リード(直答)
子どものころから通院していた。10代で初めて精神科に行った。生まれつきの障害がある。こういう人の障害年金は、「20歳前傷病の障害基礎年金」という、少し違うルールで動きます。
いいところから言います。保険料の納付要件が問われません。20歳前は年金に入る義務がないので、「未納だからもらえない」は起きない。初診日の証明も、20歳以降より緩和されている。19歳のうちから診断書の準備を始められる。
厳しいところも言います。もらえるのは障害基礎年金だけで、3級はない(基礎年金は2級から)。本人の所得による支給の調整がある。この3つが重なることを「三重苦」と呼ぶ人もいて、その気持ちは分かります。ただ、そのうち所得制限は、多くの人が思っているよりずっと高い金額で線が引かれています。
このページは、この制度の「いいところ」を取りこぼさず、「厳しいところ」を正しく理解するために書いています。
見られているのは、この3つ
1. 初診日が、本当に20歳前か
20歳前傷病かどうかは、初診日で決まります。ただし「未成年のときの初診=必ず20歳前傷病」ではない。高校を卒業して就職し、厚生年金に加入している間に初診日があれば、20歳前でも障害厚生年金の対象で、所得制限もかかりません。初診日に、どの制度に入っていたか。ここが先です。
知的障害の場合は、初診日を探す必要がありません。出生日が初診日として扱われ、受診状況等証明書も不要、納付要件も問われない。療育手帳がなくても、生育歴や特別支援学校の在籍記録などが判断材料になります。
2. 20歳の誕生日の前日(20歳到達日)の状態
20歳前傷病の障害認定日は、初診日から1年6か月後と、20歳到達日(誕生日の前日)の遅いほうです。19歳で初診なら、認定日は20歳6か月ごろ。15歳で初診なら、20歳到達日。その前後3か月以内の状態を書いた診断書で請求します。つまり、19歳のうちから診断書の準備を始められる。20歳の誕生日を待ってから動き出す必要はありません。
3. 本人の前年所得
20歳前傷病の障害基礎年金は、保険料を納めていなくても受け取れる仕組みのため、本人の前年所得が一定額を超えた年は、一部または全部が止まります。令和8年10月分からは、前年所得3,858,000円超で半額、4,918,000円超で全額停止(扶養親族がいれば基準額が加算)。停止は10月から翌年9月まで。判定されるのは本人の所得だけで、親や配偶者の収入は関係ありません。
結論を分けた実例
公開されている審査請求の裁決から、20歳前傷病が関わったものを3つ。
20歳のときの診断書がなくても、後年の記録から(容認) 中等度の知的障害の方で、20歳時の診断書がなく障害状態を認定できないとされた事例です。後年の診断書、就学・就労歴、知能検査、療育手帳などから、20歳時も同程度であった可能性が高いとして2級に該当すると認められ、処分が取り消されました。
小学生のときの入院を、元担任の証明で初診と認めた(容認) うつ病の方の事後重症請求です。元担任らの、具体的で互いに整合する第三者証明から、20歳前の小学生時の入院を初診と認定し、請求日の状態も2級に該当するとして処分が取り消されました。20歳前の初診では、第三者証明だけでも認められる場合がある、ということの実例です。
「20歳前」ではなく「厚生年金加入中」の初診だった(容認) 自閉スペクトラム症と軽度知的障害の方で、20歳前初診の障害基礎年金として不支給とされた事例です。発達期から認定対象となる知的障害があったとは認めず、厚生年金加入中の初診日と、発達障害による3級該当を認めて処分が取り消されました。「20歳前傷病」と決めつけられていたことが、逆に不利になっていた例です。
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
「親に収入があるから無理」と思っている
所得制限で見られるのは、本人の前年所得です。親の収入も、配偶者の収入も関係ありません。学生やアルバイトで、本人の所得が基準を超えることは、ほとんどない。この誤解で、20歳になっても申請しない人がいます。
年金事務所で「未納があるからもらえない」と言われた
20歳前に初診日があるなら、納付要件はそもそも問われません。にもかかわらず、窓口で「未納があるので受け取れない」と案内された、初診日を後ろにずらすよう勧められた、という話が実際にあります。窓口の説明がこのページと違ったら、「20歳前傷病の障害基礎年金として確認してほしい」と、言葉を変えて聞き直してください。
20歳の誕生日を待ってから、動き出す
認定日が20歳到達日なら、その前後3か月の状態の診断書で請求できます。つまり、19歳9か月から準備できる。20歳になってから病院を探し、診断書を頼み、申立書を書き始めると、請求は21歳近くになる。事後重症になれば、請求した月の翌月分からしか出ない。誕生日の半年前に、一度年金事務所に相談してください。
20歳になったあとの年金の手続きを、していない
20歳になると国民年金の加入者になります。障害年金を受けることになれば、2級以上は保険料が法律上免除される。でも、受給が決まるまでの間や、20歳前傷病に当たらないことが分かった場合、未納のまま放置すると、将来の別の病気やけがのときに納付要件で引っかかる。学生納付特例や免除・猶予の手続きは、20歳になったら必ず。本人だけでなく、20歳になる子どもを持つ家族にも大事な知識です。
数字で見ると
20歳前の初診日の証明は、この10年でハードルが下がっています。平成27年からは、初診の病院の証明が取れなくても、2番目以降の病院の証明と参考資料で「20歳前に初診日がある」と示せれば請求できる緩和措置がある。平成31年2月からは、2番目以降の病院の記録から20歳前の受診が確認でき、その前に厚生年金の加入期間がなければ、最初の病院の証明そのものが不要になりました。子どものころの記録が残っていなくても、道は閉ざされていません。
よくある質問
Q. 20歳前傷病だと、いくらもらえますか。
障害基礎年金の額と同じです。2級で年847,300円、1級で1,059,125円(令和8年度)。3級はありません。所得が一定以下なら、年金生活者支援給付金が上乗せされます。→ いくらもらえる?
Q. 20歳前の障害基礎年金には、所得以外にも止まる理由がありますか。
あります。労災など他の補償を受けるとき、日本国内に住所がないとき、刑事施設等に入っているときなどです。保険料を納めずに受けられる特別な仕組みである分、停止事由が多めに設定されています。
Q. 生まれつきの発達障害です。初診日は出生日ですか。
違います。出生日が初診日になるのは、生来性の知的障害です。知的障害を伴わない発達障害の初診日は、実際にその症状で医療機関を受診した日。大人になってから受診したなら、その時点の加入制度(厚生年金なら障害厚生年金)で請求します。→ 発達障害と障害年金
次の一歩
いま19歳以下なら、20歳の誕生日の6か月前に、年金事務所に予約を入れてください。「20歳前傷病の障害基礎年金の請求について」と伝えれば通じます。
20歳を過ぎているなら、初診日にどの制度に入っていたかを確かめる。20歳前なら納付要件は問われない。それだけで、最初の壁が一つ消えます。
自分で進めるか、誰かに頼むか迷っているなら → 自分で・アプリで・専門家に頼む、の比べ方
関連コラム
- 20歳前傷病の障害基礎年金 — 納付要件を問われない特例と、10代の記録が大切な理由(/columns/hatachi-mae)
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- 発達障害(ADHD・ASD)で障害年金を申請する方法(/columns/hattatsu-shougai)
- 障害年金はいくらもらえる?(/columns/ikura-moraeru)
- 障害基礎年金と障害厚生年金の違い(/columns/kiso-kousei-chigai)
出典
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金」(認定日・所得制限・停止事由) ・ 確認日 2026-08-31
- 厚生労働省「令和8年7月15日付 通知」(所得制限額の改定) ・ 確認日 2026-08-27
- 厚生労働省「障害年金の初診日証明書類の取扱いについて」(平成27年)・平成31年2月の取扱い ・ 確認日 2026-08-31
- 社会保険審査会 裁決例(該当3件は実例ページに原文リンク)