働き始めてから最初の更新で見られること — 障害状態確認届と、1年前から始める準備
この記事の結論
働き始めても、年金は勝手に止まりません。止まるか下がるかが決まるのは、次の更新のときだけです。令和6年度の更新30万4千件のうち、止まった人は1.1%、下がった人は0.8%でした。
更新で見られるのは「働いているか」ではなく、「助けや配慮がなかったら、どうなる人か」と「仕事の外の生活は、一人で回るか」。この二つが診断書に載っていれば、働いていることは不利になりません。
やることは三つだけ。年金証書の「次回診断書提出年月」を今日見る。働き始めてから、月に1回、配慮・休んだ日・帰宅後の状態をメモする。更新の3か月前に、そのメモを主治医に渡す。
「更新の前に辞めて無職になる」は勧めません。厚生年金の記録は年金機構に見えているので隠せませんし、辞めても次の仕事が見つかるとは限りません。
「働き始めたんですけど、次の更新で止まりますよね……」
年金が決まって、少し余裕ができて、仕事を始めた。あるいは障害者雇用の話が来ている。そのとき、頭をよぎるのが更新です。
Xには「更新のときは無職のほうが安全」「年金が通ったからA型は辞める」という投稿が、何万回も表示されています。「就職の話をもらったのに、更新が通らなくなるのが怖くて断った」という人もいました。
この記事は、働き始めてから最初の更新を迎える人のために書きました。先に結論を書きます。止まる人は100人に1人です。見られるのは働いているかどうかではありません。準備は、月1回のメモだけです。
数字を先に — 止まる人は100人に1人
日本年金機構の統計(令和6年度)で、更新は304,456件。そのうち、そのまま続いた人が96.7%、上がった人が1.4%、下がった人が0.8%、止まった人が1.1%です。働いている人も、この中に入っています。
Xで「精神の更新率は99%」と書いている人がいますが、これは「止まらなかった割合」のことで、だいたい合っています。「更新は本当に通りやすい。働いていてもほぼ大丈夫」という当事者の実感も、この数字の側です。
ただ、1.1%はゼロではありません。0.8%の「下がった人」には、厚生年金2級から3級になった人も入っています。「ほぼ大丈夫」と「絶対大丈夫」は違うので、残りの部分をこの記事で埋めます。
更新で見られるのは、この二つ
更新のときに出すのは「障害状態確認届」という名前の診断書です。申請のときと同じ様式で、裏面に日常生活の7項目と、程度の5段階、そして就労状況の欄があります。
見られるのは、大きく二つです。
一つ目。助けや配慮がなかったら、どうなる人か。
就労状況の欄には、勤務先、雇用の形、日数、給料、そして「仕事場で受けている助けや配慮」が書かれます。国の手引きは、A型・B型・障害者雇用で働く人は「1級または2級の可能性を検討」、普通の職場でも同じくらい助けがあれば「2級の可能性を検討」、そして「助けや配慮がない場合に予想される状態を考慮する」としています。審査する人は、「働いているか」の一点ではなく、「配慮を外したらどうなる人か」を見ています。
二つ目。仕事の外の生活は、一人で回るか。
診断書の日常生活の7項目は、「一人で暮らすとしたら、できるか」で判断する決まりです。仕事はできているが、帰宅後は何もできない、食事は家族が作っている、お金の管理は親がしている。そういうことは、書かれていれば「助けが必要」として残ります。書かれていなければ、「働けていて、生活も回っている」として残ります。
→ 診断書の「就労状況」欄に何が書かれるか働き方で、起きやすいことが違う
同じ「働いている」でも、更新で起きることは働き方で違います。
作業所(B型・A型)
「助けのある場所で働いている」と読まれます。社労士の人も「A型だからB型より不利、ということはほぼない」と書いています。見られるのは、通所日数と、作業中の声かけや見守り、休憩の取り方といった助けの中身です。
障害者雇用
「配慮を受けて働いていると診断書に書けるから、更新は障害者雇用のほうがいい」と、病院の精神保健福祉士に言われた、という人がいました。短時間、業務の限定、定期面談、通院の休み。それと、配慮があっても起きている欠勤や早退、帰宅後の状態。この二つがそろって、初めて「障害者雇用」に意味が出ます。
一般の会社(オープンでもクローズでも)
ここが一番、書き方で差が出ます。配慮なしでフルタイム、生活も自分で回っている、と読まれれば、等級は下がる方向です。実際の審査記録でも、配慮を受けて週4日の管理職をしていた人が、生活のほうは比較的できていたとして、3級にも当たらないとされました。一方で、一般の会社にいたまま2級になった人もいます。違いは、仕事の外の支障がどれだけ紙に載ったかです。
在宅・フリーランス
診断書では「自営」になります。日数も配慮も見えにくいので、週の稼働時間、体調で断った仕事、納期に遅れた回数を、自分で記録しておく必要があります。
→ 働くと年金はどうなるか — 4つの働き方準備は、1年前から始まっている
更新の診断書は、提出月の前3か月の状態を書きます。でも、その3か月だけ頑張っても遅いです。主治医が書く材料は、「その3か月に、あなたが伝えたこと」だからです。医師は1年分のあなたを覚えていません。
今日やること
年金証書に「次回診断書提出年月」が書いてあります。スマホのカレンダーに入れて、その3か月前にも印をつけてください。
毎月やること
月末に1回、一枚に書き足します。
- 受けている配慮(変わったら、変わった内容)
- 欠勤・早退・遅刻の回数と、理由
- 仕事中に起きたこと(固まった、指示が入らなかった、パニック、ミス)
- 帰宅後と休日(何もできず横になった日数、食事を抜いた日)
毎回の診察で見せなくていいです。書き溜めるだけ。あなたのメモが、医師の記憶の代わりになります。
→ 更新までのカウントダウンと記録の道具3か月前にやること
メモをA4一枚にまとめて、「更新の診断書をお願いするとき、これを見ていただけますか」と渡します。
受け取ったらやること
封を開けて、就労状況の欄を見ます。勤務先と雇用の形が合っているか。配慮の欄が空欄でないか。この1年の欠勤や休職が書かれているか。「作業所なのに一般就労と書かれていた」ことを、開けたから直せた、という人がいます。
→ 診断書を受け取ったら見る場所働き始めてから更新までの、1年の動き方
働き始めた月
年金証書の「次回診断書提出年月」を見て、カレンダーに入れる。その3か月前にも印。職場で受けている配慮を、最初の1週間で書き出しておく(あとから思い出すのは難しい)。
毎月末
一枚に4行。配慮(変わったら)、欠勤・早退・遅刻の回数と理由、仕事中に起きたこと、帰宅後と休日の状態。5分で終わります。
3か月ごとの診察で
たまったメモを主治医に見せる。「働き始めて3か月、こういう状態です」。カルテに残ります。更新のとき、医師はこのカルテを見ながら書きます。
半年たったら
会社に、配慮の内容が文書になっているか聞く(合理的配慮の確認書、業務指示書、面談記録)。あればコピーをもらう。作業所なら、支援員に「更新のときに通所の記録を出してもらえますか」と伝えておく。
更新3か月前
メモと文書のコピーをA4一枚にまとめて、「更新の診断書をお願いするとき、これを見てほしい」と主治医に渡す。
更新の通知が届いたら
封筒に「障害状態確認届」と診断書の用紙が入っています。提出期限は、誕生月の末日です。主治医に依頼して、書き上がるまで2〜4週間かかるので、届いたらすぐ頼んでください。
受け取ったら
開けて、就労状況の欄と、日常生活の7項目を見る。合っていれば、全ページをコピーしてから提出。
診断書を頼むときの、言い方
「更新の診断書をお願いします。働き始めてからの状態を、この紙にまとめました。配慮を受けていることと、それでも休んでいることを、就労状況の欄に書いていただけますか。家での生活のことも、一人で暮らすとしたらどうか、で見ていただきたいです」
これで足ります。「一人で暮らすとしたら」は、国の手引きが医師に求めている見方そのものなので、医師には通じます。
Xの声から — 更新でよく起きること
「申請したときは無職だった。今は働いている。来年の更新が怖い」
いちばん多い不安です。申請時と違うのは、就労状況の欄が「あり」になることだけです。配慮と、それでも起きていることを書いてもらえば、「働けるようになった」ではなく「助けの中で働いている」になります。今日から月1回のメモを始めてください。
「更新のたびに、社労士に頼むべきか」
申請のときに社労士に頼んだ人が、更新でも頼むか迷っている声がありました。更新の書類は診断書1枚で、申請のときより少ないです。自分の状態が主治医に伝わっているなら、頼まなくても進みます。頼むとしたら、前回3級に下がった人や、就労状況が大きく変わった人です。
「更新が通ったら、次回が5年後になった」
2年更新だった人が5年になった、という報告があります。状態が安定していると見られると、間隔が延びます。働いていても延びた人はいます。
「更新の時期に休職していた」
休職は「働けなかった事実」で、状態の証拠です。時期と理由を主治医に伝えれば、診断書のこの1年の欄に書かれます。不利にはなりません。
「会社に年金のことを知られたくない」
更新で会社に連絡が行くことはありません。年金機構が会社に問い合わせることもありません。配慮の文書のコピーを主治医に見せるのは、あなたが自分の書類を医師に見せるだけなので、会社には伝わりません。
「更新前に辞める」を勧めない理由
Xでいちばん多い「石橋を叩いて、更新のときだけ無職にする」について、正直に書きます。
一つ目は、記録です。厚生年金に入っていれば、加入の記録は年金機構に見えています。診断書だけ「無職」にしても隠せません。B型は雇用契約がないので記録には出ませんが、通所していることは診断書の就労状況の欄に載ります。診断書と他の記録が食い違えば、疑われるのは就労の一点ではなく、診断書全体です。
二つ目は、生活です。更新のために仕事を辞めて、更新が通っても、次の仕事が見つかるとは限りません。「更新は通ったけど、そのあと仕事が続かなかったら」という不安を書いている人がいましたが、辞めても、その不安は消えません。収入だけが消えます。
働いている実態を、配慮と支障と一緒に、正直に出す。それが、働いている人がいちばん強く出せる更新です。
結果が「下がった」「止まった」だったら
終わりではありません。順番にやることがあります。
1. 通知の理由を読む。
通知には、どの等級と判断されたか、理由が書いてあります。「就労の状況から、労働に著しい制限があるとは認められない」のような文言があれば、働いていることを軽く見られた、ということです。
2. 3か月以内に、審査請求。
通知を受け取った日の翌日から3か月以内に、地方厚生局の社会保険審査官に審査請求(不服申立て)ができます。費用はかかりません。書くのは、配慮の実態と、仕事の外の支障が診断書に十分載っていなかったこと。主治医の補足の意見書や、会社の配慮の文書、通所の記録を添えます。
3. 悪くなったら、支給停止事由消滅届。
止まったあとに状態が悪くなったときは、新しい診断書をつけてこの届を出すと、再開を求められます。審査請求とは別の道で、両方できます。
4. 生活を先に守る。
止まると翌々月から振込がなくなります。傷病手当金、失業給付、自立支援医療、生活保護など、当面の家計を支える制度を、先に確認してください。
→ 障害年金が止まったとき→ 不支給・減額への審査請求更新前チェックリスト
- □ 年金証書の「次回診断書提出年月」を確認して、3か月前に印をつけた
- □ 月1回、配慮・欠勤・帰宅後の状態をメモしている
- □ 職場の配慮が文書(確認書・業務指示書・個別支援計画)になっていれば、コピーを持っている
- □ 3か月前に、メモをA4一枚にまとめて主治医に渡した
- □ 診断書を受け取ったら開けて、就労状況の欄を確認した
- □ 申立書や生活の記録と、診断書の就労の内容が食い違っていない
- □ 提出前に、全部コピーした
同じ状況の人が、どうなったか
公開されている審査の記録から。
職場の配慮を受けて一般の会社で週4日、管理職として働き、日常生活も比較的できていた人は、3級にも当たらないとされました(h30_r01-07_01)。働き方より、生活の側に支障が少なかったことが決め手でした。
家族の助けがないと生活が回らず、就労支援の短時間作業も続かなかった人は、2級と認められました(h28_29-07_09)。働こうとしたことは不利にならず、続かなかったことが状態の証拠になりました。
2級の人が1級への引き上げを求めた例では、7項目がすべていちばん重い評価で、家族の常時の助けと作業所での配慮が必要な状態として、1級とされました(r04_05-11_07)。作業所に通えていることが、「助けの中で通えている」と読まれた例です。
→ ほかの実例も読むよくある質問(FAQ)
Q. 働き始めたことを、年金事務所に届け出る必要はありますか?
A. ありません。20歳前の傷病による障害基礎年金の人だけ、前年の所得の確認があります。働いていることは、更新の診断書を通して伝わります。
Q. 更新のとき、会社に何か書いてもらう必要はありますか?
A. 必須ではありません。ただ、配慮の内容が文書(合理的配慮の確認書、業務指示書など)になっていれば、そのコピーを主治医に見せると、配慮の欄が具体的になります。
Q. 厚生年金の2級で働いています。3級に下がると、いくら変わりますか?
A. 3級には最低保障があり、令和8年度は年635,500円(月約53,000円)です。2級から3級になると、障害基礎年金(2級で年847,300円)がなくなります。実際の額は人によって違うので、年金事務所で試算してもらえます。
Q. 更新のときに休職中でした。どうなりますか?
A. 診断書には、この1年の休職の時期と、復帰後の状況を書く決まりです。休職は「働けなかった事実」として、状態の証拠になります。期間と理由を主治医に伝えてください。
Q. 永久認定になれば、更新はなくなりますか?
A. なくなります。ただ、精神の障害で永久認定になることは多くありません。更新の間隔が1年から5年に延びることはあります。「2年更新だったのが5年になった」という報告もあります。
Q. 結果が出るまで、年金は止まりますか?
A. 止まりません。審査の間も支払いは続きます。下がる・止まるが決まった場合は、そのあとの分から変わります。
まとめ
- 働き始めても、年金は勝手に止まらない。決まるのは更新のとき。止まる人は1.1%。
- 見られるのは「配慮がなかったらどうなるか」と「仕事の外の生活が一人で回るか」。
- 今日やることは、年金証書の「次回診断書提出年月」を見ること。毎月やることは、配慮・休んだ日・帰宅後の状態のメモ。3か月前にやることは、主治医に一枚渡すこと。
- 受け取った診断書は開けて、就労状況の欄を見る。
- 「更新前に辞める」は勧めない。記録は隠せず、収入だけが消える。
- 下がっても止まっても、審査請求と、支給停止事由消滅届の道がある。
出典
- 日本年金機構「障害年金業務統計(令和6年度決定分)」(再認定304,456件、継続96.7%・増額1.4%・減額0.8%・支給停止1.1%)・確認日 2026-09-02
- 厚生労働省「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」・確認日 2026-09-13
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)・確認日 2026-09-12
- 日本年金機構「障害状態確認届(診断書)が届いたとき」・確認日 2026-09-02
- 日本年金機構「障害基礎年金の年金額」(令和8年度)・確認日 2026-09-13
- 社会保険審査会 裁決(h30_r01-07_01、h28_29-07_09、r04_05-11_07)・厚生労働省公開資料で原文確認
- Xの投稿(当事者・社労士・FP・精神保健福祉士)は匿名の要旨として参照(2026-09-13 収集)
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。
このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。