不支給になった85人が教えること — 精神の障害年金で落ちた理由、4つの型

公開日: / 最終確認日:

この記事の結論

国が精神の障害の不支給85件を1件ずつ調べた結果があります。落ちた理由は4つの型に分かれます。診断書の目安より下に落ちた32件、目安が2つの等級にまたがって下に落ちた32件、目安どおり11件、その他10件。

4人に3人は、診断書の目安表では2級や「2級又は3級」の位置にいました。つまり落ちた理由は、診断書が軽かったことだけではありません。就労や生活の書かれ方で、目安から下に動いています。

不支給は「働ける」という判定ではありません。国の報告書自身が、判断の理由が明確に残っていない事案があると書き、確認が必要だと結論づけています。年金機構の点検では、不支給14,841件のうち444件が支給に変わりました。

落ちる型を知ると、これから申請する人は診断書と申立書のどこを見ればいいかが分かります。落ちた人は、通知の理由がどの型かで、次の一手が決まります。期限は3か月です。

不支給の通知が届いた日のことを、忘れられない人は多いです。封筒を開けて、「非該当」の文字を見て、自分の生活が否定されたように感じる。

でも、不支給は「働ける」という判定ではありません。「出した書類が、国の基準に当てはまらなかった」という判定です。この2つは違います。この違いを、数字で見ていきます。

材料は、厚生労働省が令和6年度に行った調査です。新しく決まった1,000件を抜き出し、精神の障害で不支給になった85件を1件ずつ調べました。落ちた理由は、4つの型に分かれます。

調子が悪くて長く読めない日は、最後の「不支給の通知が来た人が、今日やる3つ」だけ読んでください。

まず、どれくらいの人が落ちているか

何の数字か数字
新しく申請して不支給になった割合(令和6年度)13.0%
同じ割合の推移令和元年度 12.4% → 2年度 8.0% → 3年度 7.8% → 4年度 7.7% → 5年度 8.4% → 6年度 13.0%
障害の種類ごとの不支給の割合精神 12.1% / 外部(肢体・目・耳) 10.8% / 内部(心臓・腎臓など) 20.6%
年金機構の点検で、不支給から支給に変わった件数14,841件のうち 444件(3.0%)

令和6年度の13.0%は、5年度の8.4%から大きく上がりました。この数字が広まって、「審査が急に厳しくなった」と言われています。ただ、令和元年度も12.4%でした。急に上がったのは事実ですが、初めて起きたことではありません。

そして、この上がり方を受けて、国は1件ずつ調べる調査をしました。次の表が、その結果です。

精神の不支給85件、落ちた理由の4つの型

→ 横にスクロールできます

件数何が起きたか
① 目安より下に落ちた32件(37.6%)診断書の目安表では2級以上(厚生年金なら3級以上)の位置。総合評価で、それより下に判断された
② 目安が2つにまたがり、下になった32件(37.6%)目安が「2級又は3級」など。下のほうが採られ、障害基礎年金では3級が無いので不支給
③ 目安どおり11件(12.9%)診断書の目安表で、もともと3級以下(基礎年金)か非該当(厚生年金)の位置
④ その他10件(11.8%)てんかんなど、目安表とは別の基準で見る障害

①と②を足すと75.3%。落ちた人の4人に3人は、診断書の目安表では2級や「2級又は3級」の位置にいました。 診断書が軽かったから落ちた、という話ではありません。目安から下に動く何かがあった、という話です。

国の報告書は、この2つの型について、こう書いています。「障害認定基準やガイドラインに則り、適切な判定が行われているかどうかを確認する必要がある」。そして、審査の記録に判断の理由が明確に残っていない事案があることを、問題として挙げています。

つまり、落ちた側だけの問題ではありません。審査する側も、理由をきちんと残せていなかった。これが、年金機構が点検を始めた背景です。

数字で見る障害年金

型①: 目安より下に落ちた32件

診断書の7項目と「程度」の組み合わせでは2級の位置。それなのに、不支給。これがいちばん多く、いちばん納得しにくい型です。

なぜ下に動くのか。ガイドラインには、目安のあとに「総合評価」があります。就労の状況、生活の環境、療養の状況を見て、目安を上にも下にも動かします。下に動く材料は、たとえばこういう記載です。

  • 就労の欄: 「週4日勤務」とだけ書かれ、配慮や欠勤の実態が書かれていない
  • 生活の欄: 「ひとり暮らし」とだけ書かれ、家族の通いや福祉サービスの有無が書かれていない
  • 申立書: 「役所に自分で行けます」「買い物はできます」と、できることが並んでいる

どれも嘘ではありません。でも、援助なしで生活できている姿として読まれます。

ガイドラインは逆のことも書いています。就労継続支援A型・B型や障害者雇用で働いている場合は「1級または2級の可能性を検討する」。ひとり暮らしでも、家族や福祉サービスの援助を受けて生活できている場合は「2級の可能性を検討する」。同じ「働いている」「ひとり暮らし」でも、援助の中身が書かれているかどうかで、上にも下にも動きます。

働きながら障害年金を受けるときひとり暮らしは不利になるのか

型②: 「2級又は3級」から、3級に落ちた32件

目安表には「2級又は3級」「3級又は3級非該当」のように、2つの等級にまたがる欄があります。ここに当たった人は、総合評価でどちらかに決まります。下のほうに決まり、初診日が国民年金(20歳前を含む)だった人は、3級が無いので不支給。これが32件です。

ここには、制度の形の話があります。障害基礎年金には3級がありません。だから、目安が「2級又は3級」の人は、2級か不支給かの2つしかない。10代で初診日があって「3級が無い」と知って驚く人は、この型にいます。

目安表で「2級又は3級」に当たる位置は、たとえば、7項目の平均が2.0以上2.5未満で、程度が(3)のところです。7項目のうち1つが「できる」から「助言や指導があればできる」に変わると、平均が0.14動きます。行がまたがることがあります。つまりこの型は、診断書の1項目の書かれ方で、2級と不支給が分かれた人たちです。

私は何級くらい?日常生活能力の判定7項目の書かれ方

型③: 目安どおりの11件

診断書の目安表で、もともと3級以下の位置。基礎年金なら不支給。この型は、判断が動いたのではなく、診断書に書かれた姿がそこにあった人たちです。

ここで見るのは、「診断書に書かれた姿」と「実際の生活」が同じかどうかです。同じなら、いまは基準に当たらないということです。違うなら、直す場所は診察室です。

診断書には決まりがあります。医師は「ひとりで暮らすとしたら、できるかどうか」で判断する、と記載要領に書かれています。家族と暮らしていて、家族がしてくれていることを「できる」と伝えていた人は、実際より軽く書かれます。事実と違う記載は、記録を添えて医師に伝えれば、直ることがあります。等級への注文ではなく、事実の訂正です。

診断書の内容が実態と違うとき主治医に、生活の実態を伝える

型④: その他の10件

てんかんなど、精神の診断書を使うが、目安表とは別の基準で見る障害です。てんかんは発作の頻度と型で決まります。この型の人は、目安表ではなく、その障害の認定基準を見てください。

てんかんと障害年金

覆った例から、逆に読む

公開されている裁決(不服申立ての結論)を、当サイトで91件集めています。障害の重さが争いになった57件のうち、40件で決定が取り消されました。ただし、公開される裁決は覆った事案が多く選ばれている可能性があり、審査請求全体の割合ではありません。

覆った例に共通するのは、「診断書のどの記載が、基準のどの条件に当たるか」が具体的に示されていることです。

逆に、覆らなかった例もあります。職場の配慮を受けつつ管理職として週4日働き、日常生活能力も比較的保たれていたため、3級にも当たらないとされた例。就労の欄に「配慮」があっても、生活の側が保たれていれば下に動く。型①の実物です。

実例を読む

これから申請する人が、85件から学ぶ3つ

  1. 診断書の目安を、出す前に知る。 診断書を受け取ったら、7項目と程度を目安表に当ててみる。「2級又は3級」の位置なら、1項目の書かれ方で結果が分かれる位置にいる。事実と違う項目が無いかを、出す前に確かめる。
  2. 就労と生活は、「している」ではなく「どんな援助の中で」を書く。 週4日働いている、ひとり暮らしをしている。それだけ書くと、援助なしと読まれる。誰が、何を、どのくらい助けているか。休んだ日、できなかった日。申立書と診察で、この形で伝える。
  3. できることを並べない。 申立書は、できないことを訴える場所ではありません。でも、できることを並べる場所でもありません。「ひとりで役所に行ける」「趣味を楽しめる」は、援助なしで生活できる姿として読まれます。事実のまま、頻度と期間と援助を書く。
申立書の書き方必要書類チェックリスト

不支給の通知が来た人が、今日やる3つ

  1. 通知の日付を見て、3か月後の日をカレンダーに書く。 審査請求の期限は、決定を知った日の翌日から3か月。手数料はかかりません。落ち込んでいる間に、この日だけは過ぎないように。
  2. 通知の「理由」を読んで、4つの型のどれかを見る。 納付要件や初診日が理由なら、資料の追加。障害の状態が理由なら、診断書の目安を確かめて、型①②③のどれかを見る。
  3. 「なぜ落ちたか」の記録を取り寄せる。 審査側の判断は、認定調書という書類に残っています。保有個人情報の開示請求で取り寄せられます。1か月半ほどかかるので、先に審査請求だけ出して、理由書はあとから補強する。

不支給は、終わりではありません。審査請求、出し直し(事後重症による再請求)、状態が変わったときの再請求。道は3つあります。どれを選ぶかは、理由の型で決まります。

不支給と言われたとき審査請求の進め方

よくある質問

Q. 不支給になったということは、国に「働ける」と判定されたのですか?

A. 違います。不支給(非該当)は、出した書類が支給の基準に当てはまらなかったという判定です。基準には、納付要件や初診日など、障害の重さ以外の理由も含まれます。「働ける」かどうかを判定する制度ではありません。

Q. 診断書は2級の位置だったのに、なぜ落ちたのですか?

A. 目安のあとに総合評価があり、就労の状況や生活の環境で目安から下に動くことがあります。令和6年度の調査では、精神の不支給85件のうち32件がこの型でした。就労や生活が「援助なし」と読める書かれ方になっていなかったかを、診断書と申立書で確かめてください。

Q. 10代で初診日があると、3級が無いのは本当ですか?

A. 本当です。20歳前に初診日がある障害基礎年金には、3級がありません。1級か2級か、非該当です。目安が「2級又は3級」の位置にいる人は、2級と認められるかどうかで、受給と不支給が分かれます。

Q. 一度落ちたら、もう通らないのですか?

A. そんなことはありません。審査請求で覆ることがあり、年金機構の点検でも不支給14,841件のうち444件が支給に変わりました。状態が変わってからの再請求もできます。ただし、同じ書類を同じ形で出し直しても結果は変わりません。理由の型に合わせて、直すところを直します。

Q. 主治医に「どうせ通らない」と言われました。

A. 診断書を書くかどうかと、通るかどうかは別です。医師法は、正当な理由なく診断書の交付を断れないと定めています。生活の実態のメモを渡し、必要な様式を確認してから、もう一度頼んでください。それでも難しければ、病院の相談員や年金事務所に相談する道があります。

Q. 審査が厳しくなったのなら、申請しても無駄ですか?

A. 無駄ではありません。令和6年度でも、新しく申請した人の87%は何らかの等級に決まっています。厳しくなったと言われる部分は、目安から下に動く総合評価のところで、国自身が確認が必要だと書いています。書類のどこを見ればいいかは、この記事の4つの型で分かります。

まとめ

  • 精神の不支給85件の内訳: 目安より下に落ちた32件、目安が2つにまたがり下になった32件、目安どおり11件、その他10件
  • 4人に3人は、診断書の目安表では2級や「2級又は3級」の位置にいた。落ちた理由は、就労や生活の書かれ方
  • 国の報告書は「適切な判定が行われているか確認が必要」と結論づけ、点検では444件が支給に変わった
  • 不支給は「働ける」の判定ではない。出した書類が基準に当てはまらなかった、という判定
  • これから申請する人: 診断書の目安を出す前に知る。就労と生活は「どんな援助の中で」を書く。できることを並べない
  • 通知が来た人: 3か月後の日を書く。理由の型を見る。認定調書を取り寄せる

出典

  • 厚生労働省年金局「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」(令和7年6月11日。抽出1,000件、精神の不支給85件の内訳、非該当率の推移、小括)・確認日 2026-09-08
  • 日本年金機構「障害年金業務統計(令和2〜6年度決定分)」(新規裁定の非該当率 8.0 / 7.8 / 7.7 / 8.4 / 13.0%、令和6年度 146,225件)・確認日 2026-09-08
  • 日本年金機構「障害年金の認定状況について」(点検: 不支給14,841件のうち444件が支給へ。令和8年3月31日現在)・確認日 2026-09-08
  • 厚生労働省「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」(平成28年9月。目安表、総合評価の考慮要素)・確認日 2026-09-08
  • 日本年金機構 診断書(精神の障害用)様式第120号の4 記載要領(単身で生活するとしたら可能かどうかで判断)・確認日 2026-09-08
  • 医師法 第19条第2項(診断書の交付)・確認日 2026-09-08
  • 社会保険審査会 裁決集(当サイト裁決事例集 91件。本文で触れた事案: 令和4・5年分 11-07、11-08、令和6年分 3-05、平成30・令和元年分 7-01)・確認日 2026-09-08

※本記事は一般的な情報提供です。受給の可否や等級は個々の状況と提出書類によって決まり、本記事は受給を保証するものではありません。

参考リンク

制度の正式な情報・最新の様式は、日本年金機構のホームページおよび 年金事務所でご確認ください。

このテーマの全体像は「障害年金の申請」にまとめています。