中に、治療者が段階的に投げかける問いが書かれています。「何をよくしたいのか」、「どのようによくなりたいのか」、「よくなった後はどんな自分になりたいのか」。多くの人は「症状を取りたい」と答えますが、大事なのは症状の裏にある「生の欲望」、つまり本当は何をしたいのかを探し当てることだとされています。
日記はここにつながります。症状を書く日記は、注意を症状に向け続けます。生活を書く日記は、注意を生活に向け、「本当は何をしたいのか」が見えてきます。
3行の型(この区画の提案)
ひとりで続けるための型として、次の3行を提案します。これは財団や慈恵医大の公式の書式ではなく、上の考え方をひとりでも守れる形に、運営者がまとめたものです。
- 出来事。何があったか、事実だけ。「午前中に銀行へ行った」「夕方、同僚と電話した」
- やったこと。不安があったのに、やれたこと。「動悸がしたが、窓口で手続きを終えた」「声が震えたが、用件を伝えた」
- 気分。1語か短い句。「疲れた」「少し楽」。評価しない。
書かないものを決めておくのが、この型の要です。症状の詳しい描写(どんな動悸が、何分続いて、どれだけ怖かったか)は書きません。不安の原因の分析も書きません。書くほど注意がそこに向くからです。生活の発見会は森田療法の進め方を「悪循環を認識する、行動と感情を分離する、生の欲望を強化する」の3ステップで示していますが、2行目と3行目を分けて書くこと自体が、「行動と感情を分離する」練習になります。
実際の1週間(例)
月。出来事:朝、薬局と郵便局。やったこと:人が並んでいたが、並んで出せた。気分:ほっとした。
火。出来事:在宅で作業。夕方に電話1本。やったこと:かける前に30分固まったが、かけた。気分:疲れた。
水。出来事:外出なし。やったこと:洗濯と、夕飯を作った。気分:ふつう。
木。出来事:通院。帰りに書店。やったこと:待合室でそわそわしたが、立たずに待てた。気分:少し楽。
金。出来事:午前、会議。やったこと:声が震えたが、用意した一文を言えた。気分:へとへと。
土。出来事:買い物。やったこと:混んでいる店に入れた。レジで目を見て言えた。気分:よかった。
日。出来事:ほぼ家。やったこと:掃除を1か所だけ。気分:だるい。
水曜と日曜のように「何もない日」があって構いません。外出がなくても、洗濯や掃除は「やったこと」です。森田療法の入院療法が作業を治療の中心に置いていたのは、手を動かすことが注意を外に向けるからです。
週に一度、自分の日記に問いを当てる
治療者がいれば、日記にコメントが返ってきます。いない場合は、週に一度、自分で3つの問いを当てます。財団の説明にある問いを、そのまま使います。
- この1週間の「やったこと」を見て、自分は何をよくしたかったのか
- どのようによくなりたいのか(症状がなくなることではなく、どんな生活が回っていればよいのか)
- よくなった後、どんな自分になっていたいのか
答えは1行でいい。「人と約束して会える自分」「電車で遠出できる自分」。これが、症状の裏にある生の欲望です。見つかったら、翌週の「やったこと」はそこへ向けます。
やってはいけないのは、日記を採点することです。「今週はあるがままができていたか」と毎日点検し始めたら、それは新しいとらわれです。財団の症状別アドバイス集に「森田療法にとらわれていないか」という項目があるとおり、真面目な人ほどこの穴にはまります。日記は記録であって、成績表ではありません。
治療としての日記指導を受けたいとき
ひとりの日記と、治療者がコメントを返す日記指導は別のものです。日記指導を受けたい場合は、森田療法を行う医療機関の外来か、生活の発見会の学習会(森田理論学習と日記指導を取り入れた基準型学習会、オンライン学習会)があります。
→ 森田療法はどこで受けられる?今日の小さな実践
今日の分を3行だけ書いてください。出来事、やったこと、気分。「やったこと」が思いつかなければ、「この記事を読んだ」で構いません。読むのも行動です。
よくある質問
Q. つらい気持ちを書いてはいけないのですか?
A. 書いてはいけないわけではありませんが、森田療法の日記では主役にしません。外来森田療法は日記で「話題の土台を日々の生活に置く」のが基本で、症状や気分を詳しく書くほど注意がそこに向きます。気分は最後に1語で足ります。
Q. 何もできなかった日は、何を書けばいいですか?
A. 「出来事:外出なし。やったこと:洗濯。気分:だるい」で十分です。洗濯や食事の支度は立派な「やったこと」です。空欄の日があっても、翌日また書けばよいです。
Q. 紙とスマホ、どちらがいいですか?
A. 続けやすい方で構いません。大事なのは書式より「症状を書かない」「やったことを書く」の2点です。
Q. 日記にコメントをもらうには、どうすればいいですか?
A. 治療としての日記指導は、森田療法を行う医療機関の外来か、生活の発見会の学習会(日記指導を取り入れた基準型学習会・オンライン学習会)で受けられます。
Q. 毎日書けないと意味がないですか?
A. いいえ。書けなかった日を責めると、日記そのものが「かくあるべし」になります。書ける日に書き、週に一度まとめて問いを当てれば、役割は果たせます。
まとめ
- 森田療法の日記は、症状ではなく「出来事」と「やったこと」を書く。話題の土台を生活に置くための道具
- 3行の型:出来事、やったこと(不安があったのにやれたこと)、気分(1語)。症状の描写と原因分析は書かない
- 週に一度、「何をよくしたいのか」「どうよくなりたいのか」「よくなった後どんな自分でいたいのか」を自分の日記に当てる
- 日記を採点しない。「あるがままができているか」の点検は新しいとらわれ
- 治療としての日記指導は、医療機関の外来か生活の発見会の学習会で
※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。3行の型は運営者の提案で、医療機関の公式の書式ではありません。症状がつらいときは医療機関へ相談してください。