在宅・フリーランス・副業と障害年金 — 収入で止まる人は誰か、審査で見られる「実態」の残し方
この記事の結論
在宅で稼いでも、フリーランスでも、副業でも、年金は減りません。収入で年金が減るのは、20歳になる前に初診日がある障害基礎年金の人だけです。その線は、前の年の所得が3,761,000円を超えたら半分、4,794,000円を超えたら全部止まる、というものです。
在宅で働く人の弱点は別のところにあります。審査する人から、あなたの働き方が見えないことです。診断書では「自営」の一言になり、日数も配慮も載りません。だから、記録が仕事の一部になります。
開業届や確定申告は、年金と関係ありません。ただし、失業給付をもらっている間に開業届を出すと給付が止まるので、順番だけ注意してください。障害年金そのものは非課税です。
家族の健康保険の扶養に入っている人は、年収180万円(年金を含む)という別の線があります。年金が止まる話ではなく、保険料が増える話ですが、混同しやすいので分けて書きました。
「在宅で少し稼ぐと、年金って止まりますか?」
Xを読むと、この問いには両極端の答えが並んでいます。「年金と在宅フリーランスで月20万」「完全在宅で年収450万と年金」という人がいて、その隣に「自営で稼ぐと問題あり?」「副業で月55万の人が3級って、所得制限は?」という混乱があります。
この記事は、在宅ワーク、フリーランス、副業で収入を得たい人のために書きました。先に結論を書きます。収入で年金が減る人は、限られています。在宅の人の本当の弱点は、収入ではなく「見えないこと」です。
収入で年金が減るのは、誰か
障害年金は、稼いだ額で変わる制度ではありません。障害厚生年金(1〜3級)と、20歳以降に初診日がある障害基礎年金には、収入による停止の仕組みがありません。年収が1,000万円でも、要件を満たせば受け取れます。
例外が一つだけあります。20歳になる前に初診日がある障害基礎年金(20歳前傷病)です。保険料を払っていない時期の障害なので、本人の前年の所得で支給が制限されます。
- 前の年の所得が3,761,000円を超えると、半分が止まる
- 4,794,000円を超えると、全部止まる
- 扶養している家族が1人いるごとに、線が38万円上がる(老人扶養は48万円、19歳未満などは63万円)
- 止まるのは、10月から翌年9月まで
ここでいう「所得」は、売上や給料の額面ではありません。事業なら経費を引いた後、給料なら給与所得控除を引いた後の額から、さらに社会保険料や障害者控除(27万円、特別障害者は40万円)などを引いたものです。Xで「収入を合わせて510万でも線に引っかからなかった」「障害者控除を使えば少し上げられる」と書いている人がいるのは、この計算のためです。
自分が20歳前傷病かどうかは、年金証書か、初診日が20歳の誕生日の前日より前かで分かります。分からなければ年金事務所に聞いてください。
→ 20歳前傷病の三重苦在宅の人の弱点は、「見えないこと」
収入では止まりません。その代わり、更新のときに状態が見られます。ここに、在宅やフリーランスの人の弱点があります。
更新の診断書には、勤務先、雇用の形、日数、給料、仕事場で受けている配慮が書かれます。会社勤めなら「障害者雇用・週3日」で状況が伝わります。でも在宅やフリーランスは「自営」の一言になって、日数も配慮も見えません。
主治医は、あなたの部屋を見ていません。何も伝えなければ「自営で働けている」だけが残ります。在宅の助け(家族が納期を管理している、体調で仕事を断っている)は、あなたが言葉にしないと、存在しないことになります。
だから、在宅で働く人は、記録が仕事の一部です。
残しておく記録(月1回、一枚に)
- 週に実際に手を動かした時間(体調で減った週は、その理由)
- 体調を理由に断った仕事、途中で降りた仕事の数
- 納期に遅れた、連絡ができなかった回数
- 仕事の外で人の手を借りていること(食事、お金の管理、通院の予約、郵便物)
- 一人暮らしなら、訪問看護やヘルパー、家族が来てくれる頻度
更新の3か月前に、これを主治医に渡します。「在宅だから働ける」ではなく、「在宅でしか働けず、在宅でもこれだけ止まる」を、行動の記録で見せます。
→ 診断書の「就労状況」欄に何が書かれるか→ 働き始めてから最初の更新で見られること開業届・確定申告・保険料
開業届
税務署に出す開業届は、年金と無関係です。出しても出さなくても、年金は変わりません。ただし、失業給付(雇用保険)をもらっている間に開業届を出すと、「自営を始めた」と扱われて給付が止まります。退職後に失業給付をもらいながら在宅の準備をしている人は、開業届の時期をハローワークで確認してから出してください。
確定申告
障害年金は非課税なので、申告に載せません。載せるのは、在宅の報酬(事業所得か雑所得)と、給料があれば給与所得です。手帳や年金の等級によって障害者控除(27万円、特別障害者40万円)が使えます。20歳前傷病の人は、この申告の所得が翌年10月からの判定に使われるので、経費の計上漏れがないようにしてください。
国民年金の保険料
1級・2級の人は自動免除(法定免除)です。免除の期間は、将来の老齢基礎年金に半分として反映されます。在宅で収入が出てきたら、免除をやめて払う(またはあとから追納する)ことで、老齢年金を増やす選択もあります。「免除を続けると老齢年金が減る」とXで書かれていたのは、この点です。
→ 受給後のお金の設計20歳前傷病の人の、所得の計算のしかた
数字は概算です。実際の判定は、市区町村が持っている所得の情報で行われます。
たとえば、在宅のライター業で年間の売上が420万円、経費(パソコン、通信費、外注費など)が80万円の人。
- 事業所得 = 420万円 − 80万円 = 340万円
- ここから、社会保険料(たとえば25万円)と障害者控除(27万円)を引く
- 判定に使う所得 ≒ 288万円
線は3,761,000円なので、止まりません。同じ売上420万円でも、経費を記録していなければ所得は420万円になり、半分止まる線を超えます。20歳前傷病で在宅で働く人にとって、経費の記録は年金の一部です。
扶養している家族が1人いれば、線は4,141,000円に上がります。2人なら4,521,000円です。
判定は前の年の所得で、止まるのは10月から翌年9月まで。売上が伸びた年の翌年10月から影響が出る、という時間差があります。稼げた年の翌年は、10月からの減額を見込んで、貯めておいてください。
20歳前傷病の人の、1年のカレンダー
- 1〜3月: 前年分の確定申告。経費と障害者控除を漏らさない
- 6月ごろ: 市区町村の住民税の決定通知が届く。ここに書かれた所得が、判定の元になる
- 10月: 前年の所得で判定された結果が、この月の分から反映される(止まる場合は、ここから翌年9月まで)
- 通年: 経費の領収書を月ごとに袋に入れる
昔は「所得状況届」を毎年出していましたが、今はマイナンバーで確認されるので、届け出は原則いりません。所得が線を下回ったら、翌年の10月から自動で戻ります。
Xの声から — 在宅で働く人がつまずくところ
「自営だと、年金は無理だと言われた」
「落ちた人のプロフィールを見ると自営業」という投稿もありますが、自営だから落ちるのではなく、自営だと実態が見えないから落ちやすいのです。稼働時間・断った仕事・生活の助けを記録して、主治医に渡してください。「在宅フリーランスで年収450万と年金」という人も、同じXにいます。
「副業で月55万の人が3級って、所得制限は?」
20歳前傷病でなければ、所得制限はありません。障害厚生年金3級に収入の線はないので、この人は制度上、何も問題ありません。
「就労移行の支援員に、年金を申請してそのままフリーランスで働けと言われた」
在宅を勧める支援員は増えています。年金が生活の土台で、在宅の収入が上乗せ、という組み方です。支援員に、在宅の仕事の受け方と年金の記録の残し方を、一緒に相談してください。
「厚生年金に入れないから、将来が不安」
フリーランスは国民年金だけです。1級・2級の人は法定免除で保険料は0円ですが、その分、老齢基礎年金は減ります。収入が出てきたら、免除をやめて払う、または追納する選択があります。iDeCoや小規模企業共済も、障害年金をもらいながら使えます。
「開業届を出したら、更新で不利になる?」
開業届は年金機構に伝わりません。ただし失業給付をもらっている間に出すと、給付が止まります。順番だけ気をつけてください。
扶養に入っている人の、別の線
配偶者や親の健康保険の扶養に入っている人には、年金が止まる話とは別に、「扶養から外れる線」があります。
健康保険の扶養は、ふつうは年収130万円未満ですが、障害年金をもらっている人は年収180万円未満です。この年収には、障害年金も含めます。年金が年847,300円(2級)なら、在宅の収入が年約95万円を超えると扶養から外れ、国民健康保険と(免除中でなければ)国民年金を自分で払うことになります。
年金が止まるのではなく、保険料が増える話です。でも家計への影響は大きいので、在宅で稼ぐ額を決めるときは、年金の線(20歳前傷病だけ)と、扶養の線(180万円)を分けて考えてください。
「バレる」「不正」の心配
Xに「年金をもらいながら一般の会社で給料をもらうのは不正受給ではない、と年金ダイヤルで確認した」という投稿がありました。そのとおりです。働くこと自体は不正ではありません。等級を決めるのは、更新の診断書です。
不正になるのは、診断書や申立書に事実と違うことを書く場合です。「在宅で週40時間働いているのに、働いていないと書く」は問題になります。逆に、働いている実態と、それでも起きている支障を正直に書くのは、まったく問題ありません。
会社に年金のことが知られる心配をする人もいますが、在宅やフリーランスなら雇用主がいないので、その心配はもともとありません。
記録のつけ方(在宅の人向け)
毎日書く必要はありません。スマホのカレンダーに、三種類の印だけつけます。
- 「稼働◯h」: その日、実際に手を動かした時間
- 「断り」: 体調を理由に仕事を断った、途中で降りた
- 「遅れ」: 納期に遅れた、連絡ができなかった
月末に数えて、一行にします。「7月: 稼働52時間、断り2件、遅れ1件」「9月: 稼働18時間、断り4件、遅れ2件」。波が見えます。
これに、仕事の外のことを一行足します。「食事と通院の予約は母」「納期の連絡は夫が代わりにしている」「訪問看護 週1回」。
更新の3か月前に、この12行を主治医に渡します。「在宅だから働ける」ではなく、「在宅でしか働けず、在宅でもこれだけ波がある」が、行動の記録で伝わります。
仕事の受け方で、残しておける証拠
在宅の人は、職場の人が証言してくれません。代わりに、仕事のやりとりそのものが証拠になります。
- 体調を理由に断ったメールやメッセージ(「今週は体調が戻らず、お受けできません」)
- 納期の延長をお願いしたやりとり
- 契約書や発注書に書かれた条件(週◯時間まで、在宅のみ、など)
- 家族が代わりに連絡した記録
消さずに残しておいて、更新のときに「こういうやりとりがあります」と主治医に見せられるようにしておいてください。全部見せる必要はなく、件数と代表的な一通で足ります。
主治医に頼むときの言い方(在宅の人向け)
「在宅で仕事をしています。診断書では自営になると思いますが、週の稼働時間と、体調で断った仕事の数、家族に頼っていることを、この紙にまとめました。就労状況の欄に、稼働は週◯時間で体調による中断があること、家での援助があることを書いていただけますか」
チェックリスト
- □ 自分が20歳前傷病かどうかを確認した(年金証書か年金事務所で)
- □ 20歳前傷病なら、線(3,761,000円・4,794,000円、扶養家族で加算)と時期(10月〜翌9月)を知っている
- □ 経費の記録(領収書・帳簿)を残している
- □ 月1回、稼働時間・断った仕事・納期遅れ・生活の助けを記録している
- □ 更新3か月前に、記録を主治医に渡す予定を入れた
- □ 失業給付中は、開業届の時期をハローワークで確認した
- □ 扶養に入っているなら、年金を含めた年収180万円の線を確認した
- □ 1級・2級なら、国民年金の免除の届け出をした(払うか追納するかも検討)
よくある質問(FAQ)
Q. 副業で年20万円以上稼いだら、年金は止まりますか?
A. 止まりません。20万円は所得税の申告が要るかどうかの線で、年金とは関係ありません。年金が収入で止まるのは、20歳前傷病の障害基礎年金だけです。
Q. 20歳前傷病です。在宅の収入が線を超えそうです。
A. 判定は前の年の所得(経費と控除を引いた後)で、止まるのは10月から翌年9月です。扶養家族がいれば線が上がります。超えそうな年は、経費の記録と障害者控除を確認して、年金事務所で見込みを相談してください。
Q. 開業届を出すと、更新で不利になりますか?
A. 開業届は年金機構に伝わりません。更新で見られるのは診断書の実態です。ただし診断書で「自営」になるので、稼働時間と助けの状況を主治医に伝えることが、会社勤めの人以上に大事になります。
Q. 在宅のB型作業所(在宅就労)の場合は?
A. 診断書では「就労支援施設」として書かれます。在宅B型は、支援員の連絡や訪問が「助け」にあたるので、その頻度と内容を伝えてください。
Q. フリーランスで厚生年金に入れません。障害厚生年金は続きますか?
A. 続きます。受給中の年金の種類は初診日で決まっていて、そのあと厚生年金を抜けても変わりません。
Q. 収入が増えたら、自分から報告したほうがいいですか?
A. 報告の義務はありません。20歳前傷病の人は、確定申告を正しく行うことが報告にあたります。
まとめ
- 在宅・フリーランス・副業で稼いでも、年金は原則そのまま。収入で減るのは20歳前傷病の障害基礎年金だけ(3,761,000円超で半分、4,794,000円超で全部、扶養家族で加算、10月〜翌9月)。
- 在宅の人の弱点は「見えないこと」。稼働時間・断った仕事・納期遅れ・生活の助けを月1回記録し、更新3か月前に主治医へ渡す。
- 開業届と確定申告は年金に影響しない。失業給付中の開業届は給付が止まる。障害年金は非課税。
- 扶養の線(年180万円・年金を含む)は、年金が止まる話とは別。
- 働くことは不正ではない。不正になるのは、事実と違うことを書くこと。
出典
- 日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」(3,761,000円超で2分の1、4,794,000円超で全額停止、扶養親族の加算、10月〜翌年9月)・確認日 2026-09-13
- 厚生労働省「障害年金の診断書(精神の障害用)記載要領」(雇用体系「自営」、援助や配慮の記入)・確認日 2026-09-13
- 日本年金機構「障害基礎年金の年金額」(令和8年度)・「国民年金保険料の法定免除制度」・確認日 2026-09-13
- 全国健康保険協会「被扶養者とは」(障害者・60歳以上は年収180万円未満)・確認日 2026-09-13
- 国税庁「障害者控除」「障害年金は非課税」・確認日 2026-09-13
- ハローワーク「基本手当を受給中に自営を開始したとき」・確認日 2026-09-13
- Xの投稿(当事者)は匿名の要旨として参照(2026-09-13 収集)
参考リンク
制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。
このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。