よくある誤解

働いたら障害年金は止まる。だから働いたら負け。

働いたら障害年金は止まる。だから働いたら負け。 — 働いても、障害年金は原則そのまま続きます。

・ 確認日

結論

働いても、障害年金は原則そのまま続きます。働き始めたことを届け出る義務もなく、働いた月から自動で止まる仕組みもありません。

止まる可能性があるのは、更新(障害状態確認届)のときです。そのときに見られるのは「働いているか」ではなく、「援助や配慮なしに働けているか」です。配慮を受けて働いている、働いたあとは何もできない、週に何日も休んでいる。そういう実態が診断書に書かれていれば、働いていることは、そのまま等級を下げる理由にはなりません。

逆に言うと、分かれ目は仕事そのものではなく、その実態が紙に残っているかどうかです。「働いたら負け」ではなく、「働いている実態を書かないと損をする」が正確です。

なぜ「働いたら止まる」と思われているのか

理由は3つあります。

1つ目は、生活保護との混同です。生活保護は収入が増えた分だけ支給が減ります。障害年金は仕組みが違い、20歳前の傷病による障害基礎年金を除いて、所得による制限がありません。

2つ目は、実際に更新で3級に下がった、止まったという話が、SNSや周囲で目立つことです。止まった人の話は広まりやすく、そのまま続いている大多数の話は広まりません。

3つ目は、精神の障害の審査で「就労」が判断材料の1つになっているのは事実だからです。事実と誤解が半分ずつ混ざっているので、「働いたら止まる」という形に丸められて伝わっています。

制度ではこうなっている

認定基準にもガイドラインにも「働いていたら対象外」はない

障害認定基準には、働いていることを理由に等級を下げる、という規定はありません。精神の障害に係る等級判定ガイドライン(平成28年)は、むしろ逆の方向で書いています。就労継続支援A型・B型や障害者雇用で働いている場合は「1級または2級の可能性を検討する」、一般の職場でも同じ程度の援助を受けていれば「2級の可能性を検討する」としています。

見られるのは、働いているかどうかではなく、「援助や配慮がなかったらどうなるか」です。ガイドラインは、援助や配慮がない場合に予想される状態を考慮する、と明記しています。

届け出の義務はない

障害年金を受けている人が働き始めたとき、日本年金機構に届け出る手続きはありません。会社に年金のことを知らせる必要もありません。就労の状況が年金機構に伝わるのは、更新のときに主治医が書く診断書の「就労状況」の欄を通してです。

所得制限があるのは20歳前傷病だけ

20歳より前に初診日がある障害基礎年金だけは、本人の前年の所得で支給が制限されます。前年の所得が3,761,000円を超えると2分の1が停止、さらに上の線で全額停止です(扶養親族がいれば線は上がります)。所得は給与の額面ではなく、控除後の金額です。

ここに当たらない人、つまり20歳以降に初診日がある人には、いくら稼いでも所得による停止はありません。

働き方別に、見られる線

同じ「働いている」でも、更新で見られるところは働き方で違います。

B型・A型の作業所は、援助の中身です。通所日数、作業中の声かけや見守り、休憩の取り方。作業所で働けていること自体は、援助のある環境で働けている、という意味に読まれます。

障害者雇用は、配慮の内容と、配慮があっても起きていることです。短時間勤務、業務の限定、通院のための休み、上司との定期面談。そして、それでも起きている欠勤や早退、帰宅後に動けないこと。

一般就労は、同じ程度の援助があるかどうかです。配慮なしにフルタイムで働けていて、日常生活も自立していれば、等級が下がる方向に読まれます。逆に、実態としては家族の支えで通勤できている、仕事以外の生活が回っていない、という場合は、それを書かないと「働けている」だけが残ります。

どの働き方でも共通するのは、仕事の外の生活が診断書に書かれているかどうかです。日常生活能力の7項目は、仕事ではなく生活を見ています。

数字で見ると

令和6年度の更新(再認定)は304,456件で、そのうち支給停止になったのは1.1%でした。96.7%はそのまま続いています。働いている人も、この中に含まれています。

20歳前傷病の所得制限の線は前年所得3,761,000円です。B型作業所の平均工賃は年約29万円、A型の平均賃金は年約110万円で、どちらも線から遠いところにあります。作業所で働いている人が、所得制限で止まることは、まずありません。

同じ状況の人が、どうなったか

社会保険審査会の裁決から、就労が争点に関わった実例です。原文は厚生労働省の公開資料で確認しています。

非定型うつ病・職場の配慮を受けて週4日の管理職勤務(平成30〜令和元年、原文(厚労省PDF)) — 障害認定日に一般雇用で管理職として週4日勤務し、日常生活能力も比較的保たれていたため、3級にも該当しないとされました。配慮はあっても、生活の側に大きな支障が書かれていなかった例です。見られたのは「働いていたか」ではなく、「生活がどの程度回っていたか」でした。

うつ病・就労支援での短時間作業も続かなかった(平成28〜29年、原文(厚労省PDF)) — 家族の援助を要する日常生活と、就労支援の短時間作業すら続かなかった経過を合わせて、障害認定日に2級と認められ、3級の原処分が取り消されました。働こうとした事実は不利に働かず、続かなかった実態が状態の証拠になった例です。

→ ほかの実例も読む

自分の場合を確かめる

  • 診断書と申立書に、受けている配慮が書かれているか
  • 配慮があっても起きていること(欠勤・早退・体調の波)が書かれているか
  • 仕事の外の生活(帰宅後・家事・家族の援助)が書かれているか
  • 年金証書の「次回診断書提出年月」を把握しているか

窓口で聞く一言

主治医に「働いていますが、どんな配慮を受けているか、それでも起きていることを診断書に書いていただけますか」

よくある質問

Q. 働き始めたら、年金事務所に報告しないといけませんか。

A. 届け出の義務はありません。就労の状況は、更新のときに主治医が書く診断書の「就労状況」の欄で伝わります。20歳前傷病の障害基礎年金の人だけ、所得の確認があります。

Q. 給料が増えると、年金は減りますか。

A. 20歳以降に初診日がある人は、所得で減ることはありません。20歳前傷病の障害基礎年金だけ、前年所得が3,761,000円を超えると2分の1停止になります。生活保護のように収入の分だけ減る仕組みではありません。

Q. 更新のとき、働いていることを診断書に書かないほうが有利ですか。

A. おすすめしません。書かれるべきなのは「働いている」の一言ではなく、どんな配慮の中で働き、それでも何が起きているかです。隠すと、あとで就労の記録と食い違ったときに診断書全体の信用が下がります。

次に読む

働くと年金はどうなるかB型・A型作業所と障害年金抜け出すロードマップ

出典

  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」平成28年9月(就労状況の考慮、援助や配慮がない場合に予想される状態)・確認日 2026-09-13
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定304,456件、継続96.7%、支給停止1.1%)・確認日 2026-09-13
  • 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(B型平均工賃、A型平均賃金)・確認日 2026-09-13
  • 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(所得制限の線)・確認日 2026-09-13
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