第三者証明 — 初診日をどうしても証明できないときの、最後の受け皿

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初診日の証明で行き止まりになる人は、想像よりずっと多くいます。カルテの保存期間は法律上5年。20年前、30年前の受診となると、病院が残っていても記録は残っていない、というのが普通です。廃院していれば、なおさらです。

そこで最後の受け皿として用意されているのが、第三者証明——正式には「初診日に関する第三者からの申立書」という書類です。当時のことを知っている人に、「この人は確かにあの頃、この病院にかかっていました」と書いてもらう仕組みです。

ただ、この制度には知らずに出すとほぼ確実に落ちる作法がいくつもあります。この記事では、その作法を、頼む側と頼まれる側の両方の立場から書きます。

まず押さえる — 第三者証明は「単独では効かない」

いちばん多い誤解から先に潰します。第三者証明さえあれば初診日が認められる、ということはありません。

20歳以降に初診日がある場合、通知の文言としてはっきりこう定められています。第三者証明それ単独では初診日を認めることができない。だから、診察券や入院記録などの客観性が認められる他の参考資料とあわせて提出されて、初めて申立ての初診日を認めることができる、という建て付けです。

そして、その前に必ず必要な書類があります。「受診状況等証明書が添付できない申立書」です。これは「なぜ初診の証明が取れないのか」を説明する土台の書類で、第三者証明はその上に載る追加資料という位置づけになります。

つまり、20歳以降の初診日で必要なのは、原則としてこの三点セットです。

  1. 受診状況等証明書が添付できない申立書(土台)
  2. 第三者証明 2通以上
  3. 客観的な参考資料(診察券、お薬手帳、健康保険の給付記録など)

「知り合いに1枚書いてもらったから大丈夫」では、まず通りません。

例外がある — 医療従事者の1通は特別扱い

ただし、抜け道がひとつあります。

初診日の頃に受診した医療機関の医師・看護師などの医療従事者が、直接見ていた受診状況を申し立てる場合、その証明は「医証と同等の資料」として扱われます。他の参考資料がなくても、その1通だけで初診日を認めることができるとされています。

これは実務上、最短ルートです。カルテが残っていなくても、当時の担当医や看護師が個人として覚えていれば、そこが突破口になります。廃院した病院でも、院長がどこかで診療を続けていることはありますし、看護師や事務長の連絡先が分かることもあります。

ただし条件があります。初診日頃の受診状況を直接把握できる立場でなければなりません。当時関わっていない事務職員などは対象外です。

20歳前に初診日がある場合は、要件がかなり緩い

20歳前傷病の障害基礎年金は、給付内容が単一(納付要件がなく額も定額)であるため、初診日の特定に求められる精度が下がります。

具体的には、その日付をピンポイントで特定する必要はなく、「少なくとも20歳より前に、その傷病で医療機関の診療を受けていたことが明らかだ」と確認できればよいとされています。

そのため、次のいずれでも認められる道があります。

実務の順番としては、まず「2番目以降の医療機関の証明で足りないか」を確認するのが合理的です。10歳のときにA病院、17歳でB病院にかかっていたなら、B病院の証明でA病院の証明が不要になる、という運用があります。第三者証明を頼み歩く前に、ここを潰してください(20歳前傷病の障害基礎年金)。

なお、20歳前に初診日があっても、その日が厚生年金の加入期間中なら、通常の障害厚生年金のルールが適用されます。この場合は20歳以降と同じ要件です。

誰に頼めるか — 三親等以内の親族はダメ

民法上の三親等以内の親族による第三者証明は、認められません。

三親等以内とは、配偶者、父母、子(1親等)、祖父母、孫、兄弟姉妹(2親等)、曾祖父母、曾孫、おじ・おば、甥・姪(3親等)まで。いとこは4親等なので書けます。

書ける人の例としては、友人、知人、近所の人、当時の職場の上司や同僚、学校の恩師、民生委員、そして前述の医療従事者などが挙げられます。「親族以外で、当時のことを知っている人」と考えてください。

最大の落とし穴 — 「いつ知ったか」で決まる

ここが、この書類のいちばん重要なところです。

認められる第三者証明は、次の3つの型のいずれかに限られます。

裏返すと、請求時からおおむね5年以内に初めて聞いた話は、原則として認められません。

これが何を意味するか。「障害年金を申請することにしたから」と友人に電話して事情を説明し、その友人に書いてもらう——これがまさに、認められない典型です。伝聞は「リアルタイム(初診日頃)」か「5年以上前」でなければならず、その中間、つまり最近になって初めて聞いた話は穴に落ちます。

さらに、記入要領には見落としやすい指示があります。

3つめが厄介です。昔から知っていた話でも、最近また話題にしていれば「最近」と書かなければならず、5年ルールに抵触しうる。善意で細かく書いた結果、自分で不利にしてしまう構造になっています。

もうひとつ。「久しぶりに会ったら体調が悪そうだった」という記憶は、「直接見て知った」には含まれません。医療機関を受診している事実そのものを見ていないからです。通院に付き添った、入院中に見舞いに行った、医師からの生活上の注意の紙を見せてもらった——このレベルの具体性が求められます。

何を書いてもらうか

様式には次の欄があります。

申立者の氏名・住所・連絡先/申立日/知ったきっかけ(直接見て/聞いて)/聞いた時期/請求者との関係(当時・現在)/傷病名/初診日/医療機関名・診療科・所在地/初診日頃の受診状況/発病から初診日までの症状経過/受診のきっかけ/日常生活上の支障の程度/医師からの療養の指示。

「記入できない項目があっても構いません」とされています。思い出せないことを埋めようとしないでください。曖昧な記憶で埋めた欄が、かえって信憑性を下げます。

一方で、時期を特定できる手がかりがあると強くなります。実際に認められた例では、「当時、昭和天皇の容態悪化で歓送迎会が自粛されていた時期だった」という記述が、時期の裏づけとして効いたと報告されています。

「あの災害の年」「あの店がまだあった頃」「引っ越す前のアパートに住んでいたとき」——世の中の出来事や、自分たちの生活の節目と結びつけて書くのが有効です。

頼む側へ — 気まずさをどう越えるか

第三者証明を頼むという行為は、書類の話である以前に、自分がいちばん見せたくない時期を知っている人に、連絡を取り直すという行為です。何年も会っていない、当時の上司に電話する。疎遠になった友人にメッセージを送る。それがしんどくて申請が止まる、というのは、まったく理解できる話です。

現実的な進め方をいくつか。

頼まれた側へ — 知っておいてほしいこと

この書類を頼まれた人が知っておくべきことも書いておきます。

年金事務所から、あなたに直接電話がかかってくることがあります。申立ての内容を確認するためです。様式にも「平日日中でも連絡が可能な電話番号を記入してください」と書かれています。突然の電話に驚いて、うまく答えられない——これはよくあることなので、書いた内容の控えを手元に残しておいてください。

そして、書くのはあなたが当時知ったことだけです。頼まれた相手を助けたい気持ちから、最近聞いた事情を足したり、記憶があいまいな部分を推測で埋めたりすると、かえって申立て全体の信頼度が下がります。知らないことは書かないのが、いちばんの協力になります。

法的な責任を負う書類ではありませんが、事実と異なる記載は当然すべきではありません。

一緒に出すと強い参考資料

20歳以降の場合、参考資料は必須です。日本年金機構が挙げている例を並べます。

ここに、大事なルールがひとつあります。「医療機関が作成した資料であっても、請求者の申立てによる初診日等を記載した資料は不適当」とされています。つまり、あとから本人の話をもとに書かれた紙は、客観資料としては弱い。当時、第三者機関が作った記録であることが効きます。

実務では、母子健康手帳、小中学校の健康診断記録や成績通知表、学校の在学証明なども使われます。これらは公式の例示には入っていませんが、当時作成された第三者の記録なので、とくに20歳前の案件で有効です。一方、本人が書いた日記や手紙は「請求者の申立てによる記載」に近く、単独では弱いと考えてください。

第三者証明の「射程」— 証明できることと、できないこと

これは誤解されやすい点です。第三者証明が立証できるのは「その時期に医療機関を受診していた事実」であって、「当時どれだけ障害が重かったか」ではありません。

実際、障害認定日当時の障害の状態を第三者証明で立証しようとした事案で、「特殊学級に在籍していた事実は認定できるが、具体的な日常生活能力の判定および程度を客観的に判断することはできない」として退けられた裁決例があります。

初診日の証明と、障害の状態の証明は、別の作業です。第三者証明で入口を通しても、そこから先は診断書と申立書の勝負になります(審査の仕組み)。

第三者証明の前に、確認しておきたい他の道

平成27年10月から、初診日を合理的に推定する仕組みが整理されました。第三者証明はその一部にすぎません。ほかにもこんな道があります。

「証明が取れない=詰み」ではありません。まず受診状況等証明書、次に2番目以降の医療機関、次にはさみうちと参考資料、最後に第三者証明——この順で潰していくのが実務の流れです(カルテがないとき病院が廃院しているとき)。

近年の空気について、正直に書いておく

初診日の認定について、現場からは「最近はかなり厳しい」という声が上がっています。等級の認定が厳しくなったことは統計にも表れていて、令和6年度の新規請求の非該当割合は13.0%(精神障害は12.1%)と大きく上昇しました。

ただし、この不支給急増は主に「障害の状態の認定」をめぐる問題であって、初診日の認定が統計上厳しくなったことを示す公的なデータは、いまのところ見当たりません。現場の肌感と、確認できる数字は分けて考えるべきです。

一方で、初診日要件そのものは制度の見直し論点になっています。国の審議会の資料でも「初診日の特定が難しい事例が増える」「今まで以上に正確な初診日の設定が重要となる」といった指摘が出ています。今後もこの部分の実務が軽くなる見通しはないと考えて、動けるうちに動くのが安全です。

いま、あなたがすべきこと

1. 期限のあるものは初診日の証明だけ、と考える。申請そのものに締切はありませんが、記録は時間とともに消えます。まだ申請すると決めていなくても、最初の病院に記録が残っているかの確認だけは先にしてください。

2. 探し物の日を1日つくる。診察券、お薬手帳、領収書、母子健康手帳、当時の手帳やスケジュール帳、保険の給付記録。1枚見つかれば道が変わります。

3. 医療従事者を先に探す。当時の担当医や看護師が特定できるなら、そこが最短です。

4. 第三者は3人以上、候補を出す。そして「いつ、どうやって知ったか」を先に聞き取ってから依頼する。ここを確認せずに用紙を渡すと、書き直しが発生します。

依頼の文面 — そのまま使える形

「なんて言えばいいか分からない」で止まる人が多いので、たたき台を置いておきます。長く説明する必要はありません。

最初の連絡(メッセージ・手紙)

ご無沙汰しております。○○です。

突然のご連絡ですみません。いま障害年金の申請をしていて、当時の病院の記録が残っていないため、当時のことを知っている方に書いていただく書類が必要になりました。

○年ごろ、私が体調を崩して○○病院に通っていたことをご存じでしたら、用紙への記入をお願いできないでしょうか。書式があり、覚えている範囲で構いません。

ご負担であれば、もちろん遠慮なくお断りください。

依頼するときに、先に確認しておくこと

用紙を渡す前に、次の2つを聞いてください。ここを確認せずに渡すと、書き直しになります。

  1. 「当時、私が病院に通っていたことは、どうやって知りましたか」(直接見た/本人や家族から聞いた)
  2. 「それを知ったのは、いつごろでしたか」

答えが「最近あなたから聞いた」なら、その人は要件を満たしません。悪いことでも失礼なことでもなく、制度上そうなっているだけです。別の候補に移ってください。

渡すときに添えるとよいもの

書き方の良い例・悪い例

同じ事実でも、書き方で伝わる量がまったく違います。

悪い例

○○さんは当時、体調が悪そうでした。うつ病で通院していたと思います。かわいそうな状態でした。

これは、①受診の事実を直接見ていない ②時期が特定できない ③伝聞の時期が書かれていない、の3点で弱い記述です。

良い例

平成◯年の春ごろ、同じ部署で働いていました。当時、○○さんは朝礼に来られない日が増え、月に2〜3回は早退していました。

平成◯年◯月ごろ、私が車で○○病院まで送っていったことが2回あります。院内の待合室まで一緒に入り、診察が終わるのを待っていました。診察後、「薬が変わった」と本人から聞きました。

このことは、当時その場で見て知ったことです。

当時は歓送迎会の幹事をしていた時期で、○○さんの欠席が続いたため、はっきり覚えています。

こちらは、①受診の場面を直接見ている ②時期を特定できる出来事と結びついている ③知った経緯が明示されている、という3点が揃っています。

書けない項目は空欄のままで構いません。思い出せないことを推測で埋めると、書類全体の信憑性が下がります。

準備の順番 — この順で潰す

第三者証明にたどり着く前に、確認すべきことがあります。順番を間違えると、要らない苦労をします。

ステップ1:最初の病院に、記録が残っているかを確認する。まずは電話で「○年ごろ受診していたが、受診状況等証明書を書いてもらえるか」と聞くだけ。残っていれば、この記事の話は不要になります(受診状況等証明書)。

ステップ2:2番目以降の病院を当たる。とくに20歳前の初診なら、2番目以降の証明で足りる可能性があります。

ステップ3:客観的な資料を探す。お薬手帳、診察券、領収書、健康保険の給付記録、保険の給付申請時の診断書、健康診断の記録、母子健康手帳、学校の記録。「探し物の日」を1日つくって一気に見るのがおすすめです。

ステップ4:当時の医療従事者を探す。当時の担当医や看護師が特定できれば1通で足ります。廃院していても、医師が別の場所で診療を続けていることがあります。

ステップ5:第三者の候補を3人以上出す。当時の職場、学校、近所。三親等以内の親族は除きます。

ステップ6:「いつ、どう知ったか」を聞き取ってから依頼する。

ステップ7:受診状況等証明書が添付できない申立書と一緒に提出する。

この順番で潰していけば、無駄な依頼を減らせます。準備そのものがしんどいときは、申請がしんどいときの進め方も参考にしてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 第三者証明だけで初診日は認められますか? A. 20歳以降に初診日がある場合、原則として認められません。第三者証明2通以上に加えて、診察券や健康保険の給付記録などの客観的な参考資料が必要です。20歳前の場合は、第三者証明2通のみで認められる道があります。

Q. 第三者証明は何通必要ですか? A. 20歳以降は原則2通以上です。ただし、初診日頃の医療機関の医師・看護師などによる証明なら1通で足り、参考資料も不要とされています。

Q. 家族に書いてもらえますか? A. 三親等以内の親族は書けません。配偶者、父母、子、祖父母、孫、兄弟姉妹、おじ・おば、甥・姪までが対象外です。いとこは四親等なので書けます。

Q. 申請を決めてから友人に事情を話しました。その友人に書いてもらえますか? A. 原則として認められません。伝聞の場合は「初診日の頃に聞いていた」か「請求時からおおむね5年以上前に聞いていた」ことが必要で、最近初めて聞いた話は対象外とされています。

Q. 「体調が悪そうだった」ことは書けますか? A. それだけでは「直接見て知った」に当たりません。受診に付き添った、入院を見舞った、医師からの指示の紙を見た、といった受診の事実に直接触れた記憶が必要です。

Q. 書いてもらった第三者に、迷惑はかかりませんか? A. 内容確認のため、年金事務所から直接電話が入ることがあります。書いた内容の控えを手元に残しておくよう伝えておくと安心です。

Q. 受診状況等証明書が添付できない申立書も必要ですか? A. 必要です。第三者証明はこの申立書の上に載る追加資料という位置づけで、両方を出すのが原則です。

Q. 母子健康手帳や学校の記録は使えますか? A. 公式の例示には入っていませんが、当時第三者が作成した記録なので、とくに20歳前の案件では有効に働きます。本人が書いた日記や手紙は、単独では客観資料として弱いと考えてください。

Q. 第三者証明で、当時の障害の重さも証明できますか? A. できません。第三者証明が示せるのは受診の事実であり、障害の程度は診断書で判断されます。実際に、障害の状態の立証を第三者証明で行おうとして退けられた裁決例があります。

Q. 病院が廃院していて、医師の連絡先も分かりません。 A. 2番目以降の医療機関の証明、はさみうち、診察券などの参考資料といった別の道があります。第三者証明はそのうちの一つで、最後の手段ではありますが唯一の手段ではありません。

Q. 初診日が却下されました。もう終わりですか? A. 決定を知った日の翌日から3か月以内なら審査請求ができます。また、別の資料や別の第三者を用意して請求し直す道もあります。前回の書類の控えが手がかりになります。

まとめ

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。