障害厚生年金3級で働く — 3級の意味、最低保障額、更新・額改定・65歳の3つの線
この記事の結論
3級は「働けるけれど、制限つきでしか働けない人」のための等級です。働きながらもらうことを前提に作られています。額は、少なくとも年635,500円(月約53,000円・令和8年度)。
3級があるのは障害厚生年金だけ。初診日に会社員(厚生年金)だった人の等級です。国民年金の人には3級がなく、2級に届くかどうかの一本勝負になります。
3級で働く人が気をつける線は三つ。更新で「配慮なしに働けている」と読まれると3級から外れる。悪くなったら、更新を待たずに2級を求められる。外れても、3年・65歳までは戻る道が残る。
3級には、給付金も、保険料の自動免除もありません。1級・2級とは扱いが違うので、損をしないための一覧を記事の中に置きました。
「3級って、働いていていいんですか」
障害厚生年金の3級は、精神の障害でいちばん多い等級のひとつなのに、いちばん説明が少ない等級です。国民年金にはないので、カウンセラーや窓口の人でも「基礎年金で3級が取れますよ」と間違って言ってしまうことがある、という声がXにありました。
この記事は、3級で働いている人、3級を目指して働きながら申請する人のために書きました。3級とは何か。いくらか。働くときに気をつける線はどこか。そして65歳で何が変わるか。
先に一つだけ。3級は、働くことと矛盾しません。むしろ、働くことを前提にした等級です。
3級は、どういう等級か
国の基準では、1級は「人の介助がないと日常生活がほとんどできない」、2級は「日常生活が著しく制限される」、そして3級は「働くことが制限される、または制限しないと働けない」です。
つまり、1級と2級は「生活」で決まり、3級だけが「仕事」で決まります。「働けるが、制限つきでしか働けない」人のための等級です。
社労士の人がXで「障害者雇用や合理的配慮を受けながら働いている人は、厚生3級で認められることがある」と書いているのは、この設計そのものです。「障害者雇用で週4日×5時間働きながら、厚生3級を受給中」という当事者の投稿もありました。
3級は、厚生年金の人だけ
障害基礎年金(国民年金)には1級と2級しかありません。3級があるのは、障害厚生年金だけです。
どちらになるかは、初めて病院に行った日に、どの年金に入っていたかで決まります。会社員として厚生年金に入っているときに初診日があれば障害厚生年金。国民年金の期間や、20歳になる前に初診日があれば障害基礎年金です。
ここで、つらいことが起きます。国の目安表で「2級または3級」に当たる人が、基礎年金だと3級がないので、不支給になる。Xでは「基礎年金にも3級を作ってほしい」という声が繰り返し出ています。本当にそのとおりだと思います。でも今の制度では、初診日の年金の種類が、3級があるかないかを決めます。
→ 障害基礎年金と障害厚生年金の違い3級はいくらか — 最低保障がある
障害厚生年金の額は、厚生年金に入っていた期間と給料で決まります(報酬比例)。若くて期間が短い人は、そのままだと額がとても小さくなるので、3級には「最低保障」があります。
令和8年度の最低保障は、年635,500円。月にすると約53,000円。2か月に一度、約106,000円が振り込まれます。
2級との差は大きいです。2級は、障害基礎年金847,300円に厚生年金の分が上乗せされるので、最低でも年85万円を超えます。3級は基礎年金の分がなく、厚生年金の分(最低保障つき)だけです。
→ 障害年金はいくら受け取れるか3級だから、使えないもの・使えるもの
3級は1級・2級と扱いが違うところが多く、知らずに損をしている人がいます。
→ 横にスクロールできます
| 制度 | 1級・2級 | 3級 |
|---|---|---|
| 年金生活者支援給付金(月5,620円〜) | もらえる | もらえない |
| 国民年金の保険料の自動免除(法定免除) | ある | ない(所得による免除申請は出せる) |
| 税金の障害者控除 | 対象 | 手帳があれば対象になりうる |
| 年金証書で精神の手帳を申請 | できる | できる(3級なら手帳3級) |
| 65歳以後に「障害基礎年金+老齢厚生年金」を組み合わせる | できる | できない(障害か老齢か、どちらか) |
| 年金が非課税 | 非課税 | 非課税 |
3級の人が今日できることは二つです。国民年金の免除申請を出しているか確認する(出していないと、月17,920円の請求が来ます)。年金証書で手帳を申請できることを知っておく(診断書なしで手帳3級が取れ、税の控除と交通の割引が使えます)。
→ 障害者手帳と障害年金の違い働くときの、三つの線
線1: 更新で「配慮なしに働けている」と読まれるか
更新の診断書には、勤務先、雇用の形、日数、給料、そして仕事場で受けている配慮が書かれます。国の手引きは「配慮がない場合に予想される状態を考慮する」としています。
3級は「仕事の制限」で決まる等級なので、「制限なく働けている」と読まれると、3級から外れます。実際の審査記録でも、配慮を受けて週4日の管理職をしていた人が、生活のほうは比較的できていたとして、3級にも当たらないとされました。
逆に言えば、配慮の中身と、配慮があっても起きていること(欠勤、早退、帰宅後に動けない)が診断書に載っていれば、働いていることは3級を否定しません。フルタイムでも、勤続が長くても、同じです。
→ 診断書の「就労状況」欄に何が書かれるか→ 働き始めてから最初の更新で見られること線2: 悪くなったら、更新を待たずに2級を求められる
3級で受給中に状態が悪くなったら、「額改定請求」という手続きで、2級への引き上げを求められます。新しい診断書を出して、審査を受けます。
注意は二つ。前の決定から原則1年たっていること(明らかに悪化したときは例外あり)。それから、更新の診断書を出したばかりの時期と重ならないよう、年金事務所で時期を確認することです。
→ 額改定請求線3: 3級から外れても、3年・65歳までは戻れる
更新で「3級に当たらない」と決まって止まっても、年金を受ける権利そのものは消えません。またその後に悪くなって3級以上の状態になれば、「支給停止事由消滅届」を出して、再開できます。
ただし、3級に当たらない状態が65歳まで続き、かつ外れてから3年たつと、権利そのものが消えます。「3年」と「65歳」の、遅いほうです。外れた通知が来たら、その日付を控えておいてください。
→ 障害年金が止まったとき転職する・辞める・65歳になる
転職しても、年金は続きます。
勤務先が変わっても、年金は変わりません。厚生年金に入ったり抜けたりしても、障害年金の額は変わりません。
障害者雇用に移ると、更新の材料が増えます。
配慮が文書になることが多いので、次の更新で「配慮の中身」を具体的に書いてもらいやすくなります。「オープンで転職活動したら給料が下がるかもと医師に言われた」という声もあり、収入と年金の維持しやすさは、行ったり来たりになることがあります。
辞めて無職になっても、3級のままです。
更新まで等級は変わりません。悪くなっていれば額改定請求で2級を求められます。辞めたことは「働けなくなった事実」なので、次の診断書に書いてもらってください。
65歳になると、選ぶことになります。
65歳で老齢年金を受ける権利が生じます。1級・2級の人は「障害基礎年金+老齢厚生年金」という組み合わせができますが、3級にはこれがなく、障害年金か老齢年金のどちらかを選びます。障害年金は非課税、老齢年金は課税、という違いもあります。64歳になったら、年金事務所で両方の見込額を出してもらってください。
→ 65歳の前後で変わること3級で働く人の、家計の組み方
3級の年金は月約53,000円(最低保障)。これに、働いた分を足します。
→ 横にスクロールできます
| 働き方 | 手取りの目安 | 年金と合わせて |
|---|---|---|
| 障害者雇用・週4日×5時間 | 約9万円 | 約14万円 |
| 障害者雇用・週5日×6時間 | 約12万円 | 約17万円 |
| A型作業所(平均賃金) | 約9万円 | 約14万円 |
| 一般の会社・時短 | 約13万円 | 約18万円 |
ここから、国民年金の保険料(月17,920円・免除を申請すれば0円)と、健康保険料(会社の社会保険に入っていなければ国保)が引かれます。3級の人は法定免除がないので、免除の申請を出しているかどうかで月1万7千円変わります。
厚生年金に入って働いている人は、将来の老齢年金が増えます。3級で働く人の年金は、今の年金と、将来の年金の両方に効いています。
→ 受給後のお金の設計3級から2級へ — 額改定請求の実務
状態が悪くなって「2級の状態だ」と思ったら、更新を待たずに動けます。
いつ出せるか。
前の決定(受給権が決まった日か、前回の改定)から1年たっていること。ただし、明らかに悪化した場合(例: 入院が続いている)は1年以内でも出せます。
何を出すか。
額改定請求書と、新しい診断書。診断書は、請求日の前3か月以内の状態を書いたもの。
診断書に何が要るか。
3級は「仕事の制限」で決まりますが、2級は「日常生活の制限」で決まります。見られる軸が変わるので、主治医には、仕事のことより、仕事の外の生活の支障(食事、お金の管理、通院、人付き合い、危ないときの対応)を伝えてください。一人で暮らすとしたらどうか、で書いてもらいます。
更新と重なるとき。
更新の診断書を出したばかりなら、その結果を待つ方が早いことがあります。年金事務所で時期を確認してください。
通らなかったら。
3級のままで、年金は減りません。「額改定請求をして落ちると3級も取り消される」と心配する人がいますが、額改定請求は上げてもらうための手続きで、原則これで下がることはありません(更新は別です)。
→ 額改定請求在職中に初診日がある人が、これから申請するとき
会社員として働いている間に初めて病院に行った人は、障害厚生年金の対象です。休職中や、退職後に申請する人が多いですが、働きながらでも申請できます。
流れは、ほかの人と同じです。初診日の証明(受診状況等証明書)を取る。年金事務所で納付要件を確認する。主治医に診断書を頼む。申立書を書く。提出する。
働きながら申請する人が気をつけるのは一つ。診断書の就労状況の欄です。「障害者雇用」「配慮あり」「欠勤あり」が書かれていれば、3級の可能性は十分あります。「一般雇用・週5日・配慮なし」だけだと、3級にも当たらないとされることがあります。
→ 診断書の「就労状況」欄に何が書かれるか→ 働きながら申請する・受け取るXの声から — 3級の人がつまずくところ
「3級だと知って、がっかりした」
2級を期待して3級だった人の声は多いです。でも、3級には「更新を待たずに2級を求める」道があります。状態が悪いと感じるなら、額改定請求の要件(原則1年)を確認して、主治医に仕事の外の生活の支障を伝えてください。
「3級なら、一般就労に戻っても大丈夫と言われた」
戻ってかまいませんが、次の更新で「配慮なし・フルタイム・生活も回っている」と読まれれば外れます。戻るときは、配慮のあるなしと、帰宅後の状態を記録しておいてください。
「2級から3級に下がった。額がこんなに変わるとは」
基礎年金の分(年847,300円)がなくなるので、下がり幅は大きいです。通知の理由を読んで、3か月以内なら審査請求ができます。悪くなっていれば、額改定請求で2級を求め直すこともできます。
「基礎年金にも3級があると思っていた」
社労士やカウンセラーでさえ間違えることがあります。初診日に国民年金だった人は、2級に届くかどうかの一本勝負です。「2級または3級」の目安に当たる人ほど、生活の側の支障を診断書に載せる必要があります。
「3級のまま65歳になったら、どうなる」
障害年金か老齢年金かを選びます。3級は「障害基礎+老齢厚生」の組み合わせができません。64歳になったら、年金事務所で両方の見込額を出してもらってください。
3級についての、よくある誤解
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 国民年金でも3級が取れる | 3級は障害厚生年金だけ。国民年金の期間や20歳前に初診日があれば、2級に届くかどうかの一本勝負 |
| 3級は、働いていれば安泰 | 更新で「配慮なしに働けている」と読まれれば外れる。配慮と支障が診断書に載っていることが条件 |
| 2級には、更新まで上がれない | 額改定請求で、更新を待たずに求められる(原則、前回から1年後) |
| 3級から外れたら、権利が消える | 3年たち、かつ65歳になるまでは残る。悪くなれば支給停止事由消滅届で再開できる |
| 3級は、年収で止まる | 収入で止まるのは、20歳前の傷病による障害基礎年金だけ。3級にはない |
よくある質問(FAQ)
Q. 3級だと、フルタイムで働いてはいけませんか?
A. 働いてかまいません。時間の上限はありません。ただし更新のとき、配慮なしでフルタイムで働けていて生活も回っている、と読まれれば、3級から外れることがあります。配慮と支障を診断書に載せることが条件です。
Q. 3級で収入が増えると、年金は減りますか?
A. 減りません。収入で減るのは、20歳前の傷病による障害基礎年金だけです。
Q. 3級から2級になるには?
A. 額改定請求です。診断書の日常生活の7項目と程度が、2級の状態になっている必要があります。「仕事の制限」から「生活の制限」へ、見られる軸が変わるので、仕事の外の生活の支障を主治医に伝えてください。
Q. 3級のとき、国民年金の保険料は?
A. 自動免除(法定免除)は1級・2級だけです。3級の人は、所得による免除や納付猶予を自分で申請します。免除にすると将来の老齢基礎年金が減るので、あとから追納できるかも含めて年金事務所で確認してください。
Q. 精神の手帳は3級です。年金も3級ですか?
A. 別の制度です。手帳3級で年金2級の人も、その逆もいます。年金は診断書の生活と仕事の実態で決まります。
Q. 3級から外れたあと、また悪くなりました。
A. 支給停止事由消滅届で再開を求められます。外れてから3年以内で65歳前なら、権利は残っています。新しい診断書が要るので、まず主治医に状態を伝えてください。
まとめ
- 3級は「働けるが、制限つきでしか働けない」人の等級。働くことと両立する。厚生年金の人だけにある。
- 額は最低でも年635,500円(月約53,000円)。給付金と自動免除は対象外。
- 線は三つ。更新で「配慮なしに働けている」と読まれると外れる。悪くなったら額改定請求。外れても3年・65歳までは戻れる。
- 転職・退職で年金は変わらない。65歳で老齢年金との選択がある。
- 保つ方法は、配慮と支障の月1回のメモと、更新3か月前に主治医へ渡すこと。
出典
- 厚生労働省「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(3級の定義)・確認日 2026-09-13
- 日本年金機構「障害厚生年金の年金額」(3級の最低保障額は障害基礎年金2級の4分の3。令和8年度 635,500円)・確認日 2026-09-13
- 日本年金機構「障害基礎年金の年金額」(令和8年度 1級 1,059,125円・2級 847,300円)・確認日 2026-09-13
- 日本年金機構「額改定請求」「支給停止事由消滅届」「65歳以後の年金の選択」・確認日 2026-09-13
- 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月)・確認日 2026-09-12
- 社会保険審査会 裁決(h30_r01-07_01)・厚生労働省公開資料で原文確認
- Xの投稿(当事者・社労士)は匿名の要旨として参照(2026-09-13 収集)
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。
このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。