病歴・就労状況等申立書の未受診期間はどう書く? — 空白を「軽快」と読ませないための書き方と、5パターンのフル記入例

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「この期間は病院に行っていないので、書くことがありません」。

病歴・就労状況等申立書を作っていて、多くの人がここで手を止めます。そして——空欄のまま提出したり、「通院なし」の四文字で済ませたりします。

これは、申立書でいちばん多い、そしていちばん結果に響く失敗です。

なぜなら審査側にとって、通院の空白は「治療の必要がなかった期間」として読めるからです。悪気なく空けた数行が、「その頃は元気だったのだろう」という推定に変わる。同じ空白でも、書き方ひとつで真逆に伝わります。この記事では、未受診期間の意味と書き方を、5つのパターン別のフル記入例つきで解説します。

大前提:未受診期間も、独立した1つの期間として書く

期間の区切り方の記事でも触れましたが、申立書の区切りの原則は3つです。

  1. 受診した医療機関ごとに区切る
  2. 受診していなかった期間も、飛ばさずに1つの期間として書く
  3. 同じ医療機関が長い場合は、おおむね3〜5年ごとに区切る

2番が今回のテーマです。「A病院(2019〜2020年)」の次にいきなり「B病院(2022年〜)」と続く申立書は、2020年から2022年の2年間について何も語っていません。審査側の手元には、この2年の情報がゼロの状態で書類が並びます。

空白は、あなたが語らなければ、審査側が推測で埋めます。 そして最も自然な推測は「治療の必要がなかった」です。だから未受診期間こそ、独立した枠を取って書く必要があるのです。

「行けなかった」こと自体が、症状の証拠になる

ここで発想を転換してください。未受診期間は、隠したい弱みではありません。書き方次第で、症状の重さを示す最も雄弁な材料になります。

受給者の発信で繰り返し語られるのは、こういう実態です。

これらは全部、生活能力の問題です。診断書の日常生活能力の判定7項目には、まさに「通院と服薬」という項目があり、「規則的に通院や服薬を行い、病状等を主治医に伝えることができるか」を評価します。通院できていなかった事実は、この項目の実態そのものです。

つまり——通院を継続できなかったことは、審査上マイナスの事実ではなく、「助言や指導があってもできない」レベルの生活実態を示す事実なのです。事実を正しく書けば、正しく評価されます。

未受診の理由は、5つのパターンに分かれる

体験談と実務者の発信を整理すると、中断の理由はだいたい次の5つです。あなたがどれに当てはまるかで、書く中身が変わります。

パターン1:症状のせいで通えなかった。 外出困難、電話恐怖、起き上がれない。最も多く、そして最も「そのまま書けばいい」パターンです。

パターン2:自己判断でやめた。 「良くなった気がして」薬も通院もやめた。躁転や一時的な回復期によくあります。後から悪化するのが定型で、その経過ごと書きます。

パターン3:経済的な理由。 医療費が払えない、保険料未納で保険証が使えない、交通費が出せない。生活の困窮そのものが、書くべき実態です。

パターン4:環境の変化。 引っ越し、転院先が見つからない、病院の廃院、担当医の退職。本人の意思とは関係のない中断です。

パターン5:受診への抵抗・家族との関係。 「精神科に行くのが怖い」「家族に反対された」「病気だと認めたくなかった」。特に若年発症や20歳前傷病のケースで見られます。

複数が重なることもあります(お金がなくて、かつ外出もできなかった、など)。その場合は全部書いて構いません。

パターン別・フル記入例5つ

そのまま参考にできる形で、5パターンの記入例を載せます。主人公はアキさん(32歳・うつ病、実家で母と2人暮らし)ですが、状況に合わせて置き換えて使ってください。

例1:症状で通えなかった

2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

通院を続けなければいけないと分かっていましたが、外出することができず、受診できませんでした。予約の電話をかけようとしても、話す内容を考えているうちに動悸がして、受話器を持ったまま何もできずに終わる日が何度もありました。この期間、家から出たのは月に1〜2回、母に付き添われてコンビニに行く程度です。食事は母が用意したものを1日1食、入浴は週1回程度で、日中はほとんど自室で横になっていました。市販の睡眠改善薬を買って飲んでいましたが効果はなく、明け方まで眠れない日が続きました。2021年12月に自分の部屋で倒れているところを母が見つけ、翌月、母に付き添われて別の病院を受診しました。

例2:自己判断で中断した

2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

在宅勤務になって通勤の苦痛がなくなり、症状が良くなったと自己判断して、通院と服薬を自分の判断でやめてしまいました。しかし実際には、起床できず始業に間に合わない日が週2〜3日あり、カメラをオフにして横になったまま会議に出ることもありました。食事は1日1食、入浴は週2回ほどで、部屋はごみが溜まった状態でした。薬をやめてから3か月ほど経ったころには夜中に急に涙が止まらなくなることが増えましたが、「一度やめたのに、また行くのは気まずい」という気持ちがあり、受診できませんでした。2021年の秋ごろからは欠勤が月5日を超え、母の強い勧めで2022年1月に再受診しました。

例3:経済的な理由

2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

体調不良で退職した後、収入がなくなり、通院を続けられなくなりました。国民健康保険料を納められず保険証が使えない時期があり、医療費が全額自己負担になると考えて受診を諦めました。自立支援医療という制度があることは、この時点では知りませんでした。生活費は貯金を取り崩し、食事は1日1回、値引きされた惣菜パンで済ませることが多くありました。電気を止められた月もあります。症状としては、日中もほとんど動けず、外出は買い物のみでした。2021年12月に生活が立ち行かなくなり、市役所に相談したところ、自立支援医療の案内を受け、2022年1月に受診を再開しました。

例4:転居・廃院で通院が途切れた

2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

通院していたAクリニックが閉院し、紹介先の案内もないまま通院が途切れました。別の病院を探そうとしましたが、初診の予約が数か月先までいっぱいであることや、初めての病院に電話をして症状を一から説明することへの不安から、決められないまま時間が過ぎました。この間、手元に残っていた薬を分割して飲み、なくなってからは無投薬の状態が続きました。不眠と気分の落ち込みが強まり、家事はほとんど母が行っていました。2021年12月に母が病院を探して予約を取り、付き添ってもらって2022年1月に受診しました。

例5:受診への抵抗・家族の反対

2020年4月〜2021年12月(受診していなかった期間)

家族から「気の持ちようだ」「精神科に通っていることを人に知られたら困る」と言われ、通院を続けられなくなりました。自分自身も、病気であることを認めたくない気持ちが強く、受診をやめてしまいました。しかし症状は改善せず、学校(職場)に行けない日が増え、昼夜が逆転していきました。人と会うことができず、友人からの連絡にも応じられなくなりました。食事と入浴は家族に促されて行う状態で、自分から動くことはほとんどありませんでした。2021年12月に自傷行為があり、家族の考えも変わって、2022年1月に受診を再開しました。

5つに共通する構造を抜き出すと、こうなります。

  1. 中断の理由(1〜2文)
  2. その間の生活の実態(頻度つきで具体的に。7項目の視点で)
  3. 症状が続いていた・悪化していたことを示す事実
  4. 再受診のきっかけ(次の期間への橋渡し)

この4段構成で書けば、未受診期間は「空白」ではなく「証言」になります。

5年・10年の長い空白は、中も区切る

未受診期間が長い人ほど、「通院していないんだから1枠でいいだろう」と考えがちです。しかし5年を超える空白は、その中もおおむね3〜5年で区切るのが実務の感覚です。

理由は3つあります。

(1) 1枠に押し込むと、記述が薄くなる。 10年分を数行で書けば、当然ながら密度が落ちます。そして密度の低い記述は、空白そのものと同じ効果——「特筆すべきことがなかった時期」という印象——を生みます。

(2) 10年の間に、生活は必ず変わっている。 引っ越し、離職、家族の変化、症状の波。分割すれば、その変化を書く場所ができます。「ずっと同じでした」と書くより、「この3年はこう、次の3年はこう」と書けるほうが、生活が続いていた証拠になります。

(3) 審査上の重要時点を独立させられる。 障害認定日が空白の中にある人は、認定日を含む期間を独立した枠にすると、当時の状態の記述が埋もれません。後述するとおり、医証が薄いぶん申立書の記述が効いてくる場面です。

区切りの目安は「生活の変化」です。引っ越した、仕事を辞めた、同居する人が変わった、症状が明らかに悪化した——そこで枠を分けます。適当な出来事がなければ、機械的に3年ずつでも構いません。枠が足りなくなったら続紙を使ってください(A4印刷と続紙の記事)。枠の数に経過を合わせるのが、いちばんの設計ミスです。

なお、区切った各期間の記憶が均等にあるとは限りません。「この3年は記憶が曖昧で、家族の記憶によれば〜」と書くこと自体、まったく問題ありません。書けないことを書かないより、書けない事情ごと書くほうが誠実で、伝わります。

落とし穴:「元気に働いていました」が初診日を動かすことがある

未受診期間の書き方で、知らないと危険な論点がひとつあります。社会的治癒という考え方です。

障害年金では、一定期間、症状がなく治療も受けずに社会生活を送れていた場合、その前後を「別の傷病」として扱うことがあります。これを社会的治癒といい、認められると初診日が後ろの受診日に移動します。

これは、良くも悪くも働きます。

問題は、申立書の書き方が、この判断の材料になることです。未受診期間について「この間は症状もなく、普通に働いていました」と書けば、社会的治癒に該当すると読まれる可能性があります。逆に「働いてはいたが、欠勤を繰り返し、症状は続いていた」なら、治癒とは評価されにくくなります。

大事なのは、どちらか有利なほうを狙って事実を曲げないこと。曲げれば矛盾が生じ、審査全体の信頼を失います。やるべきは順序を守ることです。

  1. まず事実を正確に書き出す(症状はあったのか、通院なしで働けていたのか)
  2. その事実が社会的治癒に当たり得るかを、年金事務所や専門家に相談する
  3. 相談を踏まえて、請求の組み立て(どの初診日で請求するか)を決める

未受診期間が数年に及ぶ人・その間に普通に就労していた人は、書く前に一度相談してください。書き方より先に、請求の設計の問題だからです。

証拠が何もない期間を、どう補強するか

「未受診なんだから、証明できるものが何もない」——そのとおりで、未受診期間は本人・家族の申立てが中心になることが前提の欄です。証明書がなくても書けます。

そのうえで、あると強い補強材料を挙げます。

すべてを添付する必要はありません。申立書の記述に具体性を与えるための材料として使い、必要なら手元に控えておく——という位置づけで十分です。

認定日が未受診期間に重なってしまったら

未受診期間で最も深刻なのが、障害認定日(原則、初診日から1年6か月後)がその期間に入ってしまっているケースです。認定日ごろの診断書が取れないと、遡及請求は原則できません。

打つ手を順に挙げます。

そして申立書の側では、未受診期間の記述の質が、そのまま認定日ごろの状態の説明になります。医証が薄いぶん、当時の生活実態をどれだけ具体的に書けるかが効いてきます。

今まさに通院していない人へ — 「空白の現在」をどうするか

ここまでは過去の空白の話でした。でも、この記事にたどり着いた人の中には、今この瞬間が未受診期間という人もいるはずです。前の病院に行かなくなって数か月、あるいは数年。申請を考え始めたけれど、通っていない。

結論から言うと、まず通院を再開してください。申請の準備より先です。理由は制度の側にあります。

そして、再開後の通院には「二重の意味」があります。ひとつは診断書を書いてもらうため。もうひとつは、今この期間を、将来の空白にしないためです。

再開の一歩がしんどいのは、当然です。予約の電話がかけられないから空白ができたのですから。現実的な手として、実務に詳しい発信者が言うとおり手続きは家族が代わりに動いて構いません。予約の電話を家族に頼む、付き添ってもらう、あるいは市区町村の相談窓口・保健所・地域の相談支援事業所に「病院を紹介してほしい」と伝える——どれも普通に使われている入口です。

再開したら、初回の診察から生活の実態を伝えてください。「ここ数年、こういう状態でした」と紙で渡せば、それがカルテに残り、数か月後の診断書の材料になります。空白の期間の説明も、そこで同時に医師へ伝わります。

思い出せない期間を、どう埋めるか

未受診期間ほど、記憶が曖昧なものはありません。通院記録という手がかりがないうえに、いちばん調子が悪かった時期だからです。

現実的な手順は3つです。

(1) 1人で思い出そうとしない。 実務に詳しい発信者が明言しているとおり、障害年金の相談や手続きは本人以外の第三者が行っても制度上まったく問題ありません。家族に「あの頃、私はどんな様子だった?」と聞くのが、いちばん確実な資料収集です。専門家への相談の一定割合は家族からだとも公表されています。

(2) 時系列の手がかりから逆算する。 引っ越し、転職、家族の出来事、コロナ禍などの社会的な出来事を軸にすると、「あれの前だから◯年」と思い出せることがあります。

(3) 思い出したその瞬間に、記録する。 ふとした瞬間に「そういえばあの時期、鍋を焦がした」と蘇ることがあります。数分後には消えます。

この(3)のために、日々の出来事や思い出したことを短くメモすると、7項目に沿った診察用資料と申立書の下書きに整理されるアプリを作りました。過去の記憶も、思い出したときに放り込んでおけば消えません。そして今日からの記録は、数年後にもし未受診期間ができてしまったとき、その期間を語る唯一の資料になります。ログイン不要・記録は端末内保存・基本機能は無料です。

よくある質問

Q. 未受診期間があると、障害年金は受給できませんか? A. 未受診期間があること自体が不支給の理由になるわけではありません。空白があること自体より、その期間の状態が説明されていないことが問題になります。理由と生活の実態を具体的に書けば、症状の重さを示す材料になります。

Q. 「通院なし」とだけ書いてはいけませんか? A. 避けてください。審査側には情報がゼロの期間として残り、「治療の必要がなかった」と推定される余地を残します。中断の理由・その間の生活・再受診のきっかけの3点を書いてください。

Q. 自己判断で薬をやめたことを、正直に書いても不利になりませんか? A. 正直に書いてください。服薬の自己中断は、それ自体が「通院と服薬」の生活能力に関わる事実です。隠しても、カルテの中断記録と照合すれば分かります。むしろ「なぜやめたのか」「やめた後どうなったか」を書くほうが、経過に説得力が出ます。

Q. 未受診期間に普通に働いていました。どう書けばいいですか? A. 事実をそのまま書きますが、書く前に年金事務所への相談をおすすめします。症状がなく通常どおり社会生活を送っていた期間があると「社会的治癒」として初診日が後ろにずれる可能性があり、納付要件や遡及の可否に影響するためです。就労していても欠勤や配慮があった場合は、その実態も具体的に書いてください。

Q. 未受診期間が10年以上あります。まとめて1つの期間でいいですか? A. 長い場合はおおむね3〜5年ごとに区切ってください。1枠にまとめると記述が薄くなり、空白の印象だけが残ります。区切ることで、時期ごとの状態の変化も書けます。

Q. 未受診期間の生活を証明する書類が何もありません。 A. 未受診期間は本人・家族の申立てが中心になる前提なので、証明書がなくても書けます。市販薬の購入記録、会社の欠勤記録、家族の記憶、スマホの写真やSNSの履歴などが補強材料になります。

Q. 障害認定日が未受診期間に重なっています。 A. 認定日から3か月以内の診断書が取れないと遡及請求は原則できませんが、認定日を挟む直前・直後の2枚の診断書で請求できる場合があります。年金事務所に相談し、難しい場合は事後重症請求に切り替えて現在分を確保してください。

まとめ

※本記事は一般的な情報提供であり、受給の可否を保証するものではありません。社会的治癒の判断や請求の組み立ては個別性が高いため、年金事務所や社会保険労務士にご相談ください。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。