病歴・就労状況等申立書の「期間の区切り方」完全ガイド — 転院が多い・未受診が長い・記憶がない人のための設計図と続紙の使い方

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病歴・就労状況等申立書でいちばん最初につまずくのは、文章ではありません。「発病から現在までを、どこで区切ればいいのか」という設計の段階です。

申立書の書き方の記事では全体の流れと4つの要素を解説しましたが、「転院が7回ある」「10年通院していない時期がある」「同じ病院に20年通っている」「そもそも昔のことを覚えていない」——こうした人ほど、区切りの段階で手が止まります。この記事は、その「区切り」だけを深掘りする各論です。

なぜ区切りにこだわるのか。精神疾患専門で1,000件以上を手がけた社労士は、「審査は診断書で9割決まる」としつつ、その的確な診断書を引き出すための資料としてワープロでA4・2〜3枚分の申立書相当の資料を時間をかけて作り込むことを業務の柱に据えています。プロがそれだけの労力をかける書類の骨格が、期間の区切りです。区切りを間違えると、どれだけ良い文章を書いても、審査側には伝わらない書類になります。

区切りの3原則 — まずはこれだけ

申立書の様式には、発病から現在までを期間ごとに分けて書くよう指示があります。原則は3つです。

原則1:受診した医療機関ごとに区切る。 A病院→B病院と転院したら、そこで期間が変わります。医療機関が変わるたびに1枠です。

原則2:受診していなかった期間も、飛ばさずに1つの期間として書く。 ここが最重要です。「通っていなかった時期は書くことがない」と考えて空白にすると、審査側には「その期間は問題なく生活していた」ように見えます。受診していない期間こそ、なぜ受診しなかったのか・その間の状態はどうだったのかを書く独立の枠が必要です。

原則3:同じ医療機関が長い場合は、おおむね3〜5年ごとに区切る。 20年同じクリニックに通っている人が1枠にまとめると、20年分の変化(悪化・小康・再燃)が全部つぶれてしまいます。3〜5年ごと、あるいは「状態が大きく変わった出来事」(退職・入院・結婚・引っ越しなど)を境に区切ります。

なぜこの区切り方なのか — 審査側の読み方から逆算する

3原則は、審査側の作業から逆算すると腹落ちします。審査側は申立書を「物語」としてではなく、照合表として読みます。

特に2つ目は、結果を分けるポイントです。うつ病で通院が途絶える理由は、良くなったからとは限りません。「外出できず、予約の電話もかけられず、行けなくなった」——受給者の発信で繰り返し語られる実態です。ところが区切りを飛ばすと、この期間は審査上「特記なし」になり、「治療の必要がなかった=軽かった」と読まれかねません。同じ空白でも、書き方ひとつで真逆に伝わるのです。

つまずきパターン別・区切りの実践

パターン1:転院が多い(5回以上)。 原則どおり病院ごとに区切ると枠が足りなくなりますが、それでいいのです(続紙は後述)。数週間だけ通った病院も省略しないでください。省略すると、初診日の認定や経過の整合性で疑義が生まれます。各期間が短くなるぶん、1期間あたりの記述は「転院の理由+その間の状態」を中心に簡潔で構いません。

パターン2:未受診期間が長い(数年〜10年以上)。 未受診期間が5年を超えるようなら、その中もおおむね3〜5年で区切ります。「平成27年〜令和2年(未受診)」「令和2年〜令和5年(未受診)」のように分け、それぞれの時期の生活状態を書きます。長い空白を1枠で済ませると、記述が薄くなり空白の印象だけが残ります。

パターン3:同じ病院に長期通院。 3〜5年ごとに加えて、診断書に書かれる時点(障害認定日ごろ・現在)が期間の切れ目付近に来るように調整すると、診断書との照合がしやすい書類になります。たとえば認定日が2019年なら、「2017〜2019年」「2019〜2022年」のように認定日を境目に置くイメージです。

パターン4:記憶が曖昧で、時期が思い出せない。 「◯年ごろ」「高校を卒業した年の冬」で構いません。手がかりは、お薬手帳・診察券・領収書・母子手帳・スマホの写真・家族の記憶です。実務に詳しい発信者が勧めるとおり、本人以外の第三者(家族)が相談や整理を手伝うことは制度上まったく問題ありません。記憶の穴は、1人で埋めようとしないでください。

パターン5:傷病がひとつでない(発達障害+うつ病など)。 先天性・幼少期からの傷病(発達障害など)で請求する場合は、出生時から書き始めるのが原則です。二次障害としてのうつ病等を併せて記載する場合も、時系列はひとつの流れで書き、どの時期にどの症状・診断が加わったかが分かるようにします(発達障害の記事参照)。

続紙の使い方 — 枠が足りないのは普通のこと

申立書の様式の枠は5期間分しかありません。発病から10年、20年の経過を書く人は、ほぼ確実に足りなくなります。そこで使うのが続紙です。

「枠が5つだから5期間にまとめなきゃ」という思い込みが、いちばん多い設計ミスです。枠の数に経過を合わせるのではなく、経過に枠の数を合わせてください。

完成形:アキさんの「期間一覧」設計図

文章を書き始める前に、まず区切りだけの一覧表を作ります。アキさん(32歳・うつ病、実家で母と2人暮らし)の実物です。発病は24歳、初診は25歳でした。

期間一覧(設計図)

①2018年4月〜2019年6月(発病〜初診前・未受診) 新卒2年目、残業続きで不眠・食欲不振が始まる。「疲れているだけ」と受診せず

②2019年7月〜2020年3月(Aクリニック) 初診。うつ状態の診断で服薬開始。通院月1回。仕事は続けるが欠勤が増える

③2020年4月〜2021年12月(未受診) コロナ禍の在宅勤務を機に「治った気がして」自己判断で通院中断。実際は昼夜逆転が進行

④2022年1月〜2023年8月(Bメンタルクリニック) 出勤できなくなり再受診。うつ病の診断。休職→復職失敗→2023年8月退職

⑤2023年9月〜現在(Bメンタルクリニック・通院継続) 退職後、実家に戻る。家事・金銭管理は母の援助。障害年金の申請準備を開始

この設計図の時点で、審査上の急所が見えてきます。①は初診日(いつが初診か)の説明、③の未受診は「軽快ではなく悪化の中の中断」だと書く必要がある期間、④の中に障害認定日(初診から1年6か月=2021年1月ごろ→実際は未受診期間中!)がある——つまりアキさんが遡及請求を考えるなら、認定日ごろ未受診だったことがハードルになる、と設計図の段階で分かるわけです。文章を書いてから気づくのと、設計図で気づくのとでは、手戻りがまったく違います。

完成形:未受診期間(③)のフル記入例

いちばん書き方に迷う「未受診期間」の1枠を、そのまま使える形で載せます。

③2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

在宅勤務になったことで通勤の苦痛がなくなり、症状が良くなったと自己判断して通院と服薬を自分の判断でやめてしまいました。しかし実際には、起床できず始業に間に合わない日が週2〜3日あり、カメラをオフにして横になったまま会議に出ることもありました。食事は1日1食、入浴は週2回ほどで、部屋はごみが溜まった状態でした。受診しなかったのは、良くなったからではなく、「病院に行くべきだ」と考えて予約の電話をかけること自体ができなかったためです。2021年の秋ごろからは出勤日に体が動かず欠勤が月5日を超え、母の強い勧めで2022年1月に再受診しました。

ポイントは3つです。(1)中断の理由を正直に書く(自己判断・電話がかけられない——それ自体が症状です)、(2)その間の生活を[7項目](/columns/nichijo-seikatsu-7koumoku)の視点で具体的に書く(頻度つきで)、(3)再受診のきっかけで締める(次の期間に自然につながります)。「サボっていたと思われそう」と隠すのが最悪手で、空白の理由を語れるのは世界であなたと家族だけです。

区切りと「整合性」— 書類同士の突き合わせに耐える設計

近年の審査は、提出書類を隅々まで突き合わせる総合判断になっています(ガイドラインの記事で詳述)。期間の区切りは、この突き合わせの土台です。

嘘をつくつもりがなくても、記憶で書くとここがずれます。ずれた書類は、盛った書類と同じ目で読まれます。だからこそ、区切りの設計図を作り、手元の証拠(お薬手帳・在籍記録・診断書の控え)と照合しながら埋めていく手順が大切なのです。

Xで語られる失敗談から逆算する、区切りの落とし穴3つ

申請経験者の発信には、区切りの失敗がそのまま審査結果に響いた話が繰り返し登場します。代表的な3つを、対策とセットで。

落とし穴1:期間をまとめすぎて、障害認定日ごろの記述が消えた。 「長いから」と10年をひとつの枠に押し込むと、審査上いちばん重要な時点(認定日ごろ・現在)の状態が、他の時期の記述に埋もれます。認定日ごろの状態が読み取れない申立書は、遡及請求ではほぼ致命傷です。→ 認定日と現在が、それぞれ独立した期間の中にはっきり書かれる区切りにする。

落とし穴2:就労欄と年金記録が食い違った。 「この期間はほとんど働けませんでした」と書いた期間に、厚生年金の加入記録がしっかり残っていた——審査側は加入記録を見られるので、この食い違いは必ず気づかれます。実際には「在籍はしていたが休職中だった」「障害者雇用で配慮を受けていた」だけかもしれないのに、説明がなければ「虚偽?」という目で全体を読まれます。→ 在籍と就労実態を分けて書く。「在籍していたが、うち◯か月は休職」「出勤できたのは週2〜3日」のように。

落とし穴3:未受診期間を空白のまま出した。 前述のとおり、空白は「軽快」と読まれ得ます。事後重症請求ならまだしも、認定日ごろが未受診期間に重なる人は、この空白の書き方が請求の成否そのものになります。→ 未受診期間も1枠として、理由と状態を書く。

3つに共通するのは、申立書は単独では読まれないという事実です。診断書・受診記録・年金記録との照合の中で読まれる。区切りの設計は、その照合に耐える骨格作りなのです。

完成形②:現在に近い期間(⑤)のフル記入例

未受診期間の例に続き、審査上もっとも重要な「現在の期間」のフル記入例です。診断書の7項目と同じ生活を、申立書の側から描くのがポイントです。

⑤2023年9月〜現在(Bメンタルクリニック・通院中)

退職後、一人暮らしを続けられず実家に戻り、母と2人で暮らしています。通院は月1回、母の付き添いがあれば行けますが、1人のときは2回に1回キャンセルしてしまいます。服薬は母が朝晩声をかけてくれることで続いており、声かけがない日は飲み忘れます。食事は母が用意し、自分で作れたのは月に数回です。入浴は週1〜2回で、母に何度か促されてやっと入ります。金銭管理は、判断がつかないままネットで高額の買い物をしてしまったことがあり、以後は通帳とカードを母が管理しています。友人からの連絡には半年以上返信できず、外出は通院と週1回の買い物の同行のみです。先月は鍋を火にかけたまま眠ってしまい、母が気づいて止めました。役所からの書類は開封できず、手続きはすべて母が行っています。就労はしていません。求職活動もできる状態にありません。

見比べてほしいのは、記事1のアキさんの診察前メモとの関係です。同じ生活の事実が、診察前メモ→カルテ→診断書、そして申立書の現在の期間、という2つの経路で審査に届く。これが「書類同士が同じ生活を描いている」状態で、総合判断の時代にいちばん強い形です。日々のメモを元に両方を作れば、突き合わせ作業なしで自然にこうなります。

各期間の「就労状況欄」の書き方

申立書には、期間ごとの状況記述とは別に、就労状況を書く欄があります。区切りとの関係で押さえるべきことは2つです。

(1) 在籍・休職・退職の時期を、期間の区切りと整合させる。 「④の期間の途中で休職→復職失敗→退職」のような出来事は、期間の本文にも就労欄にも同じ時系列で現れる必要があります。退職理由は「一身上の都合」ではなく、実態(「欠勤が月5日を超え、復職の目処が立たなかったため」)を書きます。

(2) 働いていた期間は、「どう働けていなかったか」まで書く。 在籍の事実は年金記録で見えているので、隠しても意味がありません。書くべきは中身です——遅刻・欠勤の頻度、周囲の助け(上司の確認、業務の限定)、障害者雇用や配慮の有無、帰宅後の状態。「働いていた=軽い」と読まれるか、「援助されながら辛うじて在籍していた」と読まれるかは、この記述次第です。

なぜ専門家は「ワープロで」作るのか — 区切り直しに強い書類作法

細かいようで効いてくるのが、作成手段の話です。前述のとおり、専門の社労士は申立書相当の資料をワープロ(パソコン入力)でA4・2〜3枚に作り込みます。手書きへの思い入れより実利を取っているわけで、理由は区切りの作業と直結しています。

様式のPDF・Excelは日本年金機構からダウンロードでき、パソコン入力での提出は認められています。手書きが苦でない人を止めるものではありませんが、区切りの多い長い経過の人ほど、入力作成の恩恵は大きくなります。

提出後に「書き忘れ」を思い出したら

区切りを設計して丁寧に書いても、提出後に「あの期間、大事なことを書き忘れた」と思い出すことはあります。対応の目安です。

「一気に書けない」を前提にした作業手順

申立書がしんどい最大の理由は、過去のつらい時期を一気に思い出す作業だからです。区切りを軸にした、負担の少ない手順をまとめます。

  1. 設計図だけ作る(30分):医療機関と時期を並べ、未受診期間を挟み、長い期間を3〜5年で割る。上のアキさんの一覧のレベルでOK
  2. 証拠と照合する(後日):お薬手帳・診察券・年金記録で時期のずれを直す
  3. 1期間ずつメモを溜める(数日〜数週間):書ける日に、書ける期間から。時系列順でなくていい
  4. 4要素の形に整える:頻度・続いた期間・援助の有無・具体例(書き方記事参照)
  5. 最後に現在の期間を診断書と突き合わせる

この「メモを溜めてから整える」工程を支えるために、日々の出来事や思い出したことを短くメモすると、申立書の下書きと診察で医師に渡す7項目資料に整理されるアプリを作りました。過去の期間の記憶も、ふと思い出したときにその場で放り込んでおけば消えません。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。

よくある質問

Q. 期間はいくつまで増やしていいのですか? A. 上限はありません。必要なだけ区切り、枠が足りなければ続紙を使います。実務家が作る申立書もA4で2〜3枚に及ぶのが普通で、「多すぎて不利」になることはありません。逆に、長い経過を無理に少ない枠へ押し込むほうが、経過の抜けや矛盾のもとになります。

Q. 2〜3回しか行かなかった病院も書かないとだめですか? A. 書いてください。短期間の受診も医療機関ごとの区切りの原則どおり1期間です。省略すると、受診状況等証明書やカルテとの突き合わせで「申立書にない病院がある」ことになり、初診日の認定や経過の信頼性に疑義が生まれます。

Q. 未受診期間の状態を証明するものが何もありません。 A. 未受診期間は本人・家族の申立てが中心になるのが前提の書類なので、証明書がなくても書けます。当時の生活の事実(欠勤の頻度、家族の援助、部屋の状態)を具体的に書き、可能なら家族の記憶で補強してください。市販薬の購入記録、会社の欠勤記録、日記やSNSの記録が残っていれば手がかりになります。

Q. 同じ病院で主治医だけ変わった場合は区切りますか? A. 様式上の原則は医療機関ごとなので、必ずしも区切る必要はありません。ただし主治医交代で治療方針や状態が大きく変わった場合は、そこを3〜5年ルールの区切り目にすると経過が伝わりやすくなります。

Q. 続紙は手書きでないとだめですか? A. パソコン入力で問題ありません。様式は日本年金機構からダウンロードでき、A4で印刷して提出できます。詳しくはA4印刷の記事をご覧ください。手書きで消耗して内容が薄くなるより、入力で内容を充実させるほうが審査には有益です。

Q. 発病がいつか、自分でも分かりません。 A. 「発病」は医学的な厳密さより、「症状が出始めたと思われる時期」で構いません。「◯年ごろ、〜のような症状が始まった」という書き方が認められています。初診日と違って発病時期は証明を求められる性質のものではないので、思い出せる範囲で誠実に書けば大丈夫です。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否や等級を保証するものではありません。様式と記載要領は日本年金機構のホームページで確認できます。個別の判断は年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。