森田療法のやり方 — 自分でできる範囲と、できない範囲
この記事の結論
森田療法で自分でできるのは、考え方を学ぶこと、生活と行動を整えること、日記をつけることの3つです。できないのは、診断、薬の判断、そして治療者が返す日記のコメントです。この線を先に引いておくと、安全に始められます。
進め方は3段階。悪循環を知る(不安を消そうとするほど強くなる仕組み)、行動と感情を切り離す(不安はそのまま、やるべきことに手を出す)、生の欲望を強くする(症状の裏の「本当はこうしたい」を見つけて、そこへ向かう)。生活の発見会が示す順番です。
入院療法が作業を中心にしていたとおり、手を動かすことが土台です。起きる、食べる、作業する、の順で生活を整え、不安があってもやれたことを日記に残します。治癒の目安は症状の消失ではなく、生活が回ること。
重いうつ病、統合失調症、死にたい気持ちが強いときは、自分で試す前に医療機関へ。薬は自己判断でやめない。この記事は不安障害の当事者である運営者が一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
森田療法を自分でやるには、どうすればいいか。答えは、「考え方を学ぶ、生活と行動を整える、日記をつける」の3つを、3段階の順で進めることです。そして、診断と薬の判断と日記へのコメントは、自分ではできないと決めておくことです。
順に説明します。
先に、線を引く
自分でできること。森田療法の考え方を学ぶこと。起きる・食べる・作業する、という生活の型を整えること。不安があってもやれたことを日記に残すこと。この3つは、本と公開資料と紙があればできます。
自分でできないこと。自分の状態が森田療法の対象かどうかの判断(診断)。薬を減らす・やめるの判断。そして、日記に治療者が返すコメント。この3つは、医療機関か、生活の発見会の学習会の領分です。
次に当てはまる人は、自分で試す前に医療機関へ。気分の落ち込みが重く、食事や睡眠が取れない。統合失調症の治療中。死にたい気持ちが強い(よりそいホットライン 0120-279-338、24時間)。「あるがまま」は、この状態の人に「そのままでいい」と言う言葉ではありません。
段階1:悪循環を知る
生活の発見会は、森田療法の進め方を「悪循環を認識する」「行動と感情を分離する」「生の欲望を強化する」の3ステップで示しています。最初は、知ることです。
知るべき仕組みは2つ。注意と感覚の悪循環(精神交互作用)。動悸に注意を向けるほど動悸は強く感じられ、強く感じるからさらに注意が向く。そして「かくあるべし」の矛盾(思想の矛盾)。「緊張してはいけない」と自分に課すほど、緊張にとらわれる。
この2つを知ると、不安が来たときに「ああ、今これが起きている」と一歩引いて見られるようになります。それだけで、悪循環の回転が少し緩みます。考え方の記事を順に読むのが、この段階です。
→ 「あるがまま」とは、諦めでも我慢でもない段階2:行動と感情を切り離す
不安は感情で、やるべきことは行動です。感情が収まるのを待たずに、行動のほうに手を出す。日本心理学会の解説にある言葉かけを借りれば、「せめて」「とりあえず」です。不安なまま、せめて靴を履く。とりあえず番号を押す。
ここで土台になるのが、生活の型です。原法の入院森田療法は、何もせず寝る時期のあとに、軽い作業、重い作業、社会復帰へと進むプログラムでした。手を動かすことが、注意を外に向けるからです。自宅でも同じで、起きる時間を決める、食事を作る、掃除を1か所する、という作業が、不安の居場所を小さくします。
やれたことは、日記に残します。症状ではなく、出来事とやったことを書く日記です。
→ 日記の書き方:出来事・やったこと・気分を分けて書く段階3:生の欲望を強くする
公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団は、外来森田療法で治療者が投げかける問いを3つ示しています。「何をよくしたいのか」、「どのようによくなりたいのか」、「よくなった後はどんな自分になりたいのか」。多くの人は「症状を取りたい」と答えますが、大事なのは症状の裏にある「生の欲望」を探し当てることだとされています。
自分でやる場合は、週に一度、日記を見ながらこの3つの問いに1行ずつ答えます。「人と約束して会える自分」「電車で遠出できる自分」。それが見つかったら、翌週のやることをそこへ向けます。不安を減らす方向ではなく、したいことに近づく方向です。
うまくいっているかの目安
財団の症状別アドバイス集に「森田療法での治癒像」という項目があります。回復は症状の消失ではなく、症状にとらわれずに生活できることです。だから目安は、「不安が減ったか」ではなく、「不安があってもやれたことが増えたか」「生活が回っているか」です。
逆に、うまくいっていないサインがあります。「あるがままができているか」を毎日点検している。日記で症状や回数を数えている。正解の森田療法を探し続けている。財団のアドバイス集にも「森田療法にとらわれていないか」という項目があるとおり、真面目な人ほどここにはまります。気づいたら、点検をやめて、とりあえず手を動かすほうに戻ります。
ひとりで続かないとき
考え方は分かったのに動けない、日記が続かない、誰かに見てほしい。そのときは、人のいる場所に行くのが早道です。生活の発見会には、まだ会員でない人も入れる初心者懇談会(予約不要、リモートあり)と、日記指導を取り入れた学習会があります。医療機関で受けたいなら、財団の医療機関リストと発見会の協力医リストで探せます。ひとりでやるのと、人と一緒にやるのは、どちらが上という話ではありません。
→ 森田療法はどこで受けられる?今日の小さな実践
明日の起きる時間を決めて、紙に書いてください。起きられたら、それが明日の「やったこと」です。不安があっても起きられたなら、森田療法はもう始まっています。
よくある質問
Q. 本を読むだけで森田療法はできますか?
A. 考え方を学ぶことはできますが、それだけでは段階1で止まります。生活を整え、不安なままやれたことを日記に残し、週に一度「本当は何をよくしたいのか」を問う、までが自分でできる範囲です。
Q. 薬を飲んでいても、自分で森田療法をしていいですか?
A. 構いません。森田療法は薬と併用するのが普通です。薬の調整は医師の判断で、自己判断でやめないでください。
Q. どのくらい続ければ変わりますか?
A. 原法の入院療法は3か月前後、外来は月単位から年単位です。目安は不安の減少ではなく、不安があってもやれたことが増えたかどうかです。
Q. 自分が森田療法の対象かどうか分かりません。
A. 診断は医師が行います。目安として、生活の発見会の症状セルフチェック(社交不安・パニック/全般不安・強迫・身体症状/病気不安・抑うつ神経症の5分類)があります。重いうつ病、統合失調症、死にたい気持ちが強い場合は対象外で、先に医療機関へ。
Q. 日記にコメントがないと意味がないですか?
A. ひとりの日記でも、症状ではなく生活を書くこと自体に意味があります。コメントを受けたい場合は、医療機関の外来か生活の発見会の学習会で日記指導を受けられます。
まとめ
- 自分でできるのは、考え方を学ぶ、生活と行動を整える、日記をつける、の3つ。診断・薬・コメントはできない
- 段階1 悪循環を知る → 段階2 行動と感情を切り離す(「せめて」「とりあえず」) → 段階3 生の欲望を強くする(週に一度の3つの問い)
- 手を動かすことが土台。起きる・食べる・作業する
- 目安は不安の減少ではなく、不安があってもやれたことが増えたか。点検と採点は新しいとらわれ
- 続かないときは、初心者懇談会や学習会、医療機関へ
※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。症状がつらいときは医療機関へ相談してください。