一人暮らしで障害年金を申請する

リード(直答)

「一人暮らしができているなら、日常生活能力は高いと見られる」。主治医にそう言われた人がいます。検索しても、同じ趣旨の文章が出てくる。それを読んで、「自分は無理だ」と閉じた人も多い。

制度の側から、はっきり言います。一人暮らしをしていること自体は、等級を下げる理由ではありません。国の等級判定ガイドラインは、独居の場合はその理由や時期を考慮し、家族や福祉サービスの支援で生活できている場合はその支援の状況を踏まえて判断する、としています。見られるのは、一人で暮らしている事実ではなく、その暮らしがどう成り立っているか。誰かが来て食事を作っている、訪問看護が入っている、部屋は片付いていない、風呂は週に1回、郵便物は開けていない。

このページは、「一人でできている」に見える生活の中身を、どう伝えるかを書いています。一人で暮らしていることを隠す話ではありません。

見られているのは、この3つ

1. 「単身・援助なし」を想定した評価の物差し

厚生労働省の記載要領には、精神の障害用の診断書で日常生活能力を評価するときは「単身で生活し、援助を受けていない場合」を想定して判断する、と書かれています。これは「一人暮らしの人に厳しい」ルールではなく、「全員を同じ前提で測る」ルールです。家族と同居している人は「同居の支えを外したらどうか」で測られ、一人暮らしの人は、いまの生活そのものが測定の対象になる。

だから一人暮らしの人は、ある意味で、実態がそのまま評価につながりやすい。その実態が、診察と書類に載っていれば。

2. 「できている」の中身

一人暮らしで「食事はできています」と言うとき、その中身は人によってまったく違う。毎日自炊している人と、週に2回、母親が来て作り置きを冷蔵庫に入れていく人と、宅配の弁当を頼んでいるが受け取れずに玄関に放置される日がある人。この3人は、診断書の「適切な食事」の欄で、違う評価になるべきです。でも、本人が「食事はできています」と言えば、全員同じ評価になる。

7つの場面(食事、清潔、お金、通院と服薬、人とのやりとり、危ないときの対処、社会性)について、「誰が・何を・どのくらい」助けているか、助けがなくてどうなっているか。これが、見られている中身です。

3. 「支えがなかったらどうなるか」

ガイドラインは、援助や配慮が常態化した環境で安定した生活ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する、としています。訪問看護が週2回来ている。ヘルパーが掃除をしている。親が毎日電話で服薬を確認している。これらは「一人暮らしができている」ではなく、「支えがあって一人暮らしが成立している」です。支えの実績は、客観的な資料(訪問看護の記録、福祉サービスの利用実績、ヘルパーの契約)として示せます。

評価の物差し(ガイドラインの原文から)

等級判定ガイドラインが、一人暮らしについて明記していること。

  • 独居の場合、その理由や独居になった時期を考慮する
  • 独居であっても、日常的に家族等の援助や福祉サービスを受けることによって生活できている場合は、それらの支援の状況を踏まえて判断する(現に支援を受けていなくても、その必要がある状態の場合を含む)
  • 援助や配慮が常態化した環境で安定した生活ができている場合でも、その援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する

つまり、一人暮らしになった理由(親の他界、家族関係、施設からの退所)や時期、支援の有無が、考慮の対象として最初から組み込まれています。「一人暮らし=自立」と読む審査は、この物差しに反しています。

同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

診察で「一人でやれています」と言ってしまう

一人暮らしの人は、「できていない」と言うと、一人暮らしそのものを否定される気がする。だから「なんとかやれています」と答える。その一言が、そのまま診断書に載ります。

代わりに、頻度で答えてください。「風呂は週1回。洗濯は月2回、実家に持って帰る」「食事は週3日母が作り置き。残りは菓子パンか抜き」「郵便物は2か月開けていない。督促が来ているかもしれない」「先月、外に出たのは通院の2回だけ」。これは「できていない自慢」ではなく、事実の報告です。

支えの実績を、資料にしていない

訪問看護、ヘルパー、就労移行支援、デイケア、地域活動支援センター。使っているなら、その利用実績が「支えがあって成立している」ことの客観資料になります。使っていないなら、使うことを検討する価値がある。それは審査のためではなく、生活のためですが、結果として、実態を示す資料にもなります。

「一人暮らしになった理由」を書いていない

親が亡くなった。家族と折り合いが悪く、実家にいられなかった。施設を出た。理由と時期は、ガイドラインが考慮するとしている項目です。申立書の「日常生活の状況」に、一人暮らしになった経緯を一行書いてください。「〇年に母が他界し、以後一人暮らし」「家族との関係が悪化し〇年に転居」。それだけで、読み手の前提が変わります。

部屋の状態を、恥ずかしくて言えない

ゴミが出せていない。食器が溜まっている。布団から出られず床で寝ている。これは、誰にも言いたくない。でも「身辺の清潔保持」と「身辺の安全保持」の欄は、まさにそこを見ています。言葉にするのが無理なら、写真を撮って主治医に見せる人もいます。見せなくてもいい。「部屋の状態は、正直かなり悪いです」の一言でも、先生の想像は変わります。

数字で見ると

障害基礎年金2級は、年847,300円、月にして約70,600円(令和8年度)。これだけで一人暮らしを維持するのは、正直、難しい。だから障害年金は、働くことや、他の制度(住宅の補助、自立支援医療、福祉サービス)と組み合わせる前提です。一人暮らしの人ほど、年金だけで生活を組もうとせず、使える制度を先に並べてください。→ いくらもらえる?

よくある質問

Q. 主治医に「一人暮らしだと通らない」と言われました。

制度の物差しは上のとおりで、一人暮らしそのものは等級を下げる理由になりません。先生には、「独居の場合はその理由や支援の状況を踏まえて判断する、とガイドラインにあると聞きました」と、そのまま伝えていい。そのうえで、生活の実態を頻度で伝える。

Q. 誰の支えもなく、本当に一人でやっています。不利ですか。

支えがないなら、その生活の実態がそのまま評価されます。「一人でできている」のか、「一人で、できていない状態のまま暮らしている」のか。後者なら、それを事実のまま伝えてください。誰も助けてくれない状況は、隠すことでも恥じることでもなく、書類に載るべき実態です。

Q. 一人暮らしの家に、家族が週末だけ来ます。同居扱いですか。

同居ではありません。「独居で、週末に家族の援助を受けている」が実態です。誰が・何を・どのくらいの形で、そのまま書いてください。

次の一歩

今日やることは、7つの場面について「誰が・何を・どのくらい」を書き出すことです。誰も、が答えなら「誰も」と書く。それが、あなたの生活の実態です。

書けたら、次の診察で主治医に渡す。申立書には、一人暮らしになった理由と時期を一行足す。

自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方

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出典

  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(独居の取扱い、援助・配慮が常態化した環境の考慮) ・ 確認日 2026-08-31
  • 厚生労働省「診断書(精神の障害用)記載要領」(単身・援助なしを想定した評価) ・ 確認日 2026-08-31

よくある誤解