森田療法は効く? — エビデンスの現状と、「効く」が指すもの

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この記事の結論

森田療法は「効いた人がいる」ことは確かで、「誰にでも効く」とは言えない療法です。国際的な系統的レビュー(コクラン、2015年)は、質の高い研究が足りず、不安症への有効性について結論を出せないとしています。

一方で、英国のエクセター大学が2018年に行ったうつ病のパイロット試験(68人)では、森田療法を受けた群の回復率が66.7%、受けなかった群が30.0%で、大規模試験が実施可能と結論されました。有望ですが、まだ小規模です。

森田療法の「効く」は、症状がなくなることではありません。不安が残ったまま、生活が回る状態に戻ることです。この定義を知らずに「効かなかった」と言う人と、「効いた」と言う人が、同じ状態を指していることがあります。

この記事は、不安障害の当事者として慈恵医大森田療法センターと生活の発見会に通った運営者が、一次資料をもとに書いています。医療監修はありません。

森田療法は効くのか。正直な答えは、「効いた人がいることは確かで、誰にでも効くとは今の研究では言えない」です。

この記事では、研究が何をどこまで示しているかと、森田療法が言う「効く」が何を指すのかを、隠さずに書きます。期待を上げるためではなく、試す前に知っておいてほしいことだからです。

研究が示していること

国際的なレビュー(2015年)は「結論を出せない」

医学研究の評価で最も信頼される仕組みのひとつが、コクランの系統的レビューです。2015年に公開された「成人の不安症に対する森田療法」のレビューは、条件を満たす臨床試験を7件、合計449人分集めました。対象は全般不安症、社交不安症、強迫症です。

結果は次のとおりです。社交不安症の2試験では、薬物療法より森田療法のほうが短期的に良い結果でした(相対リスク1.85)。一方、森田療法と薬の併用を薬だけと比べた4試験では、差がありませんでした。そしてレビューの著者は、研究が小さく、不正確で、偏りの危険が大きいため、エビデンスの質は「非常に低い」とし、「森田療法の有効性について結論を出すことはできなかった」と書いています。

もうひとつ重要な注意があります。7件すべてが中国で行われた研究で、他の国に当てはまるかは分からない、とレビューは述べています。日本発の療法なのに、日本の大規模な臨床試験がレビューに入っていません。

英国のパイロット試験(2018年)は「有望、ただし小規模」

英国エクセター大学は、森田療法を英国向けに整えて、うつ病の患者68人(森田療法群34人、通常治療群34人)でパイロット試験を行いました。森田療法は8〜12回の面接で、通常治療に上乗せする形です。

結果、うつ病からの回復率は森田療法群66.7%、通常治療群30.0%。治療への反応率は66.7%と13.3%でした。研究者は、「森田療法はうつ病の治療に有望で、現在の治療とは異なる選択肢を提供しうる」とし、本格的な試験には各群133人が必要で、小さな修正をすれば実施可能だと結論しています。

数字は大きく見えますが、68人のパイロット試験です。本格試験の結果が出るまでは、「有望」の段階です。

日本の100年の蓄積は、別の種類の証拠

日本には、1919年からの臨床記録、症例報告、入院森田療法の経過の記録が大量にあります。公益財団法人メンタルヘルス岡本記念財団は、医師の講座と当事者の克服体験談の動画を約94本公開しています。これらは「効いた人がいる」ことの記録として確かです。

ただし、現代の基準では、症例の積み重ねは「誰にでも効く」ことの証明にはなりません。試した人のうち、効かなかった人、途中でやめた人がどれだけいたかが分からないからです。森田療法が長く続いているのに研究が弱いのは、この種類の証拠が中心だったことが理由のひとつです。

森田療法の「効く」は、何を指すか

研究の数字と同じくらい大事なのが、「効く」の定義です。

森田療法が目指すのは、不安や症状がなくなることではありません。不安があるまま、やるべきことができ、生活が回る状態です。財団の症状別アドバイス集には「森田療法での治癒像」という項目があり、症状の消失ではなく、症状にとらわれずに生活できることが回復だと説明されています。

この定義を知らないと、ずれが起きます。たとえば、人前での緊張が残っているのに会議で発言できるようになった人。本人は「まだ緊張するから効いていない」と言い、森田療法の側は「それが回復です」と言う。同じ状態を、別の言葉で呼んでいます。

逆に、「不安が完全になくなること」を期待して始めると、ほぼ確実に「効かなかった」になります。期待の置き場所を先に直しておくことが、効くかどうかを左右します。

効きやすい人と、効きにくい人

東京慈恵会医科大学森田療法センターは、本来の対象を強迫症、社交不安症、パニック症、広場恐怖症、全般不安症、病気不安症、身体症状症としています。背景に「神経質性格」(内向的、内省的、小心、過敏、心配性、完全主義、負けず嫌い)がある人に向いた療法です。

逆に、次の場合は対象外か、先に別の治療が必要です。

  • 重いうつ病の急性期。「不安があっても動く」が成り立たない状態で、まず治療と休養
  • 統合失調症
  • 死にたい気持ちが強いとき。よりそいホットライン(0120-279-338、24時間)などの相談窓口へ

また、「森田療法にとらわれていないか」という財団の項目が示すとおり、正解を探すこと自体が症状になる人がいます。「あるがままができているか」を毎日採点し始めたら、それはとらわれです。この落とし穴は、真面目な人ほどはまります。

今日の小さな実践

「効いたら、自分の生活はどうなっているか」を1行で書いてください。「不安がなくなる」ではなく、「不安があっても○○ができている」の形で。たとえば「動悸があっても電車に乗って職場に着いている」。この1行が、あなたにとっての治癒像で、効いたかどうかを後で判定する物差しになります。

よくある質問

Q. 森田療法は科学的に効果が証明されていますか?

A. 証明されたとは言えません。コクランの系統的レビュー(2015年)は、研究の質が非常に低く結論を出せないとしています。英国のパイロット試験(2018年、68人)は有望な結果ですが、本格試験はこれからです。

Q. 認知行動療法と比べて、どちらが効きますか?

A. 直接比較した質の高い研究は見当たりません。認知行動療法は研究の蓄積が多く、森田療法は少ない、というのが現状です。両者は矛盾せず、併用されることもあります。

Q. どのくらいの期間で変化が出ますか?

A. 原法の入院療法は3か月前後、外来は月単位から年単位です。英国の試験は8〜12回の面接でした。「変化」は症状の消失ではなく、不安があっても生活が回ることを指します。

Q. 効かなかったという人がいるのはなぜですか?

A. 対象外の状態(重いうつ、統合失調症)で試した場合、「不安がなくなる」ことを期待していた場合、「あるがままができているか」を採点し始めてしまった場合が考えられます。合わなかったときは、別の療法に切り替えて構いません。

Q. 薬をやめれば森田療法が効きやすくなりますか?

A. いいえ。森田療法は薬と併用するのが普通で、薬の調整は医師の判断です。自己判断でやめないでください。

まとめ

  • コクランの系統的レビュー(2015年、7試験449人)は「結論を出せない」。研究はすべて中国で、質は非常に低い
  • 英国のパイロット試験(2018年、68人)は回復率66.7%対30.0%で有望。ただし小規模で、本格試験はこれから
  • 日本の100年の臨床記録は「効いた人がいる」証拠であって、「誰にでも効く」証拠ではない
  • 森田療法の「効く」は症状の消失ではなく、不安があっても生活が回ること。この定義のずれが「効いた/効かない」の食い違いを生む
  • 向いているのは神経質性格の不安症・強迫症・身体症状症。重いうつ・統合失調症・希死念慮は対象外

※本記事は一般的な情報と当事者の経験をもとにした情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。研究結果の要約は運営者によるもので、原文の確認をおすすめします。