身体症状症・病気不安症と森田療法 — 原因探しをやめ、不調のまま生活へ
この記事の結論
頭痛や倦怠感、しびれ、腹の不調が続く。検査では異常がないのに、重い病気ではないかと不安になる。身体症状症・病気不安症に森田療法を当てると、焦点は「症状の原因探し」から「不調に向け続けている注意」に移ります。
仕組みはこうです。身体の不調に「これは何だろう」「大きな病気の兆候では」と不安な注意を向けると、感覚はますます鋭敏になり、悪循環で不調にとらわれていく。慈恵医大森田療法センターの説明です。
大前提は、身体の病気がないことを先に医師に確かめることです。そのうえで、不調の裏にある「仕事や勉強のために体調を万全にしておきたい」という生の欲望を、不調があるまま生活に向けていきます。
検査を受けていない症状、急に強くなった症状は、森田療法の前に受診を。この記事は不安障害の当事者である運営者が一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
頭痛、肩こり、倦怠感、しびれ、腹の不調。検査で異常はないと言われたのに、治らない。あるいは、重い病気を見逃されているのではないかと怖い。身体症状症・病気不安症に森田療法を当てると、答えはこうなります。「原因を探す注意をやめ、不調があるまま、やるべきことに戻る」。
症状を軽く見る話ではありません。順に説明します。
身体症状症・病気不安症とは、どんな状態か
東京慈恵会医科大学森田療法センターは、身体症状症(身体表現性障害)を、消化器症状や痛み、しびれ、うずきなどさまざまな身体症状に悩んだり、重篤な病気にかかっているのではないかと悩んだりして、生活が妨げられるもの、と説明しています。国際分類では、症状が多発して繰り返す身体化障害、重い病気にかかっていると懸念する心気障害、自律神経機能不全、持続する痛みなどが含まれます。
病気不安症(心気障害)は、「自分は重篤で進行性の病気にかかっているはずだ」ということにとらわれているのが中心で、実際の身体症状は存在しないか、あってもごく軽度です。健康への強い不安があり、健康状態について容易に恐怖を感じます。医療を頻繁に求めるタイプと、逆にめったに受けないタイプがある、とも書かれています。
公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の症状別一覧には「頭痛、肩こり、倦怠感など」「病気にならないかと不安」が並び、アドバイス集には「視力低下の不安」「血圧恐怖について」「体調不良への不安が強い時には」といった項目があります。生活の発見会のセルフチェックでも、身体症状症・病気不安症は5分類のひとつです。
森田療法は、この症状をどう見るか
慈恵医大森田療法センターの説明は、こうです。身体の不調に対して「これは何だろう?」「大きな病気の兆候ではないか?」といった不安な注意を向けると、感覚はますます鋭敏になり、悪循環によって身体の不調にとらわれていく。
場面で見るとこうです。朝、頭が重い。「また頭痛か。脳の病気では」と思う。思った瞬間、頭の感覚に注意が向く。向いた注意が、重さを強く感じさせる。強く感じるから、検索する。検索結果の病名を見て、さらに注意が向く。夕方には、頭痛のことしか考えられなくなっている。
これは注意と感覚の悪循環(精神交互作用)そのものです。症状が「気のせい」なのではありません。感覚は本物で、ただ、注意が感覚を増幅しています。
そして慈恵医大森田療法センターは、この悪循環の背後に「仕事や勉強をやるために体調を万全にしておきたい」という生の欲望がある場合、森田療法が活かせる、としています。体調が気になるのは、ちゃんと働きたい、ちゃんと生きたいからです。その欲望は、症状の敵ではなく、回復の材料です。
大前提:身体の病気がないことを、先に確かめる
森田療法は、身体の病気を見逃してよいとは言いません。パニック症の記事でも書いたとおり、森田療法は「症状が身体の病気によるものでないことを保証する」ところから始まります。これは医師の仕事です。
受診していない症状、急に強くなった症状、今までと質が違う症状は、森田療法の前に受診してください。検査で異常がないと確かめたあとで、「それでも気になる」という部分に森田療法を当てます。
逆に、検査を何度も繰り返すこと自体が確認行為になっている場合があります。「異常なし」を聞いた直後は安心し、数日で「見落としでは」と戻る。これは強迫症の確認と同じ仕組みで、「本当の納得」はどこにもありません。主治医と「検査はここまで」の線を決めることが、治療の一部になります。
治療の方向:原因探しをやめ、不調のまま生活へ
森田療法の進め方は、他の症状と同じ3段階です。
- 悪循環を知る。不調に注意を向けるほど鋭敏になる仕組みを知る。検索するほど怖くなるのも同じ仕組みです。
- 行動と感情を切り離す。「体調が万全になったら」ではなく、不調があるまま、今日の仕事や家事に手を出す。「せめて」「とりあえず」です。
- 生の欲望を行動へ。「体調を万全にしたい」の裏にある「ちゃんと働きたい、ちゃんと暮らしたい」を、不調があるままの生活で少しずつ実現していく。
財団の症状別アドバイス集に「体調不良への不安が強い時には」「経験を味方に」という項目があります。「前にも同じ不調があって、何もなかった」という自分の経験が、検索結果より確かな材料になります。
場面で見る:頭痛の朝、検索の夜、通院の日
頭痛の朝。頭が重い。「仕方がない」と一度だけ言って、とりあえず朝食を作る。頭痛は残る。残ったまま、予定どおり出かける。評価は「頭痛が消えたか」ではなく「予定どおり動けたか」。
検索の夜。「この症状 病名」と打ちたくなる。打つ前に、今日の日記を3行書く。出来事、やったこと、気分。検索は、明日の診察で聞く質問を1つメモするだけにする。
通院の日。「異常なし」と言われる。安心した瞬間に「でも」が来る。「でも」はそのままにして、帰りに買い物をして帰る。次の「検査はいつまで」は、主治医と決める。
日記には、不調の詳しい描写は書きません。「不調があったのに、やれたこと」だけを書きます。
→ 日記の書き方:出来事・やったこと・気分を分けて書く先に医療機関へ、という場合
- 受診していない症状、急に強くなった症状、今までと質が違う症状がある
- 痛みや不調で、食事や睡眠が取れない日が続いている
- 気分の落ち込みが重い、死にたい気持ちがある。よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)などの相談窓口へ
薬の治療と森田療法は併用するのが普通です。処方されている薬を自己判断でやめないでください。森田療法を行う医療機関は、財団の医療機関リストと生活の発見会の協力医リストで探せます。
→ 森田療法はどこで受けられる?今日の小さな実践
今日、気になっている不調をひとつ思い浮かべて、「前にも同じことがあって、何もなかった」経験があれば、それを1行書いてください。なければ、明日の診察で聞く質問を1つだけメモして、検索を閉じてください。
よくある質問
Q. 症状は気のせいだと言われているようで、納得できません。
A. 気のせいではありません。感覚は本物で、森田療法が見ているのは「感覚に向けた注意が感覚を増幅する」仕組みです。慈恵医大森田療法センターも、不安な注意を向けると感覚がますます鋭敏になる、と説明しています。
Q. 本当に病気が隠れていたらどうするのですか?
A. だから先に医師が身体の病気を除外します。森田療法は、検査で異常がないと確かめたあとの「それでも気になる」部分に当てるものです。受診していない症状や急に強くなった症状は、先に受診してください。
Q. 検査を繰り返してしまいます。やめたほうがいいですか?
A. 「異常なし」の直後は安心し、数日で不安が戻る、を繰り返しているなら、検査が確認行為になっている可能性があります。やめるかどうかは自己判断ではなく、主治医と「検査はここまで」の線を決めてください。
Q. 自分が身体症状症・病気不安症かどうか、どう判断すればいいですか?
A. 診断は医師が行います。目安として、生活の発見会の症状セルフチェック(身体症状症・病気不安症)があります。あくまで参考です。
Q. 薬を飲みながら森田療法をしてもいいですか?
A. 構いません。森田療法は薬と併用するのが普通です。薬の調整は医師の判断で、自己判断でやめないでください。
まとめ
- 身体症状症・病気不安症に森田療法を当てると、焦点は「原因探し」から「不調に向け続けている注意」へ移る
- 不調に不安な注意を向けるほど感覚は鋭敏になり、悪循環でとらわれる。感覚は本物で、気のせいではない
- 大前提は、身体の病気がないことを先に医師に確かめること。検査の繰り返しが確認行為になっていないかは主治医と線を決める
- 不調の裏にある「ちゃんと働きたい、暮らしたい」を、不調があるままの生活で実現していく
- 日記には不調の描写ではなく「不調があったのにやれたこと」を書く
※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。症状がつらいときは医療機関へ相談してください。