リード(直答)
作業所の初日、封入作業を2時間やって、帰りの電車で寝落ちした。翌週、支援員に「工賃が出ますよ」と言われて、うれしさより先に「年金、大丈夫かな」が浮かんだ。そういう順番で心配が出てくるのは、自然なことです。
答えは短い。作業所に通っても、障害年金は原則そのまま続きます。 工賃も賃金も、年金を減らす理由にはなりません。例外は1つだけで、初診日が20歳前にある障害基礎年金の所得制限。それも、B型の平均工賃は月24,141円(年に約29万円)、A型の平均賃金は月91,451円(年に約110万円)で、線(3,761,000円)の数分の1です。作業所に通っている人で、この線に届く人はほとんどいません。
むしろ逆です。作業所に通っていることは、審査では「援助を受けて働いている」事実として扱われます。精神の障害に係る等級判定ガイドラインは、就労継続支援A型・B型による就労について「1級または2級の可能性を検討する」と書いています。国の再審査の裁決には、作業所の配慮と家族の常時の援助が必要な状態を1級と認めた例もあります。
作業所に通う人が気にすべきなのは、年金が減ることではありません。通っている実態が、診断書に正しく書かれることです。このページは、そのために知っておくことを全部書きました。
数字で見る、作業所と年金
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| B型事業所の数 / 平均工賃 | 18,245か所 / 月24,141円(令和6年度。前年度22,649円) |
| A型事業所の数 / 平均賃金 | 4,220か所 / 月91,451円(令和6年度。前年度86,752円) |
| 20歳前傷病の所得制限(2分の1停止の線) | 前年所得 3,761,000円超(令和8年度) |
| 更新で支給停止になった割合 | 1.1%(令和6年度・304,456件中) |
| 精神障害・知的障害の更新 | 継続238,772件に対して支給停止1,026件 |
出典は厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」、日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」。確認日 2026-09-06。
B型とA型は、年金から見ると何が違うか
→ 横にスクロールできます
| B型 | A型 | |
|---|---|---|
| 雇用契約 | ない(利用者) | ある(労働者) |
| 受け取るもの | 工賃 | 賃金(最低賃金が適用) |
| 平均月額(令和6年度) | 24,141円 | 91,451円 |
| 厚生年金・健康保険 | 入らない | 週の労働時間などの条件を満たせば加入 |
| 雇用保険 | 入らない | 条件を満たせば加入(閉鎖のときの失業給付につながる) |
| 障害年金 | 影響しない(20歳前傷病の所得制限を除く) | 同じ |
| ガイドラインの扱い | 1級または2級の可能性を検討 | 同じ |
| 国民年金の法定免除(1級・2級) | 対象のまま | 厚生年金に入った月から対象外(会社が手続き) |
B型にいるかA型にいるかで等級が決まるわけではありません。決まるのは、日常生活能力の7項目と、就労で受けている援助の中身です。
工賃・賃金と、20歳前傷病の所得制限
初診日が20歳前(厚生年金に入っていない期間)にある障害基礎年金だけ、本人の前年所得で支給が決まります。20歳以降に初診日がある人には、この線はありません。
- 前年所得が 3,761,000円 超で2分の1停止、4,794,000円 超で全額停止(令和8年度。10月分からは 3,858,000円・4,918,000円)。扶養親族1人につき38万円(区分により48万円・63万円)が線に加算される
- 停止の期間は10月分から翌年9月分まで
- 「所得」は「収入」ではない。A型の賃金や障害者雇用の給与は、給与所得控除を引いた後の額で見る
- 判定は本人の所得。親や配偶者の収入は関係ない
B型の工賃は雇用契約に基づく給与ではありません(税務上の区分は事業所や税務署に確認してください)。平均で年額約29万円。A型の賃金は給与所得で、平均で年額約110万円。どちらも線の数分の1です。線に近づくのは、一般就労で給与収入がおおむね520万円を超えるあたりから。自分の数字で確かめる機能は準備中です。
審査は「作業所に通っている」をどう読むか
ガイドラインの原文です。
就労系障害福祉サービス(就労継続支援A型、就労継続支援B型)及び障害者雇用制度による就労については、1級または2級の可能性を検討する。就労移行支援についても同様とする。
相当程度の援助を受けて就労している場合は、それを考慮する。
知的障害・発達障害については、さらにこう書かれています。
一般企業で就労している場合(障害者雇用制度による就労を含む)でも、仕事の内容が保護的な環境下での専ら単純かつ反復的な業務であれば、2級の可能性を検討する。
裏返すと、診断書と申立書に「どんな援助を受けているか」が書かれていなければ、審査はそれを考慮できません。審査する人は本人にも作業所にも会わない。紙に無いことは、無かったことになる。作業所に通う人が書き残しておくものは、次の4つです。
- 通所の頻度と、行けなかった日の理由 — 週何日の予定で、月に何回休んだか。休んだ理由(朝起きられない、前日の疲れ、人が多い日)
- 作業の中身と、受けている配慮 — 単純作業、声かけ、休憩の追加、時間の短縮、席の配置
- 配慮があっても起きていること — 途中で帰った、手が止まった、対人で崩れた、帰りに動けなくなった
- 通所の後の生活 — 帰宅後に横になる、家事は家族がしている、休日は外に出ない
支援員の記録を、味方にする
作業所の支援員は、日々の様子を記録しています。通所の回数、途中で帰った日、声かけの回数。これは本人が思い出せない事実の、いちばん正確な記録です。診断書を書いてもらう前に、支援員に「主治医に伝えたいことを紙で書いてもらえますか」と頼めます(個人情報の扱いは事業所の規則に従ってください)。主治医は診察室での姿しか知りません。作業所での姿を知っているのは支援員です。2人の見ているものを1枚につなぐのが、本人の役目です。
就労移行支援に通いながら申請・受給する
就労移行支援は「一般就労に向けた訓練」ですが、ガイドラインは「就労移行支援についても同様とする」として、A型・B型と同じく1級または2級の可能性を検討する対象に入れています。通所していること自体が「働けている」証拠にはなりません。申立書には、訓練の内容と、訓練の場で受けている配慮を書きます。
受給者証・年金証書・手帳は、別の制度の紙
作業所を使うときに市区町村から出る「障害福祉サービス受給者証」と、障害年金の「年金証書」は別の制度です。障害者手帳も別。3つは互いに連動しません。手帳の等級で年金の等級が決まることも、受給者証があるから年金が通ることもありません。
ただし1つ、つながる仕組みがあります。精神の障害で年金を受けている人は、年金証書の写しで、診断書なしに精神の手帳を取得・更新できます。 等級は年金の等級に対応します。手帳の診断書代が浮く、実用的な制度です。→ 手帳と年金の違い
同じ状況の人が、どうなったか — 公開裁決から
- 作業所の配慮と家族の常時の援助(自閉症・国民年金・額改定)。2級で受給中に1級への額改定を請求した例です。日常生活能力の7項目がすべて最も重い判定で、家族の常時の援助や作業所の配慮が必要な状態を、審査会は1級と認めました。作業所に通っている事実は、等級を下げる方向には使われていません。
- 就労支援の短時間作業も続かなかった(うつ病・厚生年金)。就労支援での短時間作業すら続かなかった経過と、家族の援助を要する日常生活を総合して、3級とした処分が取り消され、2級と判断されました。
- 配慮を受けつつ管理職で週4日(非定型うつ病・厚生年金)。職場の配慮はあったが、一般雇用で管理職として週4日働き、日常生活能力も比較的保たれていた。3級にも該当しないという判断が維持されました。
作業所に通っている事実は、援助の中身とセットで書かれてはじめて、審査に届きます。→ 実例と数字
同じ道を歩いた人が、つまずいたところ
- 通所を主治医に言わなかった。 「働いていると思われたくない」と黙った結果、診断書には日常生活の項目だけが載り、作業所で受けている配慮が消えた。隠すより、中身まで書いてもらう。
- 「調子がいいです」と診察で答え続けた。 作業所に通えている喜びが先に立ち、帰宅後に動けないことを言わなかった。診察前に、通所の後の生活を1行書いて持っていく。
- 20歳以降の初診なのに、工賃を気にして通所日数を減らした。 所得制限は20歳前傷病だけ。年金証書で自分の初診日の制度を確かめる。
- A型で厚生年金に入るのを断った。 障害年金は止まらず、将来の老齢厚生年金が増えるだけ。断る理由は制度の側にはない。
よくある質問
Q. B型からA型に移ると、年金が下がりますか。
A. 移ること自体では下がりません。A型もガイドラインでは同じ扱いです。更新のときに、A型で受けている配慮と、配慮があっても起きていることが診断書に書かれているかが分かれ目です。
Q. 工賃を年金事務所に報告する必要がありますか。
A. 20歳前傷病でなければ、所得の審査はありません。20歳前傷病の人の所得は、原則として市区町村が持つ所得情報で確認されます。日本年金機構から通知が来た場合は、それに従ってください。
Q. 作業所に通っていることを、診断書に書いてもらったほうがいいですか。
A. 書いてもらってください。隠すより、援助の中身まで書いてもらうほうが、ガイドラインの読み方に沿います。
Q. A型で厚生年金に入ると、障害年金は止まりますか。
A. 止まりません。将来の老齢厚生年金が増えます。65歳からは障害基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受ける選択ができます。
Q. 作業所に通うと、更新の周期が短くなりますか。
A. 周期は障害の状態に応じて決まります。通所を理由に短くなるという規定はありません。
Q. 生活保護を受けながら作業所に通っています。工賃はどうなりますか。
A. 工賃は生活保護では収入として扱われます。就労に伴う収入には控除の仕組みがあるので、手取りの合計がそのまま減るわけではありません。具体的な扱いは福祉事務所のケースワーカーに確認してください。障害年金の等級は障害者加算の判定に使われます。→ 生活保護を受けているとき
次の一歩
- 働き方の全体を見る → 働くと年金はどうなるか
- 次の段階へ進みたい → 抜け出すロードマップ
- 事業所が閉鎖した・しそう → A型事業所が閉鎖したとき
- 更新が1年以内 → 更新の仕組みと備え
- 事業所を探す(外部) → WAM NET 障害福祉サービス事業所情報(独立行政法人福祉医療機構)
出典
- 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」(令和5年度の修正値を含む)
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」平成28年9月
- 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」再認定304,456件・支給停止1.1%、診断書種類別(精神障害・知的障害)継続238,772件・支給停止1,026件
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」/ 厚生労働省 障発0715第2号・年発0715第1号(令和8年7月15日)
- 厚生労働省通知「年金証書等の写しによる精神障害者保健福祉手帳の障害等級の認定事務について」
- 日本年金機構「国民年金保険料の法定免除制度」
- 社会保険審査会 裁決集(平成28・29年分、平成30・令和元年分、令和4・5年分)
- 厚生労働省 社会保障審議会 資料「勤労控除の趣旨・概要」(生活保護の就労収入の控除の仕組み)
- 確認日: 2026-09-06