森田療法は怪しい? — 怪しく見える3つの理由と、見分ける5つの線
この記事の結論
森田療法そのものは怪しくありません。1919年ごろに精神科医・森田正馬が作り、東京慈恵会医科大学に専門センターがあり、日本森田療法学会と公益財団が資料を公開している、100年の臨床の蓄積がある精神療法です。
「怪しい」と感じる理由は3つあります。「あるがまま」という言葉が精神論に聞こえること。効果の研究(エビデンス)がまだ弱いこと。「あるがまま」を冠した高額な自己啓発セッションを売る業者がいること。
見分け方はシンプルです。「必ず治る」「一瞬で変わる」「薬をやめられる」と言う相手は森田療法ではありません。医療機関・公益財団・自助グループは、そう言いません。
この記事は、不安障害の当事者として慈恵医大森田療法センターと生活の発見会に通った運営者が、一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。
森田療法は怪しくありません。ただし、「森田療法」を名乗るものの中に怪しいものはあります。この記事は、その線引きを書きます。
結論を先に言うと、次の3つを満たす相手なら、森田療法として信頼してよい相手です。「治る」と約束しない。薬をやめろと言わない。費用と内容が事前に明示されている。逆に、ひとつでも外れていたら距離を置いてください。
「怪しい」と感じるのは、もっともな理由がある
検索すると「森田療法は怪しいですか?」という質問が出てきます。感じ方として、もっともです。理由は3つあります。
ひとつ目は、言葉です。「あるがまま」「不安はそのままでいい」と聞くと、根性論か宗教のように聞こえます。実際には、「あるがまま」は不安を放置しろという意味ではなく、不安を消そうとする努力をやめて、やるべきことに手をつけるという、かなり具体的な行動の指針です。でも、言葉だけが先に広まると、精神論に見えます。
ふたつ目は、研究の弱さです。効果を調べた国際的な系統的レビュー(コクラン、2015年)は、質の高い研究が足りず「有効性について結論を出せない」としています。100年続いている療法なのに、現代の基準での証拠が薄い。この事実は、疑う側の根拠として正当です。詳しくは別の記事に書きました。
→ 森田療法は効く?エビデンスの現状みっつ目は、便乗する業者です。「あるがまま」森田療法効果と銘打って、数時間のセッションで「一瞬で自己否定感を破壊する」「99%の確率で可能」とうたう高額プログラムが実在します。これは森田療法ではありません。でも検索結果には並んで出てくるので、「森田療法=怪しい商売」という印象が生まれます。
森田療法そのものが怪しくない理由
森田療法は、精神科医・森田正馬(1874-1938)が、東京慈恵会医科大学の初代精神科教授として、1919年ごろに確立した精神療法です。森田自身が子どもの頃から死の恐怖や心臓神経症に苦しみ、催眠療法で効果が出なかった経験から、欧米の安静療法と作業療法を改良して作りました。
今も、次の場所で実践と研究が続いています。
- 東京慈恵会医科大学 森田療法センター。外来、ショートケア(2024年開始)、グループ療法(2020年開始)を実施
- 日本森田療法学会。学会の常任理事による「外来森田療法の進め方」研修会が各地で開かれ、臨床心理士の資格更新研修にも認定されている
- 公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団。医師による講座・症状別の解説・克服体験談の動画を約94本公開し、医療機関リストを掲載
- NPO法人生活の発見会。1970年発足の自助グループで、全国約130か所で月1回の集談会を開催
海外でも、英国のエクセター大学が2018年に森田療法のパイロット試験を行い、大規模試験が実施可能だと結論しています。大学病院、学会、公益財団、50年続く自助グループ、海外の大学。これだけの機関が関わっている療法を「怪しい」と呼ぶのは、言葉の使い方として無理があります。
怪しいものを見分ける5つの線
森田療法を名乗る相手が信頼できるかどうかは、次の5つで見分けられます。
- 「必ず治る」「治った人が99%」と言わない。医療機関も財団も発見会も、受給や治癒を保証する言い方をしません。約束する相手は、約束できないことを約束しています。
- 薬をやめろと言わない。森田療法は薬と併用するのが普通です。「薬を手放せる」を売り文句にする相手は、医師の判断を飛び越えています。
- 「一瞬で」「一夜で」と言わない。森田療法は、入院なら3か月前後、外来なら月単位から年単位の、生活を立て直す療法です。速さを売る相手は別のものを売っています。
- 費用と内容が、申し込む前に書面で分かる。集談会は参加費の明示、医療機関は保険診療、財団の動画は公開。数時間で数十万円の「セッション」は、この並びにありません。
- 不安を煽らない。「放っておくと手遅れ」「今すぐ申し込まないと」は、不安を商品にする言い方です。森田療法は、不安を煽る側に立ちません。
5つのうち1つでも外れたら、その相手は森田療法ではないと考えて距離を置いてください。
今日の小さな実践
「森田療法」で検索して出てきたページを1つ開いて、上の5つの線に当ててみてください。「必ず」「一瞬で」「薬を手放す」のどれかがあれば閉じる。なければ読む。この見分けができれば、怪しいものに時間を取られずに済みます。
よくある質問
Q. 森田療法は宗教ですか?
A. 宗教ではありません。精神科医が作った精神療法で、大学病院と学会が研究と実践を続けています。「あるがまま」という言葉が禅に似て聞こえますが、内容は不安との付き合い方と行動の指針です。
Q. 森田療法は効果が証明されていないと聞きました。本当ですか?
A. 半分本当です。国際的な系統的レビュー(2015年)は質の高い研究が足りず結論を出せないとしています。一方で英国の2018年のパイロット試験は有望な結果を報告しています。「効いた人がいる」のは確かで、「誰にでも効く」とは言えない、が正確なところです。
Q. 「あるがまま」をうたう高額なセッションは森田療法ですか?
A. 違います。「一瞬で変わる」「99%」といった表現は、医療機関・学会・公益財団・自助グループのどこも使いません。費用と内容が事前に明示されていないものは避けてください。
Q. 自助グループ(生活の発見会)は安全ですか?
A. 1970年から続くNPO法人で、全国約130か所の集談会は参加費が明示され、医療機関で森田療法を行う協力医のリストも公開しています。初めての人向けの懇談会(リモートもあり)から入れます。
Q. 森田療法を受けるなら、どこが確実ですか?
A. 医療機関なら公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団の医療機関リストと生活の発見会の協力医リストで探せます。発祥の地は東京慈恵会医科大学森田療法センターです。詳しくは「森田療法はどこで受けられる?」にまとめています。
まとめ
- 森田療法そのものは怪しくない。大学病院・学会・公益財団・50年続く自助グループ・海外の大学が関わる、100年の臨床がある療法
- 怪しく見える理由は、言葉が精神論に聞こえること、研究がまだ弱いこと、便乗する高額業者がいること
- 見分ける線は5つ。「必ず治る」「薬をやめられる」「一瞬で」を言わない、費用と内容が事前に分かる、不安を煽らない
- 現場は地味。日記を書き、やったことを認める。奇跡は起きない。それが怪しくない証拠
※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。特定の事業者を評価するものではなく、見分け方の基準を示すものです。