受給後のお金の設計 — 税金・扶養・保険料・生活保護・iDeCo・貯蓄の6本の線

リード(直答)

最初の振込があった日、通帳の数字を見て、うれしさのあとに別の心配が来た。「これ、確定申告に書くのか」「親の扶養から外れるのか」「貯金したら怒られるのか」。年金事務所は申請までは教えてくれるけれど、受け取ったあとの家計までは教えてくれない。

安心してください。受給後のお金で気にする線は、6本しかありません。 ①税金(かからない)。②健康保険の扶養(年収180万円未満)。③国民年金の保険料(1級・2級は法定免除)。④20歳前傷病の所得制限(前年所得)。⑤生活保護との関係(収入として数える。障害者加算がつく)。⑥老後(iDeCoに入れる。65歳から老齢厚生年金と組み合わせられる)。自分に関係するのは、このうち2〜3本です。

先に、よくある勘違いを3つ潰しておきます。障害年金は確定申告に書きません(法律で非課税)。貯金しても、資産があっても、年金は減りません(審査に資産は関係ない)。結婚しても止まりません(停止事由ではない)。変わるのは、周辺の制度だけです。

このページは、6本の線を1本ずつ、数字と根拠つきで書いて、最後に「自分に関係する線」を決められる表を置いています。

数字で見る、受給後のお金

項目数字(令和8年度)
障害基礎年金 2級 / 1級年847,300円 / 年1,059,125円
障害厚生年金 3級の最低保障年635,500円
配偶者の加給年金(障害厚生年金1・2級)年243,800円
年金生活者支援給付金月5,620円(2級)/ 月7,025円(1級)。前年所得4,794,000円+扶養親族数×38万円以下
健康保険の扶養の線年収180万円未満(障害年金を受けられる程度の障害がある人。一般は130万円未満)
20歳前傷病の所得制限前年所得 3,761,000円超で2分の1停止、4,794,000円超で全額停止
法定免除の期間の老齢基礎年金への算入2分の1(平成21年4月以降)。追納は10年以内
支払い偶数月(2・4・6・8・10・12月)に前月までの2か月分

出典は日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害年金生活者支援給付金の概要」、厚生労働省通知「収入がある者についての被扶養者の認定について」。確認日 2026-09-06。

線①: 税金 — 障害年金には、かからない

障害基礎年金・障害厚生年金は、所得税も住民税もかかりません。根拠は国民年金法25条(「租税その他の公課は、給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない」)と厚生年金保険法41条2項です。老齢年金は雑所得として課税されますが、障害年金は違います。

  • 確定申告で障害年金を収入に書く必要はありません。「申告し忘れて脱税になるのでは」という心配は要りません
  • 働いている人の給与は、通常どおり課税されます。障害者控除(本人が障害者手帳などの要件を満たす場合)は別の制度です
  • 税の扶養(配偶者控除・扶養控除)は所得で判定します。障害年金は所得に入らないので、年金だけの人は税の扶養から外れません
  • ただし、税金がかからないことと、健康保険の扶養など税金以外の制度でどう扱われるかは別の話です。次の線②がそれです。→ 非課税でも「収入」になる場面

線②: 健康保険の扶養 — 年収180万円未満

家族の健康保険(協会けんぽ・健保組合)の被扶養者になれるのは、年間収入が130万円未満の人です。60歳以上、または「おおむね障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害者」は 180万円未満 です。この年間収入には、非課税の障害年金も含めて数えます。ここが線①と違うところで、いちばん間違えやすい場所です。

→ 横にスクロールできます

収入の組み合わせ年収180万円の線
障害基礎年金2級だけ847,300円内側
2級 + B型の工賃(平均)約114万円内側
2級 + A型の賃金(平均)約194万円超える
1級だけ1,059,125円内側

A型に通い始めた人が扶養から外れるのは、年金が原因ではなく、年金と賃金の合計が線を超えるからです。外れると、国民健康保険(または勤め先の健康保険)と国民年金(法定免除の対象なら免除)の手続きが連鎖します。線を超える前に、加入先の健康保険に確認してください。→ 扶養の線に自分の額を当てる

線③: 国民年金の保険料 — 1級・2級は法定免除

障害基礎年金(または被用者年金の2級以上の障害年金)を受けている第1号被保険者は、保険料が法定免除になります。認定された日を含む月の前月分からです。

  • 免除期間は、老齢基礎年金の計算で1か月を2分の1として算入します(平成21年4月以降の期間)
  • 満額に近づけたい場合は、10年以内なら追納できます。追納しても障害基礎年金は増えません。増えるのは老齢基礎年金です
  • 免除ではなく「納付を続ける」選択もできます。将来の老齢年金とのバランスで決めます
  • 厚生年金に加入する働き方になった月からは、給与から保険料が引かれ、法定免除の対象ではなくなります(会社が手続き)
  • 手続きの順番: 受給が決まった後にすること

線④: 20歳前傷病の所得制限 — 前年所得で、10月から翌年9月

初診日が20歳前(厚生年金に入っていない期間)にある障害基礎年金だけに、本人の前年所得による支給制限があります。20歳以降に初診日がある人には、この線はありません。

  • 前年所得が 3,761,000円超で2分の1停止、4,794,000円超で全額停止(令和8年度。10月分からは 3,858,000円・4,918,000円)
  • 扶養親族1人につき38万円(区分により48万円・63万円)が線に加算される
  • 対象期間は10月分から翌年9月分まで
  • 判定は本人の所得。親や配偶者の収入は関係ない
  • 「所得」は「収入」ではない。給与なら給与所得控除を引いた額

働き方ごとの当てはめは → 働くと年金はどうなるか。20歳前傷病の年金には、所得のほかにも停止事由があります(労災など他の補償、国内に住所がないとき、刑事施設等にいるとき)。

線⑤: 生活保護 — 年金は収入として数えられ、障害者加算がつく

生活保護には「他の制度で受けられるものを先に使う」原則があり(生活保護法4条)、障害年金を受けられそうな人は請求を求められることがあります。年金を受けると、年金は収入として認定され、保護費はその分減ります。一方で、障害基礎年金1級・2級の等級は障害者加算の判定に使われます。加算がつけば、手取りの合計が増える場合があります。「申請させられて損をする」とは限らない構造です。

  • 障害者加算の額は、級地(住んでいる地域の区分)と障害の等級で決まります。福祉事務所で確認してください
  • 障害年金が遡って決まった場合、その期間に受けた保護費の返還が求められることがあります
  • 年金の決定通知が届いたら、ケースワーカーに伝えてください。加算の判定に使われます
  • 生活保護を受けているとき

線⑥: 老後 — iDeCo、65歳からの選択、繰上げの落とし穴

  • iDeCo: 国民年金の保険料を免除されている人は原則としてiDeCoに加入できませんが、障害基礎年金を受けている人(法定免除)は加入できます(iDeCo公式サイト「よくあるご質問」)。掛金は所得控除になりますが、障害年金しか収入がない人は控除する所得がないので、その節税効果はありません。運用益の非課税だけが効きます。iDeCoには、高度障害の状態になったときに60歳を待たずに受け取れる「障害給付金」の仕組みもあります(確定拠出年金法37条)
  • 65歳から: 障害基礎年金と老齢厚生年金をあわせて受ける選択ができます。障害基礎年金と老齢基礎年金の両方は受けられません。老齢年金は課税、障害年金は非課税なので、組み合わせで手取りが変わります。自動では切り替わらず、「年金受給選択申出書」で選びます。あとから選び替えることもできます。年金事務所で両方の見込額を出してもらってから決めてください。→ 65歳の選択
  • 繰上げの落とし穴: 老齢年金の繰上げ請求をすると、その日以後は事後重症などによる障害年金を請求できなくなります。持病があって将来悪化の可能性がある人にとって、繰上げは障害年金という選択肢を失う決断です。繰上げを考えている家族がいるなら、先に障害年金の可能性を確認してから
  • 厚生年金に入って働く: 将来の老齢厚生年金が増えます。障害年金は減りません
  • 配偶者を亡くしたとき: 65歳までは障害年金と遺族厚生年金はどちらか選択、65歳以降は「障害基礎年金+遺族厚生年金」の組み合わせができます

自分に関係する線を決める

当てはまる人関係する線
障害基礎年金だけで、家族の扶養に入っている②③
障害基礎年金だけで、A型・障害者雇用で働き始める②③(厚生年金に入れば③は対象外)
障害厚生年金で、会社員だった①③(厚生年金に加入中なら③は対象外)⑥
20歳前傷病で、働き始めた②④
生活保護と併せて受けている
65歳が5年以内に来る

貯蓄と、更新に備えるお金

貯金や資産は、障害年金の審査に関係ありません。資産を調べられるのは生活保護であって、年金ではありません。だから、年金を貯めることに後ろめたさは要りません。

更新で支給停止になった場合、年金は止まりますが、状態の悪化を示せば支給停止事由消滅届で再開を求められます。ただし再開まで数か月かかります。「止まっても数か月は暮らせる」額を、年金とは別に置いておくことは、更新の不安を減らす具体的な方法の1つです。額は家計ごとに違うので、この場では決めません。→ 更新のお金の段取り

年金以外に、市区町村の手当もあります。重度の障害で常時特別な介護が必要な20歳以上の人への特別障害者手当は、障害年金と併せて受け取れます(所得制限あり・窓口は市区町村)。年金の等級に関わらず、使える手当がないか、市区町村で確認する価値があります。

同じ道を歩いた人が、つまずいたところ

  • 年金を確定申告に書いて、税の扶養から外れると思い込んだ。 障害年金は非課税で、税の所得に入らない。書く必要がない。
  • A型で働き始めて、親の健康保険の扶養から外れる通知が来て驚いた。 年金と賃金の合計が180万円を超えていた。線を超える前に、健康保険に確認する。
  • 法定免除を「損」だと思って、そのまま10年放置した。 追納は10年以内。老齢基礎年金を満額に近づけたいなら、期限がある。
  • 親が老齢年金の繰上げを勧めた。 繰上げると、その後の障害年金の請求ができなくなる。先に障害年金の可能性を確認する。

よくある質問

Q. 障害年金を受けていると、家族の扶養(税の扶養)から外れますか。

A. 税の扶養(配偶者控除・扶養控除)は所得で判定し、障害年金は所得に入りません。健康保険の扶養は年収180万円未満で、こちらには年金が入ります。2つの扶養は別の制度です。

Q. 年金を貯金しておくと、生活保護で問題になりますか。

A. 生活保護では資産の状況が審査に関わります。具体的な扱いは福祉事務所に確認してください。障害年金そのものの審査では、貯金は関係ありません。

Q. 老齢年金と障害年金は、どちらを選ぶべきですか。

A. 65歳の時点で、額と課税の違いを見て決めます。年金事務所で両方の見込額を出してもらえます。選択はあとから変えられます。→ 65歳の選択

Q. 年金生活者支援給付金は、自動でつきますか。

A. 請求が要ります。障害年金の請求と同時に出すのが原則で、出し忘れが多い書類です。まだなら年金事務所へ。所得要件(前年所得4,794,000円+扶養親族数×38万円以下)があり、障害年金などの非課税収入は所得に含めません。

Q. 子の加算と児童扶養手当は、両方もらえますか。

A. 同じ子について両方を満額は受け取れず、調整の仕組みがあります。市区町村の児童扶養手当の窓口と年金事務所の両方で確認してください。

次の一歩

出典

  • e-Gov法令検索 国民年金法25条・35条・厚生年金保険法41条2項・生活保護法4条・確定拠出年金法37条
  • 国税庁 タックスアンサー No.2011「課税される所得と非課税所得」/ No.1600「公的年金等の課税関係」
  • 厚生労働省通知「収入がある者についての被扶養者の認定について」(年間収入130万円未満・60歳以上または障害者は180万円未満)
  • 日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」「障害年金生活者支援給付金の概要」
  • 日本年金機構「国民年金保険料の法定免除制度」「国民年金保険料の追納制度」
  • 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」
  • 日本年金機構「年金の併給または選択」「年金の繰上げ受給」、年金Q&A「障害年金を受け取っていますが、老齢年金も受け取れるようになりました」
  • 厚生労働省通知「精神障害者保健福祉手帳による障害者加算の障害の程度の判定について」
  • 厚生労働省「特別児童扶養手当等の支給に関する法律」(特別障害者手当)
  • iDeCo公式サイト「よくあるご質問」
  • 厚生労働省「令和6年度工賃(賃金)の実績について」
  • 確認日: 2026-09-06