診断書の「就労状況」欄には何が書かれるのか — 働きながら申請・更新する人が主治医に渡すメモ
この記事の結論
診断書の裏に「就労状況」という欄があります。どこで、どんな形で、週に何日、いくらで働いているか。そして「仕事場で、どんな助けを受けているか」。ここは、主治医が知らないことばかりなので、あなたが伝えた分しか書かれません。
審査で見られるのは「働いているか」ではありません。「助けや配慮がなかったら、どうなる人か」です。国が医師に配っている書き方の手引きにも、仕事場の内外を問わず、受けている助けや配慮を書くように、と書いてあります。
やることは一つ。A4一枚に「働き方」「受けている配慮」「それでも起きていること」「仕事の外の生活」を書いて、診断書を頼むときに主治医に渡す。口で言うより、紙のほうが残ります。
隠すのは勧めません。厚生年金に入っていれば、働いていることは年金機構に見えています。診断書だけ違う内容だと、疑われるのは診断書全体です。
「働いているんですけど、診断書って、どう書かれるんですか」
働きながら申請する人、年金をもらいながら働き始めて更新が近い人から、いちばん多く聞く言葉です。
答えは、診断書の裏面にあります。「現症時の就労状況」という小さな欄です。この記事は、その欄の話だけをします。何が書かれるのか。誰が決めるのか。そして、あなたが何をすれば、実際の状態が載るのか。
先に結論を書きます。この欄は、あなたが伝えた分しか書かれません。伝えなければ「一般企業・週5日」で終わります。伝えれば「配慮を受けて、それでもこれだけ休んでいる」が残ります。その差が、審査の差になります。
診断書の裏に、何が書かれるのか
精神の障害用の診断書の裏面、右のほうに「就労状況」の欄があります。主治医が書きますが、中身はこうです。
- どこで働いているか(一般の会社/障害者雇用/A型・B型・就労移行/自営)
- 週に何日、1日何時間
- ひと月の給料
- 仕事の内容
- 仕事場で、どんな助けや配慮を受けているか。人とのやりとりはどうか
- この1年で、休職や病気休暇があったか
見てのとおり、給料も日数も配慮も、診察室では分からないことばかりです。精神科医の人がXで「患者さんの給料がいくらかなんて、知らないよ」と書いていましたが、そのとおりです。あなたが言わなければ、空欄か、ざっくりした一行になります。
審査する人は、この欄をどう読むか
ここが、いちばん誤解されているところです。
「働いている=軽い」ではありません。審査する人が知りたいのは、「この人は、助けや配慮がなかったら、どうなるのか」です。
たとえば、こんな二人がいます。
ひとりは、週5日フルタイムで、配慮なし、遅刻も欠勤もなく、家では自分で食事も作っている人。もうひとりは、週4日、電話対応を外してもらい、指示は一人の上司からだけにしてもらい、それでも月に3回は朝に動けず午後出社、金曜の夜は食事も取らずに寝てしまい、通帳は母親が管理している人。
二人とも「働いている」です。でも、審査で見られるのは後半の部分です。国の手引き(精神の障害の等級判定ガイドライン)には、A型・B型・障害者雇用で働いている人は「1級または2級の可能性を検討する」、普通の職場でも同じくらいの助けを受けていれば「2級の可能性を検討する」、そして「助けや配慮がない場合に予想される状態を考慮する」と書かれています。
つまり、書いてほしいのは「働いている」ではなく、「どんな助けの中で、働けているか」です。
「働いているから無理」と言われた人へ
Xを読むと、主治医や社労士に「働いているなら精神の年金は無理」「フルタイムでオープンなら、まず無理」と言われた、という人がたくさんいます。
その一方で、一般の会社に在職したまま2級になった人が「働いているかどうかではなく、働くのに支障があるかで見る、と先生が快く診断書を書いてくれた」と書いています。
どちらも本当に起きています。違いは、あなたの状態ではなく、就労の中身が紙に載ったかどうかです。
主治医に渡す紙 — 1枚でいい
診察で口で説明すると、その日の調子と時間で、半分も伝わりません。A4一枚に書いて、診断書をお願いするときに一緒に渡してください。
1. 働き方
- どこで、どんな形で(会社/障害者雇用/作業所/在宅)
- 週に何日、1日何時間、手取りいくら
- この1年で休職・欠勤・早退が何回
2. 受けている配慮(ここがいちばん大事)
- 仕事の内容で外してもらっていること(電話、接客、対人業務など)
- 時間の配慮(短時間、時差出勤、休憩を増やしてもらっている、在宅)
- 人の配慮(指示は一人から、定期面談、支援員や上司が見ている)
- 通院の日は休めるか
- 作業所なら、通所日数と、作業中の声かけや見守り
3. 配慮があっても、起きていること
- 欠勤・早退・遅刻の実際の回数
- 仕事中に起きること(固まる、指示が入らない、パニック、ミス)
- 帰宅後(何もできず横になる、食事を抜く、翌日に響く)
- 休日(回復に全部使う、外に出られない)
4. 仕事の外の生活
- 食事、お金の管理、通院と薬、身の回りのこと、人付き合い、危ないときの対応。このうち、誰かに手伝ってもらっていること
- 一人暮らしなら、訪問看護やヘルパー、家族が来てくれる頻度
書き方のコツは一つだけ。気持ちではなく、行動で書くことです。「つらい」ではなく「週に2回、朝に動悸で出られず、上司に連絡して午後から出た」。この粒度なら、医師はそのまま欄に落とせます。
→ 診察の前に用意するメモの書き方働き方別に、何を書くか
同じ「週4日」でも、書く中身は働き方で変わります。自分に近いところを、そのまま使ってください。
障害者雇用で働いている人
何も渡さなければ、「障害者雇用・週4日・事務」で終わります。 書くこと: 外してもらっている業務(電話、接客、対人)。指示を出す人を一人にしてもらっているか。面談の頻度。通院日を休めるか。それでも起きている欠勤・遅刻の回数。帰宅後に何もできない日の数。休日を回復に使い切っているか。お金の管理や通院の予約を家族がしているか。 すると診断書には、「業務を限定、指示は一人、定期面談、通院配慮」と、この1年の欠勤・遅刻、帰宅後の消耗が載ります。
一般の会社で、病気を伝えずに働いている人
何も渡さなければ、「一般雇用・週5日」。配慮なし、支障なし、と読まれます。 書くこと: 職場には伝えていないので配慮がないこと。有給を体調不良で何日使ったか。欠勤の回数。仕事中に起きること(会議で頭が真っ白になる、指示が入らない、ミスが続く)。帰宅後は横になるだけで、食事を抜いているか。薬や通院の予約を家族がしているか。休職があれば、いつ、何か月。 すると診断書には、「職場では配慮なし。家では薬・通院・食事に助けあり」と、休職と欠勤が載り、「通院と服薬」「食事」が助けが必要な評価になります。国の手引きの「配慮がない場合に予想される状態」が、ここで効きます。
作業所(B型・A型)に通っている人
何も渡さなければ、「就労支援施設・週3日」。 書くこと: 支援員が毎回、手順を一緒に確認してくれるか。人が増えたときに別の場所に移らせてもらっているか。予定の日数と、実際に通えた日数。通えない日は何が起きているか(起き上がれない、玄関から出られない)。食事とお金を実家に頼っているか。 すると診断書には、「支援員の常時の声かけと環境の調整」と、予定と実際の通所日数の差が載ります。
在宅・フリーランスの人
何も渡さなければ、「自営」。日数も配慮も見えません。 書くこと: 週の稼働時間。体調で断った仕事の数。納期に遅れた回数。家族が納期や連絡を代わりにしているか。 すると診断書には、「自営だが、稼働は週◯時間、体調による中断あり、家族の援助あり」が載ります。
どの働き方でも、書くのは「配慮」「それでも起きていること」「仕事の外の生活」の三つだけです。
メモの記入例(そのまま埋めてください)
- 働き方: (会社/障害者雇用/作業所/在宅)。週◯日、1日◯時間。手取り月◯円。勤続◯年
- この1年の休職: (あり◯か月/なし)。欠勤◯回、早退◯回、遅刻◯回
- 外してもらっている仕事:
- 時間の配慮:
- 人の配慮(指示は一人から/面談◯回/支援員の見守り):
- 通院の日: (休める/休めない)
- 仕事中に起きること(回数も):
- 帰宅後: 何もできず横になる日が週◯日。食事を抜く日が週◯日
- 休日: (外出できる/回復に使い切る)
- 家で手伝ってもらっていること: 食事/お金の管理/通院の予約/薬の管理/掃除
- 一人暮らしの場合: 訪問看護 週◯回/ヘルパー 週◯回/家族が来る 週◯回
主治医に言われがちな言葉と、返し方
「働いているなら、年金は難しいですよ」 →「国の手引きに、就労の事実だけで支給は決まらない、と書いてあると聞きました。配慮の内容と、仕事の外の生活を書いていただけますか」
「配慮の欄は、会社のことだから書けません」 →「本人からの聞き取りで書いていい欄だそうです。このメモの内容で結構です」
「給料は書かなくていいでしょう」 →「欄があるので、空欄だと困るかもしれません。手取りの目安を書いておいてください」
「欠勤は少ないみたいだから、問題なさそうですね」 →「有給で休んだ日が◯日あります。それと、帰宅後に動けない日が週◯日あります。そこも書いていただけますか」
言い返すのが苦手な人は、メモの上に「診断書の就労状況欄と日常生活能力の判定の参考にしてください」と一行書いて、黙って渡すだけでも伝わります。
申請のときと、更新のときの違い
申請のとき: 診断書は「現症日」という日の状態を書きます。働き方は、その日の時点で書いてもらいます。休職中なら「休職中」で、復帰の予定があるなら、それも伝えます。
更新のとき: 提出月の前3か月の状態を書きます。働き始めてから最初の更新では、この欄が初めて「就労あり」になります。申請のときは無職だった人ほど、「働けるようになった」と読まれやすいので、配慮とそれでも起きていることを、申請のときより丁寧に渡してください。
→ 働き始めてから最初の更新で見られること申立書にも、同じことを書く
病歴・就労状況等申立書にも、就労のことを書く欄があります。ここは、診断書と同じ事実を書いてください。
診断書に「週5日・一般雇用」、申立書に「配慮を受けて週3日」と書けば、審査する人は食い違いを見ます。順番は、先に紙を作って、その紙を診断書のお願いと申立書の両方に使うことです。
→ 申立書の「就労状況」の書き方(フル記入例)受け取ったら、封を開けて見る
診断書は、封をしたまま出さなくていいです。受け取ったら、この欄を見てください。
見るのは三つ。働いている場所と形が合っているか。配慮の欄が空欄になっていないか。この1年の休職や欠勤が書かれているか。
Xには「作業所勤務なのに、一般就労と書かれていた」「伝えた症状が書かれていなかった」という声があり、開けて見たから直せた、と書かれています。違っていたら、主治医に「ここは実際はこうです」と伝えて、直してもらってかまいません。
→ 診断書を受け取ったら見る場所隠したほうが得、は本当か
「更新のときは無職のほうが安全」「働いていることは言わないほうがいい」。Xでよく見る言葉です。気持ちは分かります。でも、勧めません。
理由は二つ。厚生年金に入って働いていれば、その記録は年金機構に見えています。診断書だけ「無職」にしても、隠せません。それから、診断書と申立書と記録が食い違ったとき、疑われるのは就労の一点ではなく、診断書全体です。
正直に、配慮と支障を一緒に書く。働いている人が出せる、いちばん強い書き方です。
Xの声から — こんなときは
「主治医が"審査に通る診断書は書けません"と言った」
クローズで週5日のはずが週2〜3日しか出勤できていなかった人が、そう言われて断られた、という声がありました。医師は「働けている」としか知らなかった可能性があります。出勤できなかった日数と、その日に何が起きていたかを紙にして、もう一度頼んでみてください。それでも断られたら、病院の相談室か相談支援専門員に間に入ってもらう道があります。
「社労士に、働いている時点で2級は無理と言われた」
無理と言われた人と、一般の会社にいたまま2級になった人が、同じXにいます。違いは、仕事の外の生活の支障がどれだけ紙に載ったかです。社労士を変える前に、自分の生活の助けを書き出してみてください。
「診断書を開けたら、作業所なのに一般就労と書かれていた」
開けたから直せた例です。受け取ったら必ず見る。違っていたら「ここは実際は就労支援施設です」と伝えて、直してもらってかまいません。
「障害者雇用と作業所、どちらが更新に有利か」
病院の精神保健福祉士が「配慮を受けて働いていると診断書に書けるから障害者雇用」と答えた、という声がありました。ただしどちらでも、配慮の中身が書かれなければ同じです。形より中身です。
「隠したほうがいいと言われた」
「更新のときは無職のほうが安全」という投稿は多いですが、厚生年金の記録は年金機構に見えています。診断書だけ違うと、診断書全体が疑われます。隠すより、配慮と支障を一緒に書くほうが強いです。
同じ状況の人が、どうなったか
公開されている審査の記録から、二つ。
職場の配慮を受けながら一般の会社で週4日、管理職として働いていた人は、日常生活のほうは比較的できていたこともあって、3級にも当たらないとされました(h30_r01-07_01)。配慮はあったけれど、生活の側の支障が紙に少なかった例です。
家族の助けがないと生活が回らず、就労支援での短時間の作業も続かなかった人は、3級だった決定が取り消されて2級になりました(h28_29-07_09)。働こうとしたことは不利にならず、続かなかったことが状態の証拠になりました。
→ ほかの実例も読むよくある質問(FAQ)
Q. 給料の額まで主治医に言わないといけませんか?
A. 欄があるので、言わないと空欄になります。ただ、見られるのは額そのものより、その額を稼ぐためにどんな配慮を受け、何が起きているかです。手取りの目安と一緒に、配慮を書いてください。
Q. 障害者雇用は、有利ですか、不利ですか?
A. 一般雇用のフルタイムよりは、状態が伝わりやすいです。ただし「障害者雇用」という形だけでは足りません。受けている配慮の中身が書かれて、初めて意味を持ちます。
Q. 一般の会社で、病気を伝えずに働いています。配慮はありません。
A. 配慮がないことと、それでも起きていること(欠勤、早退、帰宅後に動けない、休日は回復だけ)を書いてください。「配慮がない場合に予想される状態」を見るのが審査なので、配慮なしで働いた結果の消耗が、そのまま材料になります。
Q. 更新のときも、同じ欄ですか?
A. 同じです。働き始めてから最初の更新では、この欄が初めて「就労あり」になるので、申請のときより丁寧に、配慮と支障を書いてもらってください。
Q. 主治医に「働いているなら書けない」と言われました。
A. 国の手引きには「就労の事実だけで支給は決まらない」と書いてあります。その部分を印刷して見せてください。それでも書いてもらえないときは、病院の相談室か、相談支援専門員に相談する道があります。
Q. 就労移行支援に通っています。
A. 「就労支援施設」として書かれます。工賃はありませんが、通所日数と、支援員の関わりを伝えてください。訓練に通えていることは、助けのある環境で活動できている、と読まれます。
まとめ
- 診断書の「就労状況」欄は、あなたが伝えた分しか書かれない。
- 見られるのは「働いているか」ではなく「助けや配慮がなかったら、どうなるか」。
- A4一枚に、働き方・配慮・それでも起きていること・仕事の外の生活を、行動で書いて、診断書を頼むときに渡す。
- 申立書にも同じ事実を書く。受け取った診断書は開けて、この欄を見る。
- 隠さない。記録と食い違うと、診断書全体が疑われる。
出典
- 厚生労働省「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」(就労状況欄、援助や配慮の記入、過去1年の休職)・確認日 2026-09-13
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)・確認日 2026-09-12
- 日本年金機構「障害年金の請求手続き等に使用する診断書・関連書類」(様式第120号の4)・確認日 2026-09-13
- 社会保険審査会 裁決(h30_r01-07_01、h28_29-07_09)・厚生労働省公開資料で原文確認
- Xの投稿(当事者・社労士・精神科医)は匿名の要旨として参照(2026-09-13 収集)
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。