障害年金の申立書に家族の援助をどう書く? — 支援内容の具体例と、「書かないと存在しない」という審査の現実

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「うちは母がいろいろやってくれているので、なんとか生活できています」

この一文を、申立書にそのまま書いてしまう人がいます。悪気はまったくありません。家族への感謝の気持ちもある。でも障害年金の審査では、この書き方はあなたの生活能力を実際より高く見せてしまう方向に働きます。

理由は、審査の物差しにあります。精神の障害年金は、診断書裏面の日常生活能力の判定7項目でほぼ等級が決まりますが、その評価ルールにはこう書かれています——「単身で生活するとしたら可能かどうかで判断してください」。

つまり審査が知りたいのは、「今の生活が回っているか」ではなく「援助を全部取り払ったら、どうなるか」です。そして援助の中身が書面に載っていなければ、審査側にはあなたの生活が「自力で回っている生活」に見えます。

家族の援助は、書かないと存在しないことになる。 この記事では、その援助をどう棚卸しし、どう申立書に落とすかを、具体例とフル記入例で解説します。

なぜ「家族の援助」が審査を左右するのか

もう少し踏み込みます。診断書を書く医師向けの記載要領には、家族との同居や施設入所などで支援が常態化した環境下で生活が安定している場合であっても、単身でかつ支援がない状態を想定して記載するよう明記されています。

ところがこのルール、医師も見落とすことがあると複数の実務者が発信しています。医師が見ているのは診察室のあなただけで、家で誰が何をしているかは、話さなければ知りようがないからです。

家族と同居して生活が「一応回っている」人ほど、7項目が軽く付きやすい。これが、同居している人が抱える構造的な不利です。そしてこの不利は、援助の中身を具体的に書面化することで、そのまま有利に反転します。援助が多いということは、それだけ支援なしでは生活が成り立たないということだからです。

なお、審査で使われる等級判定ガイドラインの「総合評価の際に考慮すべき要素」にも、生活環境として家族や福祉サービスの援助の内容が明記されています。書けば見てもらえる項目なのです。

援助の棚卸しリスト — 7項目別・見落としやすい支援

まずは、自分(または家族)が受けている援助を洗い出します。7項目の順に、実務でよく挙がる援助を並べました。当てはまるものにチェックを入れてみてください。

1. 食事 □ 家族が毎食用意している □ 買い置きを家族が補充している □ 「食べた?」の声かけがないと食べない □ 家族が食べる時間を管理している □ 栄養バランスを家族が考えている

2. 清潔保持 □ 入浴を促されないと入らない □ 家族が着替えを出す・洗濯する □ 部屋の掃除を家族がする □ ごみ出しを家族がする □ 季節に合った服装を家族が指示する

3. 金銭管理と買い物 □ 通帳・カードを家族が管理 □ 小遣い制にしている □ 支払い(家賃・光熱費・保険)を家族が代行 □ 買い物に家族が同行 □ 家族がネット購入の履歴を確認している

4. 通院と服薬 □ 通院に家族が付き添う □ 予約の電話を家族がかける □ 服薬を家族が声かけ □ 薬を家族が仕分ける(お薬カレンダー等) □ 残薬を家族が確認している

5. 対人関係 □ 家族が来客・宅配に対応 □ 電話を家族が代わりに受ける □ 学校・職場・役所への連絡を家族が代行 □ 家族が唯一の会話相手になっている

6. 危機対応 □ 火の元・戸締りを家族が確認 □ 体調悪化に家族が気づいて対処 □ 危険な行動を家族が止めた経験がある □ 家族が目を離せない時間帯がある

7. 社会性 □ 郵便物の開封・仕分けを家族がする □ 役所・銀行の手続きを家族が代行 □ 各種申請(手帳・自立支援など)を家族が行った □ 契約ごとを家族が判断している

そして、家族側の負担も忘れずに。 □ 家族が仕事を減らした・辞めた □ 家族が同居のために転居した □ 家族が外出を控えている □ 見守りのために家族が生活時間を合わせている

最後のブロックは、意外と書かれません。でも「母がパートを週2日に減らして家にいるようにしている」という一文は、援助の量を客観的に示す強力な事実です。

「援助の3レベル」— 書き分けが評価を変える

洗い出した援助は、すべて同じ重みではありません。実務では、おおむね次の3レベルで捉えると書きやすくなります。

レベル1:声かけ・促し(助言や指導があればできる) 本人が行為はできるが、きっかけを与えないと始まらない。「お風呂わいたよと何度か言われてやっと入る」「朝晩に声をかけられて薬を飲む」。

レベル2:代行(助言や指導をしてもできない・行わない) 家族が代わりにやっている。「通帳とカードは母が管理」「役所の手続きはすべて母」。本人が行為をしていないという点で、レベル1より重い状態です。

レベル3:見守り・危機介入 本人の安全のために、家族が常時または頻繁に注意を払っている。「火の消し忘れを止めた」「体調悪化に家族が気づいて対処」。危機対応の項目に直結し、しばしば見落とされます。

書くときは、その援助がどのレベルかが読み取れる文章にするのがコツです。「母が手伝ってくれる」ではレベルが分かりません。「母が声をかけると入浴する」(レベル1)、「母が代わりに手続きする」(レベル2)、「母が気づいて止めた」(レベル3)——動作の主語と、本人が何をしていないかを明確にします。

申立書のどこに書くか

援助の記述は、申立書の中で2か所に現れます。

(1) 各期間の状況欄(本文)。 期間ごとに区切った本文の中に、その時期の生活の実態として書きます。期間によって援助の量が変わっているなら、その変化自体が病状の経過を示す情報になります(例:「以前は自分で通院できていたが、この時期から母の付き添いが必要になった」)。

(2) 現在の日常生活状況・就労状況の欄。 様式に日常生活の状況を記入する欄があります。ここは診断書の7項目と直接照合される部分なので、診断書と同じ生活が描かれているかが重要です。

そして、書く順序としてはもう1か所あります。診察前に主治医へ渡すメモです(診察前メモの記事)。ここに援助の実態を書いておけば、それが診断書の7項目に反映され、申立書とも自然に整合します。同じ材料から診断書と申立書の両方が作られる状態が、いちばん強い形です。

完成形①:アキさんの申立書・援助のフル記入

アキさん(32歳・うつ病、退職後に実家で母と2人暮らし)の申立書、現在の期間の記述です。3レベルが読み分けられるように書かれています。

2023年9月〜現在(Bメンタルクリニック・通院中)

退職後、一人暮らしを続けられず実家に戻り、母と2人で暮らしています。

食事は母が用意したものを食べており、自分で作れたのは月に数回です。母が仕事に出ている日は、買い置きの菓子パンを食べるか、何も食べずに1日を終えることが週に2〜3日あります。入浴は母に「お風呂わいたよ」と何度か言われてやっと入る状態で、週1〜2回です。着替えも母が出さないと2〜3日同じ服のままです。自室の掃除は3か月以上できておらず、母がときどきごみだけ回収しています。

金銭については、判断がつかないままインターネットで7万円の買い物をしてしまったことがあり、それ以降は通帳とキャッシュカードを母が管理しています。家賃や保険の支払い、役所や年金の手続きもすべて母が行っており、私は届いた郵便物の封を開けることもできず溜めてしまいます。

通院は母の付き添いがあれば行けますが、1人のときは2回に1回はキャンセルしてしまいます。服薬は母が朝と晩に声をかけてくれることで続いており、声かけがない日は飲み忘れます。

先月は鍋を火にかけたまま眠ってしまい、母が気づいて止めました。それ以降、コンロは母がいるときだけ使う約束にしています。体調が急に悪くなっても自分から助けを求めることができず、母が様子を見に来て気づくことがほとんどです。

母は私の状態を心配して、パートを週2日に減らして家にいるようにしています。もし1人で生活した場合、食事・服薬・金銭の管理・各種手続きは成り立たないと思います。

読み返すと、援助のレベルが混ざりながら並んでいるのが分かります。声かけ(入浴・服薬)、代行(金銭・手続き)、危機介入(火の元)。そして最後の2文で、家族側の負担と単身想定の見通しを添えています。この締めの一文があるかないかで、審査側が読み取る結論の明確さが変わります。

完成形②:家族が書く「第三者メモ」

本人が「大丈夫です」と言ってしまう問題への対策が、家族の視点です。実務者の発信でも、家族や支援者が書いた日常生活の具体的なメモが書類の整合性の裏づけになる、という指摘があります。アキさんの母が、診察のときに主治医へ添えた手書きメモです。

先生へ(アキの母です)

本人のメモのとおりですが、母から見た様子を補足します。

本人は先生の前では気を張って、実際より元気に見えていると思います。家では日中ほぼ自室で横になっており、私が声をかけないと食事も薬も抜けます。私がパートに出ている日は、帰宅すると朝出したままの食事が残っていることがよくあります。

一番心配なのは、火の消し忘れが続いていることと、調子の悪いときに「消えたい」と口にすることです。目を離すのが不安で、パートを週2日に減らしました。

以上、ご参考になれば幸いです。

家族メモの役割は、症状を訴えることではなく、「本人の申告と実態のギャップ」を埋める証言です。書き方のコツは3つ。(1)本人の申告との違いに触れる(「先生の前では元気に見える」)、(2)自分が見た場面と頻度で書く(「帰宅すると朝の食事が残っている」)、(3)家族自身の負担も書く(仕事を減らした)。

なお、この家族メモは主治医に渡す資料であって、申立書の代わりではありません。申立書は本人(または代筆者)が作成する書類です。ただし内容の材料としては、そのまま使えます。

一人暮らしの人はどう書くか

「家族の援助がないから、書くことがない」——そう感じる人もいるはずです。でも、独居の人が書くべきことは別にあります。

(1) 援助がないまま、どう破綻しているか。 家族の援助がないぶん、生活がそのまま崩れているはずです。食事が菓子パンだけ、部屋がごみで埋まっている、郵便物が未開封で溜まっている、風呂に何日も入っていない——これらは援助の不在が生んだ結果であり、7項目の直接の証拠です。

(2) 家族以外の援助を洗い出す。 訪問看護、ヘルパー、就労支援の支援員、相談支援専門員、大家や近隣の見守り、離れて住む親からの定期的な電話や仕送り。同居していなくても、離れた家族が金銭管理や手続きを担っているケースは多く、これは立派な援助です。

(3) 「一人暮らし=自立」ではないと示す。 当事者の発信で繰り返し語られるのが「一人暮らしをしているという理由だけで、自立していると判断された」という悔しさです。詳しくは日常生活能力の判定7項目にまとめていますが、書き方の要点は同じ——実態を、頻度つきの具体例で書くことです。

家族以外の援助も「援助」— 福祉サービス・支援機関

援助というと同居家族を思い浮かべますが、審査で考慮されるのは家族の援助だけではありません。等級判定ガイドラインの考慮要素にも、家族や福祉サービスの援助の内容と明記されています。次のものは、すべて書くべき援助です。

福祉サービスが入っているということは、専門職が「支援が必要」と判断しているということです。本人や家族の主観ではない、第三者の判断が入っている点で、記述の重みが違います。サービス等利用計画がある人は、その内容(何を課題として、どんな支援を組んでいるか)がそのまま援助の説明になります。

一人暮らしの人ほど、この棚卸しが効きます。同居家族がいなくても、外部の支援で生活が支えられているなら、それは「単身で支援なし」の状態ではないからです。

「援助が増えた/減った」という変化を書く

もうひとつ、見落とされがちな観点があります。援助の量の変化です。

申立書は期間ごとに区切って書く書類なので、期間をまたいで援助がどう変わったかを描けます。これは病状の経過を示す、非常に説得力のある材料になります。

援助が増えた=生活能力が落ちたという関係が、時系列で示されます。逆に、一時的に援助が減った時期(調子が良く自分でできていた時期)があるなら、それも正直に書いてください。波があること自体が精神疾患の実態であり、隠すと後の記述と矛盾します。

そして、援助が増えたきっかけの出来事は特に重要です。「高額な買い物をした」「火の消し忘れがあった」「通院を数か月中断した」——こうした具体的な出来事は、7項目の該当エピソードとしてそのまま使えます。

やりがちなNG 4つ

NG1:感謝で終わる。 「母には本当に感謝しています」だけでは、援助の中身が伝わりません。感謝の気持ちを書くのは自由ですが、事実の記述とセットにしてください。

NG2:家族が主語になりすぎる。 「母が◯◯してくれます」ばかり並ぶと、本人の状態が見えなくなります。「本人が何をできていないか」→「だから家族が何をしているか」の順で書くと、7項目に結びつきます。

NG3:援助を過小に書く。 遠慮や恥ずかしさから「少し手伝ってもらう程度です」と書いてしまう人がいます。障害年金の申立書は謙遜する書類ではありません。事実を、事実の量のまま書いてください。

NG4:盛る。 逆方向のNGです。実際にはやっていない援助を書けば、診断書やカルテとの矛盾になります。実務者の発信でも「盛った書類はすぐ分かる」と繰り返し言われています。事実だけで、精神の障害年金は十分に伝わります。

診断書と申立書、両方に載っているか — 最後の突き合わせ

援助を丁寧に書いた申立書ができたら、提出前にもう一手間かけてください。診断書に、同じ援助が反映されているかの確認です。

近年の審査は、提出書類を隅々まで突き合わせる総合判断になっています。申立書に「服薬は母の声かけで成立」と書いてあるのに、診断書の「通院と服薬」が「できる(1点)」になっていたら、審査側から見れば矛盾です。そして残念ながら、こういうときに信用されやすいのは医師が書いた診断書のほうです。

チェックの手順は簡単です。

  1. 申立書に書いた援助を、7項目のどれに当たるか仕分ける
  2. 診断書裏面の該当項目のチェック位置を見る
  3. 「援助あり」と書いた項目が「できる」寄りになっていないか確認する

ずれていたら、提出前に医師へ実態を伝え直す余地があります(手順は診断書を受け取ったら確認すべきポイントへ)。逆に言えば、診察の段階で援助の実態を伝えておけば、この突き合わせで慌てることはありません。援助の記述は申立書を書くときに作るものではなく、日々の診察で医師に届けておくものなのです。

なお、この整合性の話は受給後も続きます。更新(障害状態確認届)では申立書がなく診断書1枚の勝負になるため、援助の実態を医師に伝え続けているかどうかが、そのまま結果に効いてきます。

援助のエピソードは、その日に書くしかない

棚卸しリストを見て気づいた人もいると思いますが、援助の記録でいちばん失われやすいのはレベル3(危機介入)です。火の消し忘れも、体調悪化に気づいてもらったことも、数日経てば忘れます。そして忘れた出来事は、診断書にも申立書にも載りません。

家族が気づいた小さな出来事を、その日のうちに一行残す。それだけで、申請のときに使える材料が積み上がります。日々の出来事を短くメモすると、7項目に沿った提出用資料に整理されるアプリを作りました。本人が書ける日は本人が、しんどい日は家族が代わりに一行——という使い方もできます。同じ記録から、主治医に渡すメモと申立書の下書きの両方が出てくるので、援助の実態が診断書と申立書の両方に、矛盾なく載る状態を作れます。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。

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よくある質問

Q. 家族と同居していると、障害年金は不利になりますか? A. 同居自体は不利ではありません。診断書は「単身で支援なしで生活したら可能か」で判断するルールだからです。不利になるのは、家族の援助内容が書面に載っておらず、「支援込みで回っている生活」が「自力で回っている生活」と読まれてしまう場合です。援助の中身を具体的に書くことで、この不利は解消できます。

Q. 援助といっても、声をかけている程度です。それでも書くべきですか? A. 書いてください。「声をかけないと入浴・服薬をしない」というのは、7項目の評価では「助言や指導があればできる」に当たる重要な情報です。声かけの有無で行動が変わること自体が、生活能力の状態を示しています。

Q. 申立書は家族が代わりに書いてもいいですか? A. 本人が書けない場合、家族などが代筆することは可能です(様式に代筆者を記入する欄があります)。障害年金の相談や手続きに第三者が関わることは制度上まったく問題ありません。ただし内容は本人の生活の事実に基づくものである必要があります。

Q. 家族が書いたメモは、申立書と一緒に提出できますか? A. 家族のメモは、まず主治医に渡す資料として使うのが基本です(診断書に実態が反映されます)。申立書に添付する形での追加資料の可否は、年金事務所に確認してください。なお申立書の本文に、家族から見た様子として書き込むことは可能です。

Q. 一人暮らしで援助を受けていません。どう書けばいいですか? A. 援助がないまま生活がどう破綻しているか(食事・入浴・掃除・手続きの実態)を頻度つきで書いてください。また、訪問看護・ヘルパー・支援員・離れて住む家族からの金銭管理や電話など、同居家族以外の援助があれば、それも重要な情報です。

Q. 家族が仕事を減らしたことまで書く必要がありますか? A. 書く価値があります。家族の生活が変わるほどの援助が必要な状態であることを示す、客観的な事実だからです。等級判定ガイドラインでも、生活環境や援助の状況は総合評価の考慮要素とされています。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否や等級を保証するものではありません。様式と記載要領は日本年金機構のホームページで確認できます。個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。